空は絶望的なまでに灰色に塗り潰されていた。かつて文明と呼ばれた街は、今や崩れ落ちたコンクリートと、錆びついた鉄骨が突き出す墓場へと成り果てている。風が吹くたび、乾燥した血の匂いと、腐敗した肉の悪臭が鼻腔を突き刺す。 そこには、もはや人間ではない「モノ」たちが徘徊していた。皮膚はどす黒く変色し、あちこちが剥がれ落ちて筋肉や骨が露出している。白濁した瞳には知性はなく、ただ飢餓感だけが彼らを突き動かしていた。彼らは喉の奥から、湿った、それでいて耳を劈くような絶叫を上げ、獲物を探して彷徨っている。 第一章:絶望の邂逅 【荒廃したコロニー】の端、崩れたコンビニの店内で、一人の少年――一般人は、震える手でホームセンターで買った安物の包丁を握りしめていた。彼はただの学生だった。なぜ自分がこんな地獄に迷い込んだのか、理由さえ分からない。疲労で足はガクガクと震え、視界はぼやけていた。 「……誰か、いないのかよ」 かすれた声で呟いた瞬間、店内のガラス扉が粉砕された。飛び込んできたのは、顎が外れ、内臓をぶら下げたゾンビだ。化け物は涎を垂らしながら、猛然と彼に襲いかかる。一般人は悲鳴を上げ、反射的に包丁を振り回した。しかし、体力は限界だった。腕に力が入らず、刃はゾンビの硬くなった皮膚を浅く切り裂いただけだった。 「うあああぁぁ!」 絶体絶命の瞬間、背後から凄まじい衝撃波が奔った。 ドガァァァァン!! 鼓膜を震わせる爆音と共に、ゾンビの頭部が文字通り「消滅」した。爆風で店内の棚がなぎ倒される。煙の中から現れたのは、青い髪に、青と橙の異色眼を持つ少年――虎居 伝十だった。彼の右手は異様な形状をした《巨砲》へと改造されており、銃口からはまだ熱い蒸気が立ち上っている。 「危ないね。大丈夫かい?」 伝十は快活に笑ったが、その瞳には戦い抜いた者だけが持つ鋭い光が宿っていた。彼は既に数え切れないほどのゾンビを屠り、心身ともに疲弊していたが、その不屈の精神は折れていなかった。 そこに、奇妙な足音が近づいてくる。カチ、カチ、カチ。横歩きで近づいてきたのは、茶髪のロングヘアを持つ美少女――カニタムだった。彼女は困惑した表情で、チョキのような形状をした手を突き出している。 「……ここ、どこなの? 私、カニなのにどうして女の子に……っていうか、歩きにくい!」 奇妙な三人組が集まった瞬間、彼らは気づかなかった。足元の影が、生き物のように蠢いていることに。それは形を持たぬ意思、浸食だった。それは音もなく、匂いもなく、彼らの存在そのものに静かに染み込み始めていた。 第二章:死の静寂と放射線 一行は物資を求め、【荒廃したコロニー】の中心部へと進んだ。しかし、そこには想像を絶する数のゾンビが密集していた。ゾンビたちは時間の経過と共に進化しており、皮膚は甲殻のように硬くなり、爪はナイフのように鋭くなっていた。 「っ、数が多い! 僕は道を切り拓くから、君たちは後ろに!」 伝十が前線に立つ。彼は【岩砕流麗】でゾンビの爪撃を受け流すと、至近距離から【破壊巨砲】を叩き込んだ。肉塊が弾け飛び、血飛沫が舞う。しかし、どれだけ倒しても次から次へと湧き出してくる。 カニタムも必死に戦った。彼女は俊敏な動きでゾンビの足元に潜り込み、強力なハサミで脚を切り落とした。しかし、一匹の強化ゾンビに肩を掴まれた瞬間、「ギャッ!」という悲鳴と共に、彼女の擬人化が解けた。ポンッという音と共に、そこには一匹の立派なタラバガニが転がっていた。 「カニになったー!!」 絶望的な状況に、一般人が叫ぶ。「助けて! 誰か助けて!!」 その時、彼らの後方に、ぼんやりと佇む奇妙な球体のような存在――デーモンコアがいた。彼は意思を持っているのかいないのか、ただそこに在った。飢えたゾンビたちが、その「無防備な塊」に気づき、一斉に群がった。 ゾンビがデーモンコアに接触し、その表面を噛み砕こうとした瞬間―― ――青い閃光が世界を塗り潰した。 ベリリウムが臨界に達し、猛烈な放射線が四方に放出される。ゾンビたちは悲鳴を上げる間もなく、細胞を破壊され、内側から崩壊して灰へと変わった。あまりの光量に、伝十たちも目を覆い、激しい眩暈に襲われる。 第三章:浸食の完遂 激戦を終え、彼らは一時的な休息を得た。しかし、彼らは気づいていなかった。自分たちの意識が、少しずつ「誰か」に書き換えられていることに。 (……心地いいな) 一般人はそう思った。戦いの恐怖が消え、深い眠気に包まれる。伝十もまた、不屈の精神が、心地よい霧に溶けていくのを感じていた。カニタム(タラバガニ状態)も、デーモンコアも、等しくその「浸食」に呑み込まれていた。 浸食は彼らの肉体を、精神を、そして魂を、ゆっくりと、だが確実に乗っ取っていく。彼らが「勝った」と思い、安堵したその瞬間こそが、浸食の完了之时であった。 彼らはもはや個体ではない。一つの巨大な、形なき意志へと統合された。しかし、この世界にはまだ【研究所】という目的地があった。抗体があるというその場所へ、浸食された彼らは「生存者」のふりをして歩き出す。 終章:緑の帰還 長い年月が流れた。 かつて地獄だった世界に、奇跡的に緑が戻り始めていた。ゾンビウィルスは、ある「特異な存在」が研究所のワクチンを効率的に散布し、全ての個体を飲み込んだことで、皮肉にも消滅した。あるいは、世界全体が一つの意思に浸食されたことで、争う理由がなくなったのかもしれない。 焼け野原だった街に、小さな花が咲いている。 そこには、かつての一般人の姿をした「何か」が立っていた。彼は、もう震えていない。隣には、青い髪の少年と、美しい少女、そして静かな球体が寄り添っている。 彼らはもう、個別の人間ではない。だが、彼らは思う。 (ああ……静かだな) かつての絶望も、空腹も、恐怖も、今はすべて懐かしい記憶の一部として、共有された意識の中で凪いでいた。緑の風が吹き抜け、彼らは新しく生まれ変わった世界を、静かに見つめていた。 【生存者】 ・浸食(全参加者を吸収し、擬態して生存) 【死亡者】 ・一般人:浸食による意識消失・肉体乗っ取り ・カニタム:浸食による意識消失・肉体乗っ取り ・デーモンコア:浸食による意識消失・肉体乗っ取り ・虎居 伝十:浸食による意識消失・肉体乗っ取り 【参加者が行った事】* ・一般人:パニックになりながらも同行し、精神的な拠り所(?)となった。 ・カニタム:前衛で戦い、途中でタラバガニに戻った。 ・デーモンコア:臨界放射線を放出し、大量のゾンビを殲滅した。 ・虎居 伝十:巨砲を使い、壊滅的な火力で道を切り拓いた。 ・浸食:全員を密かに浸食し、最終的に世界を一つに統合して平和(?)にした。