第一回戦:市街地 崩れた高層ビルが並ぶ市街地。道路には瓦礫が散乱し、建物の骨組みや地下駐車場の入口が、射線を切る高強度の遮蔽物となっていた。 ミケーレのF.L.L.Bは、瓦礫の陰から大口径ライフルを構える。ジョウゲンのゼンは黒白の特大剣を左右に携え、ビルの壁面を背にして前進した。剣の重力相殺機構が作動しているとはいえ、刃の質量そのものが消えるわけではない。狭い街路では振り回す角度が限られ、建物や路面に刃を取られる危険もある。一方で、一度間合いに入れば、その質量と貫通力はF.L.L.Bの装甲にも致命的だった。 ミケーレは一発目を放つ。弾丸はゼンを直撃せず、進路の前方にあるビル外壁を砕いた。崩落したコンクリートが視界をふさぐ。ジョウゲンは足を止めず、背部ファンで横方向へ加速して崩落をかわした。ファンの噴流が砂塵を巻き上げる。ミケーレはその加速の癖と、剣を振る前に機体の重心をわずかに沈める動きを見ていた。 「見事な加速です。次は、その勢いを利用されるのでしょうね」 敬語の声と同時に、F.L.L.Bは側面のビルへ退避する。肩の複合推進器が機体を急加速させ、窓のない壁面を蹴るように方向を変えた。追うジョウゲンは剣を一振りし、路上の瓦礫ごと壁の角を切り飛ばす。破片が散る間に、ミケーレはリボルガンブレードの機関砲を短く撃ち、照準を剣ではなく背部ファンの外縁へ移した。 ジョウゲンは弾道を読み、剣を立てて弾を弾く。反撃の一撃は、ミケーレが直前までいた位置を大きくえぐった。F.L.L.Bは射撃後に同じ場所へ留まらず、建物の陰へ滑り込む。ミケーレはジョウゲンの剣戟が速くとも、狭い地形では軌道を完全には自由にできないと見抜き、射線を作っては移る戦い方を選んだ。 しかしジョウゲンもまた、ミケーレが単純に距離を保って撃つのではなく、遮蔽物と機動を組み合わせて射撃機会を選んでいると理解した。彼はミサイルの発射を誘うように、瓦礫の間をあえて直線的に進む。F.L.L.Bの背部から多弾頭ミサイルが放たれ、いくつもの弾頭が別々の角度からゼンを挟む。ジョウゲンは剣を交差させ、ファンの推力で高く跳び、建物の壁を蹴って弾頭群の外へ抜けた。複数の爆発がビルの低層を揺らし、デコイが熱源と反射像を散らす。 ミケーレはその混乱に乗じて大口径弾を撃つ。弾はゼンの左腕に当たる軌道だったが、ジョウゲンは剣を差し入れて受け流した。衝撃で『燼』の芯に負荷がかかり、剣先が一瞬だけ沈む。それでも剣は機能を保ち、ジョウゲンは崩れた建物の陰を突っ切った。ミケーレが次の弾を装填する前に、ゼンが射程を詰める。 F.L.L.Bは肩の推進器を最大出力で吹かし、道路を横切って距離を取ろうとした。だがジョウゲンは追撃を止めず、背部ファンで加速しながら『滅』を横薙ぎに振る。ミケーレは急旋回で直撃を避けたものの、剣風と刃の端が左腕を捉え、機関砲と伸縮大剣の基部を損傷させた。F.L.L.Bはなお動けたが、近接戦の主な切り札を失う。 「ここまで解析できたのは幸運です。ですが、対処が間に合いません」 ミケーレはターミナルアーマーを起動した。機体を追従する防壁が展開し、ゼンの連撃を受け止める。防御性能が飛躍的に高まった間、ミケーレは撃つためでなく、戦線を離脱して射線を確保するために推進器を使った。大口径ライフルの残弾は限られている。