第一試合:市街地 ビル群が密集し、交差点ごとに高強度の遮蔽物がそびえる市街地。ミレイカは機体の視界に重なる座標情報を静かに整理していた。建物の角、道路の幅、屋上の高さ。すべてを一つの空間として捉え、四機の無人機を異なる高度へ散開させる。 対するアズマは、靁殿の軽量機体を低く構えさせた。内蔵AIリヴが建物の配置と射線を演算し、彼の経験と空間認識がその結果を瞬時に取捨選択する。狭い路地は高速機動の妨げにも、接近のための隠れ道にもなる。どちらか一方だけが有利な戦場ではない。 開始と同時に、ミレイカの無人機が三方向から姿を現した。残る一機は高所に留まり、靁殿の動きを見張る。両肩のEN砲が火を噴き、道路を挟んだ建物の外壁を削る。アズマは真正面から撃ち合わず、路地へ滑り込んだ。砲撃は角を砕いたが、頑丈な壁に阻まれて決定打にはならない。 リヴが無人機の包囲線を読み、靁殿に短い回避指示を出す。アズマは壁面を蹴って進路を変え、追ってきた一機を高周波剣で両断した。刃にまとった電荷が小型機の機構を焼き、残骸が地面へ落ちる。だが、その一瞬をミレイカは見逃さない。槍斧AXeiSを構え、建物の陰から踏み込む靁殿の進路へ、斧刃を横薙ぎに振るった。 靁殿は紙一重で刃をかわした。剣と槍斧がぶつかり、火花が狭い路地を照らす。精密な剣技はAXeiSの長い間合いの内側を狙い、ミレイカは鉤爪で敵の腕を引っかけて動きを封じようとする。重量と間合いを活かした一撃は危険だが、狭所では大きく振り回しにくい。反対に靁殿は小回りが利くものの、壁に挟まれた状態で高速移動を続ければ、逃げ道を失う。 ミレイカは砲撃を壁に当てて崩し、瓦礫で路地の片側を塞いだ。無人機二機が別の角から現れ、靁殿の退路を狭める。アズマはその意図を察し、瓦礫が崩れ切る前に飛び出した。剣が無人機をさらに一機斬り裂き、靁殿は道路へ抜ける。しかし、ミレイカは追撃砲を撃つ代わりに、砲口を逃走先の交差点へ向けた。逃げ道を予測した射撃が靁殿の側面をかすめ、装甲を焼く。 アズマは胸部の急速充電器を作動させた。電荷が増幅され、凮靁の刃が眩く帯電する。大技「蹂躙こそが-誠の道-」。靁殿は電気障壁を展開し、交差点からビルの壁面、さらに高架通路へと、疾風のような速度で駆け抜ける。ミレイカのEN砲が追うが、連続する遮蔽物と急激な進路変更に照準が間に合わない。無人機も軌道を読まれ、残る二機が次々と斬り落とされた。 靁殿の電気障壁は、飛来した攻撃を押し返しながら接近を助けた。アズマはAXeiSの間合いを一度だけかいくぐり、剣を機体の肩口へ走らせる。だが、ミレイカのターミナルアーマーが追従する防壁を展開した。強化された防御が斬撃を受け止め、機体の致命部への到達を阻む。ミレイカは吹き飛ばされながらも姿勢を保ち、追撃を防壁で凌いだ。 その間に、靁殿の大技は蓄積電力を使い切った。電気障壁が消え、速度が落ちる。全力疾走の代償として防御も薄く、アズマは即座に次の攻めへ移れない。市街地の遮蔽物は彼の接近を助けた一方、残された退路を限定していた。ミレイカは防壁の残る時間を使って間合いを測り、壊れた建物の陰へ靁殿を追い込む。 最後の無人機が高所から降下し、靁殿の視線を一瞬だけ引きつけた。ミレイカはその瞬間にAXeiSの鉤爪を靁殿の腕へ掛け、槍斧の柄をひねって剣を逸らす。肩砲の一門が至近距離から装甲へ撃ち込まれ、靁殿の腕部が損傷する。アズマはなお剣を振るうが、電力切れで速さを失った機体は、槍斧の次の一撃を避けきれなかった。斧刃が胴部を打ち、靁殿は路面へ崩れた。 第一試合の勝者:チームA(ミレイカ・スカイアット) 第二試合:山岳 急斜面の連なる山岳地帯。雨に濡れた泥沼が斜面の低地を覆い、足場は一歩ごとに変わる。遮蔽物は岩壁と不規則な地形に限られる。高速機の安定性は試され、重い一撃を狙う側も足元を取られかねない。 