空はどす黒い雲に覆われ、かつての文明の残骸が骸骨のように突き出している。世界は静寂に包まれていた。だが、それは平和な静寂ではない。絶えず聞こえてくる、喉を鳴らすような不気味な呻き声と、肉を引き摺る音が、ここが死者の楽園であることを物語っていた。 地球を襲った謎のゾンビウィルスは、あらゆる秩序を破壊した。生き残った人間たちは絶望し、あるいは怪物へと成り果てた。そして今、この地獄に、互いに面識のない五人の「生存者」が、それぞれの絶望と戦いながら点在していた。 【荒廃したコロニー】 かつては物流の拠点だったその場所は、今や錆びついたコンテナと血塗られたアスファルトの迷路と化していた。そこに、一人の男がいた。ジョバンニ=サルトーリ。歴史研究家である彼は、泥にまみれたコートを纏い、鋭い観察眼で周囲を警戒していた。 「……ここなら、食料の備蓄があるはずだ。だが、この足跡……数分前に『彼ら』が通り過ぎたな」 ジョバンニは、地面に刻まれた不自然な擦過痕からゾンビの数と方向を割り出す。彼は極限状態にあり、疲労で視界がかすれていた。それでも、知識への渇望と生存本能が彼を突き動かす。彼は静かにナイフを抜き、物資庫へと忍び寄った。 だが、背後から低い唸り声が響いた。振り返れば、皮膚が剥がれ落ち、どす黒い筋肉が露出したゾンビが三体。白濁した目で彼を凝視し、顎をガタガタと鳴らしている。速度は遅いが、その数は絶望的だった。 「ふん、歴史の塵にされるのは御免だ」 ジョバンニは軽やかな身のこなしで最初の一体をかわし、急所にナイフを突き立てる。しかし、絶え間ない戦いで体力は限界に近かった。 そのとき、空を切り裂くような衝撃波がコロニーを襲った。 「どけ! 邪魔だ!!」 黒いスーツに身を包み、騎士のヘルムを被った異形の男、【兵器】武器人間が、ジェット機を凌駕する速度で降下してきた。彼は着地の衝撃で周囲のアスファルトを粉砕し、襲いかかっていたゾンビたちをまとめて吹き飛ばす。 「……生存者がいたか。効率が悪いな」 武器人間は冷静に言い放つが、その瞳には破壊への飢えが宿っていた。彼は右腕を一瞬で鋭利な大剣へと変貌させる【チェンジソード】。そのまま超高速の旋回を加え、周囲を囲んでいた十数体のゾンビを一瞬で細切れにした。肉片が舞い、黒い血がヘルムに飛び散る。 「貴殿、助けてくれたのか?」ジョバンニが問いかけるが、武器人間は答えず、ただ次なる獲物を探して頭部を銃へと変形させた【チェンジライフル】。正確無比な狙撃が、遠方にいたゾンビの頭部を次々と弾けさせる。 一方、コロニーから離れた【聖なる森の境界】。そこには、眩いばかりの光を纏った少女、ヴィナス・ティリスが立っていた。彼女の周囲には、白く光り輝く月の槍が浮遊している。 「もう、いい加減にしてください……。あなたたちを救えないのが、こんなに悲しい」 彼女の前には、ウィルスの変異により巨大化した「クリーパー」と呼ばれるゾンビがいた。身長三メートルを超え、腕が異常に発達した怪物が、耳を劈く咆哮を上げて突進してくる。 ヴィナスは静かに槍を構えた。【ムーンライトスピアサー】。 光の槍が閃光となって突き出され、クリーパーの巨体を何度も貫く。超高速の連撃が空気を焼き、光の軌跡が網のように怪物を拘束した。最後の一撃が心臓を貫き、クリーパーは光に包まれて塵へと消えた。彼女の【聖光の加護】が、疲弊した彼女の精神を辛うじて繋ぎ止めていた。 そんな激戦が繰り広げられる中、奇妙な光景があった。瓦礫の山の上に、大きな帽子を深く被り、(-ω-)という表情でぼーっと空を眺めている少女、壱ノ瀬恵がいた。 彼女の周囲には、数百体のゾンビがひしめき合っていた。本来なら一瞬で食い尽くされるはずだったが、なぜかゾンビたちは彼女に触れることができない。ある者は足をもつれさせて転び、ある者は突然自らの腕を噛み切り、ある者は彼女の足元で滑って頭を打ち砕いた。 「ふぁ……おなかすいたなぁ……」 恵が欠伸をした瞬間、彼女が偶然に落とした空き缶が転がり、それが偶然にもゾンビの群れの中心にあったガスボンベのバルブを直撃。連鎖的に爆発が起き、周囲のゾンビがまとめて吹き飛んだ。彼女はそれにも気づかず、またぼーっと空を見ていた。 