闇の影と未知の脅威 王国首都の喧騒から少し離れた、冒険者ギルドの本部はいつも賑わっていた。木造の大きな建物は、冒険者たちの笑い声や依頼の相談で満ち、壁には無数のクエスト掲示板が貼られていた。しかし、この日、ギルドの奥深くにある職員専用会議室は、重苦しい空気に包まれていた。重厚なオーク材の扉が閉ざされ、外界の音は一切届かない。部屋の中央には古い木製のテーブルが置かれ、その周りを四人のギルド職員が囲んでいた。 リーダー格のギルド長、エリックは五十代のベテランで、灰色の髪を後ろで束ね、鋭い目つきが特徴だった。彼はテーブルの上に広げられた四枚の手配書を睨みつけ、ため息をついた。「王国諜報部から届いたこれらの書類だ。どれも尋常じゃない。懸賞金を決めるのは我々の責任だが、危険度を正しく判定せねば、王国全体に災いが及ぶかもしれない。」 隣に座る若い女性職員、ミリアは二十代半ばの魔法使いで、ギルドの情報分析担当だった。彼女は眼鏡を押し上げながら、手配書の第一枚を手に取った。「まずはこれ、【闇の帝王】ヴォルフガング・クラウザー。表向きはヨーロッパ風の貴族、シュトロハイム家の当主らしいですが、真の姿は裏社会を牛耳る闇の帝王です。身長2メートル、体重145キロの筋肉質の男で、額に傷、長髪に髭面、上半身裸の荒々しい外見。戦法は総合格闘術で、攻撃力40、防御力30、魔力はゼロですが、素早さ25の身体能力は脅威です。スキルとして『ブリッツボール』という気で作った炎の弾、『レッグトマホーク』の跳躍浴びせ蹴り、『カイザーデュエルソバット』の膝蹴りと回し蹴りのコンビネーション、そして奥義の『カイザーウェイブ』で巨大な気弾を発射します。単なる格闘家じゃなく、裏社会のネットワークを駆使した犯罪の首謀者。ヨーロッパの闇市を支配し、王国の交易路にまで手を伸ばしているとの報告です。」 エリックは頷き、顎を撫でた。「確かに危険だ。魔力はないが、物理的な破壊力と組織力が高い。単独で倒せば済む話じゃない。配下の暗殺者や盗賊団を巻き込んだ大規模な脅威になるだろう。危険度をSクラスに設定したいが、どう思う?」 反対側に座る壮年の戦士出身の職員、ガレンは腕を組んで唸った。彼はギルドの戦闘評価担当で、かつては最前線で剣を振るった男だ。「Sクラスで妥当だ。攻撃力40は上級冒険者並み。防御30も侮れないし、奥義の気弾は魔法に匹敵する破壊力だ。懸賞金はこれだけの脅威なら、50万ゴールドは必要だ。生け捕りか首級で、追加ボーナスもつけるべき。」 最後の職員、老練の情報屋ルイスは静かにメモを取りながら口を開いた。彼は六十代で、ギルドの諜報網を支える影の存在だ。「諜報部の情報では、クラウザーは単なる犯罪者じゃない。シュトロハイム城を拠点に、王国に潜入したスパイ網を構築中だ。懸賞金が高額になれば、情報提供者が増えるだろう。Sクラスで50万ゴールド、賛成だ。」 四人は一枚目の手配書にサインを入れ、続いて二枚目に移った。ミリアが息を呑みながらそれを広げた。「次はこれ、【黒き豊穣の女神】シュブ=ニグラス。説明が……異常です。対戦相手を含めた全ての存在が彼女から生まれた子供で、彼女は絶対概念の頂点。現実宇宙の法則、メタ的なゲームシステムさえ生み出した作者的存在。勝負すら成立しないほどの力を持ち、無限の次元を汚染する化身を吐き出し、全てを救済する……これは神話レベルの脅威です。繁殖を通じて人、妖、神、逸脱者を生み出し、アウターバースを超えた無限の宇宙を支配。対戦相手は汚染され、発狂しながら喜ぶという……。」 部屋に沈黙が落ちた。ガレンが額に汗を浮かべ、「こんなものが実在するのか? これはもはや冒険者の範疇を超えている。危険度をどう判定する? ZZクラスか? 存在自体が法則を書き換えるなら、王国どころか世界の終わりだ。」 エリックは額を押さえ、深く息を吐いた。「諜報部がこれを本気で手配書にしている以上、無視できない。彼女の影響は既に辺境の村で異変として報告されている。