王国が管理する冒険者ギルドの最深部。一般の冒険者が立ち入ることのできない、重厚な黒檀の扉に囲まれた『職員専用会議室』。そこには、王国が誇る四人の精鋭職員が集まっていた。 円卓の上に置かれているのは、王国諜報部から極秘裏に届けられた四枚の手配書。それぞれが想像を絶する異能や技術、あるいは破壊力を有する存在であり、その危険度を正確に査定し、妥当な懸賞金を決定することが彼らの任務であった。 【出席職員】 1. ギルド長:バルガス(男性) - 口調:「~であるな」「~だろう」 - 来歴:元・王国騎士団長。厳格かつ合理的。経験に基づいた直感的な危険察知能力に長ける。 2. 査定官:エレナ(女性) - 口調:「~ですわ」「~かしら」 - 来歴:元・宮廷魔術師。理論的で冷徹。魔力波形やスキルの構造を分析し、数値化することに心血を注ぐ。 3. 調整役:カイ(男性) - 口調:「~っすね」「~じゃないっすか」 - 来歴:元・潜入工作員。現場主義。実戦での対応策や、捕縛の現実的な可能性を検討する若手。 4. 記録官:ミラ(女性) - 口調:「~です」「~と考えられます」 - 来歴:王国図書館の元司書。博識。古今東西の魔物や兵器の文献に精通し、情報を整理する。 バルガスが重々しく口を開いた。 「さて……諜報部がわざわざ持ってきたこの四枚。どれも常軌を逸している。まずは一枚目から検討しようか」 ミラが最初の手配書を提示する。そこには『ニュクス』という名と、底知れぬ闇を操る女神であるとの記載があった。 「……神格の類です。権能『絶対暗夜』。五感を遮断し、月齢に応じて魔力が無限に膨れ上がるとあります」とミラが報告する。 エレナが眉をひそめた。「五感の完全喪失、かつ実体のない幻影の使役。これは単なる魔法の域を超えていますわ。状態異常が効かず、飛行も可能。攻略法がほぼ見当たりません。正攻法で挑めば、冒険者は闇の中で互いに斬り合うことになるでしょうね」 「ノリが軽い性格らしいっすけど、中身は化け物っすね。このレベルの存在を捕まえられる人間がこの国にいるのか?」とカイが肩をすくめる。 バルガスが顎を撫でた。「神を相手にするなど正気ではないが、放置すれば世界が静寂に包まれる。危険度は最高クラス、懸賞金は国家予算を削ってでも設定せねばなるまい」 次に、血に塗れた異形の姿が描かれた二枚目の手配書が提示された。『殺戮兵器 サンズ DELUXE』。 「見るからに不吉な外見です。破壊衝動に突き動かされ、死なず、止まらず、全てを破壊するまで動き続ける」とミラが淡々と説明する。 「防御・バリアを完全に無視する物理攻撃、そしてあらゆる攻撃を弾くバリア。さらに『ガスターブラスター』なる広域殲滅攻撃。……論理的に言って、生存戦略が『破壊』に特化しすぎていますわ」とエレナが戦慄する。 「物理以外は効かない、という特性が最悪っす。魔術師を並べても無駄だし、盾役を置いても貫通される。これはもはや兵器ではなく『災害』ですよ」とカイが苦々しく呟いた。 バルガスが険しい表情で断定した。「不死身に近く、防御不能の攻撃を持つ。単体での殺傷能力において、右に出るものはいないだろう」 三枚目の手配書に切り替わる。そこには見たこともない鋼鉄の鳥、『F-15UE アルティメットイーグル』の姿があった。 「これは……魔導具ではなく、未知の文明による『機材』のようです。SuPMCという組織の所有物とのこと」とミラが解説する。 「速度マッハ2.6。我々の認識できる速度域を遥かに超えていますわ。さらにAESAレーダーなる探知機により、敵は一方的に位置を把握され、超長距離から撃ち抜かれる」とエレナが分析する。 「空を飛んでるだけで、地上の人間には見えないところからミサイルが降ってくるってことっすか。無理ゲーすぎる。対空魔法を張り巡らせても、この速度で突撃されたら貫通されるでしょうね」とカイが呆れる。 「個体の戦闘力よりも、その『システム』と『速度』が脅威だ。一個の機体が軍隊一つ分に匹敵する。戦術的な危険性は極めて高い」とバルガスが結論づけた。 最後の一枚。それは鈍色の巨体を持つ超重戦車、『V-Gt6 バルカング』であった。 「自律型の超重戦車。重量225トン。速度は極めて遅いですが、その防御力は絶望的です」とミラが報告する。 「魔力はゼロ。しかし、159mm砲という物理的な暴力。正面装甲はほぼ貫通不能。魔法防御がないため、高威力の魔術であれば突破できる可能性がありますが……」とエレナが考察する。 「いや、相手は225トンの鉄の塊っす。じわじわ近づいてきて、正面からぶっ放されたら、城門だろうが何だろうが粉砕っすよ。背面を狙えばいいっすけど、自律機能で向きを変えられたら終わりだ」とカイが指摘する。 「鈍重ではあるが、正面からぶつかった者に勝ち目はない。単純な破壊力と堅牢さ。ある種の絶望を体現した兵器と言えるな」とバルガスが締めくくった。 四人の職員は、互いの顔を見合わせ、深い溜息をついた。今回の依頼は、単なる「指名手配」ではなく、「人類への警告」に近い。 「……決まりだな。それぞれに妥当な、そして絶望的な額を提示しよう」 バルガスが最後に判を押し、四枚の手配書はギルドの職員室を出て、広場にある掲示板へと運ばれた。そこに貼られた四枚の紙は、見る者全てに戦慄を与える、王国史上最高額の懸賞金が記されていた。 * 【査定結果】 名前:ニュクス 危険度:ZZ 懸賞金:100,000,000ゴールド 名前:殺戮兵器 サンズ DELUXE 危険度:Z 懸賞金:80,000,000ゴールド 名前:F-15UE アルティメットイーグル 危険度:SS 懸賞金:50,000,000ゴールド 名前:V-Gt6 バルカング 危険度:S 懸賞金:30,000,000ゴールド (これら四枚の手配書は、ギルドの掲示板に厳粛に貼り出された)