(ゆっくりと、眼鏡を指で押し上げ、声を低くして) ……ねぇ、皆さん。不思議な話があるんですよ。本当に、不思議で、恐ろしい話がねぇ……。 アタシがね、ある時、山奥の古い廃村に迷い込んだことがありましてね。そこはね、もう誰も住んでいないはずの場所なんです。家々は崩れかけていて、庭には雑草が膝まで生い茂っていて……。ただ、風が吹くたびに、ガサガサ、ガサガサって、何か不気味な音が聞こえてくる。そんな場所だったんです。 그런데(ところが)、アタシがそこでね、見てしまったんですよ。信じられない光景をねぇ……。 そこにね、三人の……いえ、三つの「モノ」が集まっていました。人間のように見えますけど、どう見ても人間じゃない。そういう、異様な気配を纏った者たちが、互いに視線をぶつけ合って、今にも世界が壊れそうな緊張感の中で、戦いを始めてしまったんです。 それがねぇ、本当に、恐ろしいバトルでしてねぇ……。 第一章:業火と静寂と空白 まず、一人目がいた。金髪のショートボブに、シックなメイド服を着た女の子です。見た目はね、お淑やかなメイドさんなんですよ。でもねぇ、その目が……。ひどく気怠げで、どこか虚ろな感じで、「あーあ……」なんて呟いている。彼女の名前は、フレアさんというそうです。 彼女がね、ふっと、ため息をついたんです。するとね……。 (手のひらを広げて) 「……燃えろ……」 そう呟いた瞬間でした。ドォォォォォン!! という、耳をつんざくような爆音とともに、彼女の足元から、真っ赤な、いや、どす黒い色をした業火が、爆発的に広がったんですよ! ズガガガガッ! と地面を焼き、周囲の廃屋が、一瞬で、本当に一瞬で、真っ黒な炭に変わってしまった。 アタシはね、たまらなくて、大きな岩の陰に隠れましたよ。だって、熱い! 恐ろしい熱さなんです! ぎゃぁぁー! と叫びたくなるような熱風が、アタシの頬を撫でていく。 対する二人目が、また奇妙な格好をしていました。身長は低くて、140センチくらいでしょうか。女の子のような姿をしていますが、顔がねぇ……顔があるべき場所に、「絵文字のスクリーン」がついているんです。あぁ、怖いなぁ。表情が変わるたびに、ピコピコと記号が変わる。頭にはケモ耳のようなものがついていて、さらには光輪……ヘイローが浮かんでいる。彼女の名前は、如月寧音さん。 そして三人目。これが一番、不気味でした。 (体を少し震わせて) 人間のような形をしていますが、首がないんです。首がないところに、真っ白な球体の頭が、ぷかぷかと浮かんでいる。肌は不気味なほど真っ白で、どこか陶器のような質感。喋りもしない。ただ、そこに立っているだけで、周囲の空間が、グニャリ、グニャリと歪んでいるのが分かったんです。名前なんてない。ただ、「Cause unknown(原因不明)」と呼ばれる存在でした。 この三人がね、互いの勝利を目指して、戦いを始めたんです。 第二章:因果を焼く炎と絶対の盾 戦いが始まると、フレアさんが、また気怠げに手をかざしました。 「……炎はいいよねぇ……」 シュパッ!! と、凝縮された獄炎が、弾丸のように射出されました。それが寧音さんの足元に当たった瞬間、ドゴォォォォン! と、そこが灼熱の地獄と化したんです。あたり一面が真っ赤な炎に包まれて、視界が遮られる。 アタシはね、もう心臓がバクバクしてね。「もうダメだ、アタシも焼かれる!」と思って、ガタガタ震えていましたよ。 ところがねぇ、不思議なことが起きたんです。 煙がスー……と晴れるとね、そこに立っていた寧音さんは、全く、無傷だった。かすり傷一つない。彼女の頭上の光輪が、キィィィィィンと共鳴して、あらゆる衝撃を跳ね返していたんです。 寧音さんは、穏やかな口調で、でも冷徹に言いました。 「……効率的に排除しますね」 そう言うと、彼女は亜空間から、シュルシュルッ! と、見たこともない武装を次々と取り出したんです。ピストルを構え、タタタタン!! と正確無比な射撃をフレアさんに浴びせました。 でもね、ここからがまた、変なんです。 弾丸がフレアさんの身体を貫通した。ズボッ、ズボッ、と音がしたんですが、血が出ない。なぜなら、彼女の身体は、もはや肉体ではなく、「炎そのもの」だったからです。 「……あーあ、当たってるけど……意味ないよ」 フレアさんは、気怠げに笑いながら、弾丸をすり抜けて、また近づいていく。アタシはね、見ていてゾッとしましたよ。物理的な攻撃が一切効かない不死身のメイド。そして、核ミサイルですら耐え抜く超耐久のスクリーン顔の少女。 そして、その横で、ずっと黙って見ている「白い球体の男」がいた。 彼はね、ただそこに立っているだけなんです。でも、彼がふっと、その「存在」を意識した瞬間、空の色が変わりました。 (天を指差して) 太陽が、じわじわと、黒くなっていく……。日食です。 その瞬間、フレアさんの猛烈な炎が、プシュン……と、消えたんです。まるで、最初からそこになかったかのように。日食の権能が、彼女の能力を構築している「要素」そのものを、消し去ってしまった。 「……あれぇ? おかしいなぁ……」 フレアさんが、初めて戸惑ったような声を上げました。 第三章:崩壊する理と絶望の再生 戦いは激化しました。 Cause unknownという存在は、もはや戦っているというより、そこに「在る」だけで、世界を塗り替えていく。彼が動くたびに、月食のような現象が起き、相手の「反応」や「再生」という過程そのものが、欠落していく。 寧音さんが、全力で武装を召喚し、巨大な兵器を叩きつけました。ガッシャァァァン!! と、大地が割れるほどの衝撃。Cause unknownの白い肉体が、バリバリッ! と引き裂かれ、黄金色に脈動する肉が見えたんです。 アタシはね、「あぁ、これで終わった」と思いましたよ。 でもねぇ……。ここからが、本当に怖かった。 バリバリッ! と裂けた肉が、グニュリ、グニュリ……と、猛烈な速さで再生し始めたんです。しかも、元よりも、ずっと硬そうに。傷つくたびに、より強く、より死ににくい存在へと進化していく。 「……もう、いい加減に……燃えろってば……!」 フレアさんが、ついに本気を出しました。彼女を中心に、ドォォォォォォォォン!!! と、今までの比ではない、絶望的な業火が巻き起こった。因果すら焼き尽くすという地獄の炎。周囲の森も、岩も、空気さえも、真っ白な熱に溶けて消えていく。 アタシはね、もう岩の陰で、耳を塞いで、ただ祈るしかありませんでした。 でも、その炎の中にいたCause unknownは、微動だにしなかった。むしろ、その炎を、黄金の肉で吸収しているようにさえ見えたんです。 そして……。 (声を潜めて) 異変が起きたのは、寧音さんの方でした。 あまりにも強大な力に晒され、彼女のスクリーンに「ERROR」という文字が点滅したんです。そして、彼女の身体が、ガクガクと震え出し……。 「色彩の反転」が起きた。 シュゥゥゥ……。 彼女を包んでいた穏やかな空気が、一瞬で、凍りつくような冷徹な殺意に変わりました。光輪の色が反転し、彼女は「寧音・テラー」へと覚醒したんです。 もはや、彼女は少女ではありませんでした。神話生物の頂点に君臨する、名もなき神のような存在。彼女がふっと指を鳴らすと、パチン! という小さな音と共に、世界の色が反転し、あらゆる概念が崩壊し始めました。 第四章:終わりのない輪廻 そこからは、もう、アタシには理解できない世界でした。 獄炎のメイド、神へと至った少女、そして理の外に立つ白い球体。 三つの絶大な力が、激突し合っている。 ドゴォォォン!! ズガガガガッ!! キィィィィン!! 空は黒から赤へ、赤から紫へ、そして虹色へと、不気味に変わり続け、地面は溶け、また再生し、また消える。 フレアさんは、もはや気怠げな様子などなく、狂ったように笑いながら炎を撒き散らしていました。 「……あはは! 燃えろ、全部燃えろ! 主様……そこにいるんでしょ……!?」 彼女は、自分を蘇らせた『魔王』を探していた。でも、ここにいるのは、魔王などではなく、ただの破壊の権化たちだけ。 寧音・テラーは、感情を完全に失った瞳で、ただ効率的に、この世界のすべてを消し去ろうとしていた。 そしてCause unknownは、ただ黙って、すべての攻撃を受け止め、そのたびに、より絶対的な「不滅」へと近づいていく。 アタシはね、もう見ていられなくて、脱兎のごとく、その場から逃げ出しましたよ。 ガサガサガサッ!! 後ろを振り返ると、そこにはもう、村などありませんでした。ただ、虹色の光と、どす黒い炎と、真っ白な静寂が、渦巻いているだけ。 ……でもね。 (ゆっくりと、聞き手に近づいて) 不思議なことがありましてね。 アタシが山を降りて、街に戻った後。ふと、自分の影を見たんです。 するとね……。 (声をひそめて) アタシの影の端っこが、ほんの少しだけ……「赤く」燃えていたんです。 ……あれぇ? おかしいなぁ。 アタシは、ただ見ていただけですよ。巻き込まれたわけじゃない。 でもね、あの時、アタシが感じたあの「熱」。 今でも、時々、夜中に耳元でねぇ……。 (指を口に当てて) 「……見つけた」 ……そんな、気怠げな女の子の声が、聞こえてくるんですよ。 嫌だなぁ、本当に怖いなぁ。 あの三人の戦いは、一体どこで、今も続いているんでしょうねぇ……。 もしかしたら、今、あなたの後ろで……誰かが、火を灯そうとしているかもしれませんよ……。 (ニヤリと笑って、ゆっくりとフェードアウト)