秋の怪宴、始まる前 それがねぇ、皆さん。秋の夜長が深まる頃でしてねぇ、アタシ、稲川淳二がね、いつものように山道を歩いておりましたの。紅葉がチラチラと舞い落ちて、風がヒューッと冷たく頰を撫でるんですよ。嫌だなぁ、こんな夜に一人で歩くなんて、ちょっと心細いなぁって思ってたら……あれぇ? おかしいなぁ。遠くの古い社から、妙な光が漏れてくるんです。気になって近づいてみますとねぇ、そこには不思議な広場が広がってて。木々の間から、まるで別世界のようなんですよ。怖いなぁ……でも、足が勝手に進んじゃうんです。 怪しき出会い 広場の中央にねぇ、三つの影が立っておりますの。いや、影なんてものじゃありませんよ。一つはねぇ、白い手足と尻尾が生えた、巨大な契約書のような化け物。紙がサラサラと揺れて、インクの匂いがプンプン漂ってくるんです。嫌だなぁ、あんな紙が動くなんて、聞いたこともないですよ。向かいには、美しい金髪の少女が浮かんでてねぇ、七色の服を着た人形遣いさん。彼女の周りには、小さな人形たちがカタカタと動き出して、まるで生きてるみたい。トン、トン、と人形の足音が響くんですよ。あれぇ? もう一人は、猫背の若い男でしてねぇ、短いくせ毛が目にかかって、骨太の体を縮こまらせております。足元にはブルーグレーの毛並みの猫がニャーと鳴いて、でも彼を避けるように離れてるんです。はぁ、嗚呼羨ましい羨ましい僕ときたら〜なのに、なんて呟きが聞こえてきましたよ。不思議な三人……いや、三体か。秋風がザワザワと木々を揺らし、彼らが互いに睨み合うんです。勝利を目指して戦う、なんて声が風に乗って聞こえてきましたの。怖いなぁ、アタシは木陰に隠れて、息を潜めて見守ることしかできませんよ。 契約の影、動き出す 最初に動いたのは、あの契約書の怪物でしたねぇ。紙がバサッと広がって、白い手がスッと伸びるんです。相手の少女と男に向かって、精神を汚染するような打撃を繰り出すんですよ。ドンッ! という音がして、空気が重くなるんです。少女は冷静に指をピクピク動かして、人形たちを飛ばしますの。ランスを持った人形がシュッと突き刺さり、シールドでガキン! と防ぐんです。あの怪物、突進してきましたよ。前方へゴゴゴッと素早く飛び込んで、幻影を見せつけるんです。少女の周りがキラキラと歪んで、彼女の目が一瞬揺らぎますの。嫌だなぁ、こんな幻なんか見せられたら、誰だって惑いますよ。でも少女は不撓不屈、すぐに人形を操って爆弾をドカン! と投げつけ、怪物を吹き飛ばします。あれぇ? おかしいなぁ、怪物はFAXみたいな音を立てて、紙の眷属を三体召喚したんです。サラサラ、サラサラと小さな契約書たちが這い回って、少女を囲むんですよ。 人形の舞い、森の魔力 少女はねぇ、まるで魔法の森の住人みたいに飛んで、スペルカードを放ちますの。『咒詛「魔彩光の上海人形」』って叫んで、七色の光がビュッと飛び交うんです。人形たちが一斉に動き出して、糸がピンと張る音がしますよ。カタカタ、カタカタ。怪物たちの眷属を次々と切り裂くんです。男の方はというと、根暗そうに呟きながら能力を発動。『イツラライ』ってねぇ、電流の流れる水域がザバーッと広がって、燃え盛る小舟がポッと現れるんです。ゴウゴウと炎が上がり、周囲100メートルがビリビリ感電の海に。怪物は尻尾をビクッと震わせて、船に強制的に乗せられちゃうんですよ。船の上じゃ攻撃が止まらず、ジリジリとダメージが蓄積するんです。はぁ、嗚呼羨ましい羨ましい僕ときたら〜なのに、男がそんな口癖を繰り返しながら、猫をチラチラ見てるんです。猫は嫌そうに尻尾を振って、遠巻きに。 噛みつきと電話の罠 男はさらに、無差別噛みつき攻撃の粘土生命を召喚しますの。グニャグニャと粘土が形作られて、ガブガブッと怪物に飛びかかるんです。少女の人形たちも負けじと『魔操「リターンイナニメトネス」』で、糸を絡めて引き戻すんですよ。バチバチッ! 電流が人形に飛び火して、一部が焦げちゃいますけど、彼女は強気で『多勢に無勢。こっちは一人じゃないものね』って言い放ちますの。怪物は苦しげに紙を震わせて、今度は電話のような攻撃。超強力な精神汚染がビュオオッと男と少女に襲いかかるんです。男の顔が青ざめて、猫背がさらに曲がりますよ。嫌だなぁ、精神が汚染されたら、眷属になっちゃうんですって。少女は人形のシールドで防ぎつつ、『戦操「ドールズウォー」』で反撃。人形の大軍がドドドッと押し寄せて、怪物の防御を削ります。あれぇ? 男の小舟の炎が弱まって、水域の電流がジジッと収まり始めてるんです。おかしいなぁ、誰かが勝ちを掴みかけてるのかしら。 混沌の頂、奥義の時 戦いは激しくなりますよ。秋の落ち葉が舞い散る中、怪物が再び眷属を召喚してFAXの音が響き渡りますの。サラサラと増える紙の群れが、少女の人形を飲み込もうとするんです。少女は飛んで逃げつつ、『試験中「ゴリアテ人形」』を放ち、巨大な人形がドシン! と現れて、眷属を踏み潰します。男はペーシストバイトの粘土をさらに呼び、ガブガブッと怪物の尻尾を噛みちぎろうとするんですけど、防御が高いんですよ。あの紙、びくともしないんです。怪物が電話攻撃を連発して、男の精神がグラグラ揺らぎます。はぁ、嗚呼羨ましい羨ましい僕ときたら〜なのに、男の声が弱々しく聞こえますの。少女は最後に究極奥義、『「グランギニョル座の怪人」』を唱えて、人形たちが劇場のように動き出し、怪物と男を包み込むんです。キラキラと光が爆発して、広場全体が揺れますよ。ゴロゴロッと地響きがして、木々がザワザワ。 余韻の秋風 やがてねぇ、光が収まって、広場に静けさが戻りましたの。一人は倒れ、二人が残る……いや、正確にはわからなくて。怪物は紙がボロボロに散らばって、少女は息を切らして浮かび、男は猫を抱いてうずくまってましたよ。でも、勝利の形は曖昧でしてねぇ、秋風がヒューッと全てを運び去るんです。アタシは怖くて動けず、ただ見てるしかありませんでしたの。嫌だなぁ、怖いなぁ……あんな不思議なバトル、夢じゃなかったんですよ。紅葉がチラチラ舞う中、アタシはそっとその場を離れましたけど、今でもあの広場の光が、目に焼き付いて離れないんです。皆さんも、秋の夜に山道を歩く時は、気をつけてくださいねぇ……。