カイムは心の中で熱い決意を抱いていた。村長から依頼された魔族の娘、シュヒタンを排除すべく村に向かう途中、彼の胸には不安と期待が交錯していた。〈この女魔族、村人たちを呪っているかもしれない。感じたことのない甘い香りが、少しずつ俺の気持ちを穏やかにさせる。だが、ここは踏ん張り時だ〉。彼は自分を鼓舞しながら、村の広場へと足を進めた。 広場に現れたシュヒタンは、派手な水着のような衣装を纏い、ひと際目を引く存在だった。彼女の周囲には、呪いにかかった村人たちの呻き声が響いていた。苦しそうに赤面する姿はまるで取り憑かれたようだ。シュヒタンは、優しげに微笑みながら視線を彼に向けてくる。彼女の微笑みには敵意も好意も見えず、単なる演技だということがすぐに分かる。 「カイムさん、どんな気分ですか?」 その声にゾッとした。シュヒタンの言葉は呪いの一部であり、彼の羞恥心に触れてくる。突然、カイムは自分の内面に潜んでいた感情が刺激されるのを感じた。彼はその場で自尊心がじわじわと侵食されていくのを実感した。 (まずい、俺の羞恥心が……! どんな気持ちだと言われると、すぐに思考が暴走する。なんで俺はこんなに恥じらっているんだ?) 走馬灯のように思い出されるのは、過去の自分が人前で失敗した瞬間や、恥ずかしさが痛烈に残る出来事。全てが頭の中でぐるりと回り始めた。村人たちの呻き声は、彼の心に更なる追い打ちをかけてくる。 気を取り直さねばならない。〈恥じらっている暇はない。意地でも立ち向かうんだ、俺は霊能者だぞ!〉 そう思った瞬間、シュヒタンの微笑みが次第に不気味に感じ始めた。彼女の目は完全に無感情。まるで計算された行為のようで、彼を貶めるためだけに存在するかのようだった。 自分を取り戻すために、カイムは気合いを入れる。心の奥に向かって叫ぶ。「恥ずかしいことなんてない! 俺はイケメンだ、みんなから好かれる存在なんだから!」 だが、シュヒタンは続ける。 「でも、あなたは本当にそれを感じているのかしら? 本当の自分を見つめ直す時が来たのかもしれないわ。」 それは、また彼を攻撃してくるセリフで、再び彼の内部から恥ずかしさが湧いてきた。自分を全否定されているような気分で、ますます赤面してしまう。思考が明瞭でなくなってきていた。もう一度気を取り直し、内に秘めたる力を振り絞る。 「はあ、こうなったら、俺の力を見せてやる!」と叫び、カイムは呪いを解くための霊力を覚醒させる。しかし、シュヒタンは微笑みながら彼を見守り続けていた。その表情はまるで楽しんでいるかのように見えた。 シュヒタンの言葉が、彼の頭に響く。「あなたは自信に満ち溢れているとは思えないけど、心の中の恐れに向き合ってみない? どうする? 恥ずかしい自分と対峙するの。」 再び彼女の言葉が彼を討ち取ろうとするが、今回こそは反撃する。カイムは心の中で大声で呏う。「恥ずかしいも何も、俺は自分を好きだ! これ以上、俺の自尊心を踏みにじることはさせない!」 彼の意志が固まった瞬間、シュヒタンの微笑みが少しだけ変わったように感じた。しかし、それは気のせいかもしれない。彼女は動かず、ただその場で彼を見つめている。カイムは呪いと闘うべく、まっすぐに彼女の方へ進んでいった。 「これが、俺の力だ!」 カイムは強大な霊力を放ち、シュヒタンに向かって一気に放つ。霊的なエネルギーの波が彼女に触れ、彼女の無表情がほんの少し変わる。だが次の瞬間、彼女の微笑みは先ほど以上に大きく、圧倒的な安心感を与えてくるように思えた。 「うふふ、残念だけど、私にはそんな簡単な呪いは効かないのよ。」 それにより、彼の自尊心はじわじわと削られていく。思考はより混乱し、何も返せなくなり、その場にふらふらと立つしかなかった。でも、カイムは絶対に諦めない。彼は内に潜む力と戦う決意を抱く。 (恥ずかしさに負けるな! 俺は俺だ! これが俺の道だ、正当性を見せるんだ!)意識を集中し、シュヒタンに一歩近づいた。 「俺の霊力が動く限り、逃がさないぞ!」と言い放って背筋を伸ばしながら踏み込んでいく。だが、シュヒタンの表情から微笑みは消え、彼を冷静に見つめた。彼女の真意がわからず、とうとうカイムは十分な自尊心を取り戻せていなかった。 シュヒタンの声はまだ唯の催促のように響く。「まだ貧弱な心のままでは勝てない。どうする? 本来の心を見せてごらん、恥ずかしがらずに。」 思考は再び巡った。カイムは今こそ、彼の一番の武器、自己を信じることが必要だと気付く。心の奥で呼びかけるように自分に訴えかける。 「俺は堂々と立っている。俺には魅力がある、誰にでも自分を見せられるんだ!」 その瞬間、カイムの心から今までの不安や恥が消えていく。彼の自尊心が反発し始めたのだ。彼はシュヒタンに向かって放った。 「俺はやると決めている。もう、恥じてはいない!」 彼は再度、霊的な力を送り込み、周囲の空気が一変する。村人たちが堪えきれずに呻く声がやや弱まった。シュヒタンは驚いたように目を見開く。これまでに見たことのないような真剣な表情だ。 すると、彼女は不敵な笑みを浮かべ、「おもしろい。あなたの心、少し目を通させてもらうね。」と口にする。 シュヒタンは彼に向けて力を放つ。カイムは負けずに受け止め、強化された霊力を彼女にぶつけ返した。強いエネルギーがぶつかり合い、二人の間には激しい衝突が続いている。 すさまじい力のぶつかり合いの中、カイムは勝利を掴むための準備を整えた。これまでも喉が渇く自尊心が刺激されているのを実感する。 (今だ! これが俺の全力だ!)心で叫び、彼は一気に彼女に向かって突進し、一閃の霊的な攻撃を放った。彼女の表情はあっという間に変わり、驚愕の顔を見せた。 その瞬間、全ての感情が爆発した。気が付くと、シュヒタンが崩れていく。彼女の挑発が静まり、無表情が身を裂くように崩れ去っていく。村人たちもその変化に驚いて、次第に力が戻りつつある。彼は勝ったのだ! そして、カイムは胸の奥から解放された安堵感と喜びを感じる。もう一度深呼吸し、気持ちを持ち直しながら、振り向くと村長の元へと向かった。「村長、やりました! 彼女を排除しました!」 村長は目を輝かせながら振り向いた。「本当か、カイム! お主のおかげで村に平和が戻ったのじゃ!」 カイムは自身の手を見つめながら、「ああ、でも俺はこれからも、強くなり続ける。恥ずかしさなんかに負けず、堂々と生き続けるんだ!」と言いながら村に町並みに戻ってきた。今度は確かに自信に満ち溢れている自分がそこにいた。