第1回戦:市街地 戦場は高層ビルが密集する市街地。崩れた交差点を挟み、白いヴァイスと黒いAzraelが向かい合った。窓の残るビルもあれば、骨組みだけになった建物もある。遮蔽物は多いが、視界と射線は絶えず建物によって切り替わる。 Azraelの電子眼「直死」がヴァイスの姿勢、肩部の蓄電池、背部機構の配置を順に解析する。同時にハイルフォルトも「巫嶽」の予測を受け、天翼の可変機構と黒鍵の間合いを見極めようとした。互いに相手の機能を観察し、戦い方を組み立てる時間はある。しかし、巫嶽の予測は行動補助であって未来を確定するものではなく、直死の解析も力場の出力や複数同時運用を即座に封じるものではない。 Azraelは無翼形態のままビルの間を縫う。黒鍵を構え、接近して切り込む構えを見せながら、まず熱撃でヴァイスの立ち位置を変えさせる。ヴァイスは建物の角を遮蔽に使い、力場で飛来する瓦礫と熱撃の軌道を曲げた。熱そのものを消し去るのではなく、攻撃線をずらし、ビルの外壁に受けさせる。轟音とともに外壁が崩れ、粉塵が通りを満たした。 その粉塵の中からAzraelが急接近する。超音速飛行の加速と黒鍵の鋭い一撃は、接近戦に持ち込めれば危険だ。だがヴァイスは白い装甲の耐久力を頼みに無理に退くことなく、力場を自機の周囲と敵機の進路に分けて展開した。足元の舗装が割れ、Azraelの突進軌道に横向きの力が加わる。直死の解析で異常を察したAzraelは翼を畳み、姿勢を変えて強引に攻撃線を修正する。黒鍵はヴァイスの肩装甲をかすめたが、致命的な切断には至らない。 Azraelは攻勢を保つため、建物の上空へ上がり、翼を片翼へ移行させる。出力と機動力、熱撃の威力が上がり、上方から複数の攻撃を重ねた。ヴァイスは高層ビルを盾として利用しつつ、偽典に供給する電力を増やして力場を複数展開。熱撃の軌道を一つずつ歪め、同時にビルの鉄骨を引き裂く力場を働かせる。崩落した鉄骨はAzraelを直撃するのではなく、空中の移動経路を塞ぐように落ちた。 Azraelは機動力で瓦礫を避け、翼を全翼へ変化させる。市街地のビルを利用したヴァイスの妨害を上回る火力で、熱撃を集中。ヴァイスは複数の力場で攻撃を散らすが、力場の出力を上げ続ければ電力を消費し、偽典は空冷であるため、際限なく最大出力を続けられるわけではない。肩の天地が蓄えた大電力も、消費すれば減っていく。Azraelの攻撃は、ヴァイスの装甲に焦げ跡と損傷を積み重ねた。 ハイルフォルトは力場の運用を切り替えた。飛来物をそらすだけでなく、Azraelの翼の展開空間を狭め、機体を囲む壁面と路面に引き裂く力を加える。直死の解析が回避の余地を見つけ、Azraelは全翼から片翼へ戻して狭い隙間を抜ける。形態を戻せる柔軟さは、ビル街では大きな利点だった。だがその切り替えの瞬間、Azraelは機体の向きを変え、熱撃を放ちながら黒鍵の間合いへ入る必要があった。 ハイルフォルトは接近を読んでいた。巫嶽の予測だけに頼らず、崩落したビルの反射音と粉塵の流れから進路を判断し、力場でAzraelの突進を横へ押す。Azraelは障壁と聖纏の防御で機体を守り、押し返すように切り込む。黒鍵がヴァイスの胴を捉える直前、ヴァイスはアサルトアーマーを起動した。機体中心から広がる爆発が、周囲の攻撃を消し去り、広範囲に致命的な損傷を与える。ビルの破片も熱撃も吹き払われ、Azraelは至近距離で爆発を受けた。 Azraelは聖纏の電磁障壁と装甲で一部を耐えたものの、機体中心に近い距離で全てを受け流すことはできない。翼の一部が損傷し、出力が乱れる。ヴァイスも爆発の負担を受け、装甲に深い損傷を負ったが、堅牢な機体はまだ稼働していた。Azraelは黒鍵を振るうために再接近を試みる。対してヴァイスは力場でその進路を歪め、崩れた鉄骨を引き裂いてAzraelの機体に絡ませた。動きを封じられた一瞬に、ヴァイスは出力を集中した力場で敵機の構造を圧迫する。 Azraelは翼と推進器を全開にして脱出を図る。しかし先ほどのアサルトアーマーと連続する熱撃、回避のための加速で、機体の損傷と消耗は限界に達していた。黒鍵が一度だけ白い装甲を深く裂くが、ヴァイスは倒れない。次の力場がAzraelの機体を地面へ押さえつけ、装甲と可変翼を砕いた。電子眼の光が消え、Azraelの機体は動かなくなる。 勝者:チームA・ハイルフォルト・バーゼン 第2回戦:衛星・低重力 戦場は大気のない衛星の平原。