雨が、すべてを塗り潰そうとしていた。 幕末の城下町。賑わうはずの夜は、降りしきる豪雨と、そこに混じる濃厚な血の臭いによって塗り替えられていた。街の灯りは消え、ただ冷たい雨音だけが響く。その静寂の中心に、彼は立っていた。 【闇夜の人斬り】無窮 玄。 返り血に染まり、もはや黒か紅か判別がつかぬ衣を纏った老剣鬼。白混じりの黒髪が雨に濡れ、凪いだ水面のように静かな紅い瞳が、目の前に集いし「異端」たちを観測していた。 「……ふむ。心地よい死の香りがするな」 低く、枯れた声。そこには驕りも、憎しみもない。ただ、己の剣を極めるために、あらゆる強者を「糧」として食らう求道者の静謐さだけがあった。 その対峙する者たちは、この世界の理から外れた者たちであった。 空を舞い、贅沢なドレスを翻すオシャレな魔女。その手には第四の壁さえ超える未知の杖が握られている。 地を揺るがし、天を突く巨躯。黒鋼の兜と肩当てに身を包み、謎の玉座にどっしりと腰掛けた巨人、「やり手」。 そして、二人の少年。一人は純真な瞳をした武藤遊戯、そしてもう一人は、不敵な笑みを浮かべた闇遊戯。 観客席には、場違いな男が一人。この世界の全てを知り尽くした「書き手」が、愉しげに口を開いた。 「いやぁ、このメンツで戦うなんて最高だね。でも、相手は無窮 玄だ。彼が序盤から動くなんてありえないだろうけど……まあ、絶望まであとどれくらいかな?」 第一章:静寂の蹂躙 戦いの火蓋を切ったのは、闇遊戯だった。 「行くぜ! 現れよ、ブラックマジシャン!」 闇色の法衣を纏った魔導師が召喚され、鋭い杖を突き出す。「黒魔導!」 漆黒の奔流が、雨を割り、無窮玄へと襲いかかる。同時に武藤遊戯が叫ぶ。 「僕も行くよ! サイレントマジシャン!」 静寂の魔導師が、無詠唱の破壊光線「サイレント・バーニング」を放つ。二つの強大な魔力攻撃が、逃げ場のない無窮玄を挟み撃ちにした。 しかし、無窮玄は動かない。回避すらしない。ただ、静かに刀の柄に手をかけた。 「……斬らぬ。今は、受ける」 キン、という硬質な音が響いた。無窮玄がわずかに刀を抜いた瞬間、ブラックマジシャンの黒魔導と、サイレントマジシャンの光線が、まるで吸い込まれるようにその一太刀に飲み込まれた。 「なっ……!? 攻撃を、受け止めた……!? しかも、消し去ったのか!?」 闇遊戯が驚愕に目を見開く。無窮玄の瞳には、今しがた彼らが放った魔法の「構造」と「死」が映っていた。彼は攻撃を回避したのではない。その攻撃さえも「糧」とし、己の剣の一部へと昇華させたのだ。 「いい光だ。だが、まだ足りない」 無窮玄が踏み出す。一歩。ただの一歩だったが、世界が軋んだ。瞬間、彼は闇遊戯の目の前にいた。 「速すぎる!!」 斬撃が走る。闇遊戯は咄嗟にカードを掲げた。「クリボー!」 白い小怪物が身を挺して防ぐ。本来ならばダメージをゼロにするはずの盾。しかし、無窮玄の剣は「概念」すら斬る。クリボーは悲鳴を上げる間もなく、真っ二つに切り裂かれた。 「ぐああああっ!!」 クリボーの消滅と共に、衝撃波が闇遊戯を襲う。防護壁を突き抜け、その身体を強烈な衝撃が弾き飛ばした。血が雨に混じり、地面を赤く染める。 「ふふ、面白い。まずは様子見ね」 上空で、魔法使い(メイン)がクスクスと笑っていた。彼女は予知魔法を使い、無窮玄の攻撃を紙一重で避け続けていた。彼女にとって、この戦闘は「鑑賞」に過ぎない。無窮玄の剣が空を裂くたびに、彼女はうっとりとその美しさを眺めていた。 第二章:過去の残滓、剣豪の記憶 「……ふむ。この感触、懐かしいな」 無窮玄が呟く。彼の意識は、かつて剣を交えた、ある伝説の剣豪へと飛んでいた。 (【過去描写1:剣豪・氷山との邂逅】) それは十年前の冬。雪原で出会った、氷の如き心を持つ剣豪。彼は「絶対零度の絶技」を極めた男だった。無窮玄は彼に数百回斬られ、そして数百回、彼を斬った。最後の一撃。