第一試合:市街地――ビルと高強度遮蔽 ビルの谷間に、二機の影が滑り込んだ。Cateの軽量機は壁面を蹴り、路地から路地へと急加速する。ハイルフォルトのヴァイスは遮蔽の陰で静止し、巫嶽の予測に従って周囲の射線と足場を測った。市街地はCateに身を隠す場所を与える一方、矢の軌道を制限し、ヴァイスには力場を作用させる瓦礫や構造物を豊富に与えていた。 Cateは屋上へ出る直前、鋼矢を四本まとめて放つ。矢は直線ではなく異なる弧を描き、左右の窓と低い路地から同時にヴァイスへ迫った。巫嶽の補助を受けた偽典が飛翔物の軌道を歪め、二本は壁へ逸れる。しかし残る二本は軌道を完全には崩されず、装甲に打ちつけて火花を散らした。堅牢な装甲は貫かれない。ヴァイスは矢の威力を測りながら、路面の破片を力場で圧壊し、飛び散った礫をCateの移動経路へ散布した。 Cateは正面から追わず、ブルーストを噴かして後退と急旋回を重ねた。ビルの角を盾に、矢を一本ずつ再利用できる位置へ誘導する。矢が窓枠に刺さるたび、Cateは次の射で狙いを変え、ヴァイスの視線を複数の方向へ引き裂いた。弓術に特化した照準とグレアムの思考速度は、狭い空間での射角の組み替えに確かな利を生む。だが、巫嶽は矢の軌道だけでなく、Cateが遮蔽から姿を見せる瞬間と退路も逐次予測していた。 ハイルフォルトは矢を無理に受け止めず、ビルの外壁を偽典で部分的に崩した。落下するコンクリートが路地を塞ぎ、Cateの横移動を一方向へ追い込む。Cateは鋼矢を連射し、崩落物の隙間を縫うようにヴァイスの関節部を狙う。力場は数本の矢を逸らしたが、至近距離の一本が肩装甲に深い傷を刻んだ。ヴァイスは損傷を承知で踏み込み、周囲の瓦礫を鳴動で電力へ変換しながら出力を保つ。弾数が限られるCateに対し、矢の再利用は助けになるものの、矢を回収するための停止は次第に危険を増した。 ヴァイスの力場が路地の両側から圧をかける。Cateはブルーストで後退し、圧壊を免れたが、勢いのまま建物の内部へ押し込まれた。そこでターミナルアーマーが展開する。追従する防壁が力場の圧迫と飛来する瓦礫をしのぎ、Cateは一時的に反撃の機会を得た。彼は矢を三本、時間差をつけて放ち、一発を力場の防御へ、二発目を足元へ、三発目をヴァイスの頭部へ向ける。ハイルフォルトは予測を修正し、第一射を歪めながら、床を圧壊させてヴァイスの位置をずらした。最後の矢は装甲をかすめるにとどまった。 防壁の持続中、Cateは何度も射線を作った。だが偽典は多方向へ同時に作用し、矢の軌道を乱すだけでなく、退路の壁を崩して距離を詰め続けた。ターミナルアーマーが消えるころ、Cateの矢筒はほぼ空になり、ヴァイスには損傷が残るものの戦闘能力があった。最後の数本を放つCateの射は、力場に崩された床と飛翔軌道の歪曲に阻まれる。ハイルフォルトは近距離で力場を集中し、Cateの機体を瓦礫ごと押さえ込んだ。軽量機は身動きできず、弓を構える腕も封じられる。戦闘続行不能となった。 第一試合の勝者:チームB(ハイルフォルト・バーゼン) 第二試合:山岳――急斜面と泥沼 急斜面を覆う泥が、機体の足元を不安定にしていた。谷底には泥沼が広がり、斜面には岩塊と崩れた樹木が散らばる。Cateの軽量機は接地の短さを活かして斜面を横切り、滑りを加速へ変える。一方のヴァイスは重い機体ながら、足場そのものに力場を作用させられる。鳴動は周囲の自然物を回収して電力へ変換でき、両肩の天地も瞬間出力を支える。