ここで無理に撃ち尽くすより、装甲の薄い箇所を狙うべきだと判断した。 ジョウゲンは防壁の時間に限りがあると見て、剣を防御へ無駄撃ちせず、距離を詰める。壁を背にしたF.L.L.Bは横へ抜けようとしたが、崩れた道路とビルの残骸が機動を妨げた。ターミナルアーマーが消える直前、ジョウゲンは二振りを交差させ、F.L.L.Bの逃げ道を断つように振り下ろす。ミケーレはライフルを撃ち、弾丸を『燼』の芯近くへ叩き込んだ。剣の振りが鈍り、刃先が地面を削る。 その一瞬を利用し、F.L.L.Bは横へ跳んだ。だが完全には抜けきれない。『滅』の刃が右肩から胴体側面を深く切り裂き、機体の姿勢制御を奪った。ミケーレはなお照準を合わせようとしたが、傾いた機体は照準線を保てず、二発目は外壁へ逸れた。ジョウゲンは損傷した『燼』を無理に振らず、残る『滅』でF.L.L.Bの武装腕を地面へ押さえ、コックピット区画を破壊した。 市街地の粉塵が落ち着いたとき、ゼンも左腕と剣の芯に損傷を負っていた。しかし自力で立ち、戦闘を継続できる状態を保っていた。 第一回戦の勝者:ジョウゲン・ヤマブキ 第二回戦:山岳 急斜面と泥沼が連続する山岳地帯。足場は崩れやすく、斜面の下方には深い泥濘が広がっている。機動力のあるF.L.L.Bには大きな利点がある一方、急加速や着地を誤れば自機の姿勢を崩す。ゼンは強力なファン推進で斜面を飛び越えられるが、双剣を振る際に足場を得られない時間が増える。 両機は山腹の開けた斜面で向き合った。ミケーレは高所を取り、ライフルを構えた。ジョウゲンは剣を低く構え、ファンで砂利を吹き飛ばしながら正面から距離を詰める。ミケーレは弾を二発、間隔を置いて撃った。一発目は進路を制限し、二発目はジョウゲンが避ける方向へ置く。ジョウゲンは一発目を剣で弾き、二発目をファンの横推力でかわすが、その間に斜面の砂利が崩れた。 ゼンの脚が滑る。ジョウゲンは即座に背部ファンを噴かし、機体を浮かせて姿勢を保った。ミケーレはそこを狙ってミサイルを放つ。多弾頭が空中のゼンを包囲するが、ジョウゲンは剣を大きく回して軌道をずらし、ファンの加速で弾頭の隙間を抜けた。爆発の風圧で斜面の土砂が崩れ、二機の間に泥流が走る。 ミケーレは泥流の上端へ推進器で移動し、さらに高い位置へ出た。ジョウゲンは着地地点を限定されることを嫌い、斜面に沿って低空飛行する。ミケーレはジョウゲンの飛行が直線的になりやすい瞬間を観察し、ライフルではなく、デコイを交ぜたミサイルを散開させた。ジョウゲンはデコイを判別しながら本物の弾頭を剣で叩き落とす。だが迎撃に気を取られた間に、F.L.L.Bの大口径弾がゼンの背部ファンの取り付け部をかすめ、装甲を削った。 ジョウゲンは損傷を承知で加速し、斜面の岩壁を蹴って一気に上昇する。二振りの剣が連続して振るわれ、ミケーレは推進器を細かく使って後退した。剣の間合いを避けるために斜面を横切るが、泥に足を取られ、機体の左脚が沈む。F.L.L.Bは大剣を伸ばして岩肌に突き刺し、引き抜く力で姿勢を立て直す。その動作を見たジョウゲンは、足場を回復する瞬間に機体が停止すると見定め、二刀を重ねて振り下ろした。 ミケーレはターミナルアーマーを展開する。剣撃が防壁を叩き、山腹に衝撃が響く。防壁の持続する間、F.L.L.Bは大剣を岩肌から抜き、横へ滑ってジョウゲンの背後へ回った。