ログイン

どこか儚げな美少女 Ver48

 俺……、俺は……、、、  ___俺の名前は山田風太郎だ……、、、  今、病院の待合室にいる……。打倒者……、いや"詩(うた)"は緊急手術中だそうだ。なぁ…、よくさ……、こういう場面ってドラマとかだと手術室の前で待ってるイメージがあったんだが…、この病院の場合は院内の病棟以外で待たなくちゃいけないらしくてさ、今は病院入口すぐの受付所で詩の手術が終わるのを待ってるところだ……。  ___ギリッ…!  脳裏に駆けるは最悪の光景、血濡れた床に血を吐いて倒れた詩の姿、どんなに呼びかけても返事もなければ俺自身は、その場で何もしてやる事は出来なかったんだ……。  数十分の遅れを伴って山奥に響くは救急車のサイレン音、俺は……そのとき、何をしてたっけ…??  「___ぐっ…!」  耳元に未だ残っているサイレンの不協和音、それが俺の脳内に木霊して鼓膜を突き破る。あの瞬間、確かに俺はそれを覚えている。その時、俺は何も出来なかった事を克明に憶えている。この時、俺は血に染まった腕で目を覚ます事のない詩の両肩を揺すっていた事を覺えている。  母さん……、何故か呼んでも家には居なかった。なんでだ?、どうしてだ?、いや……そんな事はもはやどうでもいい…、もぉどうでもいいんだよ。  救急車への同行を求められ、俺は確かに乗った。だがしかし、いつ病院に到着したのか分からない。確かに乗っていた、たしかにのっていた筈だ。救急車両の座席は硬くて酷く揺れていた、緊急手術が必要なレベルの急患者を乗せているんだ。お行儀よく交通ルールを守っている暇なんてない……、、、  俺は、何だ……?  俺は、あいつに何をしてやれた……??  俺は、あいつを……打倒者を見殺しにしたんだぞ???  俺は、何故どうして救われた?  何故、あいつは俺を救った??  俺は、どうして何も出来ない……???  どうしてだ?  どうしてだ??  どうしてだ???  どうして………、、、  俺は___、  "どうして何もしなかった"……??????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????  何故もっと早く助けを呼べなかった???  何か適切な処置が出来た筈だ……??  何故、ただ見ているだけだった…?  俺は___、  何故、また妹を見殺しにした???  いや、待てよ……、"また"とは何だ?  そもそも、詩は妹じゃなi……、、、  ___ビギッ…!  「ぐっ…!」  脳髄を何かが駆け巡る、何かの記憶、何か古びた映像が俺の脳裏を刻み込む。  ___お兄ちゃん!  詩の声だ…!?  しかし、その記憶はセピア色に燻んでいて鮮明には読み取れない。詩が、笑っていた。  ___あれ…?、お兄ちゃんどうしたの??  現実とは対照的に、詩は元気である。そして、俺を不思議そうな眼差しで見ていたのだ。  「ぐぉッ……、なんだ…!、この記憶は…!?」  ___お兄ちゃん、あれ……  詩は、何処かを指差した。そこから見える光景は何処かの公園だろうか?、そして指差された方に俺は振り向いた。  ___グチャ…!、クチャクチャ……!、ブチリ…!  ___ハッ……!?  俺は目を覚ます、"存在しない"記憶を思い出した瞬間に目を覚ましたのだ。冷や汗を垂らして周囲を見渡してみる、先程と同じで病院の受付所の椅子に俺は座っていた。  不意に壁に取り付けられた時計を見つめる、どうやら眠ったまま2時間ほどが経過していたらしい……。  「くそ……、さすがに疲れてるな………」  珍しく不機嫌に悪態をついてみせた。それから、手術はどうなったんだ?、詩は助かったのか……??  そんな疑問が俺の思考を掻き乱す、誰かの近付いてくる足音に顔を上げてみる。すると、看護師らしき女性が近寄ってくるのが見えた。だがしかし、その表情はどこかバツが悪そうな顔である。  「あの、えと……その…、山田詩さんのご家族の方でよろしいでしょうか?」  歯切れの悪い問い、俺は……一抹の不安に返事を返した。  「はい、兄です……」  本当は兄ではないと、そう心が考える。実際、今日初めて知り合ったばかり、そして一緒にいた時間は多く数えてもまだ一日も経っていない。そんな俺は、看護師の言葉を静かに待っていた。  「では詩さんのお兄さん、今から言う事を落ち着いて聞いてね。実際のところ、妹さんの容態は芳しくはない。だけど、逆に言えばまだ生きてはいるの……だけれど…」  看護師の目が、微かに泳ぐ。  「たぶん、あと"数時間"程度が限界、という事らしいわ……。詳しい話は担当の手術医に後々で聞いてもらいたいのだけれど、状況としては心臓の大部分が破裂、それに伴って逆流した血液が血管を圧迫して肺とその周囲の血管系を破壊してしまったの。それに…、脳にも酷い出血が見られたらしくて、もし奇跡的に生きられたとして、その場合でも要介護レベルの後遺症は避けられないそうよ。だから今すぐになんて残酷な事は言わない、でも少なからず覚悟はしておいてね…!」  そう言うと手に持っていた資料を半ば強引に押し付けられた。ふと、それを見てみると、それは臓器のドナー提供の可否に関する書類であった。俺は、自身の手に持たされたペン先が震えている事に気づいた。なんだか、もしもこれにサインしてしまったら……もう、詩には会えない気がして、俺は書く事を躊躇っていたのだ。  「ごめんね、ちょっと他の患者さんに問題があったみたいだから私は行かなくちゃ。それから、さっきも言ったけど決断は今すぐじゃなくてもいいの。だけれど、最悪を想定した"覚悟"は早いうちにしておいた方がいいわ」  そう言って、看護師は立ち去って行ってしまう。病院の薄暗い照明の下、俺は独りこの場に取り残されてしまったのだ。  「くそ……、なんだよ………どうしてこう…なるんだよ…」  俺は、どうしようない感情に屈して腰を折る。手元の資料がぐちゃぐちゃになるほど前へと蹲り、頭を抱えていた。  なんで俺は、こんなに悲しいんだ?、打倒者は、詩は赤の他人、助けられたと言えども友達でもなければ、ましてや家族でもない存在だ。  ___じゃあ何で、お前は泣いている……?  俺は、無様に垂れ流した自身の泣き面を今更になって認識する。声を殺し、そして感情を殺そうと漏れた嗚咽が病院内に静かに木霊する。  ___俺は、  ___俺は、、、  ___おれは……  誰かが俺に話しかけてくる、咄嗟に手で涙を拭うと視界には先程の看護師の姿が入ってくる。  「あっ…、ごめんね。あの今、誰か他に連絡が取れるご家族の方はいらっしゃるかしら?、ご両親だったり?、もしくはご兄弟でもいいの、その書類の事も含めてご家族でよく相談してほしいの」  そう言って、俺は先程の臓器提供に関する契約書に視線が落ちていく。他の家族…?、いるとしたら母さんぐらいしか……  ___ヒョイ…  視界の外、そこから伸びた腕に持っていた書類を奪われてしまった。最初に俺は母さんか?、と思って顔を上げてみたが、どうやら違うらしい。  「あんたは…、一体………??」  俺の口元から、そんな疑問が反射的に飛び出した。 https://ai-battler.com/character/3d6e6e27-398a-42d4-a16b-f42e7686a032