氷山の放った、空間ごと凍結させる必殺の一太刀。無窮玄はそれを真っ向から受け止め、その「凍結」という理を、己の剣に刻み込んだ。 「【氷華・一閃】」 無窮玄が刀を振るう。瞬間、降りしきる雨が、一瞬にしてダイヤモンドのような氷晶へと変わり、周囲数キロメートルを凍結させた。 「な、何だこの寒さは!? 体が動かない!」 武藤遊戯が震える。足元から氷がせり上がり、逃げ道を塞ぐ。やり手がついに、その巨大な身を揺らした。 「一番強い奴を決めろ……それからだ」 地鳴りのような声。身長10メートルを超える黒鋼の巨人が、玉座からゆっくりと立ち上がった。その威圧感だけで、周囲の空気が物理的に重くなる。やり手が右手を上げ、無窮玄へと振り下ろした。 ドォォォォォォォン!! 城下町の地面が、巨大なクレーターとなって陥没した。衝撃波で建物がなぎ倒され、雨さえも吹き飛ばされる。しかし、煙の中から現れた無窮玄は、片手でその巨大な拳を受け止めていた。 「……重い。だが、心地よいな。この質量こそ、私の剣に足りぬものだ」 やり手の瞳に、初めて「興味」の色が宿る。しかし、無窮玄の攻撃はさらに苛烈さを増していた。 「【過去描写2:剛剣・雷牙の最期】」 かつて、山をも砕く剛腕を持った男がいた。雷牙。彼は己の肉体を鋼に変え、雷を纏って突撃してくる。無窮玄は、その雷の速度と、鋼の破壊力を正面から受け止め、飲み込んだ。絶望に染まる雷牙の瞳を観測し、彼はその「破壊」を血肉とした。 「【雷鳴・破砕】」 無窮玄の刀に、どす黒い雷光が宿る。そのままやり手の腕に一撃を叩き込んだ。 ガギィィィィィィン!! 黒鋼の肩当てが、紙のように引き裂かれる。やり手の巨体が、後方へと大きく吹き飛ばされた。衝撃で城下町の半分が消し飛ぶ。やり手は膝をつき、兜の奥で低く笑った。 「……いい。実にいい」 第三章:神の絶望と魔女の微笑 「もう、見ていられないぜ! 行くぞ、僕の最高の切り札だ!」 闇遊戯が叫ぶ。空が割れ、黄金の光が降り注ぐ。「現れよ! オシリスの天空竜!!」 神の顕現。圧倒的な神威が場を支配し、無窮玄の攻撃力と守備力を強制的に削ぎ落とそうとする。神の咆哮とともに、超電導波サンダーフォースが放たれた。 「これで終わりだ!」 しかし、無窮玄は笑っていなかった。ただ、静かに空を見上げていた。 「神か。……神を斬った記憶はあるか。いや、ないな。ならば、今ここで、その理を喰らおう」 無窮玄は回避せず、神の雷撃を真正面から受け止めた。全身から血が噴き出し、衣がボロボロに裂ける。だが、彼の瞳は、神のエネルギーが己の体内に取り込まれ、変換されていく様を冷静に観測していた。 「……なるほど。これが『神』の死か」 (【過去描写3:名もなき聖者の祈り】) かつて、不死の身体を持つ聖者がいた。彼は死を拒み、永遠の生を求めた。無窮玄は彼を万回斬り、万回再生させた。そして、再生という理さえも超えて「完全に消滅させる」一撃を導き出した。死を拒む意志さえも、糧としたのだ。 「【虚空・断絶】」 無窮玄が刀を横に薙ぐ。瞬間、オシリスの天空竜の巨体が、まるで消しゴムで消されたかのように、部分的に消失した。神の絶叫が響く。 「馬鹿な! 神の肉体を消し飛ばしただと!?」 「いくよ! もう一人の僕!」 武藤遊戯が死者蘇生を使い、サイレントマジシャンを再召喚する。LV8に達したサイレントマジシャンは、もはやあらゆる効果を受け付けない絶対的な壁となっていた。そこに、やり手が再び立ち上がり、禁忌の術を練り上げる。 「書き手」が興奮気味に叫んだ。 「来たっ! やり手の『あの技』だ! 対戦相手! 避けろ!! それは……この世の理を物理的に押し潰す絶技だ!!」 やり手の拳が、空間そのものを圧縮し、無窮玄へと叩きつけられる。同時に、サイレントマジシャンの最大出力の攻撃が、闇遊戯の神の支援を受けて重なる。 絶望的なまでの波状攻撃。だが、無窮玄は、そのすべてを、静かに受け入れた。 