冒険者ギルドの影なる協議 王国首都の喧騒から少し離れた、冒険者ギルドの本部はいつも活気に満ちていた。石畳の通り沿いに建つ古めかしい建物は、英雄たちの足跡を刻んだ歴史の証。ギルドのロビーでは、冒険者たちが酒を酌み交わし、依頼書を睨みながら次の獲物を物色する。だが、この日、ギルドの奥深く、職員専用の会議室では、静かな緊張が漂っていた。 会議室はギルドの最上階にあり、窓からは王都の城壁が見渡せた。重厚なオークのテーブルを囲む四人の職員は、皆ベテラン揃いだ。ギルドマスターの代理を務める中年男性、エルドリックは、厳しい目つきで手配書を睨んでいた。彼の隣には、情報担当の若い女性、リリアが座り、ノートを広げてメモを取る準備を整えていた。向かい側には、戦闘経験豊富な老練の職員、ガルドが腕を組み、煙草をくゆらせていた。最後に、財務を司る小柄な男、フィンリーが、計算盤を弄びながら懸賞金の試算に余念がない。 部屋の中央に置かれた四枚の手配書は、王国諜報部から極秘裏に届けられたものだった。封蝋の残る封筒は、開封されたばかりで、インクの匂いがまだ残る。エルドリックがため息をつき、最初の書類を手に取った。「さて、皆の衆。諜報部から来たこの四枚、ただ事ではないぞ。危険度をしっかり判定し、懸賞金を設定せねばならん。王国全体の平和がかかっている。」 リリアが頷き、ペンを走らせる。「はい、マスター。まずは名前が『常久』という人物です。短髪の好青年で、軍服姿。武装は長剣と拳銃、スキルは戦術指揮。軍人の家系で、戦略の秀才だそうです。攻撃力25、防御力20、魔力0、素早さ25。特殊技に『断影斬』と『百花繚乱』。冷静沈着で古風な口調の男です。」 ガルドが煙を吐き出し、書類を覗き込む。「ふむ、指揮官タイプか。単独じゃなく、部隊を率いる可能性が高いな。一人で25の攻撃力と素早さなら、A級冒険者並みだ。だが、魔力がゼロだから魔法耐性は低い。戦術家ゆえ、予測不能な戦いを仕掛けてくるだろう。危険度はS級か、それ以上だな。」 フィンリーが計算盤を叩きながら口を挟む。「S級なら、懸賞金は最低でも5000ゴールド。味方を統率するなら、もっと上積みが必要だ。王国軍の脱走者か何かか? 諜報部の機密事項だから、詳細は不明だが、放置すれば内乱の火種になる。」 エルドリックが頷き、次の手配書を広げる。「同意だ。常久の危険度はS。懸賞金は8000ゴールドとする。次は『ハンス・リーバーマン』。35歳のドイツ出身の軍人、准尉。厭世的で冷淡、狙撃兵だ。主武器はG22改良型狙撃銃、副武器P8拳銃。『死神』と呼ばれ、生存を顧みない戦い方をする。台詞例が『Ich habe nichts mehr zu verlieren(僕にはもう…失うものなんて無いからね)』。感情が希薄で、母の死を境に変わったそうだ。」 リリアが眉を寄せ、翻訳を読み上げる。「ドイツ語の部分は、異国風の呪文か何かか? 狙撃の精度が高く、遠距離から一撃必殺。ステータスは明記されていないが、スキルからして素早さと攻撃力が突出しているはず。静寂を好み、生きることを嫌う性格……自爆覚悟の戦いをするなら、捕縛は難しいわ。」 ガルドが拳をテーブルに軽く叩く。「こいつは厄介だ。狙撃手は隠れて攻撃してくる。部隊を壊滅させる一撃を放つ可能性大。危険度はSS級。死神の異名は伊達じゃない。過去の戦場でどれだけの命を刈り取ったか……。」 フィンリーが目を細め、数字を弾く。「SS級なら、10000ゴールド以上。諜報部がわざわざ届けたんだ、国際的な脅威だな。賞金は15000ゴールドでどうだ? 