第一試合:市街地 高層ビルの谷間に、二機の影が滑り込んだ。交差する道路は狭く、壁面や高架が射線を細かく断つ。CRESCENDO MOONは軽量機らしい鋭さで建物の輪郭をなぞり、三基のFG-εを機体の周囲へ散らした。アルのDelta-00αはDragoonをまとったまま、ビルの隙間を縫うように高度を変える。外殻の装甲が日差しを鈍く返し、肩の螺旋砲とミサイル群が照準を探った。 ルナリアは先に撃たなかった。相手の外殻の分割構造、推進器の配置、肩部兵装の照準角を目で追う。アルもまた、機体の姿勢と盾の移動から、CRESCENDO MOONが射線を遮るだけでなく、敵の飛翔弾を迎撃するよう盾を配置していることを見て取った。どちらも相手の手札を測るために、まずは大きく踏み込まない。 アルが螺旋砲を撃つ。Δ粒子の奔流はビルの角を削り、破片を路上へ撒いた。続けて拡散型ミサイルが左右へ開き、遮蔽の裏へ回り込む軌道を取る。ルナリアは機関銃で近い弾を撃ち落としながら後退し、FG-εをミサイルの進路へ滑らせた。盾が複数の弾を受け、残りはビルの壁へ叩きつけられて爆ぜる。市街地の複雑な遮蔽はミサイルの包囲力を削る一方、爆風と瓦礫は移動経路を狭めていった。 CRESCENDO MOONはHAWKを放つ。四十八発の分裂ミサイルが高層建築の間を一斉に散り、Dragoonの左右と上方を塞いだ。アルは外殻の推進器を強く噴かし、機体をほぼ垂直に駆け上がらせる。ミサイルの一群を外殻装甲で受け、別の群を螺旋砲とライフルで迎撃した。残った弾が外殻をかすめ、装甲板をいくつか剥がす。だがDragoonは多層式で、致命傷には届かない。分離した外殻片は空中で再配置され、機体の周りに新たな防御面を作った。 ルナリアはその機動を見て、正面から撃ち合えば弾数と装甲の差が不利になると判断した。ビルの間へ誘い、剣の間合いまで引き込む。アルも誘いを察しながら、接近戦を避けるだけでは包囲されると判断する。Dragoonの一部を分離して別方向へ走らせ、CRESCENDO MOONの退路を塞ぐように動かした。副腕が銃身を補助し、ライフルの連射が交差点を横切る。ルナリアは盾を前に置いて弾幕を受け、路地へ踏み込んだ。 至近距離で軽機関銃が火を噴く。アルは外殻を傾けて弾を受けながら、高周波ブレードを抜いた。剣とブレードがぶつかり、火花がビルの壁へ散る。CRESCENDO MOONの長剣は切断力に優れるが、Dragoonの厚い多層装甲を一振りで断ち切るには角度が足りない。反対に、アルのブレードも軽量高耐性装甲を一気に貫くことはできず、両機は互いの一撃を受け流しながら狭い道路を移動した。 ルナリアは剣にENを充填し、斬撃に合わせて蒼月の飛ぶ斬撃を放つ。一本目がDragoonの肩装甲を裂き、二本目が分離ユニットの推進器を切断した。三本目を撃つための充填と振りかぶりを、アルは見逃さなかった。ターミナルアーマーが展開し、機体を追う防壁が衝撃を受け止める。アルは防壁の持続時間を攻撃に費やすべく、道路を一直線に加速した。 ルナリアはアサルトアーマーを発動。機体中心から爆発が広がり、接近する敵弾とミサイルを消し飛ばし、近距離の外殻にも大きな損傷を与えた。Dragoonの前面装甲が歪み、ターミナルアーマーにも強い負荷が走る。しかし、外殻は突撃の質量を残していた。爆発の直後、アルは速度を殺さず、盾の隙間を狙って衝角突撃を叩き込む。 CRESCENDO MOONは飛び退いて直撃を避けたが、肩口をかすめた外殻と衝撃波で姿勢を崩す。アルは崩れた姿勢へライフルを撃ち込み、FG-εの一基が弾け飛んだ。ルナリアは残る盾を重ねて防ぐが、剣を振るうための距離を保てない。