闘技場の炎と鋼の激突 砂塵が舞い上がる広大な石造りの闘技場。外壁は過去の激戦で大破片となり、場内に散乱している。灼熱の太陽が照りつけ、観客席からは野太い歓声が響き渡る。中央の実況席では、マイクを握ったごつくて荒々しい実況のおっさんが立ち上がり、拳を振り上げて全力で名乗りを上げる。 「オラァ! 皆さんご存じのこの俺様だああ!! ごつくて荒々しい実況のおっさんだぜええ!! 審判も兼ねるこの俺が、今日も血と汗と火花の嵐を届けるぞおお!! さあ、チームAのユーカリ対チームBのフリーム! 自然の再生力か、鋼の破壊力か! 開始だああ!!」 実況席の左側に座るのは、樹木生態学の権威、Dr. エコ。穏やかな目をした中年男性で、ユーカリの専門家だ。彼はマイクに寄り添い、簡潔に自己紹介する。「私はDr. エコ、フトモモ科ユーカリ属の生態に詳しい者です。ユーカリの再生力と火災適応を解説します。」 右側には、モビルスーツ工学の教授、Prof. メカ。白髪の厳つい老人で、フリームのような機動兵器の設計に精通している。「Prof. メカだ。VPS装甲と粒子砲のメカニズムを専門に、フリームの技術的優位性を分析する。」 ゴングが鳴り響き、闘技場の砂地に二つの影が現れる。チームAのユーカリは、巨大な樹木の化身のような存在だ。高さ15メートルほどの幹が屹立し、青緑の葉が風に揺れる。根は地中深くに張り、枝葉からは微かなテルペンの香りが漂う。花言葉「再生」「新生」を体現するかのように、傷ついても即座に芽吹く気配を纏っている。一方、チームBのフリームは全高28.9メートルの鋼鉄の巨神。光沢あるVPS装甲が陽光を反射し、バックパックからスラスターの低いうなりが漏れる。頭部にメガ粒子砲、両手にビームライフルを構え、脚部のクローが砂を抉る。 「スタートだああ!! ユーカリが根を張って陣を固めるぜええ!! フリームはスラスター噴射で一気に距離を詰めてくるぞおお!!」実況のおっさんが叫ぶ中、戦闘が始まった。 ユーカリはまず、砂地の中央に根を深く沈め、幹を安定させる。葉から放出されるテルペンが空気に混じり、周囲の空気がわずかに引火性の気配を帯びる。Dr. エコが頷きながら解説を始める。「ユーカリの強みはあの葉のテルペンだ。引火性が高く、山火事を誘発しやすい。これは自然界での生存戦略で、周囲を焼き払いながら自身は燃えにくい幹で耐える。繁殖に適した環境を自ら作り出すんだ。対して、弱点は機動性の低さ。根を張ると動きが鈍るよ。」 対するフリームは、超高火力スラスターを全開にし、砂煙を巻き上げて突進する。全備重量53.8トンの巨体が、信じられない速さでユーカリに迫る。Prof. メカが眼鏡を光らせて言う。「フリームのステータスは常に5倍だ。出力、装甲、耐久、全てが通常の5倍。VPS装甲はビームや物理攻撃を分散吸収する最新技術で、ユーカリの火災攻撃などものともしない。だが、フルバーストの9秒チャージは隙を生む弱点だな。」 フリームのビームライフルが火を噴く。青白い粒子ビームが砂地を焦がし、ユーカリの幹に直撃! 表面の樹皮が蒸発し、黒焦げの煙が上がる。「ビームライフル二丁の連射だああ!! ユーカリの幹が焼け焦げるぜええ!!」実況が熱を帯びる。ユーカリは怯まず、根から栄養を吸い上げ、傷口から新たな芽を吹き出す。葉が激しく振動し、テルペンを大量放出。空気が熱を帯び、闘技場の空に火の粉が舞い始める。 「ほう、ユーカリの再生力だ。根に蓄えた栄養で即座に修復する新生の花言葉通りだな。コアラが食べる数種の葉のように、毒性で敵を遠ざけるが、火災誘発は強力なカウンターだ。」Dr. エコが感心する。ユーカリは枝を広げ、周囲の空気を振動させ、テルペンを濃密に拡散。