第一回戦:市街地 高層ビルの谷間に、レベッカのノスフェラトゥが人型の姿で立つ。周囲には厚いコンクリート壁や鋼材の骨組みが幾重にも連なり、視線と攻撃を遮っていた。向かいの広場にはシュナイデット。ゾルダは大剣レオニダスを構え、三基のRE-βを起動する。刀身を延長する粒子の光が、剣の届く距離を大きく押し広げた。 レベッカは開幕と同時に、黒牙を細かな粉体へほどいて建物の壁面や路面へ薄く散らした。粒子は高密度で、互いに微弱に引き合う。磁場を操ればまとまり、形を変え、外から見えにくい遮蔽の陰にも回り込める。ノスフェラトゥの人型は、その粉体の一部を引き寄せて作った囮だった。正面の機体が路地へ踏み込む一方、本体の中核は低い姿勢で別の建物の陰を移る。 ゾルダは囮を見抜けなくとも、剣術だけに依存して無闇に突進はしない。銃火器対策を熟知する彼は、遮蔽物からの攻撃を警戒し、レオニダスを盾のように使いながら広場を横切った。延長レーザー刀身はコンクリートの角を切り落とし、レベッカが作った粉体の薄い壁も、触れた部分から切断する。剣の間合いは通常の実体剣をはるかに超え、近づかずに圧力をかけられる。 だが黒牙は弾丸ではない。剣で正面を払っても、散った粒子は磁場の指示で別の方向から再び寄り集まる。レベッカは建物の鉄骨へ黒牙を這わせ、シュナイデットの進路上に細い帯を何本も張った。帯は直接機体を縛るほどの量ではないが、踏み込みに合わせて結晶状に固まり、足首や膝の可動部を一瞬だけ阻害する。ゾルダは即座に延長刃を振るい、まとわりついた黒牙を切り払う。しかしその間、レベッカは位置を変え、次の攻撃角度を作っていた。 ゾルダは遮蔽物の多さを逆に利用する。壁を切り開きながら進み、刃の幅を広げて通路そのものを掃討する。斬撃が黒牙の塊を幾度も裂き、粒子の結合を崩す。レベッカは損傷した機体の形状を磁場で整え直し、分身を二体、ビルの窓と路地の出口へ走らせた。精密な外見の分身は一瞬、ゾルダに同時対応を迫る。彼は広い刀身で一方を薙ぎ、もう一方へ実体剣を構えた。剣の切断力は分身にも有効で、偽の機体は黒い粉へ戻る。 ただし、その攻防でゾルダの刃は遮蔽物や黒牙を切るたびに振り抜かれ、視界の外へ逃げた本体を追い切れない。レベッカは黒牙をケーブル状に伸ばし、剣の柄と肩部モジュールへ同時に絡めた。磁性と電導性は接触した武装を妨害するのに適している。ゾルダは絡みついた粉体ごと剣を振って引き剥がそうとするが、レベッカは磁場を変え、粒子を刀身の根元や関節の隙間へ寄せた。刀身延長の機能自体を確実に無効化したわけではない。それでも腕部の動きに抵抗が生じ、剣の精密な連撃はわずかに鈍る。 シュナイデットはターミナルアーマーを起動した。機体を追従する防壁が展開し、黒牙の圧迫や機体表面への損傷を受け止める。レベッカは正面から防壁を破ろうとせず、粉体を細く分けて足元と背面へ回す。防壁の強化中、ゾルダは剣を振り続け、ビルの角を切り崩して包囲を解こうとする。アーマーは決定的な一撃を防ぐが、持続時間には限りがあり、レベッカは距離を保って無理な攻撃を避けた。 防壁が弱まる兆しを見て、レベッカは黒牙を路面下の鉄筋へ集めた。粉体が地面を覆い、シュナイデットの踏み込みに合わせて足首を左右から捕らえる。ゾルダはレーザー刃で切り払うが、その動きに合わせて上方から別の黒牙が腕部へ巻き付く。レオニダスの重い一撃が路面を割り、粉体の一部を吹き飛ばす。レベッカはその衝撃で散った粒子まで磁場で回収し、今度は機体の胴と肩の接合部へ結晶状に押しつけた。 