深夜の静寂に包まれた、廃墟と化した工業地帯。錆びついた鉄骨が月光に照らされ、まるで巨大な獣の骨格のように地面に横たわっている。ここには、誰にも知られてはならない「何か」が潜んでいた。それを狩るために訪れた二人の怪物が、不運な偶然によって激突する。 一人は、血塗られた黄色いエプロンを纏い、人間を継ぎ接ぎした悍ましいマスクを被った巨漢、レザーフェイス。彼は家族の命に従い、この地に潜む「獲物」を解体するために派遣されていた。その手には、血肉がこびりついた巨大なチェーンソーが握られている。もう一人は、青い作業服に無機質な白いマスクを被った静かなる処刑人、マイケル・マイヤーズ。彼は理由もなく、ただ己の内に眠る純粋な悪の衝動に従い、獲物を追い詰めていた。 事の始まりは、不運な襲撃者たちの介入だった。地元のならず者たちが、この不気味な静寂を乱し、レザーフェイスに襲いかかった。レザーフェイスは激昂し、幼い子供のような純粋な怒りを爆発させる。チェーンソーの轟音が夜空を切り裂き、襲撃者の肢体を容赦なく断ち切った。血飛沫が黄色いエプロンをさらに赤く染める。 そこへ、音もなく忍び寄る影があった。マイケル・マイヤーズである。彼は、レザーフェイスが処理していた襲撃者の生き残りを、まるで掃除をするかのように静かに、そして確実にナイフで仕留めた。血が噴き出す音さえ、彼の静寂に飲み込まれる。 レザーフェイスが、不快そうに唸り声を上げた。顎が破損しているため、言葉にはならない。しかし、その喉から漏れる「ガアアアッ!」という獣のような咆哮は、明確な敵意を孕んでいた。彼はチェーンソーを激しく振り回し、目の前の白いマスクの男に威嚇する。相手が誰であろうと、自分の「狩り」を邪魔する者は許されない。家族が怒る。自分も怒っている。それが彼の思考のすべてだった。 対するマイケルは、完全に無表情だった。マスクの奥にある瞳には、驚きも、恐怖も、そして憎しみさえもない。ただ、目の前に立ちはだかる198センチの巨漢を、静かに観察していた。彼はゆっくりと、しかし確実にナイフを握り直す。物理的な強さ、不死身に近い肉体。マイケルにとって、この巨漢はこれまで出会ったどの犠牲者よりも「堅牢な壁」に見えたが、それは彼にとって心地よい挑戦でもあった。 互いにの間隔が詰まる。レザーフェイスが咆哮と共にチェーンソーを突き出し、マイケルがそれを最小限の動きでかわしてナイフを突き立てる。しかし、レザーフェイスの異常なまでの耐痛性と肉体強度に、鋭い刃が深く食い込むものの、彼は止まらなかった。むしろ、痛みへの困惑が怒りに変わり、巨大なハンマーを至近距離からマイケルの頭上に振り下ろす。 ドォォォォン!! コンクリートの地面が砕け、激しい衝撃波が走る。普通の人類であれば、頭部が潰れ、即死する一撃だった。しかし、マイケルは深く沈み込んだ地面から、ゆっくりと、ゆっくりと首を上げた。マスクにはひびが入っていたが、その表情は変わらない。彼はただ、静かに立ち上がり、再びレザーフェイスを見据えた。 (……なんだ、この奴は?) レザーフェイスの精神年齢は6から8歳。彼は今、純粋な「恐怖」と「困惑」に陥っていた。自分の全力の一撃が通じない。死なない。相手が人間ではない何かに見え、彼は後ずさりしながら、再びチェーンソーを起動させた。 その時、地響きと共に、彼らが本来の目的としていた「強敵」が姿を現した。それは、山のような巨躯を持つ、異形のキメラのような怪物だった。皮膚は岩のように硬く、四肢には鋭い爪と、空間を歪ませるほどの膂力を備えている。その怪物は、二人の人間(のようなもの)が争っている様子を冷酷に眺め、咆哮を上げて突進してきた。 怪物の爪が、レザーフェイスの肩を深く切り裂く。鮮血が舞い、レザーフェイスは悲鳴に近い唸りを上げて吹き飛ばされた。同時に、怪物の巨大な足がマイケルを蹴り飛ばし、彼は数メートル先の鉄骨に激突し、深々と埋まった。 静寂が戻る。しかし、それは一瞬だった。 