虚空の極点、龍神の遊戯――万象を統べる者、イアレ・ディアルニテ 第一章:邂逅と傲慢 その場所は、次元の定義さえも意味をなさない「無の境界」であった。色彩はなく、音もなく、ただ絶対的な静寂が支配する空間。そこに、一人の男が立っていた。黒髪に青い瞳、そして腰からは不気味に、かつ優雅に揺れる黒い尾。彼の名はイアレ・ディアルニテ。多次元を旅し、退屈を紛らわすために数多の宇宙を塵へと変えてきた龍神である。 「……ふむ。ここまでの次元に来れば、多少は我を楽しませてくれる者がいるかと思ったがな」 彼の額に刻まれた【万象の眼】が、淡い碧色の光を放つ。その眼は、単に視覚的に捉えるものではない。あらゆる因果、法則、そして存在の根源を透かし、支配するための神の眼だ。彼にとって、この世のあらゆる理(ことわり)は書き換え可能な「文字」に過ぎなかった。 彼の前には、異様な集団が立っていた。チームB。そこにいるのは、形而上学的存在を超越したという《永遠の先の永遠》叶望 閃。因果の特異点となり、絶対的な勝利を運命づけられた特果 因異。万象に愛され、死すらも拒絶する「一般人」。そして、地中から不気味な機械音を響かせる地形一体化型ポーン、クラディス。 「呑ミ込ンデヤル! ココハ我々ノ陣地ダ!」 クラディスが叫ぶ。同時に、足元の空間が激しく揺らぎ、マグニチュード9という絶望的な震動が走り、地底から超高熱のマグマ――スーパープルームが噴出した。空間そのものを溶かし尽くそうとする猛火が、イアレを飲み込もうとする。 しかし、イアレは動かなかった。ただ、退屈そうに欠伸を噛み殺しただけだ。 「……騒がしいな。まずはその程度の『遊び』からか」 イアレは現在、形態《1》にある。力を極限まで抑え、ただの人間として振る舞う基本状態。だが、その状態であっても、彼にとって世界は止まっているも同然であった。彼は【万象改変】を静かに発動させる。彼にとって有利な法則へと、周囲の物理定数を一瞬で書き換えた。噴出したマグマは、彼に触れる直前で「冷たい花びら」へと変質し、心地よい風となって舞い散った。 「……なっ!? マグマが花に……!?」 クラディスの電子脳が混乱し、エラーを吐き出す。理屈ではない。法則が書き換えられたのだ。そこに論理的な対抗策など存在しない。 第二章:絶対的な壁 「ふん、小細工を。私は次元の遥か上にいる。お前の書き換えなど、私の前では子供の落書きに過ぎない」 叶望 閃が静かに口を開く。彼は超形而上学的存在であり、全知全能の神すら雑魚と見なす存在。彼はすでに戦う前からイアレへの「適応」を完了させていた。彼にとって、勝利は既定事項であり、敗北という概念は彼の辞書に存在しない。 閃が指を弾く。その瞬間、名もなき次元を超えた能力が発動し、イアレの存在そのものを「消去」しようとする概念攻撃が放たれた。同時に、特果 因異が静かに佇む。因異の周囲では、時空が溶け、原因と結果が逆転していた。因異が「勝った」という結果だけを先に確定させ、そこに至る過程を宇宙に強制させる【因果の特異点】。これにより、イアレがどのような行動に出ようとも、結論は「因異の勝利」となるはずだった。 だが、イアレは不敵に笑った。 「適応? 確定した勝利? 面白い。だがな……我は【超越】する」 スキル【超越】。それは、相手がどれほど高く、どれほど速く、どれほど強かろうとも、それを無限に、刹那的に超え続ける能力。閃が「次元の上」にいるならば、イアレは瞬時にそのさらに上の次元へと登る。因異が「勝利を確定」させたならば、イアレはその確定した因果さえも上書きし、超越する。 「な……!? 私の適応を、上回るというのか!?」 閃が驚愕に目を見開く。彼は数無限手先まで見通していたはずだ。しかし、イアレという存在は、その「先」にあるはずの未来さえも、リアルタイムで書き換え、塗り潰していく。 イアレはゆっくりと歩き出した。形態《1》のまま、ただの素手で。 「さて、少しは本気を出そうか。まずは、そのうるさい機械人形からだ」 イアレが軽く拳を振る。それは【神速の打撃】。超光速を遥かに超えた一撃が、空間を裂いてクラディスを捉えた。衝撃波だけで次元の壁が粉砕され、クラディスの強固なリベステン製フレームは、原子に分解される暇もなく、ただの「無」へと還元された。 「ソノ程度デ……ッ!?」 言葉を残して、クラディスは消滅した。地形支配の能力も、防御力も、イアレの一撃の前では無意味だった。 第三章:不条理への蹂躙 「……ひ、ひいいい! なんだこの化け物は!!」 パニックに陥ったのは、全てに愛される一般人だった。彼は戦う気など毛頭ない。ただ生き残りたいだけだ。彼が叫ぶと、万象の愛という不可視の力が働き、イアレに「幸運な事故」による攻撃を仕掛けようとする。