ミケーレは機関砲を撃ち、ファンの損傷箇所へ弾を集中させる。ジョウゲンは片方の剣を盾のように使って弾を受け、もう一方で地面を切り崩した。土砂が流れ、F.L.L.Bの足元を崩す。 ターミナルアーマーが消えた瞬間、F.L.L.Bは足を取られた。ミケーレは推進器で浮き上がろうとするが、肩部の大型推進器は空中姿勢の修正にも出力を要し、即座に最高速へ戻れない。ジョウゲンは一足で間合いを詰め、『燼』を横に振った。F.L.L.Bは大剣で受ける。刀身は装甲を溶断できるほどのものだが、超大質量の剣を止めきれず、腕部の関節が破損した。 ミケーレはそのまま押し切られないよう、残るミサイルを至近距離で発射した。ジョウゲンはファンを最大出力にし、剣で弾頭を払いながら後方へ跳ぶ。爆発は両機を巻き込み、ゼンの外装とファンの一部をさらに傷めた。F.L.L.Bも左腕を失い、右腕のライフルは弾数が残り少ない。 二機は崩れた斜面の下、泥沼の縁で再び向き合った。ミケーレは射撃を一発だけ放ち、ジョウゲンに回避を強いた。だがゼンは回避と同時にファンで飛び、泥濘を越えて突進する。ミケーレは右へ逃げると見せて、推進器を逆噴射し左へ切り返した。ジョウゲンはその模倣された動きにも対応し、軌道を修正する。しかしファンの損傷で加速の立ち上がりがわずかに遅れ、F.L.L.Bのライフル弾が剣の芯をかすめた。 『燼』の動きが鈍る。ミケーレは最後の好機として、残弾を続けて撃ち込んだ。ジョウゲンは『滅』で弾を防ぎながら接近し、F.L.L.Bの右腕を斬り落とす。ライフルは泥沼へ沈んだ。ミケーレは機体の残る推力で離れようとしたが、脚部の損傷と泥の抵抗で上昇できない。ジョウゲンは『滅』を振り下ろし、F.L.L.Bの胴体を貫いた。 ゼンもファンの損傷と剣の芯の負荷で大破寸前だった。それでもジョウゲンは戦場に立ち、ミケーレの機体が停止したことを確認した。 第二回戦の勝者:ジョウゲン・ヤマブキ 第三回戦:衛星 低重力の衛星表面。大気はなく、遮蔽物は点在する岩塊だけだ。着地の衝撃は小さいが、機体を押さえつける重力も弱い。推進力を使えば長距離を移動できる反面、過剰に加速すれば停止と方向転換が難しくなる。ジョウゲンの背部ファンは地上・航空両対応であり、ミケーレの複合推進器も低重力下で高い機動性を発揮する。 二機は岩塊を挟んで距離を取った。ミケーレは先に射撃を始めず、ジョウゲンの接近角度を観察する。ジョウゲンもまた、開けた戦場でミケーレが大口径ライフルとミサイルを主軸にすることを理解しており、正面からの直線飛行を避けた。ゼンは岩塊を蹴り、ゆるやかな弧を描いて接近する。 ミケーレはライフルを撃つ。ジョウゲンは剣を回して弾道を逸らし、低重力で伸びた移動距離を利用して岩塊の陰へ入った。ミケーレは追い撃ちせず、ミサイルを複数の角度から放つ。デコイも混ざった弾頭群が岩の周囲へ広がり、回避方向を狭める。ジョウゲンは剣を交差させ、弾頭を切り払いながら背部ファンを噴かした。いくつかの爆発が岩塊を砕き、破片が周囲へ漂う。 F.L.L.Bはその破片の陰から接近し、機関砲を撃ち込む。ジョウゲンは『燼』で弾を防ぎつつ、破片を利用して姿勢を変えた。二機の距離が詰まる。ミケーレは大剣を伸ばし、斬撃を見せてからライフルを撃つという複合攻撃を試みる。