冒険者たちが殺到する額だ。」 エルドリックが書類をめくり、三枚目を指差す。「よし、ハンスはSSで15000ゴールド。次は『エンシェントワイバーンロード』。紅色の鱗のワイバーンの王、25mの巨体。歴戦の飛竜で、全ステータス300増加、状態異常・炎・風無効、物理魔法軽減。飛竜の群れを使役し、火炎放射、大火球、暴風、鎌鼬などのスキル。攻撃力30、防御力30、魔力5、素早さ25。喋らない古代の王だ。」 リリアの声が震える。「飛竜の王……フレイム、サンダー、ヴェノム、フロスト、ブラッド、ストーム、エンシェント、カースワイバーンを従えるんですって。鋼鉄の鱗に古傷だらけ。敵を掴んで上空から落とす、噛みつき、飛竜の攻撃力防御を2倍に……これ、王国全土を脅かす災害級ですよ。」 ガルドが立ち上がり、興奮気味に言う。「こいつはZZ級だ! 古代の存在で、歴戦の知恵がある。動きを予測し、広範囲攻撃で軍隊すら壊滅させる。ワイバーン軍団を率いれば、空から王国を焼き払う。懸賞金? そんなもんで倒せるかよ。最低50000ゴールドだ。」 フィンリーが汗を拭い、計算を急ぐ。「ZZ級はギルド史上稀だ。賞金は100000ゴールド。複数人で挑まねば、誰も生きて帰れん。諜報部がこれを優先的に届けたのも頷ける。」 最後の手配書をエルドリックが手に取り、皆の視線を集める。「これが最後、『電撃の大蛇』ボルヴァイパー。電気を纏った黄土色の大蛇。鋭い牙の噛みつき、尾の薙ぎ払い、電気攻撃。スキルにボルメイル、ボルテイル、ボルバイト、ボルロンチ、ボルシャプ。知能が高く、戦術的に戦う。数百倍の巨敵を捕食した言い伝えあり。言葉は話さず、鳴き声『シャアア!』『シュルル…』のみ。」 リリアが息を呑む。「電気を操り、攻撃力と速度が大幅上昇。相手を分析して戦う知能派。肉体攻撃と雷撃のコンボで、近接も遠距離もカバー。ボルロンチで広範囲、ボルシャプで急所狙い……これも災害級ね。」 ガルドが頷き、煙草を消す。「大蛇か。地中を這い回り、雷で周囲を麻痺させる。捕食の言い伝えから、成長性が高い。危険度はZ級。ワイバーンほどじゃないが、単独で都市一つを壊滅させる力だ。」 フィンリーが最終計算を終え、声を上げる。「Z級で30000ゴールド。電気耐性のない冒険者には地獄だ。賞金で専門家を呼び寄せねば。」 エルドリックが立ち上がり、四枚の手配書をまとめ、決定を下す。「よし、判定は以下の通りだ。常久:危険度S、懸賞金8000ゴールド。ハンス・リーバーマン:危険度SS、懸賞金15000ゴールド。エンシェントワイバーンロード:危険度ZZ、懸賞金100000ゴールド。ボルヴァイパー:危険度Z、懸賞金30000ゴールド。これで王国諜報部の期待に応えられるはずだ。」 協議は二時間以上に及び、部屋は煙と緊張の残り香で満ちていた。リリアが手配書に危険度と賞金を記入し、ガルドが封印を施す。フィンリーが金庫の鍵を確認し、エルドリックが最後の承認を押した。四人は互いに視線を交わし、静かに頷き合う。この決定が、数多の冒険者たちの命を賭けた戦いの火蓋を切るのだ。 夕暮れ時、ギルドのロビーに四枚の手配書が貼り出された。冒険者たちのざわめきが一気に高まり、英雄たちの瞳に闘志が宿る。王国諜報部の影が、静かに王国を守るための策を巡らせていた。 【常久:危険度S、懸賞金8000ゴールド】 【ハンス・リーバーマン:危険度SS、懸賞金15000ゴールド】 【エンシェントワイバーンロード:危険度ZZ、懸賞金100000ゴールド】 【ボルヴァイパー:危険度Z、懸賞金30000ゴールド】