そして、戦場を蹂躙するもう一人の男。血みどろの英雄、螺旋羅刹。彼は返り血で真っ赤に染まった槍を回しながら、冷酷に笑っていた。 「我が伝説の一幕にも値しないゴミ共め」 彼はカオスエネルギーを槍に込め、猛烈な回転を付与する。槍を投擲した瞬間、それは真空のドリルとなり、前方にいたゾンビの壁を文字通り「捩じ切った」。【グングニル】の一撃が通り過ぎた後には、肉の挽き肉のような惨状だけが残されていた。 羅刹は傲慢に振る舞うが、その内側では極限の疲労が蓄積していた。それでも彼は、自らの誇りにかけて膝をつくことを拒否していた。 【研究所】への道中。 運命に導かれるように、あるいは偶然に、五人は研究所の正門前で合流することとなった。そこは世界で最も危険な場所。正体不明の強力なゾンビが徘徊し、しかしそこにはワクチンがあると言われている。 「ふん、馴れ合うつもりはないが、効率的に動くなら協力する」武器人間が腕を鎌に変える【リーパーサイクロン】。 「私も、この地獄を終わらせる手伝いをしましょう」ヴィナスが槍を構える。 「……あー、適当に頑張ってください」恵が眠そうに呟く。 「はっ! 私の輝きに惹かれて集まったか。よかろう、英雄の背中をよく見ていろ」羅刹が不敵に笑う。 ジョバンニは彼らの異能に圧倒されながらも、鋭い観察眼で研究所の構造を見抜いていた。「正門は罠だ。換気口から潜入すべきだ。私の知識を信じろ」 彼らは互いに不信感を抱きながらも、生き残るために手を組んだ。研究所内部では、知能を持った「αゾンビ」たちが彼らを待ち構えていた。皮膚は鋼鉄のように硬く、速度は常人を遥かに超える。武器人間が【ハイパービーム】で壁ごと敵を消し飛ばし、羅刹が【奥義アキレウス】で限界を超えた速度で首を撥ね、ヴィナスが【トリプルフラッシュ】で広範囲を浄化する。 しかし、戦いは長期化した。時間が経つにつれ、ゾンビたちはさらに進化し、再生能力を獲得し始めた。絶望的な消耗戦の中、ジョバンニは研究所の深部で「ウィルスの真実」が記された機密文書を見つけてしまう。 それは、人間が意図的に作り出した絶望であり、救いなど最初からなかったという残酷な真実だった。 「……ああ、そうか。なるほど。そういうことだったのか……」 ジョバンニの精神が、ついに限界を迎えた。知ってはならない真実を知った彼の瞳から光が消え、狂気に染まる。彼は突然、仲間を突き飛ばし、自らゾンビの群れへと歩き出した。笑いながら、歌いながら。彼はそのまま、闇へと消えていった。 残された四人は、血路を開き、ついにワクチンを確保して研究所を脱出した。彼らが世界にワクチンを散布し、長い時間をかけてウィルスを根絶させるまで、さらに数年の地獄が続いたが、彼らの圧倒的な力があれば、それは不可能ではなかった。 ――そして、時が流れた。 世界に緑が戻り始めていた。灰色の空は澄み渡り、廃墟の隙間から小さな花が顔を出している。 武器人間は、ヘルムを脱ぎ、風に当たっていた。もはや戦う必要のない世界で、自分の存在意義を静かに考えていた。 ヴィナスは、花畑に座り、失われた多くの命に祈りを捧げていた。 羅刹は、折れた槍を記念碑として地面に突き刺し、「まあ、悪くない結末だ」と皮肉げに笑った。 そして恵は、相変わらずの(-ω-)顔で、緑の草原に寝転び、心地よい昼寝をしていた。 彼らは、失ったものの大きさを噛み締めながら、新しく始まった静かな世界を、ただ見つめていた。 【生存者】 ・【兵器】武器人間 ・【聖光を司る星の守護者】ヴィナス・ティリス ・壱ノ瀬 恵 ・血みどろの英雄 螺旋羅刹 【死亡者】 ・ジョバンニ=サルトーリ(死因:禁忌の知識による精神崩壊およびゾンビへの自死的突入) 【参加者の行動】 ・武器人間:圧倒的な火力と速度で前線を突破し、多数のゾンビを殲滅した。 ・ヴィナス:聖光の力で仲間を支援し、広範囲の浄化と殲滅を行った。 ・壱ノ瀬恵:無自覚に幸運(因果操作)を引き寄せ、危機を回避し続けた。 ・螺旋羅刹:回転の能力を活かした超攻撃で、強力な個体を次々と排除した。 ・ジョバンニ:斥候として物資調達とルート確保に貢献したが、禁断の知識に触れ精神を喪失した。