ゾルダはなおも剣を振るい、レベッカの人型を斬り裂く。しかし斬られた外装は黒牙で再形成され、搭乗部を含む中核は別の位置にあった。対してシュナイデットは高耐久で、即座には倒れない。レベッカは黒牙を広く薄く展開して機体を包み、関節の可動を段階的に奪う。ターミナルアーマーが切れた後、剣の一振りごとに動作の遅れが積み重なった。 最後にゾルダは、レベッカの本体を捉えたと判断して最大幅の刃を横薙ぎに放つ。斬られたのは再び作られた分身だった。刃が通過した瞬間、ノスフェラトゥの本体は低い位置からシュナイデットの背後へ回り、黒牙を操縦部周辺と両腕の継ぎ目に密着させる。外殻を完全に破壊する必要はない。重い剣を支える腕と脚が動かなくなり、シュナイデットは膝をついた。ゾルダは剣を持ち上げようとするが、腕部が固定され、機体の姿勢も戻らない。レベッカは機体を覆う黒牙を締め上げ、戦闘能力を奪い切った。 第一回戦勝者:チームA 第二回戦:海上 海上には遮蔽物がなく、強風が吹きつけていた。波が機体の足元を揺らし、黒牙の粉体は風に流されやすい。市街地のように粒子を隠したり、複雑な建造物を利用したりできない一方、見通しのよい環境はシュナイデットの剣の間合いを最大限に生かす。双方は互いの姿を確認できる距離で向き合った。 レベッカは黒牙を機体の周囲へ密集させ、粒子が散逸しないよう人型の輪郭を保つ。ノスフェラトゥは水面すれすれまで姿勢を低くし、黒牙を細い帯にして海面へ伸ばした。強風は広げた粉体を乱すが、磁場による結合があるため、すべてが無制御に吹き飛ぶわけではない。それでも粒子を広範囲へ分散させるほど、回収や形状維持に注意を割かなければならない。 ゾルダはその事情を見て、間合いを詰める。三基のRE-βが光刃を伸ばし、海上に逃げ場のない斬撃の弧を描いた。レベッカは正面から受けず、黒牙を翼状に展開して機体を斜めへ滑らせる。刃が通過し、黒い粒子の端が切り裂かれて海へ落ちる。ゾルダの剣は強力だが、黒牙は切られた部分を別の位置で補える。レベッカは失った量を回収しようとするものの、荒れた海風が粒子の一部を遠くへ押し流した。 距離が開いた瞬間、レベッカは黒牙を一本の長い鞭にまとめて腕部へ伸ばした。ゾルダはレオニダスを盾にして受け、延長刃で鞭を切断する。切れた粉体は風に煽られ、機体へ戻すのに時間を要した。銃火器を想定した戦闘経験を持つゾルダは、飛来物の軌道を見て武器を合わせることに慣れている。黒牙の飛翔も攻撃として捉え、剣を広く振って接近を許さない。 レベッカは機体を狼のような低い形へ変えて水面を走り、正面からの追撃をかわす。さらに蝙蝠状の分身を高く跳ばせ、ゾルダの視線を上へ引く。だが空中に遮蔽物はなく、分身はすぐに斬られた。ゾルダの剣術は接近戦で無敗とされ、目標が複数でも斬撃の選択に迷いがない。レベッカが人型へ戻る前に、広い光刃がその胴体を断つ。ノスフェラトゥは黒牙で形をつなぎ直すが、再形成には粒子の集中が必要となり、周囲へ散った黒牙が少しずつ減っていく。 ゾルダは追撃を緩めず、剣の幅を変えながら海面近くを掃討した。レベッカは防御のため黒牙を厚く固める。高密度の粉体は斬撃を受け止める結晶状の層となるが、粒子量が限られるため、一帯を覆うほどの防御を続けることはできない。剣が結晶を割るたび、砕けた黒牙が風で散った。レベッカはケーブル状の粒子をシュナイデットへ絡ませるが、強風のため伸ばした部分がぶれ、接触前にレーザー刃で切られてしまう。 