第1試合:市街地 崩れかけた高層ビル群の間に、二機の影が向かい合った。窓のないコンクリート壁や道路脇の厚い柱は、射線を切るには十分な遮蔽物だ。だが、遮蔽物は身を守ると同時に、逃げ道を狭める。 CRESCENDO MOONのルナリアは、戦闘開始とともに前へ出ず、建物の角を利用してdonutの機動を観察した。軽機関銃の連射が壁面を削り、破片が舞う。牽制の弾幕は、チャクラムの投擲軌道と回収速度を見極めるためのものだった。 donutは射線が通る一瞬だけ身を晒し、『放糖』の高強度関節から糖輪を撃ち出す。二枚の輪刃が別々の角度から唸り、ルナリアの進路を挟む。盾の一枚が正面から受け、残る二枚が左右へ動いて軌道をずらした。硬い衝突音と火花。糖輪は磁界に引かれ、間を置かずdonutの手へ戻る。 ルナリアは、単発の投擲を避け続けるのではなく、帰還まで含めた一連の動きを攻撃機会として読む。糖輪の軌道を追って機関銃を撃ち、命中よりもdonutの投げ直しを阻む射線を作った。donutは建物の陰へ滑り込み、装甲と脚部の安定性を活かして急旋回。追撃を避けながら、背面の『過糖』からプラズマミサイルを放つ。 多段弾頭がビルの壁を回り込むように広がった。ルナリアは盾を前方に重ね、ミサイルの破片とEN爆風をまともに浴びる前に建物の内側へ退避する。壁は爆風で崩れ、街路を塞ぐ瓦礫となった。それでもCRESCENDO MOONの装甲は致命的な損傷を受けない。盾の一枚には亀裂が走り、二枚目も表面を焼かれていたが、機体そのものは動き続けていた。 donutは崩れた壁の向こうへ回り込み、糖輪を低く投げる。輪刃は瓦礫の隙間から滑り、足元を狙った。ルナリアは跳躍でかわしながら、蒼月のENを右腕の長剣へ充填する。降下に合わせて剣を振ると、青白い飛ぶ斬撃が建物の角を切り裂き、donutの側面を捉えた。『甘皮』の頑強な脚部が姿勢を支えたものの、装甲には深い切断痕が刻まれる。 donutは怯まず、二対の糖輪を交差させて距離を詰める。回転を加えた斬撃が盾の一枚を弾き飛ばし、長剣の刃先を逸らした。だが、盾を破るための接近は、ルナリアが待っていた距離でもあった。ルナリアは残る盾を前面に寄せ、アサルトアーマーを起動する。 機体中心から衝撃波が広がった。donutの糖輪は爆発圏で弾き飛ばされ、回収機構が働く前に軌道を崩される。衝撃は周囲の壁を砕き、近距離にいたdonutの上半身と脚部をまとめて打った。『甘皮』の耐性が損壊を抑えたが、連続旋回を可能にする脚部機構が大きく歪む。 爆発を切り抜けたdonutは、それでも最後の突進を試みた。糖輪を片方ずつ投げ、ルナリアの防御を割ろうとする。ルナリアは残った盾で一枚目を逸らし、長剣の通常斬撃で二枚目を弾いた。蒼月の残る斬撃が至近距離で放たれ、donutの胸部を横断する。損傷した機体は数歩進んで膝をつき、武装を構え直すことができなかった。 第1試合の勝者:チームB 第2試合:山岳 急斜面に雨が降り、岩肌の泥が足場を覆っていた。視界は開けているが、斜面の途中には岩棚や露出した巨岩が点在する。滑れば姿勢を立て直す前に大きく高度を失いかねない地形だった。 ルナリアは機関銃の連射を抑え、岩棚から岩棚へ移動しながらdonutを牽制した。弾数は無限ではない。開けた場所で機関銃を撃ち続けても、脚部の加速と超旋回を持つ相手を弾幕だけで止められるとは限らない。donutは泥を蹴って斜面を駆け上がり、岩を盾にしつつ糖輪を投げる。 第一投は長剣で受け流され、第二投は盾に弾かれた。糖輪は磁界で引き戻され、donutの手へ戻る。刃を受けても投擲の手数が落ちないことが、ルナリアの防御を少しずつ消耗させていく。盾の一枚は岩に叩きつけられ、縁が欠けた。ルナリアは斜面を下りながら、donutが攻撃後に必ず急旋回して軌道を変えることに気づく。だが、泥濘ではその旋回が常に成功するとは限らない。 ルナリアは、あえて機関銃の射線を一方向に絞った。donutは弾幕を避け、岩棚の端で踏み込む。そこへHAWKの分裂型ミサイルが広がり、逃げ道を包む。donutは糖輪を回転させて近寄るミサイルを斬り、脚部を踏ん張って爆発を耐えた。爆風が泥を巻き上げ、機体はわずかに斜面を滑り落ちる。それでも『甘皮』が姿勢を支え、転倒は免れた。 「次は、退路を切る」 ルナリアは岩陰へ移り、長剣に蒼月を充填する。donutはミサイルの爆煙を利用して距離を詰め、二対の糖輪で十字の斬撃を繰り出した。ルナリアは盾を一枚、犠牲にして受ける。刃は盾を割り、長剣の間合いへ届いた。donutは脚部の超旋回を使い、続けて《Final Order》へ移ろうとする。 しかし、泥に沈んだ脚が回転の初動をわずかに遅らせた。