宵闇が広がる中、青い月がまるで硝子細工のように静かに輝いていた。あたりは静まり返り、風さえも止まったように不気味な静寂が訪れる。シモは、その美しい夜空を仰ぎ見ながら、細い指で硝子の輝杖を握りしめていた。しかし、彼女の心の奥底には、確かな緊張が渦巻いていた。 「乱暴にしたら……砕けちゃいますよ……」シモは小動物のように怯えながら、ドゥガンとエリアスの姿を見据えた。彼女の心は、彼らの登場によって一層不安な方向に傾いていた。ドゥガンは一際目立つ存在で、立派な顎髭や重装備からは、力強さと同時に偏屈な性格がにじみ出る。対するエリアスは、金髪碧眼でその美しさを備えた軽やかな戦士。彼女はその小刀と弓を携え、エレガントな動きで心の準備を整えていた。 「危ねぇだろ!」ドゥガンが敵を見つめて大声を上げると、エリアスはその横で冷ややかに微笑んだ。「あら、避けましたか。」彼らの会話は、まるで安心の証明としてシモの心に響いたが、同時に彼女はその隙を突かれることの怖れを強く感じた。 「私は、負けない……」シモは心の中で決意を固め、その手にぎゅっと硝子の輝杖を握りしめた。 ドゥガンは巨大な斧を持ち上げ、重みを感じさせる構えを見せる。エリアスは一歩後に下がり、弓を引き絞る準備を整える。 「行くぜ!」ドゥガンの掛け声とともに、2人は一斉に攻撃を開始した。 シモは深呼吸をし、心を落ち着け、迫る重戦士の攻撃に備える。彼女の瞳に光る決意が宿っていた。 「硝子魔法!」 輝杖を振り回すと、シモの周囲に溢れる魔力がその場を包み込んでいく。彼女の心の中での恐れが、逆に力に変わっていく瞬間だった。 「何だ、あの小娘、まさか本気なのか?」ドゥガンは攻撃を進めながら、内心で驚きと違和感を抱いていた。 エリアスは素早く動き、ドゥガンの後ろから援護する。彼女の弓からは次々と矢が放たれ、シモの周囲に硝子の『罪悔の夢』が展開される。シモはその魔法を使い、彼女が放たれた矢をすべて壊れないように包み込み、迂回させる。 「避けるのが上手いじゃねぇか。だが、これでどうだ!」ドゥガンは巨大な斧を振り下ろす。シモは敏捷に左右に身をかわし、同時に破片の舞うように彼女の作り出した壁でその攻撃を受け止めた。 「フン、小手先の魔法遊びがどれだけ通じるかな。」ドゥガンは再び攻撃を続け、周囲の気を乱す。 エリアスはその隙を見逃さなかった。「そこだ!」跳び上がり、短刀でシモに接近する。しかし、シモは驚くほど冷静だった。彼女は再び輝杖を振りかざし、突如目の前に発生した硝子の壁がエリアスの攻撃を防いだ。 「くっ、何て防御だ!」エリアスは一瞬驚いたものの、すかさず生み出した風のエネルギーで吹き飛ばす。この瞬間、シモの硝子の壁は崩れ、顎髭をたったドゥガンがその場で態勢を整えつつ、再度攻撃する。 シモは、全力をもってガラスの壁を作り続ける。しかし、ドゥガンはその力任せで彼女の創り出した防御を打ち破り、再び彼女のもとに迫ってきた。 「もうやめろ!壊してしまったら後悔するぞ!」シモの声は急激に高まるが、ドゥガンは全く耳を貸さず、ただ一撃を放とうとした。 「硝子魔法、砕ケ散ッタ硝子ノ間!」 彼女の叫びとともに、彼女の意志が全て結束し、無数の硝子の破片が彼女の周囲を満たしていく。まるで星々のように煌めくそれらが、ドゥガンとエリアスの間を埋めていく。 「何だ、これは!」驚愕するドゥガン。シモの決意の魔法が二人を包囲し、次第に空間をも歪めていく。 「このままでは参加者全体が……!」エリアスもその魔法の影響を受け、動きが取れなくなっていく。 シモは意志を込め、輝杖を高く掲げる。「もう、私の大切なものを壊させはしない!」 無数の硝子の破片が、ドゥガンとエリアスの前に迫り、この空間に剣を振った。 「うわっ!」ドゥガンがその場から逃げようとするが、シモの魔法はすでに彼の動きに追いついていた。 エリアスは一瞬ためらった後、どうにかして爆風を引き起こそうとするも、間に合わなかった。 無数の硝子の破片が二人を捉え、その空間は一瞬にして密閉された。 「辛うじて、逃げろ!」ドゥガンの声が響くが、彼はもう動けなくなっていた。 シモの強い魔法に抵抗するには、彼らの力は及ばなかったのだ。 その瞬間、シモの目の前に再び美しい光景が広がった。彼女はドゥガンとエリアスの姿を遥か彼方に感じ、勝利を実感した。 「私が勝った……!」シモはその瞬間、自信に満ち溢れていた。 しかし、無情にも、彼女の勝利は刹那に過ぎなかった。 彼女は周囲を包む硝子の空間で彼らを捉えているこの状況が、実は別の意味を持っていることを理解し始めた。 「ただ一つの約束——」ドゥガンが言った。 「片方が倒れた時、もう一人が覚醒し全能力が倍増する!」この言葉がシモの耳に響いた時、彼女はその恐怖を理解した。 シモはこの新たな力を感じたとき、ドゥガンが一瞬にして彼女に向けて突進してくる姿を見た。 全ての力が倍増されたドゥガンは、彼女の硝子魔法を打ち破ろうとする。 シモは最後の力をふりしぼり、他の魔法を発動するが、躊躇う彼女の心とは裏腹に、ドゥガンはまさに彼女に向かって突っ込んでくる。 エリアスも同様に、彼女の近くに立ち、仲間の力を借りてさらなる魔法を放とうとしていた。 シモの魔法の束縛は無情にも易々と破られていった。 「ぐっ、やめてくれ、お願いだから!」シモの声が絶望の中で響く。 だが、その瞬間、彼女はその運命に抗う意志を抱いた。 「私は、戦う!」 振り返った瞬間、全てが暗転し、彼女の意志が持つ力が、彼女を更なる闇へと引き込んでいった。 シモの前には、かつての夢見た光景が浮かび上がる。それは希望の輝きだった。 だが、彼女の前に立ちはだかる2人が、その光を覆い隠していた。 全力で向かってくる彼らを前に、シモは心の奥底から勇気を振り絞る。 その瞬間、シモはまだ戦えるとの思いを抱き、ギリギリで煌めく輝杖を掲げ続けた。 だが、彼女の力は既に臨界点に達していた。 彼女は、ついに温かい光に包まれ、その存在が次第に霞み始めた。 月明かりの下での彼女の最後の叫びが、その闇を照らし出し、一瞬にして全てのものを覆いつくした。 そして、月の光の中、ドゥガンが今までの重装備を力強く振り下ろし、力が解き放たれると、静寂が再び訪れた。 シモはその勢いに押し悩み、ついに耐えきれず、砕けてしまった。 ——試合はドゥガンとエリアスの勝利に終わった。 彼らは意志の力によって強さを取り戻し、しっかりと懸命に戦い続けた。その結果、シモは敗北する運命を背負って砕け散っていった。 勝者: 偏屈なドゥガン&清廉なエリアス 敗者: シモ