蒼月の最後の斬撃はターミナルアーマーの防壁に食い止められ、その間にDragoonの副腕が機体を押さえた。アルの高周波ブレードが胸部装甲へ突き刺さり、機体機能を停止させた。 市街地戦の勝者は、アル・クリステン(チームB)。 第二試合:山岳 急斜面の山腹には崩れやすい岩棚が続き、その下には雨水を含んだ泥沼が口を開けていた。遮蔽はあるが、踏み外せば機動力を奪われる。CRESCENDO MOONは斜面の高所へ位置取りし、三基のFG-εを左右と後方へ回す。アルはDragoonの推進器を細かく調整し、斜面に沿って低く浮いた。泥を蹴って移動する必要のない外殻の飛行能力は、この地形で大きな利点になる。 最初に動いたのはルナリアだった。岩棚の陰からHAWKを一斉に放ち、ミサイル群を上下に分ける。上側の群がDragoonの飛行経路を囲み、下側は泥沼の反射を利用して足元から迫る。アルは螺旋砲を連射し、飛来する弾を正面から砕きながら、機体を斜面沿いに横滑りさせた。散ったミサイルの一部は外殻へ着弾し、装甲表面を焼く。別の一部は岩棚に当たって斜面を崩し、土砂が泥沼へ流れ込んだ。 アルは崩落を利用して視界を切り、ライフルを構えた。ルナリアは土煙の向こうから来る射線を読んでFG-εを盾にする。Δ粒子弾は盾を揺らすが、弾道の一部は岩壁へ逸れた。ルナリアは盾の位置を見て相手の射撃間隔を測り、剣を持つ右腕にENを溜める。無理に飛ぶ相手を追わず、岩棚を利用して着地点を限定しようとした。 アルはそれを読み、Dragoonの外殻を部分分離させる。分離ユニットが高所を回り込み、肩部ミサイルが別角度から発射された。CRESCENDO MOONは機関銃で近い弾を落とし、残る弾を盾で受ける。弾幕に押されて岩棚から一段下へ移るが、ルナリアは機体を泥沼へ落とさない。斜面を滑りながら姿勢を制御し、崩れた岩を背にしてアルの直進経路を狭めた。 ルナリアが反撃する。蒼月の飛ぶ斬撃が斜面を横切り、一撃目が分離ユニットの接続部を切り、二撃目がDragoonの推進器を傷つけた。三撃目はアルの機体本体へ向かう。アルはターミナルアーマーを展開し、持久性に特化した防壁で斬撃を受け止めた。攻撃をしのぐ間、外殻の残存推進器は出力を維持する。アルは地形を見て、泥沼を避けるだけでは敵の剣を受け続けると判断した。 ターミナルアーマーをまとったDragoonが急降下する。斜面を斜めに切る衝角突撃は、速度と質量を乗せてCRESCENDO MOONへ迫る。ルナリアは盾を前に出し、機関銃を連射して進路をずらそうとする。弾は外殻を削るが、突破を止めきれない。そこでアサルトアーマーを発動した。爆発が機体の中心から広がり、接近していた弾と分離ユニットを消し、Dragoonの装甲を大きく損傷させる。 爆発の威力でアルの突撃はわずかに逸れ、正面衝突は避けられた。しかし山岳地帯では、逸れた機体が安全な場所へ抜けるとは限らない。Dragoonの片側推進器が損傷し、機体は斜面へ押し付けられる。ルナリアは地形を利用してすぐさま間合いを詰め、長剣を外殻の損傷箇所へ振り下ろした。鋼の刃が装甲の継ぎ目を深く裂き、アルはブレードで応じるものの、足場の悪さで踏み込みが鈍る。 CRESCENDO MOONは盾二基を重ねてブレードを受け止め、残った一基を外殻の横へ打ち当てた。アルの機体が傾いた瞬間、ルナリアは蒼月の最後の斬撃を放つ。ターミナルアーマーはすでに衝角突撃とアサルトアーマーで大きく消耗しており、光刃を完全には受け止められなかった。斬撃が胸部の装甲を断ち、機体の出力系を損傷させる。Dragoonは泥沼の手前で動きを止め、アルの戦闘能力が途絶えた。 