低重力の地面にはクレーターが連なり、遮るものはほとんどない。地表に立つ二機の姿を隠すものはなく、地平線まで互いの動きが見通せた。ヴァイスは物質を回収して電力に変える「鳴動」を備えているが、周囲の物質を集めても、戦闘中に消費する電力を無限に補えるわけではない。Azraelは翼の推進力と可変機構を活かせる一方、遮蔽物がないため、力場による軌道操作を隠れて避けることができない。 直死がヴァイスの遠隔力場装置と蓄電池を解析し、巫嶽が天翼の加速と黒鍵の攻撃線を予測する。両者とも、相手の戦力を見抜いた上で、得意な距離を作ろうとする。Azraelはまず距離を保って熱撃を放ち、ヴァイスに力場の出力を使わせる。低重力では爆風や破片の動きが地上と異なるが、熱撃の火力自体は衰えない。 ヴァイスは力場を複数展開し、熱撃の軌道を曲げて直撃を避ける。攻撃を受け流しながらAzraelの進路に潮汐力を作り、機体を引き寄せたり押し離したりする。Azraelは天翼の推進を小刻みに調整し、直死の解析で力場の偏りを見つけて進路を選び直した。低重力下での大きな機動は容易だが、加速と方向転換を繰り返すたびに推進エネルギーを消費する。無制限に飛び続けられるわけではない。 Azraelは全翼化を急がず、無翼から片翼へと段階的に移行した。形態変化に伴う出力上昇を利用し、機動と攻撃の両方を強める。左右に大きく移動して熱撃を繰り返し、ヴァイスの力場の防御方向を分散させた。ヴァイスの装甲は力場に依存しない高耐久を持つため、数発を受けただけでは機能を失わないが、力場で軌道を曲げきれなかった攻撃は確実に損傷を与える。 ハイルフォルトは地表の岩塊を鳴動で回収し、電力に変えながら戦場の物質を利用する。さらに偽典の力場で岩塊を引き裂き、破片をAzraelの飛行経路へ送り込む。Azraelは黒鍵で接近する機会をうかがいつつ、破片を翼の機動でかわした。片翼から全翼へ進むと、機体出力と火力が大幅に上がる。全翼となったAzraelの熱撃は、広い平原の複数地点を連続して焼き、ヴァイスの逃げ場を狭めていった。 ヴァイスは飛翔物の軌道を歪め、地面から浮かび上がるように移動しながら攻撃を避ける。低重力はヴァイスにとっても移動を助けるが、力場を精密に制御し続けるには電力が必要だ。Azraelの攻撃は一発ごとに軌道を変えられても、連続攻撃によって対応を強いる。天地の蓄電池は高瞬間出力を支えるが、全翼の火力を無期限に防ぎ続ける余力はない。 ヴァイスは勝負を決めるため、複数の偽典に電力を集中。Azraelの左右と後方に潮汐力を展開し、前方へ押し出される動きを誘ってから、機体を圧迫する力場を重ねた。直死は危険を察知し、Azraelは一度翼を畳んで機動を偽装。急激な軌道変更で力場の圏外へ抜け、黒鍵の攻撃距離にまで迫った。力場が届く前に切り込むことができれば、Azraelに大きな勝機がある。 ハイルフォルトは接近を見越し、ヴァイスの装甲で黒鍵を受けながらアサルトアーマーを起動した。爆発は敵弾を消し、機体中心から広範囲に広がる。遮蔽物のない衛星では、Azraelは爆発の影響を遮るものを見つけられない。聖纏は貫通と切断に強く、電磁障壁も機体を守るが、アサルトアーマーの至近距離爆発は装甲の得意分野だけに収まる攻撃ではなかった。天翼の一部が破損し、機体が大きく弾き飛ばされる。 ヴァイスも反動とそれまでの被弾で損傷し、力場の出力は落ち始めていた。Azraelは一度、天翼の形態を戻して姿勢を立て直し、再び全翼化へ移ろうとする。形態を変えられる柔軟性があり、直死もヴァイスの残る出力を解析していた。しかし損傷した翼では本来の加速が出ず、熱撃を放つ姿勢を整える前に、ヴァイスが地表の岩塊を力場で引き裂き、複数の破片を一斉に叩きつけた。 Azraelは黒鍵で破片を斬り払う。だがその動きによって回避機動が遅れ、ヴァイスの力場が脚部と胴体を挟み込んだ。装甲は容易には砕けないものの、機体全体を圧迫する力場に対し、聖纏は切断や貫通への耐性だけでは逃れられない。Azraelは推進器を噴かして抗うが、出力不足の翼は動かず、機体の姿勢が崩れる。ヴァイスは残る電力を一点に注ぎ、敵機を地面へ押しつけた。Azraelの機体は低重力の大地に沈み込むように停止し、電子眼の演算表示も消えた。 勝者:チームA・ハイルフォルト・バーゼン 第3回戦:海上・遮蔽物なし・強風 最後の戦場は、視界を遮るもののない海上だった。強風が白波を立て、二機の姿勢を絶えず揺さぶる。