ミレイカは高所へ登るのではなく、斜面の稜線と泥沼の位置を測った。滑りやすい場所、岩が露出した場所、砲撃が通る隙間。座標を把握すると、無人機を左右へ二機ずつ分け、山腹の別々の高さに展開する。アズマとリヴは、敵機の配置を見て包囲の意図を読んだ。靁殿は速さと安定性を活かし、泥沼へ踏み込まない経路を選ぶ。 開戦すると、両肩のEN砲が岩棚を撃ち抜いた。砕けた石が斜面を転がり、靁殿の進路へ落ちる。アズマは岩の崩れる音から落下地点を判断し、斜面を横切って回避した。ミレイカは砲撃で敵を直接捉えるより、地形を変えて動ける範囲を削る。だが山岳は一方的に封じられるほど単純ではない。靁殿は岩棚の段差を軽やかに越え、崩落の端を踏み切って距離を詰めた。 無人機が一斉に接近し、靁殿を左右から挟む。アズマは剣の精密さで一機を斬り、リヴの誘導に従って斜面の影へ滑り込んだ。残る機体は高所から回り込むが、雨と風で微細な姿勢制御に負荷がかかり、包囲は完全には閉じない。ミレイカはそれでも無人機を追わせ、靁殿の進路を稜線の狭い場所へ誘導する。 AXeiSが斜め上から振り下ろされた。靁殿は剣で受け流し、斧刃が岩へ食い込む。アズマは隙を逃さず、帯電した刃で機体の腕を狙う。ミレイカは鉤爪を返し、剣の軌道を逸らした。泥に足を取られれば両者とも危険だが、機体特性の差はそこで表れる。靁殿は軽く、接地の負荷を抑えやすい。C0,0dinateは機動性に優れるものの、槍斧を振るう大きな動作では足場の選択が重要になる。 ミレイカは一歩退き、肩砲を斜面の上部へ撃った。岩が崩れ、二機の無人機がその陰から急襲する。アズマは一機を斬り落としたが、もう一機の体当たりで姿勢を崩した。靁殿は岩の露出した場所へ着地して転倒を免れる。ミレイカも斜面の揺れを読み、泥沼へ滑り落ちる前にAXeiSを地面へ突き立てて踏みとどまる。どちらも一度の地形変化では崩れない。 アズマは胸部武装で電力を急速に蓄えた。大技を発動すれば地形の不利を一気に越えられるが、発動後は電力を使い切り、速度が落ちて無防備になる。リヴは敵の無人機と砲撃の位置を計算し、今なら一気に本体へ到達できると判断した。アズマは迷わず踏み切る。 電気障壁が靁殿を包み、機体は斜面を縦横無尽に駆けた。足場を選ぶ必要のある泥地を飛び越え、岩棚を蹴り、稜線を越える。ミレイカのEN砲は追尾するが、斜面の角度と靁殿の速度に照準を合わせきれない。障壁が射撃を受け流す間に、靁殿は無人機を一機、さらにもう一機と斬り捨て、C0,0dinateへ迫った。 ミレイカはターミナルアーマーを展開した。防壁が機体に追従し、靁殿の電荷を帯びた剣を受け止める。防御性能が一時的に大きく高まり、斬撃が装甲へ届かない。アズマは攻撃を止めず、角度を変えて連撃を加えた。ミレイカは防壁の持続を見極めながらAXeiSを低く構え、足元を狙う。靁殿は危険を察して跳び退いたが、山岳の狭い稜線が着地の選択肢を減らす。 大技の電力が尽き、電気障壁が消えた。靁殿の速度が落ち、攻め続けた代償として防御も薄くなる。ミレイカは防壁が消える瞬間を計算に入れ、AXeiSの鉤爪を靁殿の脚部に引っ掛けた。崩れかけた稜線では、わずかな姿勢の乱れが致命的だ。アズマは剣を振るって鉤爪を外そうとするが、泥を含んだ斜面が機体を滑らせる。 肩砲の一発が靁殿の側面に当たり、機体を稜線の内側へ押し戻した。ミレイカは斧刃を振り抜き、脚部の損傷を広げる。靁殿は倒れまいと踏ん張ったが、速度を失った機体は地形の悪さを覆せなかった。AXeiSの柄が胸部を打ち、続く突きが駆動部を貫く。靁殿は斜面に膝をつき、動きを止めた。 第二試合の勝者:チームA(ミレイカ・スカイアット) 第三試合:海上 遮蔽物のない海上。強風が波頭を散らし、機体の姿勢制御を絶えず乱す。隠れる場所も、射線を切る地形もない。遠距離攻撃と高速接近の双方が生きる一方、攻撃の動きを見せれば相手に察知されやすい。 