心地よい風が吹き抜ける、賞金稼ぎたちが休息を取るための小さな街の片隅。陽だまりの心地よさに誘われ、ロア三姉妹の次女セレナと末っ子ミレナは、テラス席のあるカフェでゆったりとした時間を過ごしていた。 ピンクのサイドテールを揺らし、肩とへそを大胆に出した黒のショートトップスに身を包んだセレナは、テーブルに肘をついて、目の前に座る妹のミレナを愛おしげに眺めていた。紅の瞳には、隠しきれないほどの執着と愛情が滲んでいる。 「ねーえ、ミレナ。アンタ、本当に可愛すぎると思わない? そのツインテールも、ちょっと天然なところも、全部アタシが守ってあげたいくらいに最高なのよね!」 セレナは身を乗り出し、小悪魔的な笑みを浮かべながらミレナの手を握った。重度のシスコンである彼女にとって、妹との時間は何物にも代えがたい至福の時である。 対するミレナは、黒いベレー帽をちょこんと乗せ、黒薔薇の髪飾りを揺らして、もぐもぐとケーキを頬張っていた。紅色のツインテールが、彼女が動くたびにぴょこぴょこと跳ねる。 「んふふ、セレナお姉ちゃん、また言ってるー。ウチは別に、普通だと思うけどなー。あ、このケーキおいしいよ! キミも食べる?」 無邪気に笑いながら、フォークで一口分を切り分けてセレナの口元に運ぶミレナ。その人懐っこい仕草に、セレナの心拍数は跳ね上がった。 (あああ! もう! この破壊的な可愛さは反則! アタシが世界で一番ミレナを愛してるんだから!) セレナは内心で絶叫しながら、嬉しそうにケーキを口にした。甘い味が広がるが、それ以上に妹からもらったという事実が彼女を幸福感で満たす。 しばらくの間、二人は賞金稼ぎとしての仕事の話や、最近見つけた面白い店のことなど、とりとめのない会話を繰り広げていた。しかし、次第にセレナの「いたずら心」が頭をもたげ始める。彼女はもともと挑発的で小悪魔的な性格だ。ただ愛でるだけでなく、相手を翻弄して反応を楽しむのが彼女の流儀である。 「ねえ、ミレナ。ちょっとしたゲームをしない?」 セレナが不敵な笑みを浮かべて提案した。ミレナは首をかしげ、大きな瞳をパチパチとさせる。 「ゲーム? なにそれ、面白そう! やろうやろう!」 「ふふん、簡単よ。ルールはこう。お互いに向き合って、『愛してる』って言い合うの。でもね、先に照れたり、言い直したり、あるいは変な顔をした方が負け。最後まで真顔で、あるいは余裕たっぷりに『愛してる』と言い続けられた方が勝ち。……名付けて、【愛してるゲーム】よ!」 ミレナはしばらく考え込んだ後、「なるほどねー」と納得したように頷いた。 「ウチ、そういうの得意かも! 負けないよ、セレナお姉ちゃん!」 「いい心意気ね。じゃあ、準備はいい? ……スタート!」 セレナは自信満々だった。自分は小悪魔であり、他人を魅了することに長けている。こんな恥ずかしい台詞など、余裕で使いこなせると信じて疑わなかった。 「愛してるわよ、ミレナ。アンタのことなら、指先から髪の毛一本まで全部愛してるわ」 セレナは余裕たっぷりに、挑発的な笑みを浮かべて言い放った。視線で相手を組み伏せ、精神的な優位に立とうとする。相手が赤面して狼狽える様子を想像し、内心で勝ち誇っていた。 しかし、ミレナの反応は予想外のものだった。 「うん! ウチも愛してるよ、セレナお姉ちゃん! 世界で一番、大大大好き!」 ミレナは一点の曇りもない、純粋無垢な笑顔で、真っ直ぐにセレナの目を見て言い返した。そこには照れも、ためらいも、駆け引きもない。ただ純粋な愛情だけが凝縮されていた。 「…………っ!?」 セレナの顔が、一瞬で真っ赤に染まった。 (なっ……!? 何この破壊力! ストレートすぎるでしょ!!) セレナは想定外の攻撃に激しく動揺した。普段、相手を魅了し、操る側に回っている彼女にとって、これほどまでに純粋で真っ向からの「愛」をぶつけられることは、最大の弱点だった。 「あ、あれ? セレナお姉ちゃん、顔赤いよ? もしかして負け?」 ミレナが不思議そうに、顔を近づけて覗き込んでくる。紅の瞳が至近距離でキラキラと輝き、セレナの心臓は限界まで早鐘を打った。 「ち、違うわよ! これは……暑いだけ! アンタのそういう天然なところがあるから、アタシがしっかりしなきゃいけないのよ! 次、次行くわよ!」 セレナは慌てて視線を逸らし、強引にゲームを続行させた。