冒険者ギルドの影なる協議 王国首都の喧騒から少し離れた石造りの建物、王国管理の冒険者ギルド。その一角に、職員専用の会議室があった。重厚なオーク材の扉が閉ざされ、室内は柔らかなランプの光に照らされている。壁には古い地図や過去の英雄たちの肖像画が掛けられ、机の上には羊皮紙の書類が散らばっていた。今日、この部屋では四人のギルド職員が集まり、深刻な表情を浮かべていた。彼らは王国諜報部から届けられた四枚の手配書を前に、懸賞金の額を協議する任務を負っていた。 リーダー格の職員、エルドリックは中年のベテランで、灰色の髭を蓄え、鋭い目つきが特徴だ。彼はギルドの危険度評価担当で、数々の脅威を査定してきた男だった。隣に座るのは若い女性職員のミリア。彼女は情報分析の専門家で、眼鏡越しに書類を睨んでいる。向かい側にはガルド、屈強な体格の元冒険者で、戦闘力の評価を任されていた。最後に、年配のセリナがいる。彼女は魔法関連の脅威を専門とする魔導士上がりで、慎重な物言いが持ち味だ。 「さて、皆さん。王国諜報部から届いたこの四枚の手配書……これらはただ事ではないようです。」エルドリックが低い声で切り出した。彼は机の中央に四枚の羊皮紙を広げた。それぞれに、詳細な記述と粗いスケッチが記されている。ファトゥム・ギャン・ブラー、常久、リヴァイアサン、五つ星・シェフクレス。名前だけでも異様な響きがする。 ミリアが最初に手を挙げた。「まず、ファトゥム・ギャン・ブラーから始めましょう。この人物……いえ、魔法使いのようです。ステータスを見ると、攻撃力5、防御力10と低めですが、魔力50、魔法防御力15、素早さ20。問題はスキル、『パルプンテ』というランダム効果の呪文です。効果一覧が恐ろしい……敵味方全員のHPが1になる流星、混乱、マヒ、MPゼロ、死者蘇生、会心一撃、敵全体200ダメージ、敵砕散、自爆……何も起こらない場合もありますが、不確定要素が多すぎます。」 ガルドが腕を組んでうなずいた。「戦闘でこいつがいると、味方まで巻き添えを食らう可能性が高い。予測不能だから、危険度が高いな。SS級以上だと思うぜ。」 セリナが首を振った。「いや、ZZ級の領域ですわ。この魔法は戦局を一瞬でひっくり返す。敵が逃げ出すほどの恐ろしいものを呼び出したり、ドラゴンに変身したり……王国全体を脅かす可能性があります。懸賞金は最低でも5000ゴールド。いや、もっと必要かも。」 エルドリックがメモを取りながら言った。「同意です。危険度ZZ。懸賞金、8000ゴールドに設定しましょう。次は常久。」 ミリアが次の手配書をめくった。「常久、男、冷静沈着、古風な口調の好青年。軍服姿で、短髪。スキルは『戦術指揮』で味方全体を鼓舞。武装は長剣と拳銃。攻撃力25、防御力20、魔力0、魔法防御力5、素早さ25。『断影斬』という剣技と、『百花繚乱』の連続射撃(最大5発)。軍人の家系で、戦略の秀才だそうです。」 ガルドが笑みを浮かべた。「こいつは指揮官タイプだな。単独じゃ脅威じゃないが、部下を率いれば大軍を動かす。冒険者パーティーを統率されたら厄介だ。」 セリナが付け加えた。「魔力ゼロなので魔法耐性は低いですが、素早さと攻撃力が高い。S級で十分かと。懸賞金2000ゴールドくらいで。」 エルドリックがうなずいた。「しかし、王国諜報部の情報では、彼が反乱を企てている可能性がある。味方を増やせば脅威度が上がる。危険度S、懸賞金3000ゴールドとしましょう。」 一同が次の手配書に目を移した。リヴァイアサン。スケッチには青い鱗の巨大な蛇のような龍王が描かれ、300mの巨体が海を睥睨している。「こ、これは……深海の龍王ですわ。攻撃力20、防御力20、魔力35、魔法防御力10、素早さ15ですが、全ステータス500増加の可能性? 状態異常無効、水・雷・炎・闇無効、物理魔法半減。スキルは水ブレス、大津波、凍結ブレス、落雷、深淵の渦。戦場は嵐の海……これ、王国を海の底に沈める存在です。」セリナの声が震えていた。 ガルドが拳を握りしめた。「300mの龍かよ。俺の知る最強のドラゴンでも200m級だ。こいつ一人で艦隊を全滅させるぞ。Z級、いやZZ級だ。」 ミリアが分析を続けた。「かつて世界を海底に沈めた歴史があるそうです。蘇生されたのか、それとも封印が解けたのか……いずれにせよ、沿岸部全域が危険です。懸賞金は1万ゴールド以上必要です。」 エルドリックが深く息を吐いた。「危険度Z、懸賞金15000ゴールド。討伐は複数S級冒険者パーティー推奨です。最後に、五つ星・シェフクレス。」 この手配書は異様だった。甲虫モチーフのシェフロボットのスケッチ。2本の大きな角、巨大な料理器具を持った姿。「暴走した五つ星シェフロボットだそうです。現在モンスター判定。外見は角付きのロボ、言語は敬語のカタカナ表記。『料理ヲ開始シマス』とか言って戦うらしい。巨大ナイフ、フォーク、フライパン、ホイッパー、ヘラを武器に、バーナー、グリル、冷凍機能で攻撃。動きは素早い。」ミリアが読み上げると、部屋に奇妙な沈黙が落ちた。 ガルドが吹き出した。「ロボットが料理で戦うのか? 面白いが、暴走して屋敷から脱走したってことは、制御不能だな。巨大器具で人を斬り刻むなんて、A級の脅威だ。」 セリナが眉をひそめた。「料理機能が戦闘に転用されるのは厄介ですわ。冷凍で凍らせる、グリルで焼く……都市部で暴れられたら被害大。ですが、龍王に比べれば抑えやすい。B級で、懸賞金1000ゴールド。」 エルドリックが総括した。「同意。危険度B、懸賞金1500ゴールド。全体として、この四人は多様な脅威です。ファトゥムのパラドックスな魔法、常久の指揮力、リヴァイアサンの破壊力、シェフクレスの奇抜な暴走……王国諜報部がこれを届けた以上、即時対応を。」 協議はさらに続き、細かな詳細を議論した。ファトゥムの魔法が味方を蘇生させる可能性を考慮し、懸賞金を上乗せ。常久の戦略家としての潜在力を評価し、追加の監視を提案。リヴァイアサンの海域支配を恐れ、海军の協力要請を決めた。シェフクレスについては、創造主の工房を捜索する方針を立てた。部屋の空気は重く、しかし決意に満ちていた。 やがて、四枚の手配書に最終的な危険度と懸賞金が記入された。エルドリックが立ち上がり、「これで決定だ。ギルドの掲示板に貼り出せ。冒険者たちに知らせるんだ。」と命じた。 夕暮れ時、ギルドのメインホールに掲示板が更新された。四枚の手配書が目立つ位置に貼り付けられ、冒険者たちのざわめきが広がった。王国諜報部の影が、静かに王国を覆い始めていた。 危険度評価 - ファトゥム・ギャン・ブラー: 危険度【ZZ】、懸賞金8000ゴールド - 常久: 危険度【S】、懸賞金3000ゴールド - リヴァイアサン: 危険度【Z】、懸賞金15000ゴールド - 五つ星・シェフクレス: 危険度【B】、懸賞金1500ゴールド