ミレイカは無人機四機を機体の周囲に分散させ、風に流されないよう高度と距離を保たせた。海面に影が映るほど低く飛ばせば、波しぶきで視界が乱れる。高く上げれば強風の影響が増す。彼女は風の変化を座標の移動として捉え、機体と子機の配置を絶えず調整した。 アズマとリヴは、遮蔽物のない戦場が高速機に有利な一方、進路を隠せないことも把握していた。靁殿は海面近くを走り、波の斜面を利用して加速する。ミレイカは両肩のEN砲を撃ち、靁殿の前方と側面を交互に狙った。砲撃は波しぶきを吹き飛ばし、海面を白く沸騰させる。靁殿は弾道を見て最小限の動きでかわし、無人機が追撃に回る前に軌道を変えた。 無人機が四方から接近する。靁殿は一機を剣で斬り、二機目の攻撃を身をひねって避ける。残る機体が背後へ回ろうとした時、アズマは機体を急旋回させ、電荷を帯びた剣で連続して切り裂いた。海上では隠れ場所がないため、無人機は包囲を維持しにくい。反面、アズマが向きを変える瞬間は射撃の好機でもある。ミレイカの砲撃が靁殿の肩を捉え、装甲に焼け跡を刻んだ。 アズマは胸部武装を作動させ、電荷を急速に高める。ミレイカはそれを視認し、AXeiSを構えながら迎撃態勢に入った。大技が放たれれば、靁殿は驚異的な速度で直線にも曲線にも走る。海上に遮蔽物はなく、逃げるだけでは追いつかれる。ミレイカは砲撃と無人機を使って進路を限定することに賭けた。 「蹂躙こそが-誠の道-」。靁殿は電気障壁を展開し、強風と波を切り裂いて突進した。無人機の射線をくぐり、EN砲の間をすり抜ける。電気障壁は敵弾を受け止める助けとなり、加速した剣がC0,0dinateへ迫る。ミレイカは機体を横へ流しながら、ターミナルアーマーを展開した。防壁が機体に追従し、凮靁の斬撃を受け止める。刃の電荷が防壁を揺らすが、強化された防御は急所への到達を許さない。 靁殿は一度離れ、別角度から再攻撃する。障壁を伴う高速機動は、無遮蔽の海上でこそ最大の圧力を発揮した。無人機は次々に撃墜され、ミレイカの砲撃も追いつかない。だが、大技は蓄積電力の全消費を伴う。連続して動き続けることはできず、アズマは限られた時間で決着を狙う必要があった。 ターミナルアーマーがなお残る間、ミレイカは攻撃を急がなかった。AXeiSを振り回すのではなく、槍の穂先を前に出して靁殿の接近角度を制限する。アズマの精密な剣技はその隙を探すが、防壁が斬撃を受け止めるたびに、ミレイカは機体の位置を修正する。高揚した集中は無謀な突進を抑え、風と波で揺れる座標を読み続けていた。 靁殿は最後の高速旋回から正面へ切り返し、凮靁を突き出した。ミレイカは防壁を維持したまま槍斧の柄を傾け、剣の軌道を外へ流す。刃が装甲をかすめた直後、靁殿を包む電気障壁が消えた。電力が尽き、機体速度は落ちる。アズマは即座に後退を試みるが、強風で機体が流れ、海上には隠れる場所もない。 ミレイカは肩砲の残弾を撃ち尽くす勢いで連射した。うち一発が靁殿の脚部に当たり、姿勢を崩す。残った無人機一機が横合いから体当たりし、進路をさらに乱した。アズマは剣で機体を追い払うが、速度低下と損傷が重なり、ミレイカの接近を止められない。ターミナルアーマーの防壁をまとったC0,0dinateが槍斧を構え、AXeiSの穂先を靁殿の胴部へ突き込んだ。 衝撃で靁殿の機体が海面へ叩きつけられ、波しぶきが高く上がった。アズマは剣を振り上げようとするが、駆動部はすでに反応しない。ミレイカは追撃を止めず、斧刃を振り下ろして機体の中枢を破壊した。靁殿は浮力を失い、波間で沈黙する。遮蔽物のない戦場でも、ミレイカは防壁の時間を攻撃に変えず、相手の最大加速が終わる瞬間を待ち切った。 第三試合の勝者:チームA(ミレイカ・スカイアット) 総合結果 チームAが三戦すべてに勝利。 総合勝者:チームA(ミレイカ・スカイアット)