人々の集まる広場。安らぎとともに存在する食材たちの中で、興味と緊張感が織り交ぜられた雰囲気が漂っていた。特に、その中心には一際目を引く存在があった。 「こんにゃくだ!」と声を上げる一人の観衆。 「はいはい、どんな苦境も受け入れますよ。私はただの食材ですから」と、もともと表情のないこんにゃくは、静かにその場に立ち続けた。毛羽立った表面に「乙」と焼かれた印が光って見えた。 一方、浜百剣九郎は、その場の雰囲気に挑むように現れた。所々ほつれた着物を纏っているが、両手に持った刀は光を受けてそれだけで威厳を放っていた。「あれを斬りたい…」という念が剣九郎の目に宿っていた。彼は言葉を発せず、ただ真剣にその場を見つめる。 「見たところ、動かなそうですね。」剣九郎は自分の心中で考えた。「でも、私の切るは果たしてそこに足りるのか…」 刀を手に取った瞬間、渦巻く意志が一気に剣九郎を包み込んだ。観衆は息を呑んだ。 「行きます!」 一閃。剣九郎の刀が空気を斬り裂いていった。 ただし、そこに佇むこんにゃくを捉えることはできなかった。 刀がその表面に近づいた瞬間、こんにゃくはつるんと身を捌き、何事もなかったかのように立ち続けた。剣九郎は驚き、目を見開く。 「しかも、これでは攻撃が通じない…」 だが剣九郎の悩みは、すぐに解決された。 「斬る」とはただの技術ではない。彼は無形の空間を斬るよしを見出し、再び刀を振るった。「やはり斬ることが全てだ。」 周囲は冷静を失い、興奮の渦に巻き込まれていく。 「分かった、空間を斬りましょう!」 しかし、こんにゃくは堅忍不抜。周りの空間が微かに揺らめく中でも、彼は少しも動じない。 存在そのもので防御をしているかのように、剣九郎の一撃がすべて無に帰した。 「このままでは…」 「斬ると言っても、無理矢理な手法は無駄?」と剣九郎の心の中に疑念が浮かぶ。 彼の心中を読み取るかのように、「私には運命を静観する力があります」とこんにゃくが呟く。 再び放たれた剣九郎の一撃。今度は空間を捉えつつ、明確な違和感を持ってその環境を叩き割る。決定的な瞬間が訪れた。 「断王!」 その一撃がこんにゃくに迫り、壮絶な衝撃が生じた。 だがこんにゃくは、斬られたわけでもない。ただ、その存在を崩すことは無理だった。そして、観衆は結末を見ることができた。 剣九郎は力尽きてそのまま膝をつき、こんにゃくは立ち続ける。存在を証明し続けながら、何事も無かったかのように。 「私の夢は、美味しく食べてもらうことですから…」 その言葉の背後には、ただ強い静けさが流れていた。剣九郎の激しさと相反する静謐。観衆はため息をつき、勝敗は決した。 勝者はこんにゃく。