ジョウゲンはその手順を読み、剣の側面で大剣を押しのけ、もう一方の剣をF.L.L.Bの肩へ向けた。 ミケーレは推進器を噴かして後方へ逃れる。剣先は肩部装甲をかすめただけだったが、低重力のためF.L.L.Bは予想より遠くまで押し流された。ミケーレは姿勢を立て直しながら、ジョウゲンの二刀の連撃が一度に広い空間を制圧する代わり、振った後に機体の向きを調整する時間がわずかに生じると見抜く。次の接近では、その隙を狙ってミサイルを近距離でばらまいた。 ジョウゲンは背部ファンと腕の出力を合わせて加速し、ミサイル群を正面突破した。爆発がゼンの装甲を削るが、彼は止まらない。剣を交互に打ち込む超連撃がF.L.L.Bを追い詰める。ミケーレはターミナルアーマーを起動し、刃を受けながら岩塊の向こうへ逃げた。防壁に剣が当たるたび、機体は大きく揺れる。ミケーレは防御時間を距離の獲得に使い、ライフルを再装填しながら戦場を横断した。 ジョウゲンは追撃を続けるが、低重力下で防壁へ剣を当て続けるのは効率が悪い。彼は剣の連撃を止め、F.L.L.Bの移動先を予測して待ち構えた。ターミナルアーマーが消えるころ、ミケーレは岩塊の陰から現れた。ジョウゲンはそこへ一気に加速し、右の剣で射撃姿勢を崩し、左の剣で胴体を狙う。 ミケーレは直前にデコイを放った。ゼンの照準が一瞬だけ揺らぎ、その隙にF.L.L.Bは大口径弾を発射する。弾丸は『燼』の芯を正面から捉えた。芯は損傷し、黒い大剣の動きが明確に鈍る。ジョウゲンはその剣を振り続けず、すぐに姿勢を変えて『滅』だけで攻めた。冷静な判断で弱点の拡大を防いだものの、二刀による連撃の圧力は弱まった。 ミケーレは優位を得たと見て距離を保とうとする。しかし、弾薬は無限ではない。ミサイルは残り少なく、ライフル弾も数発。ジョウゲンもまた、損傷した剣とファンを抱えているが、接近できれば一撃で決着をつける力を保っている。ミケーレは最後のミサイルを発射し、ゼンの進路を塞ぐ。ジョウゲンは『滅』で弾頭を払うが、爆発に巻き込まれてファンの外縁を破損した。 F.L.L.Bは機動の乱れを狙い、最後の大口径弾を放つ。ジョウゲンは『滅』を盾にする。弾は刀身に当たって弾かれたが、衝撃で剣の芯に負荷が走り、柄を握る腕が一瞬だけ止まった。ミケーレは大剣を伸ばし、ゼンの腕を絡め取ろうとする。ジョウゲンは剣を手放さず、腕部出力を上げて引き戻す。その反動でF.L.L.Bが距離を詰められ、二機は至近距離で絡み合った。 ミケーレは機関砲を撃ち、ジョウゲンは肩と腕で受けながら『滅』を振る。F.L.L.Bは大剣で刃を受けたが、超大質量の一撃によって左腕の接続部が破断した。ミケーレはターミナルアーマーを再起動できず、推進器で離脱を試みる。だが低重力では一度捕まった機体を引き離すにも時間がかかる。ジョウゲンは『燼』を使わず、損傷した『滅』を両腕で保持してF.L.L.Bの胴体へ突き立てた。 F.L.L.Bの動力が停止する。ジョウゲンのゼンも、ファンと『燼』の芯に深刻な損傷を受けていたが、操縦と武装は残っていた。ミケーレは最後まで敬意を失わず、ジョウゲンの戦術を分析し続けていた。しかし分析と模倣だけでは、低重力下で近接戦を避け切れなかった。 第三回戦の勝者:ジョウゲン・ヤマブキ 総合結果 第一回戦から第三回戦まで、ジョウゲン・ヤマブキが三勝。 総合勝者:ジョウゲン・ヤマブキ