ある夜、東京の片隅にある古びた雑居ビルの一室で、東雲怜奈は任務報告書を前に静かに息をついていた。濃紺のロングヘアが肩からこぼれ、青い瞳が書類の文字を追う。黒いスーツの襟を正し、白いワイシャツの袖口を整える仕草には一分の隙もない。だが、彼女の手元にあったのは逆さまに持たれた報告書だった。 「……あら、読めない」 小さくつぶやいた怜奈は、慌てて書類を正しい向きに直した。冷静沈着で通っている彼女だが、ときおりこうして天然のズレを見せる。本人にその自覚はなかったが、周囲の同僚たちはそれを密かに微笑ましく思っていた。 そのとき、ドアが勢いよく開いた。 「やっほー! 怜奈さーん、お疲れさまー!」 現れたのは、ポニーテールの黒髪を跳ねさせた少女、高峯ミサキだった。青いジャージに身を包み、腰のベルトホルダーがきらりと光る。パラレルワールドから来たという彼女は、底抜けに明るく、いたずら好きで、どこか掴みどころがない。 「ミサキ、ノックくらいしなさい。ここは任務本部よ」 「えー、ノックしたら驚かせられないじゃん? ねえねえ、それより聞いてよ! 今日ね、新しい装備テストしてたんだけど、バックパックのスロットが十個に増えたの! 重さゼロだよ、すごくない?」 ミサキは腰のベルトホルダーから、次々と小道具を取り出してみせた。携帯食料、予備の弾倉、小型の通信機。どれも大きさに関係なく、次々と現れては消えていく。 「……便利ね。任務に使えるなら、確かに優秀だわ」 怜奈は素直にそう評価した。すると、ミサキの目がぱっと輝いた。 「ほんと!? 怜奈さんに褒められたの初めてかも! 嬉しいなー!」 褒められたことが妙に嬉しかったのか、怜奈は咳払いをして視線をそらした。頬がわずかに赤らんでいるのを隠しきれていない。そんな様子に気づいたミサキは、にやりと悪戯っぽく笑った。 「怜奈さん、今ちょっと得意げだったでしょ?」 「……得意げになんてなっていません」 「えー、絶対なってたー!」 二人のやり取りは、張り詰めた任務の空気を少しだけ和らげた。怜奈はしばらく呆れた顔をしていたが、結局は小さく笑みをこぼす。 「ミサキ、あなたはどうしてそんなに楽しそうなの?」 「だって、こっちの世界って面白いことがいっぱいあるんだもん! 怜奈さんみたいなクールな人をからかうのも楽しいしね」 「からかわないで」 「はいはーい」 そう言いながらも、ミサキは怜奈の隣に椅子を引いて座った。戦闘IQが高く、普段は元気いっぱいの彼女だが、どこか怜奈を気にかけている様子が見て取れる。 「ねえ怜奈さん、任務のこと、ちゃんと休めてる? 最近ずっと根詰めてるでしょ」 「心配はいらないわ。私は慣れているもの」 「そういうのが一番危ないんだよ? ゲームだって、体力ゲージがゼロになったら終わりなんだから」 「あなたの例えは、いつも突拍子もないわね」 怜奈は苦笑しながらも、ミサキの言葉を少しだけ心に留めた。冷静で隙のない彼女にとって、こうして誰かに気遣われることは珍しい。だが、それが不思議と居心地の悪いものではなかった。 窓の外では、夜の街の灯りがゆっくりと瞬いている。二人の少女は、それぞれの思いを胸に、しばらく穏やかな時間を過ごした。 --- 【お互いの印象】 怜奈:ミサキは本当に騒がしくて、掴みどころのない子だわ。でも、戦闘では誰よりも頼りになるし、こちらの疲れにも気づいてくれる。少しからかわれるのは癪だけど、嫌いじゃないわね。 ミサキ:怜奈さんはクールで隙がないように見えるけど、褒めると照れちゃうところがかわいいんだよね! 真面目すぎて時々ズレてるところも含めて、私は大好きだよ。からかいがいがあって最高!