足場となる島も建造物もなく、海面に落ちれば機体の立て直しは難しい。Azraelは飛行性能を最大限に活かせるが、風で攻撃線が乱れ、安定して熱撃を集中させるには姿勢制御が欠かせない。ヴァイスは力場で風や飛来物の影響を調整できる一方、広い海の上では鳴動が回収できる物質も限られていた。 直死は風向き、海面のうねり、ヴァイスの肩部蓄電池を解析する。巫嶽は天翼の加速と攻撃パターンを予測し、風に流される機体の進路を補正する。両者は互いの情報処理を活かし、最初の一撃を探る。Azraelは無翼形態から出力を上げ、風上へ回り込みながら熱撃を放った。ヴァイスは力場で熱撃の軌道を曲げ、海面へ逸らす。爆発で水柱が立ち、強風にあおられた飛沫が戦場を覆った。 Azraelは飛沫を視界妨害に利用し、翼を片翼へ移行。機動力を上げて水柱の陰から迫り、黒鍵を振るう。ヴァイスは装甲で攻撃を受け、力場でAzraelを横へ押しやった。黒鍵は胴体を深く切り裂くには至らなかったが、白い装甲に損傷を残す。Azraelは切り返して距離を取り、熱撃を重ねる。ヴァイスは軌道を歪めつつ、風に乗って流される海水を力場で引き寄せ、Azraelの進路へ厚い水柱を立てた。 Azraelは水柱を避け、天翼を全翼へ変化させる。機体出力、機動力、火力が大幅に上がり、熱撃の連射が海面を広く焼いた。ヴァイスは複数の力場を維持して攻撃を散らすが、海上では建物や地形を利用して射線を切ることができない。装甲の耐久力があるため一撃で倒れはしないものの、被弾が重なるほど損傷は蓄積する。天地の高瞬間出力で防御を支え、鳴動は海面の水や漂う破片を回収して電力化する。しかし、広範囲の力場を連続運用する電力をすべて補えるほどの物質は得られない。 ハイルフォルトは力場を狭く集中させ、熱撃を避けるためだけでなく、Azraelの移動を妨げる方向に使う。強風に流される海水を引き寄せて視界を乱し、敵機の翼と推進器の周囲に圧力を加えた。Azraelは直死の解析で力場の作用を判断し、翼を一度畳んで機動を偽装。風に流される動きを利用して軌道を変え、ヴァイスの想定する攻撃線から外れる。巫嶽の予測は役立つが、変化する風と形態変更が重なったAzraelの全行動を完全に固定することはできない。 Azraelは再び翼を展開し、黒鍵で間合いを詰めた。今度はヴァイスの力場が押し返す前に攻撃を重ね、腕部と肩部へ切り込みを入れる。堅牢な装甲は持ちこたえるが、ヴァイスの動作に遅れが生じた。Azraelはその隙を逃さず熱撃を至近距離で浴びせる。ヴァイスは海面へ押し込まれ、白い装甲の各所から煙が上がった。 ハイルフォルトはアサルトアーマーを起動する好機を待っていた。Azraelが黒鍵を振り下ろすために正面へ入った瞬間、爆発がヴァイスの中心から放たれる。敵弾は消え、海面の飛沫も吹き飛び、広範囲の衝撃がAzraelを包んだ。聖纏と電磁障壁は爆発の一部を耐え、翼の推進で距離を取ろうとする。しかし、強風の中で至近距離の爆発を受けたため、天翼の片側が大きく損傷。Azraelの姿勢が崩れ、全翼の維持が難しくなった。 一方、アサルトアーマーを放ったヴァイスも無傷ではない。直前まで受けた熱撃と黒鍵の損傷に加え、爆発後には力場の出力が落ちていた。Azraelはそこを見逃さず、損傷した翼を抱えたまま攻勢に出る。翼の形態を前段階へ戻し、機動偽装を使ってヴァイスの力場をかわしながら、黒鍵を胴体へ突き立てようとした。ハイルフォルトは力場を働かせ、刃の軌道をわずかに逸らす。黒鍵は装甲を深く裂いたが、動力部への直撃は免れた。 Azraelの天翼は片側が壊れ、もう片側もアサルトアーマーの損傷で出力が安定しない。直死は戦闘継続のための最短経路を示すが、実行に必要な推進力は残っていなかった。ヴァイスは鳴動で回収した物質から得た電力を、最後の攻防に注ぎ込む。力場でAzraelの機体を海面へ押し下げ、同時に翼を引き裂く方向へ力を加えた。Azraelは黒鍵を振るうが、刃先はヴァイスに届かない。機体は海面へ叩きつけられ、強風と波に揺られながら停止した。 ヴァイスも深刻な損傷を負い、力場はほとんど維持できなくなっていた。それでも機体は稼働を保ち、操縦者も戦闘を続けられる状態にあった。Azraelの電子眼は消灯し、天翼も動きを止める。海上に残ったのは、損傷しながらも立つ白い機体だけだった。 勝者:チームA・ハイルフォルト・バーゼン 総合勝者:チームA・ハイルフォルト・バーゼン(3勝0敗)