両者とも地形を利用できるが、ここでは遮蔽の少ない斜面で弓の曲射が活きる反面、ヴァイスの力場は泥や岩を直接攻撃に転じられた。 Cateはまず高所へ向かい、斜面の陰から四本を同時発射した。矢はばらばらの弧を描き、一本は岩を越え、一本は泥面すれすれに走り、残る二本は時間差でヴァイスの側面へ回り込む。巫嶽が軌道と発射位置を計算し、偽典が二本を大きく逸らした。だが泥面を跳ねた一本は予測より低く残り、ヴァイスの膝装甲へ突き刺さる。もう一本も外装に傷をつけた。Cateはその結果を見て、斜面を急旋回しながら次の射角を変えた。 ハイルフォルトは一歩も無駄に追わず、斜面の地盤を力場で割った。泥が流れ、Cateの進路を横切る小さな土石流となる。Cateはブルーストで斜面を離れ、空中で体勢を整えながら矢を放つ。矢は上から曲線を描き、力場が捉えにくい角度を狙う。ヴァイスは飛翔物を歪曲しながら、落下する岩を複数並行して圧壊し、破片を広く撒いた。Cateは軌道をねじるように避け、二本の矢を回収可能な位置へ残したが、着地では泥が脚を取った。 ヴァイスはその一瞬を見逃さず、泥沼の縁を崩して地面を流動させる。Cateは機体を引き抜き、逆方向へ急加速した。重力と泥に抗するその動きは、軽量級の機動性をよく示していた。彼は回避のたびに発射角を変え、鋼矢を連続して送り込む。何本かは偽典に弾かれ、何本かは装甲へ当たる。堅牢なヴァイスの装甲は損傷を受けても致命傷には至らず、ハイルフォルトは傷を気にせず前進した。 斜面の上方に達したCateは、残る矢を一度に使い切らず、岩の陰を渡りながら狙撃を続けた。矢が岩を貫けないと見れば、岩の縁を回り込む放物線を選ぶ。巫嶽の予測に対し、弓術で培った細かな強弱の調整は、射出後の軌道変化を複雑にした。ヴァイスの肩に一本が深く食い込み、腕の動きを鈍らせる。ハイルフォルトはなお冷静に、肩の損傷を補うように機体の向きを変え、周辺の岩と流木を鳴動で電力化する。出力を維持した偽典が、泥に埋まった岩塊を持ち上げ、Cateの退路へ次々と落とした。 Cateは残った数本の矢を放ちながら、ターミナルアーマーを起動した。追従防壁は岩片と泥の圧力を受け止め、軽量機が斜面を横断する時間を稼ぐ。Cateは斜め下からヴァイスへ回り込み、膝と脚の継ぎ目を狙う。一本が装甲の傷へ食い込み、ヴァイスの歩みを一瞬止めた。しかし泥沼のそばでは、着地のたびに足場が崩れる。防壁の持続中に決定打を得られないまま、矢の残数はわずかになった。 ハイルフォルトは崩した斜面を利用し、Cateとヴァイスの間に泥と岩の流れを作る。Cateはブルーストで離脱しようとするが、力場が周囲の地面を圧壊し、機体の進路を限定した。ターミナルアーマーが消えた直後、ヴァイスは力場を複数方向から働かせ、Cateを泥沼の縁へ押し込む。Cateは最後の矢を放つ。矢はヴァイスの胸部へ向かうが、飛翔軌道を歪められ、肩の外装を削るだけに終わった。泥に脚を取られたCateは姿勢を立て直せず、ハイルフォルトの力場に機体を固定される。弓を構える余地を失い、戦闘不能となった。 第二試合の勝者:チームB(ハイルフォルト・バーゼン) 第三試合:衛星――低重力 低重力の衛星表面には、大小の岩とクレーターが点在していた。空気抵抗がほとんどない環境では、Cateの矢は地上より遠くまで飛び、放物線の調整幅も広がる。一方、ヴァイスの偽典は飛翔物の軌道を歪め、物体を遠隔操作する。