第一試合:市街地—ビル群と高強度遮蔽 崩れかけた高層ビルの谷間で、ゾルダートの操縦席に座るエミリオは、頭部に据えたワルサーP38型36mmピストルを誇らしげに構えた。右腕は三本指の作業用マニピュレーター、左手にはモーゼルC96型22mm自動拳銃。腰の弾納には予備弾倉が八つある。撃つ手段はある。だが、右の作業腕では銃を扱えず、頭部銃の照準は機体の向きに強く左右される。エミリオ自身、その不便さを気に留める様子はなかった。 対するレッドインパルスは、戦闘機形態でビルの間を滑るように飛んだ。ジェスターは狭小空間でも機動力を維持する支援AIを使い、建物の配置と風の流れを即座に戦術へ組み込む。左右のR-20連装機関砲を持ち、肩には高誘導遠距離核ミサイル、機体内には超精密ECMを備える。弾薬は無限ではないが、持続供給型ENコアによって長期戦での推進力と稼働力に余裕がある。 エミリオは最初の一撃を狙い、頭部銃を向けた。ビルの角から一瞬だけ見えた機影へ撃つ。弾は外壁を砕き、破片が通りへ降った。レッドインパルスは射線の外へ抜け、反対側のビルに沿って旋回する。ECMによって照準情報は乱れ、エミリオの狙いは機体の動きに追いつかない。無理に正面を向ければ、機体の頭部銃が射線を確保するまでのわずかな遅れが生じた。 レッドインパルスは核ミサイルをすぐには撃たなかった。密集した市街地では爆発が自機の進路を狭め、遮蔽物が互いに干渉する。ジェスターはミサイルを温存し、まずR-20でエミリオを動かす。連装機関砲の弾幕がビルの縁を削り、ゾルダートは壁の陰へ退いた。コンクリートが盾になる一方、逃げ道は限られていく。 エミリオは左手のモーゼルを連射し、窓や壁の隙間から反撃した。弾丸の一部がレッドインパルスの装甲をかすめる。しかし、戦闘機形態は小さな射線を外すように傾き、機関砲の射程と速度を活かして距離を保った。弾倉を交換する間、ゾルダートの攻撃は途切れる。弾を惜しんで撃たなければ当たる機会も減り、撃てば手数が減る。八個の予備弾倉は無視できない量だが、機関砲の継続射撃と比べれば、長期の撃ち合いを支えるものではなかった。 エミリオはビルの内部へ機体を押し込み、敵を狭い空間へ誘い込もうとした。レッドインパルスは支援AIで建物の開口部と天井高を読み、戦闘機形態から亜人型へ切り替えて侵入する。狭い場所で速度を失うことを避け、機体を短く変形させて射線を通した。ゾルダートは遮蔽を背に反転し、頭部銃とモーゼルを同時に向ける。距離が縮まり、エミリオの弾丸が相手の肩装甲に食い込んだが、致命傷には至らない。 レッドインパルスの応答は速かった。R-20の短い斉射が、ゾルダートの左側面を叩く。高強度の壁が一部を受け止めたものの、衝撃は機体をよろめかせ、照準を崩した。エミリオは反射的に頭部銃を撃つ。至近距離の弾は敵の胴体を外れて壁を貫き、反動でゾルダートの姿勢が乱れる。頭部に固定された銃は、腕で構える武器のように柔軟な反動制御ができない。彼の勇気は、機体の構造的な不利を覆せなかった。 その隙にレッドインパルスは建物の反対側へ抜け、亜人型のまま背後を取った。肩のミサイルが一発放たれ、狭い空間を避けるように曲線を描く。エミリオは壁を盾にして機体を動かすが、ECMと高誘導の組み合わせでミサイルは回り込み、退路を塞いだ。ゾルダートはモーゼルを撃ち切る勢いで迎撃を試み、数発がミサイルの近くを通る。それでも弾頭は建物の外壁を突き破って爆発し、爆風と破片が機体の脚部と背面を損傷させた。 レッドインパルスも無傷ではない。先ほど受けた射撃で肩装甲に損傷があり、ミサイルの残弾も減った。しかし、姿勢制御と推進系は維持されている。ゾルダートは立ち上がろうとするが、脚部の損傷と崩れた床が足を取った。エミリオは残った銃弾を撃ち、最後の反撃を試みる。弾丸は瓦礫を砕くにとどまった。 レッドインパルスは接近してR-20を短く撃ち込み、ゾルダートの武装と駆動部を破壊した。エミリオの機体は動きを止め、戦闘続行不能となる。 第一試合の勝者:チームB・レッドインパルス 第二試合:山岳—急斜面と泥沼 山腹には雨水で削られた急斜面が続き、その下には足を取る泥沼が広がっていた。空は低く、雲が尾根にかかる。ゾルダートは二脚の重さを地面に預け、慎重に斜面を下った。