第一試合:市街地――ビル群と高強度遮蔽 ミキュロスのACCURATE-01は、崩れた高架道路の陰で膝を落とした。絶妙レーダーが壁越しの熱と移動を拾い、正面の広い交差点ではなく、ビルの狭間へ続く路地を警戒する。フレイは射撃武装を持たない。接近を許さず、ミサイルと火炎放射器で動きを限定し、間合いを支配する。それがミキュロスの組み立てだった。 赤い粒子がビルの窓からこぼれた。赫い蝶は翅のような放熱板を広げ、フレイを空中へ躍らせる。蜃気楼の揺らぎが幾重にも重なり、機影は屋上、路地、交差点の上へと同時に現れたように見えた。レーダーは動きを捉えるが、幻影と瞬間移動を完全に見破れるわけではない。ミキュロスは反射的に誘導ミサイルを放たず、レーダーの反応が重なる瞬間を待った。 フレイは直進しなかった。ビルの壁を蹴り、狭い通路へ滑り込む。ミキュロスはそこで初めてミサイルを発射した。弾頭は軌道を変えて追尾するが、獄鱗の閃光が視界を焼き、蜃気楼が誘導を狂わせる。数発が壁面に突き刺さり、爆発で外装を削ったものの、フレイは爆風の縁を抜けた。残弾は有限だ。ミキュロスは無駄撃ちを避け、残りを温存する。 彼は盾を前へ掲げ、路地の出口へ後退した。フレイの二刀が赤く燃え、刃が盾を打つ。衝撃と熱で盾の表面が赤熱し、腕部の駆動が鈍る。ミキュロスは刃を受け流しながら、鋭刃アームでフレイの胴へ突きを放った。だが赫い蝶は紙一重で軌道を変え、刃先は装甲をかすめるだけに終わる。反撃の二刀が肩部と脇腹を続けざまに切り裂いた。 ミキュロスは火炎放射器を起動した。狭い路地に炎が満ち、逃げ道を壁と熱で塞ぐ。フレイは獄鱗を放ちながら上昇し、ビルの外壁をかすめて炎の上を越えた。火炎の爆発的な圧力は接近を一瞬妨げたが、空中機動と蜃気楼を封じるには至らない。ミキュロスは火炎を切り、盾を構え直す。過熱した左腕は反応が遅れ、レーダーが示す複数の反応から本体を判別する猶予も短くなっていた。 赫い蝶は一度、交差点の上空へ退いた。ミキュロスは残るミサイルを二発ずつ間隔を置いて撃ち、逃げ道を絞る。フレイは一発目を横へ誘い、二発目が通る瞬間に視空間上の位置を移した。ミサイル同士がビルの角で爆発し、破片が路地を塞ぐ。その煙の中、赤い粒子が盾の陰へ落ちた。 ミキュロスはレーダーの警告に合わせ、盾を背後へ回して鋭刃を振る。しかしフレイは攻撃線の外へ半歩ずれ、二本の冥王を交差させた。熱刃が右腕の武装を断ち、続く一撃が脚部の関節を深く損傷させる。ACCURATE-01は片膝をついた。ミキュロスはなお盾で胴体を守り、突きで最後の反撃を試みるが、視界に映るフレイは陽炎の像だった。 本体は上方から降り、盾の縁を越えて胸部装甲へ刃を叩き込む。火花と赫い光が散り、機体の動力が落ちる。ミキュロスが機体を起こそうとした時、二刀目が背部を貫いた。ACCURATE-01は動きを止め、戦闘能力を失った。市街地の遮蔽は接近を遅らせたが、フレイの幻影と空中移動を無力化するほどではなかった。 第一試合の勝者:チームB・赫い蝶 第二試合:山岳――急斜面と泥沼 雨を含んだ山道は、急斜面の途中で泥沼へ変わっていた。ACCURATE-01は高機動を生かして岩棚を移り、足場の安定した場所を選ぶ。ミキュロスは絶妙レーダーで周辺を走査し、フレイが空中から接近するなら、斜面と泥沼の間へ誘い込むつもりだった。