冒険者ギルドの影の協議 王国が管理する冒険者ギルドの本部は、賑やかな街の中心に位置していた。木造の大きな建物は、冒険者たちの笑い声や依頼の喧騒でいつも活気づいている。しかし、この日は違った。ギルドの奥深く、職員専用の会議室は静まり返っていた。重厚な扉の向こうで、四人の職員が円卓を囲み、緊張した面持ちで手配書を広げていた。彼らはギルドのベテランたちだ。ギルドマスターの代理を務める中年男性のエドガー、情報担当の若い女性リリア、戦闘評価の専門家である壮年のドレイク、そして財務を司る慎重派のマリア。今日、彼らの手に渡ったのは、王国諜報部から直々に届けられた四枚の手配書だった。 エドガーはため息をつきながら、手配書の束をテーブルに置いた。「王国諜報部からの緊急依頼だ。こいつら四人を、ギルドの掲示板に貼り出して懸賞金をかけろという。詳細はこれだけ。危険度を評価して、適切な金額を設定するんだ。軽く見くびるなよ、みんな。諜報部の連中が動くってことは、ただの盗賊じゃないはずだ。」 リリアは緑色の瞳を輝かせ、手配書の第一枚をめくった。そこには奇妙なイラストが描かれていた。巨大なトンボのような機械のシルエット、空に浮かぶその姿は不気味だった。「まずはこれ、ボンバー・ドラゴンフライ。AIによる機械音声で話すらしい。外見は巨大なトンボ型空爆兵器だって。開発者が虫好きだったからトンボなんだってさ。機動性が高いけど、対空装備はないし、装甲が薄い。武装は対地爆弾と空爆。一撃離脱戦法が得意で、スキルは『リリース・ザ・ボム』。攻撃力30、防御力15、魔力0、魔法防御力10、素早さ45。空中戦では不利だって。」 ドレイクは腕を組み、眉を寄せた。「ふん、機械兵器か。空から爆弾を落とすなんて、街中じゃ厄介だな。機動性が高い分、捕まえにくい。防御が低いのは弱点だが、地上の冒険者じゃ対空手段が限られる。危険度は高めだ。SS級くらいか? 懸賞金は、捕獲の難易度を考えて50000ゴールドはどうだ。」 マリアは計算機を叩きながら首を振った。「高すぎるわ、エドガー。ギルドの予算を考えないと。でも、確かに脅威ね。空爆兵器が野放しになったら、王国の交易路が壊滅する。40000ゴールドで抑えましょう。次行きましょう。」 二枚目の手配書をリリアが広げた。中性的で細身のアンドロイドの描写。銀色のポニーテールに緑のメッシュ、緑の瞳、機械的な四肢。胸部に緑の菱形コア、光る緑十字の髪飾り。服装は銀色サイバースーツに白衣。「バルベット・グレイ。一人称は『私達』、無性別で家事が得意だって。冷静で合理的だけど愛嬌がある。口調はやや機械的で淡々、でも感情豊か。攻撃力40、防御力25、魔力0、魔法防御力0、素早さ35。スキルは即死・消滅・能力低下を無効化。技はグレイエッジで斬撃、グレイブラストでエネルギー波、グレイガードで防御、グレイジャックで機械を乗っ取り。必殺技はグレイアサルト・シグマ、回転突進だって。」 エドガーは目を細めた。「アンドロイドか。耐性が強力だな。即死無効なんて、魔法使い泣かせだ。機械をジャックできるなら、ギルドの施設すら脅かす。戦闘力もバランスいい。S級でいいだろう。懸賞金は30000ゴールド。」 ドレイクが頷いた。「同意だ。グレイジャックが厄介。味方のゴーレムを乗っ取られたら終わりだ。A級じゃ足りないな。」 マリアはメモを取りながら、「合理的ね。次はこれよ。」三枚目の手配書は、美しい魔族の女性の肖像。桃色の長髪、気高い表情、白色半透明の翼に宝石が散りばめられ、長身で白のエンパイアドレスに金ネックレス。