紅い月が夜空に不気味な光を放つ廃墟の広場で、三者は互いを睨み合っていた。最初に動いたのはルセスだった。全身を赤いオーラに包まれ、ヘッドフォンの紋様が脈打つように光る。『邪魔だ……全部、壊してやる!』叫びと共に地を蹴り、魔法を纏った拳の百烈拳を増悪と醜悪の花束へと叩き込んだ。拳の一撃一撃が爆発のように弾け、石畳が砕け散る。しかし花束は微笑むような表情のまま、その場に立ち続けていた。その紫の瞳が一瞬、真紅に染まる。『……痛いわ、とても痛い』次の瞬間、彼女の全身から闇の弾幕が四方八方へ放たれ、ルセスは咄嗟に腕で防御しながら後退した。 少し離れた場所では、樺根浮哉が笠の下で静かに骨壺を開いていた。中から取り出された白骨が、呪力に呼応するように空中で組み上がり、獣骨の番犬の形を成す。彼の冷酷な瞳は戦況を冷静に分析していた。『紅い月の影響か……感情が荒れているな。だが、骨は正直だ』彼は手にした頭蓋骨に呪力を流し込み、擬似的な術式を発動させる。骨の群れが地を這い、花束の足元へと迫った。 ルセスは血走った目で浮哉を睨み、狂気じみた笑みを浮かべる。『骨遊びか? 楽しませてくれよ!』彼の体がさらに赤く輝き、必殺技の予備動作に入る。相手へ急接近し、掴みかかって空高く飛び上がると、そこから魔法の乱射を浴びせながら地面へ叩きつけようとした。しかし、その動きを読んでいた浮哉の骨が地面から突き上がり、ルセスの足を絡め取る。『ぐっ……!』空中で体勢を崩したルセスは、それでも執念で魔法を放ち、骨の群れを粉砕した。 一方、花束の瞳が再び輝く。紫の光が広場全体を満たし、地面から無数の棘が生え出た。浮哉は笠を押さえて跳び退く。『広範囲か……厄介だな』彼は骨を盾に変えて棘を受け止めるが、その衝撃で骨の一部が砕け散る。花束はさらに口を大きく開き、耳をつんざく叫びを上げた。衝撃波が空気を震わせ、ルセスは両耳を押さえてよろめく。その隙に、花束の放った毒の雨が降り注ぎ、ルセスの肌を焼いた。しかし彼のリステングが発動し、傷は瞬時に塞がっていく。『効かねぇ……俺は何度でも立つ!』 戦いは次第に激化した。ルセスは妖精を召喚して自動攻撃を仕掛けさせ、浮哉は残された骨を組み直して巨大な骨獣を生み出す。獣骨の咆哮が夜空に響き、ワイバーンの骨格が翼を広げた。花束は全方向から木の根と棘を放ち、三者の間を縫うように攻撃を重ねる。血と骨片と魔力が飛び散り、広場は地獄の様相を呈していった。 決着の瞬間は突然訪れた。ルセスが最後の力を振り絞り、必殺技を放つ。空中で花束を掴み、高く飛び上がったところで魔法の乱射を浴びせ、そのまま地面へ叩きつけた。轟音と共に広場が陥没し、粉塵が舞い上がる。『終わりだ……!』しかし粉塵の中から、花束の低い笑い声が響いた。『まだ、増悪は尽きないわ……』彼女の身体は再生を始めていたが、その再生が完了する前に、浮哉の骨の刃がその胸を貫いた。『紅い月の下では、誰もが怪物になる。だが、骨は朽ちるまで戦う』花束の瞳から光が消え、その身体は崩れ落ちた。 ルセスは勝利の余韻に浸る間もなく、膝をついて荒い息を吐いた。全身の赤いオーラが薄れ、狂気が静まっていく。彼の視線の先で、浮哉が無言で骨壺を抱えていた。『……お前も、同じだな』ルセスの呟きに、浮哉は短く答える。『感情は骨に残らない。だが、覚えておく』紅い月は二人を照らし続け、夜明けの気配はまだ遠かった。