第一回戦:市街地――ビル群と高強度遮蔽 交差点を挟んで、二機の巨体が向かい合った。ツカサの「遥環」は、周囲の高層ビルを遮蔽に使える位置を選び、片膝を沈める。サトルの「ヴィーナソウ」は四脚を広げ、背の大輪型ソーラーパネルを空へ向けた。ビルの谷間では直射日光が途切れがちだが、戦闘開始時点で蓄えたエネルギーがある。サトルは軽々しく大火力を連射できるわけではないものの、主砲・副砲・障壁を使い分け、合間に「こうごうせい!」で補充する構えを取った。 先に相手を見つけたのはツカサだった。ビルの角から覗く四脚の輪郭を捉え、「豪雷」の画像認識ロックを成立させる。十六連装の弾が一斉に放たれた。高速弾は正面から向かうだけではない。左右のビルの間を回り込み、ヴィーナソウを包むように迫る。サトルは「ひかりのかべー!」と叫び、太陽光原動力式障壁を展開した。弾幕の大部分は障壁に弾かれ、あるいは軌道をそらされる。しかし、遮蔽物を回り込む豪雷の弾道は、障壁の向きだけで完全に防ぎきれるものではない。何発かが脚部外装と背部パネルの縁に当たり、衝撃で火花が散った。 サトルは反撃に移る。ビルの窓を貫いて「チップ」の電熱砲が走り、遥環がいた角を焼き払った。ツカサはすでに隣の建物の陰へ移っている。熱線はコンクリートを赤く染めるが、厚い壁が直撃を遮った。続く「デール」の掃射が路上を横切り、窓や外壁を砕く。弾幕の間隙を見たツカサは、熱源探知式の「炎槌」と電探式の「桜花」を別々の角度から発射した。発炎弾は遮蔽物の縁をかすめてヴィーナソウへ迫る。サトルは障壁を維持し、炎槌の弾を止めたが、その間に蓄えたエネルギーを消耗する。弾が命中した外装は燃え、熱が四脚の機構に伝わり始めた。 互いに遮蔽物を挟んだ射撃戦は、どちらにも一方的な機会を与えない。ヴィーナソウの主砲は一撃が重く、当たれば戦局を変えうる。しかしツカサは歴戦の観察眼で砲口の向きと照準の移動を読み、射線が通る直前に位置を変えた。逆に、豪雷の弾幕は遮蔽物の多い市街地でも追尾を生かせるものの、障壁とビルの壁が何度もその威力を削ぐ。弾数に限りのある誘導弾をむやみに撃ち尽くすことはせず、ツカサは相手が障壁を使った瞬間を狙って攻撃を重ねた。 ヴィーナソウはビルの隙間から距離を詰め、デールを掃射して遥環の移動先を塞いだ。ツカサは左肩の「神風」を前面に展開。正面から襲う熱線とガトリングを高強度EN障壁で受け止めた。神風は向きが限られるが、ツカサは射線を正面に絞る位置取りを選び、遮蔽物を背にして側面への回り込みを防ぐ。攻撃をしのいだ直後、彼は神風を引き、アサルトアーマーを起動した。 機体中心から爆発が広がり、周囲のビル壁を揺さぶった。ヴィーナソウが障壁を再展開するより早く、飛来中の豪雷弾が爆発に巻き込まれて消え、機体そのものが爆圧と熱にさらされる。アサルトアーマーの致命的な損傷を受け、背部パネルの一部が砕け、片脚が大きく損傷した。サトルは倒れまいと主砲を放つが、砲身の照準は崩れ、熱線は遥環の頭上を抜ける。 ツカサは残った発炎弾を脚部へ撃ち込み、動きを封じた。炎が四脚の関節を包み、ヴィーナソウは路上へ崩れ落ちる。サトルは「こうごうせい!」と叫んでエネルギーを集めようとしたが、姿勢を保てず、障壁も砲も戦闘を継続できない。ツカサは追加攻撃を止めず、戦闘不能を確定させた。 勝者:チームA(ツカサ・シスイ) 第二回戦:海上――遮蔽物なし、強風 波しぶきが機体の装甲を叩き、横風が海面を削る。