砂地の破片に火花が散り、小さな炎がぽつぽつと発生する。闘技場は徐々に火の海の予感を漂わせる。 フリームは高速移動で回避し、背部粒子砲4門を展開。バックパックが変形し、ビームが四方からユーカリを包囲射撃する。「背部粒子砲のフル展開ぞおお!! 小惑星も貫く威力でユーカリを蜂の巣にだああ!!」砂地がガラス化するほどの熱線が、ユーカリの枝葉を焼き払う。葉が燃え上がり、炎が幹に広がる。ユーカリは耐え、燃え盛る葉からさらにテルペンを放ち、火勢を増幅させる。炎がフリームの脚部クローに迫る。 Prof. メカが眉を寄せる。「フリームの機動性は抜群だ。核融合炉の動力でスラスターが高速飛行を可能にし、戦闘補助OSが照準を完璧にする。隠し腕やファンネルも未使用で余裕がある。だが、この火災環境はVPS装甲の熱分散を試す。ナノ粒子放出でビーム反射はできるが、物理火災は苦手だぞ。」 ユーカリは炎を味方につけ、根を伸ばして砂地を這わせる。破片の外壁に絡みつき、火を伝えながらフリームの足元を狙う。幹が赤く輝き、再生の力が頂点に達する。「ユーカリの根攻めだぜええ!! 炎を纏ってフリームのクローを封じるぞおお!!」実況が興奮する。フリームはミサイル付きシールドを展開し、根を吹き飛ばす。爆炎が上がり、闘技場は煙と砂嵐に包まれる。 フリームの頭部バルカンが回転し、弾幕を浴びせる。ユーカリの葉が千切れ飛び、テルペンが爆発的に燃え上がる。巨大な火柱が立ち、観客席まで熱波が届く。Dr. エコが声を上げる。「ユーカリの悪点が露呈した。火災を起こしつつ自身も燃えるリスクだ。原産地のオーストラリアで大半を占める樹木だが、制御不能の火は自滅を招く。対して、木材や精油としての利用価値は高いが、戦場では再生の限界がある。」 フリームはフルバーストの準備に入る。9秒のチャージ中、背部粒子砲が展開し、全兵装が輝く。ユーカリは最後の賭けに、枝を鞭のように振るい、対艦刀のような鋭い枝でフリームのシールドを叩く。ガキン! と金属音が響き、シールドに亀裂が入る。「ユーカリの枝鞭攻撃だああ!! フリームのチャージを妨害するぜええ!!」 だが、フリームのOSが即応。隠し腕が飛び出し、ビームサーベルを抜いて枝を斬り飛ばす。電磁波拡散が発動し、周囲の空気が焼け焦げる。ユーカリの幹が蝕まれ、根が引き抜かれ始める。Prof. メカが断言する。「フリームの強みは多武装のフルバーストだ。高火力メガ粒子砲とファンネルで全方位攻撃。ステータス5倍で耐久も上回る。ユーカリの火災はナノ粒子で反射され、VPS装甲が守る。弱点のチャージ時間も、機動性でカバーしたな。」 9秒が経過。フリームの全兵装が一斉解放! メガ粒子砲、背部砲、ライフル、バルカン、ファンネルがユーカリを飲み込む。闘技場は光と爆炎の渦に。ユーカリは幹を燃やし尽くされ、根が砂に沈む。再生の芽すら出せず、崩れ落ちる。「フルバースト炸裂だああ!! ユーカリが木っ端微塵ぜええ!! 勝負ありだぞおお!!」実況のおっさんが絶叫する。 審判のホイッスルが鳴り、戦闘終了。砂地は焦土と化し、煙が立ち込める。フリームはスラスターを収め、静かに佇む。実況席でDr. エコが感想を述べる。「ユーカリは見事な再生力を発揮したが、火災の規模が自身を追い詰めた。900種以上の多様性は自然の奇跡だが、機動兵器相手には限界があった。新生の可能性を秘めつつ、今回の敗北は教訓だ。」 Prof. メカが頷く。「フリームの技術は圧倒的だった。核融合炉とVPS装甲のコンビネーションで、環境適応も完璧。ステータス5倍のチート級性能が勝因だ。弱点のチャージを活かされなかったのは、OSの優秀さゆえ。次戦も期待できる。」 観客の歓声が闘技場を揺らし、今日の激戦は幕を閉じた。