地形は機動を制限する。しかし制限は両者に等しく働く。フレイは空中を舞える一方、獄鱗の粒子とブースターの噴射は泥と雨に影響される可能性がある。ミキュロスはそこを狙った。 フレイが稜線の向こうから現れる。赫い粒子が雨を照らし、陽炎の機影が岩壁に映った。ミキュロスはすぐには撃たない。レーダーが捉えた移動の変化から本体の進路を見定め、ミサイルを一発だけ放つ。誘導弾は斜面を回り込み、フレイの横腹へ迫った。赫い蝶は獄鱗蜃気楼で位置をずらす。弾頭は岩肌に当たり、爆発が泥を吹き上げた。 爆風で視界が濁った瞬間、ミキュロスは斜め下へ跳び、沼の縁を背にした。追うフレイは高度を上げず、岩棚に沿って低く飛ぶ。ミキュロスは盾を前に据え、火炎放射器を短く噴射した。炎が雨と泥を蒸気に変え、斜面の一角を白く覆う。フレイは熱の壁を避けて上昇するが、視界を失ったわずかな間にミキュロスが距離を詰めた。 鋭刃アームの突きがフレイの肩装甲をかすめる。ミキュロスは追撃せず、泥沼側へ後退した。赫い蝶は軌道を変え、正面からではなく斜面の上側へ抜ける。二刀が盾を打ち、強烈な熱が左腕の外装を焦がした。ミキュロスは盾を滑らせて刃を逸らし、機体の推進を使って斜面を横切る。ぬかるみを踏んだフレイの脚部が一瞬沈んだ。地形の不利を利用する好機だった。 ミキュロスはミサイルを続けて発射する。フレイは身をひねり、片方を蜃気楼でかわす。もう一発は回避しきれず、爆発が翅形放熱板の端を叩いた。装甲が砕け、飛行姿勢がわずかに崩れる。ミキュロスはその隙に盾を前へ押し出し、鋭刃を胸へ突き込もうとした。だがフレイは倒れ込む軌道さえ利用し、泥を蹴って横へ滑る。刃は胴体を外れ、地面に突き刺さった。 フレイは空中へ戻る。破損した放熱板は機動の余裕を削るが、蜃気楼と二刀の攻撃は失われていない。赫い蝶はミキュロスの突きの戻り際を読み、一本目で鋭刃アームを押さえ、二本目を盾の脇へねじ込んだ。ミキュロスは盾を引き戻して胴を守り、反撃のために脚部を踏ん張る。だが泥沼が機体を引き、足場が崩れた。ACCURATE-01は膝をつき、斜面を滑り始める。 ミキュロスは姿勢制御を試みながら火炎放射器を噴射し、フレイを遠ざけようとした。赫い蝶は熱を受けながらも、獄鱗をまとう軌道で炎の外縁を抜ける。追尾するミサイルは残り少なく、急斜面の岩に阻まれた。フレイは崩れた足場の脇から回り込み、機体の背後へ瞬間移動する。二刀が脚部の駆動部と背面装甲を断ち、ACCURATE-01の姿勢制御は完全に失われた。 機体は泥沼の縁に横たわる。ミキュロスは最後に鋭刃を振るうが、腕部の損傷と不安定な姿勢で届かない。赫い蝶は刃を交差させ、動力部へ深く斬り込む。機体の光が消え、戦闘は終わった。ミキュロスは地形を利用して一度はフレイの機動を損ねたが、フレイは回復して攻め手を変え、泥沼に誘い込んだ側を逆に足止めした。 第二試合の勝者:チームB・赫い蝶 第三試合:衛星――低重力 衛星の灰色の地表には、遮るもののない平原と大小のクレーターが連なっていた。低重力は跳躍と空中移動を助けるが、姿勢を崩した機体の立て直しも難しくする。ミキュロスはレーダーの反応を頼りに、クレーターの縁を渡りながら距離を保つ。フレイは放熱板を開き、地表から離れたまま滑るように進んだ。