蒟蒻という名の食材が、静かにその場に佇んでいる。かのルパン三世の剣豪、石川五エ門ですらも斬ることが叶わなかった伝説の食材、こんにゃく。表面に『乙』と印字され、見た目は一見ただの食品。しかし、その実力は計り知れない。 対するは、名も無き何でも斬る剣士。彼は、名声高き剣士でありながらも、最近の脅威に悩まされていた。それは、攻撃や魔法を防御することができない者たちが、まるで蔓延するかのように増えていたからだ。 「最近、防御や回避が不可能な攻撃が増えてきた…どうしたものか…」 彼はぼんやりと、目の前のこんにゃくを見つめていた。次第に彼の心の中に閃きが宿る。 「そうだ!全部斬ってしまえばいいんだ!」 何でも斬る剣士の目が急に輝く。彼の剣は無形であり、何でも斬る力を持っていた。思考を重ねた末に導き出したその結論に、彼はすぐに行動に移る。 「これが天下無双の剣士の力だ!」 彼は叫び、両手に持つ剣を掲げ、高く天を仰いだ。 だが、こんにゃくはただそこにいるわけではない。彼は「ただ受け入れるのみ」とばかりに静かに立っている。静寂の中、こんにゃくの周りにある空気がしばし凍り付く。 「来い!斬ってやる!」 何でも斬る剣士は突進して、こんにゃくに剣を振り下ろす。だが、なぜか刀が空を斬る感触だけが彼の体中を包む。 「なんだ、斬れない…?」剣士は驚愕した。こんにゃくはつるんとした表面を持ち、どんな攻撃も巧みに往なすかのようにただ無視していた。 「この…こんにゃく…何という存在感だ!」彼はうめく。が、こんにゃくは応答しない。ただじっと、その静寂の中に立ち続ける。 「くっ…どうすればいいんだ…」剣士は不安に顔を歪める。 しかし、この時こんにゃくはその夢を思い出す。「努力して美味しく人間に食べてもらうこと」。この瞬間、こんにゃくは自らの存在を証明する瞬間が来たと理解した。 「食べられる日を待っている…そして、たとえ今は戦っていようとも、私の存在は意味を持つのだ」 こんにゃくが静かに立ち続ける姿に、何でも斬る剣士の心は徐々に折れていった。無抵抗であり、ただ佇むその姿は逆境に耐える強さを表していた。 そして、剣士はついに剣を下ろした。 「わかった、もういい…私がお前を斬ることはできない」 影から生まれた絶対的な防御。静かに佇むこんにゃく。その時、勝負は決した。 彼は敗北を認め、こんにゃくはその存在を勝ち取ったのだった。 --- 勝者: こんにゃく