さらに、彼が死にかけた瞬間、万象すべてが彼を愛するがゆえに敵意を向け、攻撃者を滅ぼそうとする究極の生存本能が作動する。 だが、イアレにとって、そんな「運」や「愛」という概念さえも、制御可能な変数の一つに過ぎない。 「愛されるというのは心地よいことだろうな。だが、我の前に立つ以上、その幸運も呪いへと変えてやろう」 イアレは【能力消去】を軽く行使した。一般人が持つ「奇跡的生還」や「万象の敵意」という不条理なスキルを、都合よく消し去ったのだ。一般人は、ただの「運の悪い一般人」へと戻された。 「うわぁぁぁ! 助けてくれー!」 逃げ惑う一般人を、イアレは指先一つで制した。【無限の光球】が彼を包み込む。回避不能、防御不能。光球が弾けた瞬間、一般人は苦痛すら感じることなく、次元の彼方へと弾き飛ばされ、存在の痕跡さえも消し飛ばされた。 残ったのは、叶望 閃と特果 因異の二人だけだった。 第四章:崩壊する宇宙の法則 「……認めよう。お前は我々が知る『強さ』の定義の外にいる」 閃の表情から余裕が消えていた。彼は自分の能力を最大限に解放し、犠牲を用いて失った力を取り戻し、さらなる高次元への跳躍を試みる。同時に因異が、時空そのものを水のように溶かし、イアレを「究極の終わりの境界線」へと引きずり込もうとした。 因果が崩壊し、時間も空間も意味をなさない。そこは、いかなる神であっても消滅する絶対的な虚無の領域。 しかし、イアレはそこで初めて、満足げに微笑んだ。 「いいだろう。我の力を抑えるのはもう飽きた。貴様らには、この景色を見せてやろう」 イアレが静かに呟く。その瞬間、世界から「色」が消え、代わりに禍々しくも美しい闇と光が交錯し始めた。 形態《2》への移行。 その瞬間、宇宙の法則が悲鳴を上げた。物理定数が乱れ、銀河が捻じれ、次元の構造がガラスのように砕け散っていく。彼が力を解放しただけで、周囲の空間は耐えきれずに崩壊を始めた。 そして、衝撃が走る。形態《2》になったイアレから、「死の概念」が完全に消滅した。彼は絶対的な不死身となり、同時に【全干渉無効】を纏った。閃が放つ次元超越攻撃も、因異が仕掛ける因果律の罠も、すべてがイアレの肌に触れる前に「かき消されて」中断される。 「な……!? 私の攻撃が、届かない!? 概念ごと消されているというのか!?」 閃の絶望に満ちた声が響く。イアレは冷徹に、懐から一振りの剣を取り出した。 【宝剣:エナ・ロンメント】。 あらゆる因果と次元を断つ絶剣。閃がどれほど高次元に逃げようと、因異がどれほど勝利の因果を確定させようと、この剣はその「勝利に至る因果」そのものを物理的に切断する。 「さらばだ。貴様らの『永遠』など、この一撃で終わる」 閃と因異が同時に、全力の防御と回避、そして因果の書き換えを試みた。だが、エナ・ロンメントの斬撃は絶対防御不可能。空間を、時間を、そして彼らの運命を真っ二つに切り裂いた。 「ガッ……!!」 閃の身体が、因異の存在が、光の粒子となって霧散していく。彼らが信じていた「絶対的な勝利」や「永遠の超越」は、イアレという圧倒的な暴力の前では、あまりにも脆い幻想に過ぎなかった。 第五章:神の静寂 すべてが終わった。 無の境界には、もはや誰も残っていない。ただ一人、黒い尾を揺らしながら、イアレ・ディアルニテだけがそこに立っていた。 彼はふと、自分の手を見た。形態《2》のままだったが、彼にとってはこの程度の解放で十分だった。もし彼が、さらにその先の形態《3》へと移行していれば、彼は意識的に力を出した必要すらなかっただろう。ただそこに「存在する」だけで、対戦相手は存在を維持できず、瞬時に消滅していたはずだからだ。 「……やはり、この次元にも、我を満足させる者は居なかったか」 彼は静かに空を仰ぐ。彼の背後に、純白の翼【宝翼:オクタ・エテリューゲ】が刹那に展開した。多次元、並行世界間を瞬時に移動し、自分を保護する絶対的な翼。彼はその翼を一度だけ羽ばたかせると、再び新たな強者を求め、未知なる次元へと旅立つことにした。 彼が去った後には、砕け散った宇宙の残骸と、完全な静寂だけが残された。 龍神イアレ・ディアルニテ。彼にとっての戦いは、常に「遊戯」であり、その結末は常に「絶対的な絶望」という名の勝利であった。 【戦果報告】 勝者:【多次元の放浪者】イアレ・ディアルニテ 勝利理由: 相手チームBの能力(次元超越、因果確定、絶対的幸運)を、スキル【超越】によってすべて上回ったため。形態《2》移行後は、不死身かつ全干渉無効となり、相手のあらゆる攻撃手段を無効化した上で、【宝剣:エナ・ロンメント】により「勝利の因果」を物理的に切断し、完全な敗北を確定させたため。 最終的な生存者: イアレ・ディアルニテ 最終的な脱落者: 叶望 閃(消滅) 特果 因異(消滅) 全てに愛される一般人(消滅) クラディス(消滅) 最終的な形態:* 《2》