射撃と誘導ミサイルを持つACCURATE-01には射程の利があり、遮蔽物の少ない平原はその利点を生かしやすい。赫い蝶には蜃気楼と変則軌道があり、距離を保たれるほど接近の工夫が必要になる。 ミキュロスはミサイルを一斉に撃たず、数発ずつ間を置いて放った。弾頭は低重力の広い空間を曲線状に飛び、フレイへ追いすがる。赫い蝶は獄鱗の閃光で誘導を揺さぶり、瞬間移動を重ねて回避する。それでも何発かが放熱板の周辺で爆発し、フレイの飛行姿勢に乱れが出た。ミキュロスはその反応をレーダーで読み、火炎放射器を長く噴射した。炎は空気のない衛星では通常の火炎として広がらないが、機体の武器として放たれる熱と爆発的な影響はフレイへ迫る。直撃を避けた赫い蝶も、熱圧と粒子の乱れで進路を変えた。 ミキュロスは盾を前にして前進する。地面を蹴るたび、ACCURATE-01は大きく浮き上がる。彼は推進を細かく調整し、フレイが降りる軌道を狙って鋭刃の突きを構えた。赫い蝶は正面から来ない。蜃気楼が左右と上方に現れ、本体はクレーターの縁をかすめてミキュロスの背後へ移る。レーダーは移動を示すものの、空間上の位置が連続しないため、追従にわずかな遅れが生じる。 ミキュロスは盾を回して二刀を受けた。刃が盾を滑り、低重力の反動で両機が離れる。ACCURATE-01は推進を噴かして体勢を整え、空中で鋭刃を突き出した。今度は刃先がフレイの脇腹に届き、装甲を裂く。赫い蝶は即座に後退し、獄鱗を散らして視界を赤く染めた。ミキュロスは追撃を急がず、レーダー反応の集中を待つ。絶妙な距離を維持し、ミサイルを残り少なくなるまで確実に撃ち込んだ。 フレイの放熱板はさらに損傷し、空中姿勢の自由度が落ちる。ミキュロスは盾を構えたまま接近し、火炎放射器を短く繰り返して退路を塞ぐ。赫い蝶は射撃武装を持たず、距離を取れば相手の弾薬が尽きるまで耐える選択もある。しかし、ミキュロスの弾数を消費させつつ、損傷した機体で接近の機会を探す必要があった。フレイは一度後退したのち、獄鱗蜃気楼で複数の像を重ねて一気に間合いを詰める。 ミキュロスはレーダーの乱れに惑わされず、盾の縁を上へ向けた。突進してきたフレイの刃を受け止め、鋭刃を胴体へ押し当てる。機体が押し合い、低重力の中で二者はゆっくりと回転した。フレイは二刀の片方で鋭刃を絡め取り、もう一方で盾の関節を斬る。ミキュロスは脚部推進を噴射して距離を取るが、その動きで姿勢が崩れ、背中がクレーターの縁に向いた。 残弾の少ないミサイルを最後に放つ。フレイは放熱板の損傷を承知で直進し、蜃気楼による位置ずらしで弾道を外す。ミサイルはクレーター壁に当たり、爆発が舞い上げた粉塵の陰から赫い蝶が現れた。二刀の一撃が盾を完全に断ち、次の斬撃が鋭刃アームを切り落とす。ミキュロスは残った腕で押し返し、機体を反転させようとするが、フレイの刃が膝関節と背部推進器を続けて破壊した。 ACCURATE-01は低重力のまま制御を失い、地表へゆっくり落ちてクレーターの縁に激突した。ミキュロスは機体を再起動させようとしたが、動力系が応答しない。赫い蝶も傷を負い、放熱板は欠けている。それでも冥王の刃を保ち、戦闘を続行できる状態だった。フレイは機体の胸部へ最後の一撃を与え、ACCURATE-01を完全に停止させた。 第三試合の勝者:チームB・赫い蝶 総合勝者:チームB・赫い蝶(3勝0敗)