これは魔王の物語、ただの悲劇……これは、ただの悲劇である。 わたし、ラル・ガーディン……えーと、マオウ?…です。 乱雑な文字で書かれた手紙、その冒頭の一文である。 ハハが、なくなって…さびしいです。わたしは、マオウになってみんなをたすけます。わた…… 手紙はそこで切れていた、2枚目に目を向ける。 みんな、いなくなって…わたし、いやだです。みんな、いなくて、さびしいです。 これも手紙と言うにはあまりにも粗末な出来、しかし視線は3枚目に吸い込まれる。 ごめん…なさい、わたしがイケない、です。みんなにごめんなさい、わたしは…みん 血が滲んだ手紙、冒頭の部分までしか読めなかった。 私は、自室の椅子にもたれかかる。額に皺を寄せ、どうにも言えない感情が私の心を掻き乱す。 これが最後の手紙、私は破り捨てられた手紙に目を向ける。 シネ!、しね……ね…おまえ……んか…シンじゃ よ!、みん……は、おまえらのせ……しんだ!、シネ!、シネ!………ネ!、シネ! 非常に拙く粗暴な文章、私はこれを記した人物を知っている。 "迫害の魔王"ラル・ガーディン、私の宿敵にして仲間の仇だ。 勇者は目を閉じる、言い表せない感情に目を閉じる。勇者として、私は彼女を知っていた。しかし、それだけでは不十分であった己の未熟さを恥じる。 きっと彼女を怪物に変えたのは……… 私は勇者、魔王を討つべく剣を構える者、それは決して変わらない。ただ私は強きを挫き、弱きを助ける者、だからこそ私は救ってみせよう、どんな形であれ……彼女を救ってみせよう。 勇者である彼女は、そう心で誓ったのだった。 これは魔王に起こった悲劇、そんな過去の物語。 そして勇者が起こす英雄譚、そこに隠れた物語。 魔王は泣く、絶望に泣いた。 https://ai-battler.com/character/5b59e6a3-725b-4929-85a3-9fc0d016aadd