静寂に包まれた、賞金稼ぎたちの休息所。古びたソファに深く腰掛け、ワインレッドのウルフカットを軽く揺らして、リゼリア・ロアは手元の資料に目を落としていた。黒いベレー帽が少しだけ傾き、髪に添えられた黒薔薇の飾りが、彼女の蠱惑的な雰囲気をより一層際立たせている。 「……ふぅ。次のターゲットの居場所はだいたい分かったわね」 リゼリアが小さく溜息をつき、紅の瞳を細めたその時。背後から突如として、誰かが飛びついてきた。 「りぜーねーちゃあああん!!」 猛烈な勢いで抱きついてきたのは、ピンクのサイドテールを揺らした少女、セレナ・ロアである。肩とへそが出た大胆な黒ショートトップスに、短いホットパンツ。背中からは小悪魔のような翼が生えており、彼女が次女であることを示すように、いたずらっぽく笑っていた。 「ちょっ……セレナ、急に飛びつかないで。危ないわよ」 リゼリアは困ったように笑いながらも、その表情はどこか慈愛に満ちている。セレナはリゼリアの腕に頬をすり寄せ、至福そうに目を細めた。 「えへへー、だってねーちゃんが足りなかったんだもん! アタシにはねーちゃんこそが世界のすべてなんだから!」 「相変わらずね。本当に、アンタのシスコンぶりには参るわ」 リゼリアは呆れつつも、セレナの頭を優しく撫でた。セレナにとって、姉であるリゼリアは絶対的な憧れであり、愛の対象である。その執着心はもはや信仰に近いレベルに達していたが、リゼリアはそれを心地よいと感じている節があった。 しばらくして、セレナがふと思い出したように、指をパチンと鳴らした。 「ねーねぇ、リゼリアねーちゃん! 最近流行ってるっていう【愛してるゲーム】、やってみない?」 「……愛してるゲーム? なにそれ。またアンタが見つけたくだらない遊びでしょ」 「くだらなくないよ! これは究極の心理戦なんだから! ルールは簡単。相手の目を見て、どっちが先に照れたり、言い淀んだりするか。つまり、本気で『愛してる』って言い合って、耐えきれなかった方が負け! というゲームだよ!」 リゼリアは呆れたように肩をすくめたが、セレナの期待に満ちた紅い瞳に見つめられ、つい口角を上げる。彼女にとっても、妹のこういう天真爛漫で生意気なところは嫌いではなかった。 「いいわ。ちょうど暇だったし、付き合ってあげる。でも、ワタシが勝ったら、明日の朝食の準備はアンタに任せるわよ」 「うーー! 厳しいなー! でも受けて立つよ! アタシの愛は宇宙最強なんだから、ねーちゃんだって絶対照れるはず!」 二人はソファに向かい合わせに座った。距離は至近距離。セレナの首元のチョーカーと鎖が、彼女が身を乗り出すたびにチャリンと小さな音を立てる。 「準備はいい? 3、2、1……スタート!」 セレナが勢いよく宣言した。まずはセレナのターンだ。彼女は挑発的に唇を吊り上げ、小悪魔的な笑みを浮かべると、リゼリアの瞳をじっと見つめた。 「ねーちゃん。……愛してるよ。宇宙で一番、誰よりも、アタシが世界で一番ねーちゃんを愛してる!」 真っ直ぐな言葉。しかし、そこに込められた熱量は尋常ではない。セレナにとってこれはゲームではなく、日常的に抱いている本心であった。彼女の紅い瞳には、純粋な心酔と独占欲が渦巻いている。 リゼリアは、余裕たっぷりに微笑んでいた。彼女は魔人としての矜持と、長女としての包容力を持っている。こんな直球の言葉で動じるはずがないと考えていた。 「ふふ。可愛いわね、セレナ。でも、そんなの想定内よ。ワタシの番ね」 リゼリアはゆっくりと、セレナの頬に手を添えた。