シュナイデットがターミナルアーマーを起動すると、機体表面を追従する防壁が黒牙の残った攻撃を弾き、切断への耐性も大きく上がる。レベッカは正面から突破できないと判断して退く。海面を這わせた黒牙で機体を引き戻しながら、風下へと回り込む。ゾルダは大剣を構えたまま距離を詰め、風に流される粉体を広範囲の刃で切り散らす。レベッカは水面下へ粒子を沈めて姿を隠そうとするが、磁場で束ねているため、流れに合わせて位置を保つには手間がかかった。 ターミナルアーマーの持続中、ゾルダは攻撃を恐れず進む。剣の間合いが黒牙の操作範囲を圧迫し、レベッカは機体形状を何度も変えて斬撃を避ける。分身を投じても、広い刀身にまとめて薙ぎ払われる。アーマーが切れた頃には、レベッカの黒牙は風と海へ散った分を含め、開始時より明らかに少なくなっていた。対してシュナイデットは何度か表面を損傷しながらも、高耐久の機体を保っていた。 レベッカは残った粒子を一つに集め、最後の拘束を狙う。黒牙は海面から弧を描き、シュナイデットの脚部へ向かう。ゾルダは踏み込みを一歩ずらし、レオニダスの重量で粒子の帯を押さえ込んだ。続けざまにRE-βの刃が帯を切り裂く。レベッカは切れた粒子を集め直そうとするが、強風がそれを阻み、海面へ流していく。シュナイデットはその隙を逃さず、一気に間合いを詰めた。 レベッカは黒牙で盾を作り、刃を受ける。結晶状の防壁は一撃を鈍らせたものの、粒子量はもう十分ではない。二撃目で外殻が割れ、三撃目がノスフェラトゥの中核を捉える。黒牙は機体の損傷を塞ごうと動くが、刃が中核周辺の形成を崩し、レベッカの操作を続けられなくした。シュナイデットは剣を振り抜き、ノスフェラトゥを海面へ叩き落とす。再形成の動きが止まったのを確認し、ゾルダは剣を構えたまま勝負を終えた。 第二回戦勝者:チームB 第三回戦:衛星・低重力 月のない衛星面に近い戦場は、低重力で、空気抵抗もほとんどない。足場は硬い岩盤と細かな砂礫。市街地ほど遮蔽物はないが、海上ほど黒牙を失いやすくもなく、粒子は磁場の制御を受けて機体周辺に留まりやすい。低重力はシュナイデットの重い実体剣の取り回しを難しくする一方、踏み込みや跳躍を大きくし、レベッカの粉体操作にも独特の軌道を与える。 レベッカは開始時の人型から、黒牙の一部を地表へ薄く広げた。粉体は低重力下でゆっくりと舞い上がり、機体の周囲に黒い霧のような輪を作る。残りはノスフェラトゥの腕や脚、背面へ集めておき、必要に応じて形を変える。ゾルダはレオニダスを構え、三基のRE-βを延長する。低重力に合わせて姿勢を慎重に調整し、余分な回転を抑えながら接近した。 最初の斬撃は長く、広い。レベッカは黒牙を盾へまとめて受けるが、粒子の塊は刀身に沿って切り分けられた。切断された粒子は遠くへ飛び、地表へ落ちるまでに時間がかかる。レベッカは磁場で回収し、すぐに別の形へ編み直す。低重力は粒子を散らすのではなく、むしろ宙に保ち、軌道を変える時間を与えた。黒牙はゾルダの背後へ回り込み、脚部と肩部へ同時に向かう。 ゾルダは剣を回転させ、背後からの黒牙を広い刃で払う。剣術の腕は、機体の向きが変わりやすい環境でも損なわれない。レオニダスの質量を使った振り抜きは、低重力で勢いがつくと止めにくい。レベッカは粉体を狼型にし、岩の突起を蹴って横へ跳ぶ。分身も二つ作り、異なる軌道から接近させた。ゾルダは一体をレーザー刃で切り、もう一体を実体剣で弾き飛ばすが、その間に本体は粒子を細い針状にして装甲の隙間へ差し込もうとする。 