ガルバ大陸チラニア国を統治した魔族だという。「グリシール。女性の美麗な魔族、武術を主に使う良家のお嬢様。攻撃力0、防御力0、魔力0、魔法防御力0、素早さ0。でもスキルが特殊。宝石の抱擁で翼の宝石が魔法を吸収、食べると魔力増加。宝石はすぐ再生、視界共有で死角なし。舞踏宝打で攻撃を躱し打撃、宝壁で宝石壁生成、身体宝石化で硬化。武術中心の戦い方ね。」 リリアが息を呑んだ。「ステータスはゼロばっかりだけど、これ実力ゼロじゃないわよね。魔法吸収と視界共有で、どんな敵も翻弄しそう。統治者だった魔族よ。危険度はZ級かも。懸賞金は60000ゴールド必要よ。」 エドガーは考え込んだ。「Z級は過大評価か? でも、魔族の良家で武術の達人。宝石の能力がチート級だ。SS級で45000ゴールドにしよう。捕まえるのに大規模な部隊が必要だ。」 ドレイクが拳を握った。「ああ、舞うように攻撃を躱すなんて、近接戦が苦手な俺たちには地獄だ。魔法使いも吸収されるしな。」 最後の手配書をマリアが手に取った。奇妙なイラスト、メンダコのような種族のユーチューバー。陰気で優しい性格、属性は草。「まめんちゃだこ。攻撃力20、防御力30、魔力0、魔法防御力0、素早さ50。職業ユーチューバー、種族メンダコ。特性はお茶ばらまき、得意は心を読む。称号は唯一の動物ユーチューバーだって。」 部屋に沈黙が落ちた。リリアがくすりと笑った。「ユーチューバー? 手配書に載るようなヤツが? でも、心を読む能力は情報戦で脅威ね。素早さ50は速いし、防御30でタフ。草属性のお茶ばらまきって、何よそれ。」 ドレイクが肩をすくめた。「陰気で優しい性格だってよ。戦う気あんのか? でも、心を読む奴はスパイ向きだ。王国諜報部が狙うのもわかる。危険度はB級で十分。懸賞金10000ゴールドだ。」 エドガーは皆の意見をまとめ、頷いた。「よし、決定だ。ボンバー・ドラゴンフライはSS級、40000ゴールド。バルベット・グレイはS級、30000ゴールド。グリシールはSS級、45000ゴールド。まめんちゃだこはB級、10000ゴールド。これでギルドの冒険者たちが動くだろう。王国諜報部の連中が届けたんだ。軽く扱うなよ。」 協議は二時間以上に及び、細かな議論が交わされた。ボンバー・ドラゴンフライの空爆能力については、過去の機械兵器事件を振り返り、機動性の高さがどれほど捕獲を難しくするかを熱く語った。バルベット・グレイのアンドロイド耐性は、魔法無効の恐怖を強調し、グリシールの宝石スキルは魔族の伝統的な脅威として警鐘を鳴らした。一方、まめんちゃだこの心読みは、意外な盲点として笑いを誘いつつも、情報漏洩のリスクを指摘した。マリアは予算のバランスを何度も計算し、エドガーは公正さを保つために再確認を繰り返した。リリアは諜報部の意図を推測し、ドレイクは戦術的な弱点を列挙した。 ようやく合意に達した四人は、手配書に危険度と懸賞金を記入した。会議室の空気は重く、しかし使命感に満ちていた。エドガーが立ち上がり、「これで終わりだ。掲示板に貼り出せ。冒険者たちに知らせるんだ。」と命じた。 ギルドのメインホールに戻ると、賑わう冒険者たちの視線が集まった。四枚の手配書は、慎重に掲示板の最上段に貼り付けられた。王国諜報部の影が、ギルドに新たな風を吹き込んだ瞬間だった。 【ボンバー・ドラゴンフライ: SS級, 40000ゴールド】 【バルベット・グレイ: S級, 30000ゴールド】 【グリシール: SS級, 45000ゴールド】 【まめんちゃだこ: B級, 10000ゴールド】