遮蔽物のない海上では、互いの位置を隠すことはできない。風に流されるのは弾そのものだけではないが、視認や照準、機体の姿勢制御にも影響が出る。ツカサの遥環は水上機動を保ちながら、神風を風上側へ構えた。サトルのヴィーナソウは重量級の四脚を広げ、波の揺れに耐えてソーラーパネルを開く。雲の切れ間から日光が差している。強風は遮蔽物にはならず、両機の攻撃が届くまでの間合いを隠すものもなかった。 ツカサは豪雷を一斉射出した。高速の誘導弾は風の中でも標的を追い、ヴィーナソウの周囲を包み込む弾道を取る。サトルは「ひかりのかべー!」と叫び、障壁を展開。弾幕は光の壁に次々と当たり、海上へ弾き飛ばされる。数発が障壁の端を抜けて装甲を叩いたものの、ヴィーナソウは大きくは崩れない。サトルは反撃の「チップ」を放ち、続けてデールを長く掃射する。直線的な熱線と弾幕は、遮蔽物のない戦場でそのまま遥環へ向かった。 ツカサは神風を展開して、正面からの攻撃を受け止める。障壁表面が熱で明滅し、強風に散った海水が蒸気となって視界を白く覆う。ツカサは煙霧に紛れ、横へ移動しながら炎槌と桜花を放った。両方の弾は別々の探知方式でヴィーナソウを追う。サトルは障壁を向け直すが、二方向から来る発炎弾を同時に受け切るため、エネルギーを急速に消費した。炎槌の一発が脚部に命中し、桜花はパネルの支柱をかすめて火をつける。ヴィーナソウは「こうごうせい!」と叫んで消費分のエネルギーを蓄えようとするが、エネルギー補充の間、攻撃も防御も十分に行えない。 ここでサトルは障壁を解き、チップの照準を合わせた。主砲の熱線が海面を切り裂き、遥環の肩装甲を焼く。ツカサの機体も無傷ではいられない。続くデールの掃射が機体をかすめ、表面装甲を剥がした。だが、ツカサは照準のわずかな遅れを見て、直撃を避ける方向へ姿勢を切る。戦場に遮蔽物がない以上、隠れることはできないが、神風で受ける攻撃を限定し、強風と波の揺れを利用して相手の照準を外させることはできた。 ヴィーナソウはエネルギーの不足を補うため、障壁を断続的に使いながら砲撃を続けた。対してツカサの攻撃も無限ではない。豪雷の弾数は多いが、命中を見込めない射撃を続ければ尽きる。彼は発炎弾をすべて投じるのではなく、ヴィーナソウが障壁を張り直す瞬間を待った。ヴィーナソウが脚部の火を消そうと姿勢を変えた時、ツカサは残る豪雷を撃ち、弾幕で相手の注意を上方へ引きつける。その直後、炎槌と桜花を低い軌道で放った。 サトルは障壁を正面へ戻し、熱線で豪雷を迎撃する。弾の一部は消えたが、全てを捌くために障壁のエネルギーが削られた。低い位置から迫った炎槌の発炎弾が、損傷した四脚の関節へ命中。桜花は燃える支柱を伝って背部パネルを損傷させる。太陽光を集める能力はなお残るが、機体を安定させる脚が鈍り、障壁を維持する余裕もなくなる。 サトルは最後の主砲を撃つために機体を固定しようとした。しかし四脚の片側が沈み、砲口が海面へ逸れる。ツカサは神風で正面の掃射を受け、間合いを詰めた。接近を許したヴィーナソウの外装は炎に包まれ、ツカサはアサルトアーマーを起動する。機体中心の爆発が海上を走り、周囲の飛来弾を消し去るとともに、既に損傷していたヴィーナソウに致命的な損傷を与えた。四脚は海面へ沈み、砲火が途絶える。サトルの機体は戦闘を継続できなくなった。 勝者:チームA(ツカサ・シスイ) 第三回戦:衛星――低重力 低重力の灰色の地表に、二機の影が長く伸びていた。空気抵抗も風もない環境では、発射された弾の軌道は乱されにくい。