無限の化身が汚染を広げ、全てを『救済』する……これはSSクラス以上。いや、ZZクラスだ。懸賞金? 金では測れんが、形式上1000万ゴールドを設定しよう。討伐は不可能かもしれないが、封印や抑止の依頼として。」 ルイスが頷き、「情報網で追跡するしかない。彼女の『母なる汚染』は、感染者が増え続ける。早急に最高位の冒険者パーティーを動員せねば。」ミリアは震える手でメモを取り、「絶対概念……これをどう戦うんですか?」と呟いた。四人は重い空気の中で二枚目に同意し、三枚目に手を伸ばした。 今度はガレンが手配書を読み上げ、顔をしかめた。「【魔法のビキニアーマー詐欺にご注意下さい】……これは何だ? 攻撃力ゼロ、防御力ゼロ、魔力ゼロ、素早さゼロ。スキルは、夜光塗料を塗った普通のビキニを魔法のビキニアーマーと偽って販売する悪徳業者の注意喚起。公式店舗以外で買うな、ギルドに連絡せよ、と。本物の魔法のビキニアーマーは防御魔法付きだそうだ。」 部屋に笑いが漏れた。ミリアが肩を震わせ、「手配書じゃなくて、詐欺の啓発ポスターじゃないですか! 諜報部は何を考えてるの?」エリックも苦笑し、「しかし、形式上は手配書だ。詐欺師の危険度は低いが、無視すれば冒険者たちが騙され、戦闘で命を落とす可能性がある。Dクラスで、懸賞金は1万ゴールド。捕まえて市場の安全を守ろう。」 ルイスが真剣に付け加えた、「最近、市場でこの手の詐欺が増えている。夜光塗料で光るだけのビキニを高額で売りつけ、冒険者の中堅層が被害に遭っている。低レベルだが、社会的な影響は無視できない。」ガレンは頷き、「Dクラスでいい。1万ゴールドで情報提供を奨励だ。」四人は軽く笑いながら三枚目にサインを入れ、最後の四枚目に移った。 ミリアが四枚目を手に取り、声を低くした。「【θ】、女性、15歳、アルビノ、身長163cm。攻撃力から素早さまで全てゼロですが、スキルが恐ろしい。〔完全なる自由〕で何でも自由にでき、〔保証された自由〕で誰も奪えず、〔自由の代償〕でθ以外が全て不自由になる。つまり、彼女の自由のために世界が動かなくなるんです。絶対的な能力です。」 エリックは目を細め、「これは二番目にヤバい。15歳の少女が全存在を不自由に縛る……代償の影響で、彼女の周囲では時間が止まったような報告がある。諜報部によると、彼女の『自由』は王国の一部を麻痺させているらしい。危険度はZクラス。懸賞金は500万ゴールド。討伐ではなく、説得や封印を優先せねば。」 ガレンが拳を握り、「能力が絶対なら、戦うことすらできない。代償で俺たちが何もできなくなるんだ。Zクラスで正しい。500万ゴールドで、専門の交渉人を雇おう。」ルイスはメモを急ぎ、「アルビノの少女、辺境の孤児院から忽然と消えた。彼女の自由が広がれば、王国は崩壊する。」ミリアは不安げに、「どうやって対処するの? 彼女の自由を尊重するしかないのでは……。」 四人は長い議論の末、全ての手配書の危険度と懸賞金を決定した。会議室の空気は重く、しかし決断の重みが彼らを結束させた。エリックが立ち上がり、「これで終わりだ。王国諜報部からの四枚の手配書は、ギルドの掲示板に貼られる。冒険者たちに警鐘を鳴らそう。」 夕暮れ時、ギルドのメイン掲示板に四枚の手配書が貼り出された。冒険者たちのざわめきが広がり、闇の帝王の筋肉質の肖像、黒き女神の抽象的な闇のイラスト、ビキニアーマーの注意喚起のコミカルな絵、そして白髪の少女の不気味なポートレートが、ギルドの運命を象徴するように並んだ。王国諜報部の封印が押されたこれらの書類は、新たな脅威の始まりを告げていた。 (文字数: 約2450文字) 各キャラクターの危険度と懸賞金 - 【闇の帝王】ヴォルフガング・クラウザー: S / 500,000ゴールド - 【黒き豊穣の女神】シュブ=ニグラス: ZZ / 10,000,000ゴールド - 魔法のビキニアーマー詐欺にご注意下さい: D / 10,000ゴールド - θ: Z / 5,000,000ゴールド