岩を回収して電力に変える鳴動も、地表の資源が残る限り機能する。低重力はCateの機動を助けるが、射撃の軌道が伸びるぶん、発射位置を読まれる時間も生じる。ハイルフォルトは巫嶽と力場を用いて、遠距離戦を冷静に組み立てた。 Cateは戦闘開始と同時に地面を蹴り、ブルーストで横方向へ噴射した。慣性に乗って長く滑る機体は、急旋回の代わりに噴射方向を細かく変え、クレーターの縁を回り込む。弓から放たれた四本の矢は、互いに異なる速度と角度で飛び、一本は高く弧を描き、一本は岩陰をかすめ、二本は時間差でヴァイスの前後へ迫った。偽典が三本の軌道を歪める。残る一本はヴァイスの装甲に直撃したが、堅牢な外装を貫くには至らなかった。 Cateは矢を回収するため、クレーターの内側へ移った。矢を再使用できることは、弾数制限のある戦闘で大きな利点だった。しかしハイルフォルトはその回収経路を観察し、クレーター縁の岩を力場で砕く。破片は低重力のため落下せず、広がり続ける。Cateは姿勢制御を続けながらそれらを避ける。破片を避ける動き自体をフェイントに変え、矢を一本ずつ異なる角度で放つ。弓術の精密さにより、射線は目まぐるしく変わり、ヴァイスの装甲に新たな傷が増えた。 巫嶽の予測は、静止した照準器のようにCateの動きを固定するものではない。ハイルフォルトは矢の弾道とCateの噴射を観察し、予測を更新し続ける。偽典は複数の矢をそれぞれ別方向へ押し曲げる一方、岩片をヴァイスの前面に集めて盾とし、さらに別の岩をCateの進路へ放った。Cateは避けながら射撃を続け、盾の隙間へ鋼矢を通す。一本が脇腹の装甲を深くえぐり、ヴァイスの機体がわずかに傾いた。 Cateは好機を逃さず、ターミナルアーマーを展開した。追従する防壁は飛び交う岩片と力場の圧力を受け、機体を守る。低重力では小さな噴射でも大きく移動できるため、Cateはヴァイスの背後へ回り込み、装甲の損傷箇所を狙って連射した。矢は二本、続けて同じ傷へ飛ぶ。最初の一本は軌道を変えられたが、二本目は傷口の縁を広げた。ヴァイスの肩部が大きく損傷し、ハイルフォルトは片腕の動きを制限される。それでも機体そのものは健在で、偽典の出力も天地と鳴動によって保たれていた。 防壁の時間は限られる。ハイルフォルトは無理に突破を急がず、周囲の岩をさらに砕き、Cateの移動空間に網のように散らした。矢を射るための照準と、飛来する破片を避ける姿勢制御が同時に要求され、Cateの動きは少しずつ制限されていく。防壁が消えた直後、偽典が岩片の軌道を一斉に変えた。Cateは噴射で抜けようとするが、巫嶽の予測補助により移動先へ先回りした力場が働き、機体を押し返す。残る矢を放っても、軌道を歪められた矢はヴァイスの装甲に届かない。 ハイルフォルトは岩片でCateを直接押し潰すのではなく、噴射方向を塞ぐように配置して姿勢制御を奪った。Cateは最後の一本を放ち、弓術の技量でヴァイスの損傷部へ角度を合わせる。矢は狙いどおりの軌道を描いたが、偽典が直前にわずかに歪め、装甲をかすめる。矢の勢いが去り、Cateは機体を立て直すための余裕を失う。ヴァイスの力場が機体全体を拘束し、武器腕と推進器を固定した。損傷を負いながらも、ハイルフォルトは戦闘を続行できる状態を保った。Cateは機動と射撃をともに封じられ、敗北が確定した。 第三試合の勝者:チームB(ハイルフォルト・バーゼン) 総合勝者:チームB(ハイルフォルト・バーゼン)――3勝0敗