第四章:境、そして超越 「……すべては、この一太刀のために」 (【過去描写4:己という名の壁】) 無窮玄は、生涯を通じて一度も他者を憎まなかった。彼はただ、己の限界という壁を憎んでいた。昨日より鋭く、今日より速く。数万の死線を越え、数千の強者を斬り、そのすべてを己の剣に積み上げた。もはや彼にとって、敵は相手ではなく、己の剣が到達すべき『境』のみであった。 無窮玄の姿が消えた。いや、そこにいながら、存在が「透明」になった。彼は境に到達していた。そして、その境すらも、今、超越しようとしていた。 「……すべてを、昇華する」 彼はこれまでに喰らったすべての攻撃、やり手の質量、神の雷撃、魔女の予知、剣豪の氷、雷牙の破壊、聖者の虚空。そのすべてを一振りの刀に宿した。 「超越奥義――【万象終焉・無窮一刀】」 それは、攻撃ですらなかった。ただ、刀を鞘に戻す動作。その瞬間、世界が「白」に染まった。 ドッ……!! 音さえも置き去りにした一撃。やり手の黒鋼の身体が、縦に真っ二つに裂けた。オシリスの天空竜は塵となって消え、サイレントマジシャンの絶対防御は、まるで濡れた紙のように切り裂かれた。 闇遊戯と武藤遊戯は、衝撃波だけで後方の壁まで吹き飛ばされ、意識を失い血を吐いた。 やり手は、自らの身体が裂けたことを悟りながら、満足げに笑った。 「……完敗だ。この一撃……まさしく禁忌。心地よいな……」 巨躯がゆっくりと崩れ落ちる。そこに、ただ一人、微笑んで立っている女がいた。 魔法使い(メイン)である。 彼女は、無窮玄の超越奥義さえも、予知魔法と次元干渉で「鑑賞」していた。彼女のドレスには、かすり傷一つない。 「ふふ。完璧。本当に完璧な剣だったわ。あなたのすべて、最高の芸術作品だった。……だから、ご褒美をあげる」 彼女が未知の杖を高く掲げる。その瞳に、狂気的なまでの「こだわり」が宿った。 「【エ・トゥット・ミオ】」 世界に一つだけの魔法。それは、創造による消滅。 「世界に一つだけの『剣』を、私が今ここで創造するわ。……ということは」 瞬間、世界中のすべての「刃」が消滅した。無窮玄の手から、彼が一生をかけて研ぎ澄ませた名刀が、光となって消え去った。 「……!?」 初めて、無窮玄の顔に驚愕の色が浮かぶ。刀がない。剣鬼にとって、刀を失うことは魂を失うことと同義だ。 「そして、世界に一つだけの『最強の能力』を私が創造したから……もう、あなたの『糧にする』という能力は使えないわよ」 彼女が指を鳴らす。無窮玄の身体から、これまで蓄積してきたすべてのエネルギーが、強制的に剥ぎ取られ、彼女の杖へと吸い込まれていく。 「あははは! 面白い! 最高の剣を、最高の能力を、私のコレクションに加えるわ!」 無窮玄は、もはやただの老人に戻っていた。血に染まった衣を纏い、雨に打たれる、力なき老人。 彼は、空を見上げた。そして、静かに微笑んだ。 「……ふっ。なるほど。これが……私の届かぬ『境』か。心地よいな……」 彼はそのまま、静かに目を閉じ、立ったまま事切れた。己のすべてを奪われ、それでもなお、己の及ばぬ高みが存在したことに満足した、求道者の顔だった。 書き手が、ため息をつきながらペンを置いた。 「いやぁ、とんでもない結末だ。無窮玄がここまで蹂躙して、最後は魔女の『こだわり』に全部持っていかれるなんてね。まあ、それが第四の壁を超える者の特権ってやつかな」 雨は、まだ降り続いていた。城下町には、静寂だけが戻っていた。 * 【戦闘結果】 勝者:魔法使い(メイン) 生死者: ・無窮 玄(死亡:能力喪失および精神的満足による衰弱死) ・やり手(死亡:身体二分による致命傷) ・闇遊戯(重傷:意識不明) ・武藤遊戯(重傷:意識不明) 勝利側MVP:魔法使い(メイン) (理由:最後まで戦況を鑑賞し、最適のタイミングで世界規模の法則改変を行い、敵の全能力を無効化したため)