エミリオは転倒を避けるため、右手の作業用マニピュレーターで岩をつかみ、左手のモーゼルで周囲を牽制する。頭部のワルサーは正面へ向けたまま、機体ごと敵を探していた。 レッドインパルスは山岳地形を空から見下ろし、戦闘機形態で尾根沿いに旋回した。急斜面と泥は地上機の移動を妨げるが、飛行する機体にとっては足場の制約にならない。ジェスターは雲と起伏による視界の変化を計算し、ECMを稼働させながら高度を調整する。遠距離ミサイルと機関砲のどちらを使うか、地形の遮蔽と弾薬消費を比べていた。 エミリオは相手を待ち伏せするため、岩棚の陰に機体を伏せた。高低差を利用すれば、飛行機体にも頭部銃を当てられると考えたのだ。ジェスターは雲間から一気に降下せず、まず機関砲を斜面へ撃ち込んだ。弾着が泥と小石を跳ね上げ、ゾルダートは潜伏場所を変えざるを得なくなる。飛び散る土砂で視界が悪化したが、レッドインパルスはセンサーとAIで地形を追い、狙いを大きく外さなかった。 ゾルダートは岩棚から飛び出し、頭部のワルサーを敵機へ向けた。急斜面を滑りながら放った一発は、レッドインパルスの主翼に近い装甲をかすめる。機体は軽く揺れたが、飛行性能は失われない。エミリオは続けてモーゼルを撃つ。何発かは相手の進路を横切り、ジェスターに回避を強いた。地形の起伏は射線を遮る一方で、瞬間的に近距離戦へ持ち込む機会も作る。ゾルダートの反撃は、相手に無視できない圧力を与えた。 しかし、地上の足場はエミリオ自身にも厳しかった。後退した脚が泥へ沈み、二脚機体の姿勢が傾く。右の作業腕で岩をつかむものの、腕は銃を持てないため、反撃の手数を増やせない。左のモーゼルは残弾を消費し、予備弾倉の交換には姿勢の安定が必要だった。頭部銃を撃てば反動が機体の向きを乱し、斜面ではその乱れを立て直すのにも時間を要する。 レッドインパルスは戦闘機形態の旋回力を活かし、泥沼の上空を横切った。機関砲の弾幕がゾルダートの頭上と岩棚の縁を削る。高強度の岩は弾を受け止めるが、破片が斜面を転がり、足場をさらに崩した。ジェスターはミサイルを一斉に使わず、まず機関砲で移動を制限する。長期戦向けのEN供給により、上空での機動を続けても推進力を急激に失わない。対してゾルダートには、足場と弾数の両面で時間が敵になっていた。 エミリオは泥に沈んだ脚を引き抜こうとし、機体を斜め上へ向けて頭部銃を撃つ。弾丸は雲の下を抜けるが、ECMと相手の速度に照準が追いつかない。レッドインパルスは射線を外し、尾根の向こうへ回り込む。姿を見失った瞬間、エミリオはモーゼルの弾倉を交換した。装填は済んだが、機体の背後から音が迫る。 レッドインパルスは亜人型へ変形し、斜面に沿って低空で進入した。狭い谷筋でも機動力を保つ支援AIが、地形への衝突を避ける。ゾルダートが振り向くより早く、R-20が短い連射を浴びせた。エミリオもモーゼルを撃ち返し、弾丸が敵の腕部装甲を削る。両者の距離が詰まった瞬間、ゾルダートは機械腕で相手をつかもうとした。だが、ぬかるみが機体の踏ん張りを奪い、指先は装甲をかすめるだけに終わる。 ジェスターは無理な格闘を避け、斜面の横方向へ滑るように抜けた。背後を取ってミサイルを一発発射。高誘導弾は泥沼と岩棚の間を追い、ゾルダートへ迫る。エミリオは頭部銃を撃って迎撃しようとするが、弾丸が弾頭を捉える前にミサイルが脚部近くで爆発した。爆風で機体は斜面を滑り落ち、泥沼の縁に横倒しになる。脚部の駆動が止まり、頭部銃も狙いを定められなくなった。 レッドインパルスは被弾した腕部をかばいながら上空へ離れ、残弾を不用意に使わずに戦闘を締めた。ゾルダートはまだ銃を構えようとしたが、破損した姿勢制御と沈み込んだ脚では起き上がれない。続く短い機関砲射撃で武装と駆動部が破壊され、戦闘不能となった。 第二試合の勝者:チームB・レッドインパルス 第三試合:衛星—低重力 無人衛星の起伏に富む地表で、二機の影がゆっくりと浮かび上がった。低重力はゾルダートの跳躍を助ける一方、着地後の姿勢を乱しやすくする。エミリオは機体の脚を畳み、岩塊を足場にして進んだ。頭部のワルサーと左手のモーゼルを並べ、三本指の右腕で岩をつかむ。ここでは空気抵抗も風も期待できず、弾丸の進路を乱す要素は少ない。