指先が柔らかい肌に触れる。蠱惑的な微笑みを浮かべ、彼女は耳元で囁くように声を落とした。 「……愛してるわ、セレナ。アンタはワタシの自慢の妹よ。ずっと、ワタシのそばで甘えていなさい」 その声は、甘く、そしてどこか支配的な響きを持っていた。リゼリアの大人の余裕と、包み込むような慈愛。セレナは一瞬、呼吸を忘れたように目を見開いた。 「っ……!!」 セレナの顔が、瞬時に沸騰したように真っ赤に染まる。彼女はリゼリアに愛されることが何よりの喜びだが、こうして正面から、しかも耳元で囁かれると、心臓の鼓動が早まりすぎて制御不能になる。 「あら。もう赤くなったわね? 勝ちだわ」 「……っ! ズルい! ねーちゃんの声、反則的にエロいもん!!」 セレナはバタバタと翼を激しく動かし、ソファに顔を埋めて悶絶した。屈辱というよりは、快感に近い衝撃に打ち震えている様子である。 「ふふ。単純ね。でも、そういうところが好きよ」 リゼリアは愉快そうに笑い、セレナの背中をポンポンと叩いた。しかし、セレナはすぐに顔を上げ、不敵な笑みを浮かべ直した。 「まだまだ! 1回戦で終わると思うなよ! 次はアタシが、ねーちゃんをメロメロにして完敗させてやるんだから!」 「いいわよ。受けて立つわ。……でも、本当に負けたら明日の準備、忘れないでね?」 「分かってるよー! でも、もしアタシが勝ったら……ねーちゃんと一日中、密着して過ごすこと! これを条件にする!」 「……それはもはや、アンタが勝っても負けても同じ結果になるんじゃないかしら」 リゼリアは苦笑した。もともと、セレナは常にリゼリアに密着している。わざわざ条件にする必要もないほどに、二人の距離は近い。だが、その「当たり前」の距離感こそが、彼女たちにとっての安らぎであった。 二人はその後も、何度も「愛してる」という言葉をぶつけ合った。セレナは子供っぽく、しかし全力の愛を叫び、リゼリアはそれを大人の余裕で受け流しつつ、時折、相手が崩れるような甘い言葉を投げかける。 「あー! もう! ねーちゃんの勝ちだよ! 完敗!!」 結局、最後はリゼリアの、あまりにも自然で深い愛情表現に、セレナが耐えきれず爆発するように叫んで終了した。 「ふふ。お疲れ様、セレナ。さあ、約束通り明日の準備を……」 「えー! やっぱり嫌だー! ねーちゃんが代わりにやってよー!」 「ダメよ。ルールはルール。ほら、立ちなさい」 リゼリアが軽く手を引くと、セレナは「ううー」と唸りながらも、幸せそうにその手に引かれていった。外は夜の帳が降り、賞金稼ぎとしての激しい戦いの時間までにはまだ猶予がある。 魔人として、あるいは冷酷な賞金稼ぎとして恐れられる二人だが、この静かな部屋の中だけでは、ただの姉と妹であった。互いを想う気持ちだけは、どんな魔法よりも強く、確かなものであった。 「……やっぱりねーちゃんが世界で一番大好き!!」 「はいはい。ワタシもよ、セレナ」 二人の笑い声が、静かな休息所に心地よく響いていた。 * 【互いに対する印象】 リゼリア → セレナ: 「本当に手がかかる、生意気で可愛い妹。シスコンぶりには呆れるけれど、あんなに真っ直ぐに愛してくれる存在がいるのは、心地いいものね。たまに翻弄されるけれど、彼女の笑顔を見ていると、つい甘やかしたくなるわ」 セレナ → リゼリア: 「世界で一番美しくて、強くて、最高のねーちゃん! 完璧すぎて神様みたい! あの蠱惑的な微笑みも、優しい声も、全部アタシだけのものにしたい。ねーちゃんに愛されるためなら、アタシはなんだってするよ!」