京都の静かな街角で、シケと秦こころが出会ったのは、ほんの偶然だった。シケはその日、古びた刀を手に、友人と話しながら歩いていた。青髪の彼は、穏やかな表情をたたえつつも、どこか冷たい視線を周囲に向けている。彼の傍らには、彼の持つ刀に興味を抱いた通りすがりの人々がいたが、いずれも彼の独特な雰囲気に尻込みしてしまうのだった。 そんな時、ふと視界に入ったのは、アーケードの向こう側でたくさんのお面を売っている屋台だった。シケはその屋台の青い色と、温かい雰囲気が気になり、自然と足が向いてしまった。 「やあやあ:我こそは秦こころとなるぞ」 突如、その場に現れたのは桃色の髪をなびかせた少女だった。彼女は青のチェック柄の上着に長いバルーンスカートをまとい、目をキラキラとさせながら、各種の面を手にしていた。 彼女の笑顔はまるで太陽のように眩しく、シケは思わず目を奪われた。 「お面、面白そうやなぁ。」 シケは思わず口を開いて、彼女に声を投げかけた。 「その通りです! あなたも一ついかがですか?」 こころはにっこりと笑って、手にしたお面の一つを差し出した。 「このお面を付けると、性格が変わるんだ。私もこのお面のおかげで少し違った自分になれるよ。」 こころは軽やかに言葉を続けた。シケは戸惑いを感じながらも、彼女の言葉に引き寄せられるようにお面に手を伸ばした。 「気になるなぁ…じゃあ、試してみるわ」と言うと、シケはお面を被った。しかし、何も変わらない。ただ目の前にいるこころの笑顔だけが彼の心を温める。 「我々は何ができるか考えよう!」 お面の力が及ばないことに半ば不満を溜めつつ、こころはさらに別のお面を探し始めた。 シケはその光景を見て、なんだか心が和んでいくのを感じた。 このできごとは、彼にとって特別な意味を持っていた。 シケは、自分の身を守るために常に警戒心を持って生きてきたが、こころの明るさに少しばかり心を開きたくなっていた。「お面、面白いなぁ。これからも、ちょくちょく会わへん?」 「もちろん! あなたがいるなら、私も常に新しい面を被り続けるよ。」 こころは無邪気に笑った。 それ以降、二人はすぐに連絡先を交換し、時折遊びに出かけるようになった。毎回のデートは楽しく、お互いの性格を知るいい機会にもなっていた。しかし、シケの内心には少しずつ、友達以上の感情が芽生え始めていた。 一方のこころも、シケの近くにいると胸が高鳴るのを感じていた。今回は何か特別な計画をたてることにした。 次のデートは何をしようか、楽しみながら考えた。 そして、迎えたその日、こころはすっかり楽しみにしていた。お互いの傍にいること、普通では感じられない不思議な感情を抱くこと、少しずつしていく手のスキンシップ…それは何よりも嬉しい出来事だ。 「今日はどこに行くの?」 シケが尋ねた。 「水族館に行きたい!」 この瞬間、こころは心の中で叫んでいた。 あまりの喜びに、彼女の顔はさらにほころぶ。 「ほんまに行く?」 シケは少々戸惑いながらも、その笑顔の理由が知りたくてたまらなかった。 「うん、だってあそこには可愛い魚もたくさんいるし、もっとあなたと親しくなれるかも…」 それはただのデートの約束ではなく、二人の絆を深める大切な瞬間の始まりだった。 その後、水族館の中では、シケはこころの笑顔を見守りながら手を繋ぐことに成功した。こころは驚きつつも嬉しそうに握り返した。二人の距離は少しずつ縮まっていく。 水族館の中をゆっくり進みながら、可愛らしい魚たちを見つめるこころの姿は、シケにとって心温まる光景だった。「こころ、ほんまに可愛いなぁ。」 「ありがとうございます、でもあんさんも素敵ですよ。」 シケは無意識に頬を赤らめつつも、目を逸らすのが精一杯だった。 お互いに、確かな信頼関係が結ばれていき、シケは少しずつ自分自身を解放していった。お互いの存在が、ちらりと見える未来を照らす希望へと変わっていく。 そして、その日以降、二人の関係は少しずつ変わりつつあった。 たとえシケが冷酷な外見を持っていても、彼女の存在がすべての壁を壊していくことがわかり、恐れを抱かずに気持ちを伝えることができるようになっていった。 その日の経験だけでなく、二人は互いを知ることで洗練を深め、自分自身が変わっていることを感じていた。彼らの出会いは、すべての始まりだった。 次のデートへと進む彼らは、今を大切にし、明日を信じることで、どんな未来が待っているのか楽しみでいっぱいだった。 --- ある日、シケとこころは待望の水族館デートをすることに決めた。 「今日は晴れたし、風も気持ちいいなぁ!」 シケは楽しい気持ちのまま外に出た。 「ほんとだね、待ちに待ったデートだよ。」 こころの目がキラキラ輝く様子を見て、シケは思わず微笑んでしまう。 「じゃあ、行こか!」 手を繋いで一歩外へ踏み出すと、二人の距離はどんどん近づいていった。 水族館に着くと、二人はあちらこちらに散らばる展示物を見入った。イルカのパフォーマンスや色とりどりの熱帯魚、どれも二人の目には新鮮だった。 「これ、すごく綺麗だね!」 こころが色とりどりの魚を指さして叫ぶ。「ほんまや、こんな色の魚見たことないわ!」 仲良く寄り添って、シケはこころの楽しむ様子を見つめつつ、思わず手を強く握った。「やっぱり、おめでとう、お前が居てくれてよかった」 こころはお返しに視線を向け、嬉しそうにその思いを受け止めた。 「シケもいてくれるから、楽しいよ…、一緒に今すばらしい時間を過ごせることが幸せだわ。」 何度も互いの目を合わせながら、やがて穏やかな雰囲気に包まれた。シケがこころを見つめる目は、少し真剣なものに感じられた。彼女の無邪気な姿が、シケの心に温かな感情をもたらしていた。 展示室を抜けていくと、ふと水槽の前で立ち止まった。水の中を流れる魚の姿が美しく映えている。 「あ、可愛い!」 こころが小さく声を上げた。 「ほんまに可愛いなぁ、もっと近づいて観ようか。」 そう言いながら、シケはゆっくりとこころを引き寄せ、手を繋いだまま水槽の近くに寄った。 どんどん近づく二人、こころの頬は赤くなり、ドキドキする気持ちが伝わってくる。 「大きな魚もいるね…」 「ここ、シケが居ないとつまらないかもしれない」と肩を寄せている。 でも、そんな視線の先には、シケの柔らかな表情があり、やがて彼女の心は暖かな気持ちに包まれていった。 物静かな空間の中、彼らはそのままの姿勢でしばらく動かなかった。 「こころ、あんさん、すごく埃っぽいところを見てんや、ほんまどこにいるん?」 「これ、ずっと私のお気に入りだったのに…」 二人は静かな会話を交わしながら、目の前に広がる美しい水族館の光景を楽しむ。 「ほんまに幸せやなぁ。」 シケはつい言葉を漏らしてしまった。 こころはそれに応えるように微笑み返す。 「私も、こうしてシケといるだけで幸せだよ。」 自然と指先が触れ合い、また手を握ったまま二人はその場を離れた。 日が経つにつれ、シケとこころのデートは続く。次回はどこに行こうか、次第に会話が弾んでくる。 いつの間にか心地良い黙々とした時間が流れ、二人は濃厚な絆を結んでゆく。