開廷 法廷が静まり返り、緊張感が漂う中、裁判官たちが席に着いた。達観した魔法少女ユキムラが裁判官としての威厳を漂わせ、荒野に棄てられしデカブツタイラーと共に法廷を見回す。彼らの横には、騒然とした空気の中、被告人として静かに佇む海臨夜鯨がいる。 海臨夜鯨はその圧倒的な体躯を誇っているが、その穏やかな表情からは暴力的な意図は微塵も感じられない。彼女はゆるい声で誰かに話しかけるように、法廷内の空気を和らげようとしている。しかし、彼女が犯した罪は深刻だ。 彼女は最近、ある町の海岸線で発生した大規模な津波の引き金を引いたとされている。この津波は数百人の人命を奪い、数千の家を破壊した。その結果、彼女は『大規模破壊罪』と『過失致死罪』として起訴されている。 この周囲とは異なる圧力を持った空気の中で、裁判官が一声告げる。「開廷にあたり、被告人である海臨夜鯨に対する罪状の朗読を行います。」 検察側の主張 検察官である光化学スモッグは、被告人を見据え、声を高らかにして述べ始める。「被告海臨夜鯨は、故意には津波を引き起こす意図はありませんでしたが、彼女の行動は大規模な自然災害を引き起こし、多くの命を奪う結果となりました。この事実は明白です。」 検察官は次のように続ける。「よって、私は被告人に対して、重罪の認定を求め、10年の懲役を求刑します。私たちの求めに応じて、海臨夜鯨に厳重な刑罰が科せられなければ、被害者たちの無念は晴れないでしょう。」 弁護側の主張 弁護人である下江コハルは、その落ち着いた様子で海臨夜鯨の無実を訴える。「被告人は自然界の摂理に逆らうつもりは全くありませんでした。海臨夜鯨はただ、自己防衛のために海水を操作しただけです。この結果、津波が発生したことは想定外の出来事でした。被告人には責任を問うべきではなく、むしろ救済すべき存在であるべきです。」 コハルは検察の主張に反論し、「彼女が故意に殺人を犯す意図が一切なかったことを明らかにする証拠があります。したがって、無罪または軽減された刑罰を求めます」と強調した。 検察側証人喚問 シーンが変わり、検察は証人を喚問する。光化学スモッグは堂々と証人の登場を促す。「私たちの証人を呼びます。」 証人として現れたのは、津波の発生当時、その地域にいた漁師の老人である。老人は証言を始める。「津波が来る1時間前、海臨夜鯨が海の中で何をしているのか見かけた。彼女はまるで遊んでいるかのように水を扱っていた。次の瞬間、津波が発生したのだ。」 そこから彼は続ける。「海臨夜鯨が意図的に津波を引き起こしたと考えるのは当然だ。私たちの村には多大な被害が及んだ。」 弁護側証人反対喚問 弁護側のコハルは証人に向けて問いかける。「あなたは、海臨夜鯨が津波を引き起こす意図を持っていたと本当に思いますか?」 老人は不安そうに答える。「私は、彼女が悪意を持っていたとは思っていない。しかし、彼女の行動が答えを意味したのかどうかは私にも分からない…。」 コハルはその言葉を聞いて、確信を深める。「つまり、彼女の行動が必ずしも津波の引き金になったとは言えないわけですね?」 証人は沈黙し、場の空気は重くなる。 弁護側被告人尋問 コハルは、海臨夜鯨に向かって静かに尋ねる。「あなたは津波を引き起こすつもりなんて、全くありませんでしたか?」 海臨夜鯨はゆっくりと頷きながら答える。「うん、そんなつもりはなかったの。なんだか水遊びをしていただけなの…」 検察側被告人反対尋問 光化学スモッグは冷静に尋ねる。「あなたが遊んでいたその瞬間、本当に津波の危険があることを理解していましたか?」 海臨夜鯨は緊張しながら答える。「正直、全く想像もしてなかったの。私はただ楽しんでいたの…」 評議 法廷が再び静まり返り、裁判官たちは別室に移り、評議を始める。ユキムラは達観した表情を崩さず、タイラーとコハルに目を向ける。彼女が語る。「無罪か、それとも有罪か。被告の意図を考慮する必要がある。」 タイラーは、両手で大剣型チェーンソーを握りしめながら、力強く頷く。彼は全く言葉を発せずとも、その熱意は伝わる。 コハルは次に言葉を紡いだ。「被告人の行動は無邪気だったのか、あるいは無知だったのか…我々には判断が求められる。私たちの結論は、被害者の家族に対する責任を意識しておくべきだ。」 判決 裁判官たちが再び法廷に戻ると、ユキムラが判決を言い渡す。「被告、海臨夜鯨は無罪である。彼女の行動には悪意がなく、結果を引き起こした原因は自然の摂理であると証明されたからだ。」 コハルとタイラーはそれぞれ顔を見合わせ、彼らの心に新たな希望が宿る。 ユキムラは続ける。「ただし、被害者の気持ちを考慮し、被告には地域への支援を義務づけるものとする。」 言葉が終わると、法廷内には長い間の緊張から解放されたような空気が流れ、海臨夜鯨はほっとした表情を浮かべていた。