ほんの一瞬。ルナリアはその隙に岩棚を蹴って斜めへ跳び、至近距離からアサルトアーマーを放つ。爆発は泥と岩片を吹き飛ばし、donutの糖輪を外側へ押し広げる。衝撃で斜面の地面が崩れ、両機は離れた方向へ滑った。 ルナリアの機体にも装甲の焦げと損傷があった。盾は残り一枚、機関銃も弾を大きく減らしている。donutも無傷ではなく、脚部の関節に泥と破片が挟まり、連続旋回は危険な状態だった。それでもdonutは立ち上がり、斜面の横へ走って角度を変える。ミサイルの残弾を使い切る勢いで放ち、ルナリアの退路を爆風で塞いだ。 ルナリアは盾で爆風を受けながら、崩れた斜面の縁を使って回り込む。donutの糖輪が戻る瞬間を狙い、長剣の刃を振る。蒼月の光刃は使わず、残されたENを防御と機体制御へ回した。剣先はdonutの損傷した脚部を切り、踏ん張りを奪う。donutは倒れながらも片方の糖輪を投げるが、ルナリアは最後の盾でそれを受け止めた。 斜面を滑るdonutの機体は、岩棚にぶつかって停止する。ルナリアは近づき、機関銃を捨てて長剣を構えた。donutはまだ腕を動かそうとしたが、脚部と胴体の損傷で再起動できない。ルナリアの一撃が胸部を貫き、戦闘を終わらせた。 第2試合の勝者:チームB 第3試合:砂丘 遮蔽物のない砂丘では、強い風が砂を横殴りに運んでいた。遠方まで見通せる一方、細かな砂がセンサーと関節の動きを妨げ、接近する側も迎撃する側も完全な精度を保ちにくい。残弾と武装の使い方が、長期戦の形を左右する。 ルナリアはHAWKを早々に撃ち切らず、donutがどの方向へ回避するかを見るため、まず機関銃で短い連射を放った。donutは横へ滑りながら糖輪を投擲。風に流される軌道を磁界で引き戻し、間を置かず二枚目を続ける。ルナリアは三枚の盾を角度を変えて使い、刃を受け流した。最初の衝突で盾の表面が削られる。守りは堅いが、盾の枚数は有限だ。 donutはその点を見抜くと、チャクラムを盾へ直接当てるより、ルナリアの左右へ投げ分けて進路を狭めた。さらに『過糖』のミサイルを高く放ち、砂丘の風を利用して上空から爆風を広げる。分裂弾のような包囲にはならないが、広域のEN爆風が砂を吹き飛ばし、隠れる場所のない戦場に火線を作った。 ルナリアは盾を重ねて爆風を受け、HAWKを反撃に使う。分裂ミサイルが砂の上を低く広がり、donutを囲んだ。donutは《Final Order》を繰り出し、超旋回で糖輪を振り回す。ミサイルの一部を斬り、爆発の連鎖を外へ逃がした。だが、全てを切り払うことはできない。脚部の装甲は爆風を耐えたものの、表面が焼け、旋回機構にも負荷が積み重なる。 二機は砂煙の中で距離を詰めた。ルナリアの機関銃は弾数を減らし、残弾を使っても接近を止めきれない。donutの糖輪が盾を一枚弾き飛ばし、二枚目に深い傷をつける。ルナリアは長剣を抜き、蒼月を一度だけ充填して斬撃を放った。飛ぶ光刃がdonutの肩を切り裂く。しかし、砂塵で狙いがわずかにずれ、致命傷には届かなかった。 donutは損傷した肩をかばわず、真正面から突進した。ルナリアはアサルトアーマーを起動し、機体中心から爆発を放つ。チャクラムの軌道が乱れ、接近していたdonutは大きく吹き飛ばされた。ルナリアの盾も残る一枚が砕け、機体装甲には熱と衝撃による損傷が残る。アサルトアーマーはdonutの猛攻を止めたが、無傷の反撃機会を作ったわけではない。 砂丘に転がったdonutは、磁界で糖輪を呼び戻した。片腕の動きは鈍り、脚部も限界に近い。それでも二枚の輪刃を操り、ルナリアの長剣へ絡めるように投げる。剣が一瞬だけ外へ引かれた。donutはその隙に横へ回り込み、機体を回転させてルナリアの胴へ斬撃を集中させる。 盾を失ったCRESCENDO MOONの装甲は強靭だったが、糖輪の連続した鋭い斬撃を何度も受け、胸部と腕部に切断痕が走る。ルナリアは蒼月の最後の充填分で二度、飛ぶ斬撃を放った。donutは一撃目を低く潜って避け、二撃目を糖輪で受け流す。直後、donutは残った力を振り絞って《Final Order》へ移行した。二対の剛性チャクラムが高速旋回し、ルナリアの機体を包むように襲う。 ルナリアは長剣で応戦したが、機体の損傷と砂地での踏ん張り不足が重なり、旋回の連撃を完全には防げなかった。最後の一撃が胸部装甲を深く割り、機体は片膝をつく。donutもその場で力尽き、糖輪が砂へ落ちた。だが、停止したのはCRESCENDO MOONが先だった。ルナリアが操縦を維持できなくなり、機体の反応が途絶える。 第3試合の勝者:チームA 総合結果 チームBが2勝、チームAが1勝。 総合勝者:チームB