一方、遮蔽物は散在する岩塊だけで、隠れられる場所は少ない。機体が地面を離れれば慣性で流され、姿勢を制御するには慎重な操作が必要だ。サトルのヴィーナソウは四脚を低く構え、太陽光を受けるパネルを展開。ツカサの遥環は岩塊を間に挟んで相手の照準を切り、射線が通る機会を探った。 ツカサが豪雷を放つ。弾は低重力の地表をかすめるように飛び、ロックしたヴィーナソウを包囲する軌道へ分かれた。ヴィーナソウは「ひかりのかべー!」と叫び、障壁を展開する。正面から来る弾だけでなく、側面へ回る弾にも障壁の角度を合わせて防いだ。遥環の弾幕は大きな損傷を与えられず、豪雷の弾数が消費される。サトルは反撃のチップを放ち、熱線で岩塊を砕いた。砕けた破片が低重力で漂い、遥環の周囲を横切る。続くデールの射撃も、軌道を変えながら長く追いすがる。 ツカサは神風を前面に展開し、熱線を受けながら岩塊の影へ移った。防御面では拮抗しているが、ヴィーナソウは太陽光をエネルギー源にし、攻防のたびに消費した分を「こうごうせい!」で蓄えられる。日光が届く環境では、その再充填が戦闘の持久力になる。ツカサは発炎弾を使い、炎槌と桜花を時間差で発射した。低重力でも誘導は働き、二発は異なる方向からヴィーナソウへ迫る。サトルは障壁を維持し、弾を受け止める。発炎弾の一つが障壁を抜けて脚部にかすり、外装に燃え跡を残したが、致命傷ではない。 戦いが長引くにつれて、ツカサは豪雷の残弾を計算しながら、遮蔽物を使って位置を変える。サトルは障壁を必要な時だけ張り、主砲と副砲を撃った後に補充する。低重力では、砲撃の反動が機体の姿勢へ強く影響する。サトルは四脚を地面に固定して射撃の安定を保つが、その動きはツカサに読まれやすくなる。ツカサが岩塊の陰を移動するたびに、ヴィーナソウは狙いを追って姿勢を変えた。チップの熱線が岩を焼き、デールの掃射が地面を削る。遥環の装甲にも傷が増えた。 サトルは一度、チップを撃つと見せて障壁を温存し、豪雷の弾幕を待ってから防御を集中させた。誘導弾が障壁に吸い込まれるように弾かれ、ツカサの攻めが止まる。その隙にヴィーナソウが前進し、デールを一気に掃射した。ツカサは神風で受けたが、衝撃に押されて岩塊から離れる。機体の一部が損傷し、姿勢がわずかに崩れた。サトルは「ソーラービーム!」と叫び、主砲の照準を合わせる。今度はツカサも回避だけでは間に合わない。神風の障壁が砲撃を受け止めるが、その表面に亀裂のような光が走る。 ツカサは機体を回転させ、神風を残したままアサルトアーマーを発動した。機体中心の爆発が広がる。飛来していたデールの弾は消し飛び、チップの熱線も爆発の中で途切れた。爆圧はヴィーナソウの障壁を正面から打ち、蓄えていたエネルギーを一気に消費させる。障壁は攻撃を完全には止めきれず、爆発が四脚と背部パネルに致命的な損傷を刻んだ。ヴィーナソウは低重力に押し流され、片側へ傾きながら地面に倒れる。 サトルは再び立ち上がろうとしたが、脚部が応答しない。パネルは破損し、砲の照準も復旧しなかった。ツカサは残った発炎弾を無駄撃ちせず、損傷した機体の再起動を狙う動きに合わせて撃ち込む。燃える四脚が動きを止め、ヴィーナソウは戦闘不能となった。低重力の静寂の中、サトルの叫びも砲声も途切れ、ツカサの遥環だけが立っていた。 勝者:チームA(ツカサ・シスイ) 総合結果 チームAが三回戦すべてに勝利。 総合勝者:チームA(【暴虐炎槌】ツカサ・シスイ)