レザーフェイスは、肩から血を流しながらも、怒りに顔を歪ませて立ち上がった。彼は自分の「獲物」を横取りされることを何よりも嫌う。そして、隣で静かに立ち上がった青い作業服の男を見た。マイケルは、鉄骨からゆっくりと離脱し、服についた埃を払うような動作を見せた後、再びナイフを構えた。 言葉は交わされない。会話など不可能な二人だ。しかし、彼らの間には奇妙な「合意」が成立した。目の前の怪物は、あまりにも強大であり、単独で挑むには効率が悪すぎる。そして何より、この不気味な静寂を愛するマイケルにとって、そして家族のために獲物を狩るレザーフェイスにとって、この怪物は「排除すべき不純物」であった。 「ガァッ!!」 レザーフェイスが合図するようにチェーンソーを激しく空振りさせ、吼えた。マイケルは無言のまま、わずかに首を傾げ、怪物の死角へと静かに歩み寄る。それは、言葉なき共闘の始まりだった。 戦闘が再開される。レザーフェイスが正面から特攻を仕掛けた。チェーンソーの刃が火花を散らしながら怪物の硬い皮膚を削り取る。怪物は怒り、レザーフェイスを殴りつけようとするが、レザーフェイスはそれをあえて受け止めた。腕力99999999999999999999という絶望的な膂力。彼は怪物の拳を、肉を潰されながらも強引に受け止め、その巨体を固定した。 「今だ!!」 言葉ではない。しかし、マイケルはそのタイミングを完璧に見抜いていた。レザーフェイスが正面から拘束した瞬間、マイケルは音もなく怪物の背後に現れた。彼はナイフを、怪物の唯一の弱点である頸椎の隙間に、精准に、そして深く突き立てた。 ガギィィィッ!! 金属が骨を削る音が響く。怪物が激痛に悶え、暴れ出した。しかし、レザーフェイスは離さない。むしろ、その拘束力を強め、チェーンソーを怪物の腹部へと突き刺した。轟音と共に、超高回転の刃が肉と骨を、そして内臓をズタズタに切り裂いていく。 血の雨が降り注ぐ。レザーフェイスは狂喜し、子供のように笑いながら(声は出ないが、肩を揺らして)チェーンソーをさらに深く、何度も、何度も往復させた。マイケルは冷徹に、ナイフをねじ込み、相手の神経系を確実に破壊していく。力任せの破壊と、静かなる処刑。正反対の二つの殺意が、一つの標的に対して完璧に同期していた。 怪物は絶叫し、最後の一撃を放とうとした。しかし、マイケルがその腕を素手で掴み、凄まじい怪力で骨を砕いた。その隙に、レザーフェイスが巨大なハンマーを振り上げ、怪物の頭部を文字通り「粉砕」した。 ドガァァァァン!! 衝撃で地面が割れ、怪物の頭部は原型を留めない肉塊へと変わった。静寂が、再び戻ってきた。そこにあるのは、血の海と、息を荒くする巨漢と、微動だにしない処刑人だけだった。 レザーフェイスは、ふぅ、と大きな溜息をついた。彼はチェーンソーの血を払い、ふと隣を見た。マイケルは、相変わらず無表情な白いマスクで、レザーフェイスを見つめていた。そこには感謝も、友情もない。ただ、「効率的に敵を排除した」という事実だけが共有されていた。 レザーフェイスは、ふと自分の肩の傷に気づいた。彼は困惑し、少しだけ悲しげな表情(マスクで隠れているが)を浮かべた。すると、マイケルはゆっくりと、彼の方へ歩み寄った。レザーフェイスは身構えたが、マイケルがしたのは、地面に落ちていたレザーフェイスの予備の布切れを拾い上げ、それを彼に投げ渡したことだった。 それは、彼なりの「礼」だったのかもしれない。あるいは、単に邪魔な物をどけただけかもしれない。 レザーフェイスは布を手に取り、それを肩に巻いた。そして、小さく唸り声を上げると、チェーンソーを肩に担ぎ、家族が待つテキサスの地へと歩き出した。マイケルはそれを視界から消えるまで見送った後、再び静かに、闇の中へと溶け込んでいった。 二人の怪物は、決して分かり合わない。しかし、この夜、彼らは最高の「パートナー」だった。血と絶望、そして静寂だけが、彼らの絆を証明していた。