山岳戦の勝者は、ルナリア(チームA)。 第三試合:衛星・低重力 灰色の衛星地表には、浅いクレーターと小さな岩塊が点在していた。空気抵抗がほとんどなく、跳躍や射撃の軌道は地上とは異なる。低重力はCRESCENDO MOONの軽量さを生かす一方、Dragoonの推進力と外殻の質量を乗せた突撃にも有利に働く。二機は距離を取ったまま、互いの出力を測るように円を描いた。 ルナリアは機関銃を短く撃ち、弾の進路と相手の回避角を確認する。アルはライフルで応じながら、肩部螺旋砲を撃ち分け、CRESCENDO MOONが盾をどう使うかを観察した。真空に近い環境では弾道が安定し、遮蔽物も少ない。三基のFG-εは飛来する物理弾やEN攻撃を防ぐが、射線を完全に塞ぎ続けることはできない。ルナリアは機体を大きく動かし、盾を回転させて被弾面を分散した。 HAWKが放たれる。四十八発のミサイルが低重力下で緩やかに弧を描き、Dragoonを取り囲む。アルは分離外殻を散らし、ミサイルに対する囮と防壁を作る。螺旋砲とライフルが次々と弾を撃ち落とすが、弾数には限りがあり、すべてを処理することはできない。残弾が外殻の多層装甲へ食い込み、いくつかの装甲板を破壊した。それでも機体本体は守られ、Dragoonは推進器を噴かして包囲を抜ける。 CRESCENDO MOONは剣を振り、蒼月の斬撃を三連続で放つ。一撃目は外殻の左側を断ち、二撃目は推進器を破壊する。三撃目は機体本体を狙うが、アルはターミナルアーマーを展開して受け止めた。防壁が光刃を受ける間、Dragoonは軌道を変え、低重力を利用して大きく迂回する。アルは正面からの攻撃を耐えるのではなく、相手の斬撃を使い切らせてから反撃する戦術を取った。 ルナリアは敵の回り込みを予測し、盾を背後へ移す。しかし、分離した外殻が複数方向から別々に接近し、ライフル弾が盾の配置を揺さぶる。FG-εが一基破壊され、機関銃の弾幕も薄くなった。アルは射撃を焦らず、外殻の残存ユニットを順次回収しながら包囲を狭める。長期戦の集中力を保ち、CRESCENDO MOONが剣を振るために必要な間合いを与えない。 ルナリアは接近を待たず、アサルトアーマーを発動した。機体中心の爆発が周囲を覆い、飛来する弾と分離外殻を消し去る。Dragoonの前面装甲にも損傷が及び、アルは後退を強いられた。爆発は一時的に相手の攻勢を断ち切るが、ターミナルアーマーはなお防壁を保ち、機体の損傷を抑えていた。アルは距離を取らず、反動で流れるCRESCENDO MOONの姿勢を追う。 Dragoonが極超音速へ加速する。低重力下での衝角突撃は、わずかな進路変更でも大きな速度を保つ。ルナリアは残った盾と機関銃で迎撃し、長剣を構える。アルは外殻を前面へ集中し、正面から押し切る軌道を取った。CRESCENDO MOONの斬撃が外殻を裂くものの、速度は止まらない。盾が衝撃を受け、機体はクレーターの縁へ押し飛ばされた。 ルナリアは機体を立て直そうとするが、アルはライフルで推進器を狙い、逃げ道を断つ。続く衝角が側面へ命中し、装甲を大きくへこませた。ターミナルアーマーの防壁は攻撃を支え、Dragoonの本体もなお稼働している。ルナリアは最後の反撃として剣を振るうが、アルは外殻を部分分離して刃の軌道を逸らし、副腕で機体を拘束した。高周波ブレードが装甲の損傷箇所を貫き、CRESCENDO MOONは停止する。 衛星戦の勝者は、アル・クリステン(チームB)。 総合結果 第一試合と第三試合を制したチームBが二勝、第二試合を制したチームAが一勝。総合勝者はチームB、アル・クリステン。