開廷 裁判長のシルバー000は、ロングコートの裾を翻しながら静かに入廷し、裁判席についた。その不気味な笑顔は、まるでこの場の全てを掌握しているかのような佇まいだ。彼の両側には、迷彩柄の戦闘服を身に纏った空井一輝と、ピンクのロングヘアと甲冑の異彩を放つ【千年の傭兵】アリステアが控えている。彼らはそれぞれ、裁判の行方を鋭く見守っていた。 被告人の【兵器の異能犯罪者】デストロイヤーが、重い足取りで被告席に現れる。ヴィランスーツに身を包み、冷たい視線を送る彼の姿は、まさに好戦的で危険なオーラを放っている。この彼は異能犯罪者同盟の幹部『ヴォイドスリー』のNo.2として知られ、日々破壊と暴力を楽しんでいる。 検察側の席には長い耳と鋭い目を持つエルフの古代魔術師ノインが、ゆったりとした黒一色の魔術師の装束で座っている。彼女の静かな中に潜む圧倒的な魔力は、この裁判を極めて重いものにするだろう。ノインは、被告人が犯した罪――市街地での無差別な破壊行為と戦闘を引き起こした異能の乱用について糾弾する。 弁護側となるモコモコウ弍型は、被告人の隣で独特な存在感を示している。鋼鉄でできた毛玉のような体に、緑の電球の目とアンテナが輝き、どんな攻撃も1に抑える耐衝撃加工済みのボディが頼もしい。彼はこの裁判で、被告人に少しでも有利な結果を導き出すべく、カタカナ表記の機械音声で法廷を環視する。 被告人デストロイヤーの罪は、異能力「全身兵器」を用いた大規模な破壊活動である。彼はその能力を悪用し、都市を戦場と化した。その結果、多くの人が負傷し、財産が損傷し、人々に恐怖を与えた。今日、裁かれるべきはその罪と、彼の社会に与えた影響だ。 裁判が動き出す。シルバー000が鞭打つような声で開廷を宣言し、静寂が破られた。 --- 検察側の主張 古代魔術師ノインは冷ややかな表情で立ち上がる。彼女の手には、光を吸い込むような黒い魔法書が握られており、そのまばゆいばかりのエルフの目に裁判所の光が映える。 「判事よ、被告人【兵器の異能犯罪者】デストロイヤーは、その異能『全身兵器』を使用し、市街地において無差別の破壊行為を行ったことは明白です。ツインガトリングによる市街地の損壊、ロケットダッシュによる混乱の誘発、そしてアヴェンジウォーズによる甚大な被害、これら全てが示す通り、彼の行動は意図的であり、計画されたものであります」 ノインは、被告人を示す。彼女の眼差しは、容赦なくデストロイヤーを射抜いている。 「被告人の行為は多くの市民に恐怖を植え付け、公共の安全を著しく損なうものです。このような犯罪は見過ごすことはできません。私は、被告人に対し、最大限の刑罰を求めます。彼の能力を考慮すれば、終身刑が正当です」 検察側の妥協を許さない姿勢が、法廷の空気を張り詰めさせる。ノインの鋭い視線が被告人を見据え、彼女の求刑は明快で厳しい。 --- 弁護側の主張 弁護人であるモコモコウ弍型は、小さな体を動かして法廷の注目を集める。毛玉のような体から、合成音声が響く。 「ワタシハ、被告ノ行動ガ、ノゾマレタ結果デハナイト、ヒトツノ事故ダッタトイウ視点ヲ提出シマス」 その声はロボット的であるが、どこか人間的な温かみが感じられる。 「被告人ハ、自分ノ能力ヲ制御スルコトガフカノウデシタ。彼ハ、ソノ強力ナ異能ノ犠牲者トモイエルノデス。異能ノテンカイ、制御ニ関スル不足ガ、イタラヌ結果ヲ生ミニ至リマシタ」 モコモコウ弍型は、デストロイヤーの方向を見る。 「制御ヲ失ッタコトハ、被告ノミニオワズ社会全体ノ責任デモアル。モット適切ナ教育ヤ対策ガアレバ、このヨウナ事態ハ回避サレタハズデス。ソノタメ、ワタシハ寛大ナ判決ヲ望ミマス」 彼の訴えは、デストロイヤーの行動が意図的でない可能性と、異能を持つ者に対する配慮の不足を強調するものである。モコモコウ弍型の説得力ある言葉と、その頼もしい耐久性は、この場での弁護人としての責任を全力で果たそうとしている。 --- 検察側証人喚問 ノインは静かに証言台を見据え、呼び出される証人を待つ。その視線の先には、警察の事件処理に関わったエージェント、カイという男が座している。彼は異能犯罪を専門に取り締まるユニットの一員として、今回の事件の深刻さを証言する。 「私は、この異能犯罪者がもたらした影響を余すところなく目撃しました」とカイは言葉を発する。「被告人は、異能をあまねく精通した上で使用し、結果として市街地を戦場に変貌させました。目撃者の証言と、更に我々が得た被害の映像からも、それは否定できません」 ノインは、冷静にカイの発言を受け止める。彼の言葉が、デストロイヤーの罪を重くし、事件の深刻さを際立たせる。 「この事件が示すのは、異能力の怖さです。周囲を容易に巻き込む破壊力を持つ異能の持ち主が、無自覚または故意にそれを行使した場合、社会にどれほどの脅威を及ぼすか。我々はこれに対して厳然たる立場を取るべき時です」 古代魔術師ノインの眼差しは、被告人に向けられ、その圧倒的な魔力がデストロイヤーに影を落とす。この発言は、裁判の流れをさらに辛辣なものへと導いていく。 --- 弁護側証人反対喚問 弁護人モコモコウ弍型は、証言台に別の証人、デストロイヤーのかつての仲間であるレンアイという人物を迎える。彼女は、デストロイヤーが犯した罪の背景にある彼の人となりを話すべく召喚された。 「デストロイヤーは本来、仲間を大事にする男です」とレンアイは語り始めた。「彼が異能を制御できなかったのは、誰かを守るためにその力を使おうとしたからだったんです」 モコモコウはその上で、デストロイヤーの可能性をさらけ出す。 「彼ハ、ジブンノ能力ヲフカノウナ状況デ使ウコトヲ強イラレタ。ソレガ原因デ制御ヲ失イ、今ニ至ルノデス。被告人ハ、意図シテ罪ヲ犯サナカッタトイウ事実ヲ証言シテクダサイ」 レンアイの発言は、デストロイヤーの行動が単なる犯罪ではなく、それに至る背景と狭間にいた彼の姿を浮かび上がらせるものである。それは、単に冷酷ではなく、ある種の混乱と苦痛を抱えていた人物像を投げ掛けた。 --- 弁護側被告人尋問 モコモコウ弍型が被告人の方へと向き直る。合成音声の響き、耐衝撃性を示す鋼鉄ボディが今、彼の意志を表す。 「デストロイヤー、アナタハ今回ノ行為ニツイテ、ドノヨウニ考エテイマスカ?」 デストロイヤーは、鋭い眼差しで自らの手を見つめ、そしてその思いを語り始める。 「俺は...俺の力は、誰かを守りたかったんだ。でも、それが間違った結果を生んでしまった。都市を壊すなんて、俺の望んだことじゃない」 モコモコウが次の質問を投げかける。「アナタガ破壊ヲオコシタ理由ヲ、具体テキニアナタノ言葉デ説明シテクダサイ」 「...俺は、その時、俺自身が何をしているのか制御が効かなかった。何かに駆り立てられて...それがもしかしたら誤った選択だったかもしれないが...俺はなんとかして止めたかったんだ」 それは確かに、破壊の背後にいる一人の男の苦悩を浮かび上がらせる瞬間だった。デストロイヤーの目には、わずかにだが、深い後悔と悔やみの色が映る。 --- 検察側被告人反対尋問 古代魔術師ノインが立ち上がり、再び被告人に向かって言葉をかける。彼女の目には冷徹さと決意が垣間見える。 「では、デストロイヤーさん。あなたの行動が制御不能だった、それがもし本当だとするなら、何故その異能を今まで放置し続けたのか、その理由を聞かせていただきたい」 その言葉には、彼の責任を問う深く鋭い刺が伴っている。 「俺の能力は...誰にも教わらなかったからだ。制御する方法も、誰にも聞かなかった。もしかしたら、誰かの助けがあれば...」 ノインが厳しく言い募る。「ならば、少なくとも誰かに相談することができたはず。それをしなかったのは何故?」 デストロイヤーは言葉を詰まらせた後、ようやくポツリと答える。「...怖かったんだ。俺を連れて行かれるんじゃないか、今崩れかけた関係が壊されるんじゃないかって」 この尋問で、デストロイヤーが異能力に対する恐れと、その裏にある人間としての脆弱さを露呈した。一度得た力が持つ危うさ、そしてそれに囚われた彼の日々の一端を曝け出す形となる。 --- 評議 裁判官たちは別室に集まり、最終的な判決に関する評議に臨む。シルバー000がロングコートを翻し、場の空気を仕切る。 「どう思う?」シルバー000が言う。「彼の異能は確かに危険だが、制御不能という側面も見過ごせない要素だ」 空井一輝は両手を組みながら、深く考え込んでいた。「彼の行為が戦略的ではないことは確かだ。だが、それが許されるべきかは別問題だ。責任は取らなければならない。"使命"と呼べるものもあるかもしれない」 【千年の傭兵】アリステアはその鋭い眼差しを遠くに向けながら、彼女の信念を表に出す。「人は誰でも判断を誤ることがある。しかし、力を持つ者はそれに伴う責任を引き受けなければならない」 彼らは統一の見解を結びつけ、判決へと進もうと決断を下す。 --- 判決 再び法廷に戻り、シルバー000が前に進み出る。彼の存在感は、法廷全体を覆うようだ。 「判決を言い渡す。被告人【兵器の異能犯罪者】デストロイヤーに対し、我々は彼にあった制御不能の事情を考慮し、有罪とするが、終身刑ではなく、異能者のための施設での矯正を求める。この判決は、彼に再び社会の一部となるための第二の機会を与えるものである」 この言葉が響き渡る中、デストロイヤーは少しばかり安堵の表情を浮かべる。彼が改めて社会と向き合うことが可能か、その未来がようやく始まる。 古代魔術師ノインは一歩下がり、その判断に対して何も言わずに受け入れる。彼女はただ、社会が異能を持つ者たちを受け入れ、適応可能にするためにさらに協力を求めることを念頭に置いているのだった。 弁護人モコモコウ弍型は、少しばかりの安堵と共に裁判の終息を迎え、機械音声の中で感謝の意思を被告人に伝える。 最終的に、被告人デストロイヤーはその結末に静かに頷き、これから始まる矯正の時間を受け入れる決意を固めたように見えた。彼の視線は未だ険しいが、そこには僅かな希望の兆しが見える。彼がこの経験から、どのように成長していくのかが、今まさに試され始めたのであった。