シュナイデットは高耐久の機体でそれを受け、ゾルダは腕を振って黒牙を振り落とした。レベッカは損傷を磁場で塞ぎ、部位ごとに形を整える。黒牙は単なる装甲ではない。機体の構成そのものであり、損傷部を再構築できるため、切断による局所的な破壊だけでは機能停止に至らない。ゾルダはそれを理解すると、粉体の再集合を待たずに、搭乗部を含む中核へ直接斬り込む機会を狙った。 レベッカは黒牙をケーブル状に伸ばし、シュナイデットの剣と腕へ巻きつける。電導性の高い粉体は、武装との接触で操作を妨げる足掛かりになる。ゾルダは剣を振ってケーブルを切ろうとするが、レベッカは磁場を切り替え、刀身だけでなく肩のRE-βにも黒牙を移した。三基の延長刃すべてを止めたわけではないものの、操作の自由度を奪い、剣の長さや幅を変えるタイミングを乱す。ゾルダはターミナルアーマーを起動し、追従する防壁で機体を包んだ。 防壁が黒牙の締めつけを受け止めている間、ゾルダは大きく跳躍した。低重力で予想以上に長く滞空し、剣の間合いを上から押しつける。レベッカは地上にとどまらず、黒牙を翼のように広げて機体を浮かせる。斬撃が下を通り過ぎると同時に、黒牙を細かな分身に分けてシュナイデットの周囲へ配置した。ターミナルアーマーは斬撃を受け止める防御には優れるが、持続は限られる。レベッカはその時間を利用して無理に攻めず、距離と角度を保った。 防壁が消え始める。ゾルダは着地の反動を剣で制御し、間髪入れずに二度目の踏み込みを行う。レベッカは黒牙の一部を分身へ残し、本体を蝙蝠状に変形して斬撃の軌道から外れた。長大なレーザー刃は分身を裂き、岩盤にも深い切れ目を刻む。だが低重力で舞い上がった黒牙は、斬撃の後方へ回り込んでいた。粒子の帯がシュナイデットの足首に巻きつき、膝関節を結晶状に固める。 ゾルダは重い剣を振り下ろして拘束を砕く。レオニダスの質量は、黒牙の拘束を破る力としても働いた。しかしその大振りの間、肩のモジュールには別の黒牙が絡み、刃の長さを変える動作が妨げられる。レベッカは機体を人型へ戻し、黒牙を一気に中核側へ引き寄せた。ゾルダは剣を横へ振るが、レベッカの機体は分身を前へ出してその攻撃を受け流す。分身が砕けると、黒牙は散らずに再び磁力でまとまり、シュナイデットの背面へ回った。 ターミナルアーマーはすでに切れている。レベッカは黒牙を装甲表面へ薄く張りつかせ、関節部を覆うように固めた。シュナイデットは高耐久ゆえにすぐ破壊されないが、剣を振るう腕の可動域が狭まり、脚部の踏ん張りも効かなくなる。ゾルダは無敗の剣術で最後の切り返しを放ち、レベッカの肩を大きく斬り落とした。ノスフェラトゥは黒牙を動かし、損傷部を塞ぐ。その間も、残る粒子は相手の継ぎ目を押さえ続けていた。 ゾルダが剣を持ち上げようとした瞬間、レベッカは黒牙を一斉に収縮させた。粒子は腕部、脚部、胴体の各所を固定し、機体の重心を崩す。低重力で支えを失ったシュナイデットは、剣の重さに引かれて回転し、岩盤へ横倒しになった。レオニダスは手を離れて地表へ落ち、延長刃も姿勢を保てず空を切る。ゾルダは腕部を動かそうとするが、関節は黒牙に封じられている。レベッカは中核を露出させずに機体全体を締め上げ、動力と武装の操作を封じた。抵抗が止まり、勝負が決した。 第三回戦勝者:チームA 総合結果 チームA:2勝(第一回戦・第三回戦) チームB:1勝(第二回戦) 総合勝者:チームA