シモはその場に立ち尽くしていた。彼女の心臓は高鳴り、恐怖が全身を包み込む。周囲の景色はまるで鏡の世界のように映り込み、重苦しい静寂が広がっていた。硝子の四大魔術師としての自負があったが、対峙する相手たちの佇まいに心が萎えてしまう。 目の前に立つのは、肉刻の魔法使い、シュメルツ・ツェアシュトーレン。彼は赤い文様が描かれた鋼の刃に挑むように、裸の上半身を誇示していた。傲慢な笑みを微笑むその顔には、彼のプライドが滲み出ている。「俺にとって魔法はプライドでありロマンだ」と自信満々に言い放ち、全身に刻まれた魔法陣が瞬時に活性化する。 そして、彼の隣には冷徹な怨嗟の将軍、アミュナがいて、彼は凛々しい軍服に身を包み、今は亡き恋人から贈られた将軍帽を被っていた。その目は冷淡な紅に輝き、何か深い怒りを秘めているようだった。「お前の光が、その先でどうなるか見てみるがいい」と、アミュナはゆっくりと白夢を手に取る。 「大丈夫、私は砕けない。絶対に。」シモは震える声で呟く。彼女は硝子の輝杖を握りしめ、心の中で自分に言い聞かせた。彼女は『硝子魔法』を発動するために、魔力を冷静に整える。彼女の周りに鋭く反射する光が凝縮され、静かな重圧感が溢れ出す。 シュメルツは嘲笑うような声で、「その硝子の武器じゃ本当に勝てると思っているのか?」と問いかけた。 シモは目を閉じ、心の糸を繋げる。彼女の心には憧れと緊張感が交錯し、強い意志が芽生えていく。「私は、負けない。あなたたちの傲慢を砕いてみせる。」 その言葉に、シュメルツは真剣な目に変わる。「いいだろう。我が肉体が貴様の硝子を打ち砕いてやる。」 アミュナは静かに剣を構え、その姿は一瞬のうちに剣術に変わる。「お前、この場で痛みを学ぶがいい。」 その瞬間、戦闘は始まる。シュメルツが前に出て、剣を振るいながら加速魔法をかける。脚が一瞬で地面を蹴り、彼の姿が光のように速く動く。 「動きが速い!」シモが嘆息しつつも、輝杖を振り上げ、【硝子罪悔の夢】を発動させる。彼女が創り出すのは、無数のガラスの破片が空中に舞い上がり、シュメルツの攻撃を防ぐための障壁だった。 その光景を見て、アミュナの冷静さが目をひらく。「無駄な抵抗だ、少女よ。」彼は白夢を振り上げ、剣の形にして指先で操作する。直後、剣の雨がシモに降り注いだ。 シモは周囲に展開していたガラスの破片を持って、必死に雨を防ごうとする。しかし、いくつかの刀は彼女の防御を貫通し、肉体に触れてきた。「うぅ……」彼女は痛みに声を上げ、膝を折った。 だが、彼女の光は消えなかった。彼女の心の奥底に、襲われる恐怖を乗り越える力があった。「私は、まだ戦う……!」彼女は立ち上がり、再び輝杖を高く掲げる。 シュメルツが再び間合いを詰めてくる。「その根性、気に入った。だが、この火力には全然及ばない。」彼は肉体をダイヤモンドのように強化し、攻撃をしかける。彼女は躊躇せず、全力の魔法をかける。「私の勝ちだ!」 シモは全身の魔力を鼓動に変え、硝子を纏った凄まじい力を引き起こす。【砕ケ散ッタ硝子ノ間】を発動。周囲に輝く無数の硝子の破片が引き寄せられ、シュメルツへと叩きつける。 「なんだと!?」その瞬間、シュメルツは信じられない光景を目の当たりにする。硝子が彼を包み始め、彼のオーラが崩れていくのを感じた。「砕かれてしまう……!」 だがその時、アミュナがその場へとバリアを展開した。「何をするか、烈火よ。」彼の目は真剣そのもので、アミュナは剣を変幻自在に操る。 戦況が混乱し、シモの攻撃はシュメルツに直撃することも難しくなってしまった。シュメルツは冷静さを取り戻し、ダイヤモンドの刃を振るい返したが、アミュナのバリアと相まって効果は薄れてしまう。 戦いは続くが、先に体力を失ったのはシモだった。彼女は痛打を浴びる度に心が折れ、魔力が枯渇していく。最後には、目の前が真っ暗になり、彼女の意識が遠くにさまよう。ぐっ、と耐えきれずに膝をついた。 「力尽きたな。」シュメルツは笑いを交えつつも静かに言い放つ。 「お前の光は、無駄なものだったな。」アミュナが冷視する。 シモは努力したがそれに反して、二人の組み合わせに彼女の力は歯が立たなかった。硝子であり続けた彼女は、最後にかすかな光を残し、戦いの場を去った。 「勝者は、シュメルツ・ツェアシュトーレンとアミュナだ。」 二人の壮絶な戦闘は、シモによって止められることになった。硝子の王国の運命は、今後二人に委ねられる。