狙いさえ定まれば、地上より射撃を当てやすい可能性があった。 レッドインパルスは、低重力に適応するように機体を慎重に推進させた。大気のない環境では、空気層を作る飛行補助の利点は地上ほど期待できない。それでも可変機構と高機動制御、そしてジェスターの精密操縦は失われない。戦闘機形態で大きな加速を行えば慣性が残り、急旋回には推進方向の切り替えが要る。ジェスターはその制約を理解し、短い噴射を重ねて軌道を管理した。 二機は岩塊の間を挟んで対峙した。先に撃ったのはエミリオだった。ワルサーの弾丸が真っ直ぐに飛び、レッドインパルスの機体を追う。ジェスターは噴射で横へ流れ、岩陰へ機体を入れる。続くモーゼル弾も岩肌を削った。ECMは精密な照準情報を攪乱するが、弾丸の軌道そのものを消すものではない。遮蔽を使いながらの射撃は、エミリオにも有効な圧力となった。 レッドインパルスはR-20で岩塊の縁を撃ち、破片を散らした。衛星の低重力では、飛び散った破片がすぐには落ちず、周囲に漂って視界と射線を乱す。エミリオはその隙に岩塊を蹴り、横方向へ大きく跳躍した。予想以上に長く滑空する機体を、作業腕で別の岩に引っかけて止める。無謀な動きではあったが、相手の予測を外す効果はあった。頭部銃を撃ち、レッドインパルスの肩装甲に一発を当てる。装甲が裂け、敵機は進路を変えた。 ジェスターは地形が遮蔽にも危険にもなると判断した。ミサイルは高誘導で強力だが、岩の密集地では自機の移動や誘導経路が複雑になる。そこで機関砲を選び、岩塊の配置を崩すように射撃した。弾薬には限りがあるため無駄撃ちはしない。ゾルダートが次に隠れそうな隙間へ弾幕を集中し、移動先を予測する。エミリオは岩陰から反撃を続けたが、弾倉を交換するたびに姿勢が浮き、作業腕で支え直さなければならなかった。 彼は敵を引き寄せるため、わざと大きな岩の陰から姿を見せた。レッドインパルスが正面へ向いた瞬間、モーゼルの弾をまとめて撃ち込む。弾丸が胴体をかすめ、機体表面に複数の傷を作った。ジェスターは被弾を承知で接近し、亜人型へ変形する。攻撃速度と迎撃防御を重視する形態で、岩場の狭い間隔を抜けて距離を詰めた。ゾルダートはワルサーを向けるが、頭部の固定銃では近距離の高速な角度変化に追随できない。左手のモーゼルを撃ち、敵の胸部へ数発を当てるものの、倒すには至らなかった。 衝突寸前、レッドインパルスのターミナルアーマーが起動した。機体を追従する防壁が一定時間、損傷を大きく抑える。発動に伴うEMP爆発が周囲へ広がり、近距離で対峙していたゾルダートの電子系統と照準が乱れた。アサルトアーマーのような機体中心の致命的な爆発ではなく、ここで働くのは防御性能の飛躍的な向上とEMPの衝撃だ。エミリオの弾丸は防壁に阻まれ、狙いも一時的にずれる。レッドインパルスはその時間を使い、岩塊を背にして姿勢を整えた。 エミリオは距離を取ろうと作業腕で岩をつかむ。だが、低重力では引き寄せた反動で自機も動き、踏ん張りが利かない。EMPで乱れた制御を立て直す間に、ターミナルアーマーは反撃を受け止め続ける。レッドインパルスは防壁を頼みに短い間合いへ踏み込み、R-20をゾルダートの腕部と脚部へ集中させた。弾丸が作業腕を損傷させ、岩をつかむ能力を奪う。モーゼルの残弾はまだあったが、照準が定まらず、当たった弾も防壁を突破できない。 防壁の持続時間は永遠ではない。ジェスターは無闇に撃ち続けず、ゾルダートの移動能力を奪うことに火力を絞った。ターミナルアーマーが弱まるころには、敵機は岩塊のそばで回転し、銃口を安定させられなくなっていた。エミリオは最後に頭部銃を撃った。弾丸はレッドインパルスの装甲を傷つけたが、機体の中枢を損なうほどではない。 防壁の残余を活かして弾道を外したレッドインパルスは、反撃に移った。亜人型から戦闘機形態へ移り、短い噴射で距離を取る。R-20の最後の斉射がゾルダートの脚部と頭部武装を破壊し、機体は制御を失って岩へ衝突した。モーゼルも作業腕も残っていたが、射撃も移動もできない。エミリオの機体は戦闘続行不能となり、レッドインパルスも肩装甲などに損傷を負いながら勝ち残った。 第三試合の勝者:チームB・レッドインパルス 総合結果 第一試合から第三試合まで、いずれもチームBが勝利した。 総合勝者:チームB・レッドインパルス