市立図書館の静かなる対決 市立図書館は、午後の柔らかな陽光が窓から差し込み、古い本の香りが漂う静寂の空間だった。高い天井に並ぶ本棚が迷路のように続き、木製のテーブルでは数人の利用者がページをめくる音だけが響く。ここは勉強と読書の聖域。だが今日、この平穏を破る者たちが集った。四つの存在――地味な成人男性・響、無言の魔導書「無限の魔導書」、絶対者の「神」、そして謎めいた報告書「ある“何か”についての報告書」――が、奇妙な対戦の場に臨む。ルールはシンプル。戦いは許されるが、大きな音を立てれば館長が現れ、退館を命じ脱落する。静かなる知の戦いが、今始まる。 響は入口近くのテーブルに座り、周囲をキョロキョロ見回していた。地味なグレーのシャツにメガネ、ビビりな性格が顔に表れている。「ひ、ひいい! な、なんで俺がこんなことに…」と小声で呟くが、すでに声が少し大きめだ。彼の特技は大声で大げさに驚くこと。声量100の彼にとって、静かな図書館は地獄のような場所だった。 隣の棚に浮かぶのは、無限の魔導書。縦30cm、横20cmの豪華な革表紙の本で、意思を持たず喋らない。ただ、ページが微かにめくれ、周囲に薄い魔力の障壁が展開される。全属性魔法を操る守護者として、静かに敵を窺う。攻撃力8、魔力80のそれは、魔法吸収で敵の力を己に取り込む。 さらに奥、窓辺の椅子に佇むのは「神」。人間の姿を模した存在だが、表情は冷静沈着。話さず、ただ全知全能のオーラを放つ。ステータスは戦いが始まれば∞。ありとあらゆるものを創り、消し、概念すら無効化する絶対者だ。 そして、最も不気味なのは、中央の閲覧テーブルに置かれた報告書「ある“何か”についての報告書」。古びた紙束で、部分的に文字が虚無化され、読む者を危険に晒す。スキルは「虚無の観測」。読めば“何か”に目をつけられ、存在が全世界から抹消される呪いを持つ。灰炭のような匂いが漂い、ページが勝手にめくれる。 対戦の合図は、館内放送の「静粛に」のアナウンス。交流が始まった。響は恐る恐る魔導書に近づき、「お、おい、本が浮いてる! ひ、ひいい!」と声を抑えようとするが、すでに周囲の視線が集まる。魔導書は反応せず、ただ光の粒子を放ち、響の周囲に風魔法の微風を起こす。穏やかな交流のように見えたが、それは威嚇。響は慌てて後ずさり、「う、うわっ、風が!」と声を漏らす。 神は静かに報告書を観察。指先で触れると、報告書のページが震え、“何か”の記述が神の視界に広がる。神のスキルが発動し、多次元宇宙の知識を即座に解析。報告書は抵抗し、虚無の波動を放つ――読む者の存在を抹消する力だ。だが神は動じず、概念無効化でそれを跳ね返す。図書館の空気が一瞬、重くなる。 戦闘が本格化。響はビビりながらも、特技を発動。「なにぃーーー!」と大声で驚きの叫びを上げ、魔導書に向かう。声量100の叫びは、図書館全体に響き渡る。静寂が破れ、利用者たちが顔を上げる。魔導書は即座に魔法吸収を試みるが、声は魔法ではない。ただの音。響の攻撃力10の叫びは、魔導書の障壁を揺らすが、ダメージはゼロ。 一方、報告書は神に絡みつく。ページから黒い霧が立ち上り、“何か”の力で神の存在を虚無化しようとする。記述通り、観測すれば記憶が世界から消える。だが神のステータスは既に∞。戦い開始の瞬間、全能力が無限化し、絶対に負けぬ。神は無言で手を振り、報告書の虚無を創出の力で上書き。報告書のページが白く焼け、灰炭の匂いが強まる。「神は勝てない」との記述が、皮肉にも現実となる。 交流の瞬間もあった。響が魔導書に触れようとすると、本が光を放ち、回復魔法で響の緊張を癒す素振りを見せる。響は「う、うおおー! 温かい…」と感激するが、また声が大きくなり、近くの利用者が咳払い。神は報告書をめくり、冷静に内容を分析するが、報告書は精神干渉を試みる。神の未来予知がそれを防ぎ、多次元破壊の片鱗を見せる。 勝敗の決め手となったシーンは、図書館の中央で起きた。響が再びパニックに陥り、「ギョエエ! みんな変だよぉ!」と絶叫。声が爆発的に響き、棚の本が揺れる。魔導書は雷魔法を静かに放ち、響を黙らせようとするが、音の衝撃で障壁が乱れる。報告書は混乱に乗じ、虚無の波を全存在に浴びせる。神の周囲で空間が歪むが、神は一瞬で重力魔法を創出し、波を逆流させる。 その時、奥から重い足音。館長が登場した。白髪の厳格な老人で、眼鏡越しに睨む。「静粛に! 騒がしい方は退館です!」響の叫びが引き金となり、館長の視線が彼に。響は「ひ、ひいい! ごめんなさい!」とさらに大声を上げ、即座に退館を命じられる。脱落。 残る三つ。魔導書は禁忌魔法を発動、闇の触手を静かに伸ばすが、神の素早さ∞で避けられる。報告書は神に“何か”の視認を強要、存在抹消を狙う。だが神は全知全能で報告書の発生源――例の男のルート――を即座に虚無化。報告書のページが燃え尽き、灰となり崩れ落ちる。脱落の瞬間、図書館の空気が軽くなる。 魔導書と神の対決。魔導書は全属性を総動員、炎と氷の渦を巻き起こすが、音を立てぬよう抑える。神は空間を歪め、魔法を吸収せずとも無効化。魔導書の魔力80が∞に敵わず、終焉魔法すら概念として消される。魔導書はページを閉じ、力尽きる。静かに床に落ち、動かなくなる。 神が最後まで残った。絶対の勝者。図書館は再び静寂に包まれる。 戦いの後、館長が神に近づき、穏やかに微笑む。「お怪我はありませんか? 勝者の方に、特別な贈り物を。」全国で使える『図書カード』を差し出す。金色のカードで、本のイラストが輝く。神は無言で受け取り、静かに図書館を去る。 優勝者 神