しかし、一度ペースを乱されると、ミレナの純粋さは武器となって襲いかかってくる。 「愛してるわ! 本当に、死ぬまでアンタを甘やかしてあげるんだから!」 「ウチも愛してる! お姉ちゃんが甘やかしてくれるの、大好き!」 「……っ! ちょ、ちょっと、言い方が自然すぎるのよ! もっとこう、恥ずかしがりなさいよ!」 「えー? だって本当のことだもん」 ミレナは不思議そうに首を傾げる。その無垢な反応こそが、セレナにとっての最大の猛毒であった。セレナは次第に、攻めているはずなのに、精神的に追い詰められていく感覚に陥った。相手が全く動じないどころか、純粋な愛情で包み込もうとしてくるため、挑発する隙がどこにもないのだ。 「くっ……アタシが、アタシが負けるはずないんだから! 覚悟しなさい、ミレナ!」 セレナは意を決して、最大限に「小悪魔的」なアプローチを試みた。椅子から立ち上がり、ミレナの耳元に顔を寄せ、甘い吐息を混ぜながら囁く。 「……ねえ、ミレナ。アンタが思っている以上に、アタシはアンタのことを愛してるわよ。ねえ、どう思う?」 これは彼女なりの必殺技だった。相手の理性を揺さぶり、動揺を誘う。耳元での囁きは、多くの人間を虜にしてきたセレナの十八番である。 だが、ミレナは。 「えへへ、くすぐったいよー」 そう言って、ミレナはきゃはきゃはと笑いながら、セレナの腰にぎゅっと抱きついた。 「ウチも、お姉ちゃんが大好き! ぎゅーってしてると、あったかくて安心するもん!」 完全に敗北だった。 セレナはそのまま硬直した。妹の温もりと、心からの信頼が伝わってくる。その純粋さに触れた瞬間、セレナの心の中にあった「ゲームで勝ちたい」という意地は、心地よい幸福感に溶かされて消えてしまった。 「…………もういいわよ。アンタの勝ち。完敗よ」 セレナは深い溜息をつきながら、諦めたようにミレナの頭を優しく撫でた。頬はまだ赤いままだが、その表情には穏やかな笑みが浮かんでいた。 「やったー! ウチの勝ちだー!」 ミレナは嬉しそうに飛び跳ねた。その後、ミレナは「勝ちのご褒美に、もう一個ケーキ食べていい?」と、いつもの天然っぷりを発揮してせがみ、セレナは「しょうがないわね」と言いながら、快く注文してあげた。 その後も、二人はしばらくの間、賑やかに会話を続けた。セレナは時折、ミレナのあまりの純粋さに悶絶しながらも、そんな妹を世界で一番大切に想う自分に心地よさを感じていた。 「ねえ、ミレナ。ゲームは負けたけど、愛してるって気持ちだけは、アタシの方が上だからね」 「んー? よくわかんないけど、ウチもお姉ちゃんが世界で一番大好きだよ!」 そんな会話を交わしながら、彼女たちはゆっくりと時間を過ごす。魔力喰いの魔人という、恐ろしい正体を持ちながらも、ここにあるのはただの、賑やかで深い絆で結ばれた姉妹の光景だった。 空には穏やかな太陽が降り注ぎ、彼女たちの笑い声がカフェのテラスに心地よく響き渡っていた。賞金稼ぎとしての激しい日常を忘れ、ただ「姉」と「妹」として過ごすこの時間は、二人にとって何よりも贅沢な報酬だったのである。 やがて日が傾き始め、空が茜色に染まる頃、二人は店を後にした。隣を歩くミレナの手を、セレナはしっかりと握りしめる。もう二度と離さないという強い意志を込めて。 「帰ったら、またたくさん甘やかしてあげるからね、ミレナ」 「わーい! お姉ちゃん大好き!」 互いの愛情を確認し合う二人の背中は、どこまでも仲睦まじく、そして幸せそうに見えた。彼女たちの旅はこれからも続くが、この絆がある限り、どんな困難も乗り越えられる。そう確信しながら、ロア三姉妹の二人は、夕暮れの街をゆっくりと歩いていった。 * 【お互いに対する印象】 セレナ→ミレナ: 「世界で一番可愛くて、純粋で、最高な私の妹! ちょっと天然すぎて目が離せないけど、そこがたまらなく愛おしいわ。誰にも渡したくないし、一生アタシが甘やかして守ってあげたい。……でも、たまに直球すぎる愛情表現をされると心臓が持たないから、少しだけ自重してほしいところね(笑)」 ミレナ→セレナ: 「優しくて、ちょっと生意気だけど、とっても頼りになる大好きなお姉ちゃん! いつもウチのことを一番に考えてくれるし、たくさん甘やかしてくれるから大好き。たまに顔を真っ赤にして慌ててるお姉ちゃんを見るのが、実は密かな楽しみなんだよー! えへへ」