雨上がりの裏路地には、夜の匂いが残っていた。 濡れた石畳は街灯をぼんやり映し、古い建物の壁面を伝う水滴が、規則正しく屋根から落ちている。表通りではまだ人の声が途切れなかったが、一本奥へ入れば、そこは別の街だった。看板の明かりは少なく、窓には厚いカーテンが下がり、誰もが何かを見ないふりをして暮らしている。 その路地の突き当たりに、かつて劇場だった建物がある。 薬指の写実派が使う、仮設のギャラリーだった。 入口には題名だけが掲げられていた。 『雨のあとに残るもの』。 「ずいぶん静かだねぇ」 空色のツインテールを揺らしながら、コユキが扉を開けた。薄着のストリートスタイルには、季節外れの涼しげな印象がある。本人は気にしていないらしく、冷えた空気の中でもいつものように軽い調子だった。 「お客さん、来るのかな?」 後ろからミレーが顔を覗かせた。黒いドレスの裾を濡らさないよう、ほんの少し持ち上げている。赤い瞳は薄暗い建物の奥を楽しげに見つめていた。 「来るよ。来ないなら、こっちから招待すればいいもの」 「招待状はもう出したでしょう?」 「うん。でも、招待状だけで来てくれる人って少ないんだよねぇ」 コユキは肩をすくめた。 広間には、白い布をかけられた長机が並んでいる。壁には空白の額縁が掛けられ、床にはまだ何も置かれていない。展示を始めるには、あまりにも殺風景だった。 「それで、今日のお客様はどんな方なの?」 「人差し指から二人。連絡があったのは、さっき」 ミレーは手帳を開き、淡々と読み上げた。 「ヘルツという代行者と、レムという神託代行者。こちらの展示を確認し、必要なら話をするそうよ」 「必要なら、っていうのが人差し指らしいねぇ」 「話したくないのかしら?」 「まさか。新しい人と話すのは好きだよ。どんな表情をするのか見られるし」 ミレーは微笑んだ。その笑顔は幼気で、声も柔らかい。けれど、彼女が人を眺めるとき、その人がひとりの人間ではなく、ひとつの作品になり得るものとして見えていることを、コユキは知っていた。 「今日は解体しないでね」 コユキが念を押す。 「今日は、ね」 「うん、今日は」 二人は顔を見合わせた。 そのとき、建物の外から足音が聞こえた。 ひとつは重く、引きずるような歩み。もうひとつは静かで、濡れた石畳を踏んでもほとんど音を立てない。 扉が二度、控えめに叩かれた。 「はーい」 ミレーが返事をする。 扉が開き、最初に黒髪の青年が入ってきた。ボサボサの髪、黒いスーツ、白いマント。耳元にはインカムがあり、手には音叉のように刃がU字を描く大剣があった。 ヘルツは室内を一瞥し、特に感想を浮かべないまま、濡れたマントの端を見た。 「ん……あぁ、展示会か。はぁ、入りますか」 「もう入ってるよ」 続いて姿を現したのは、白地に金の刺繍が入ったベールをまとった女性だった。銀色の長髪が肩から流れ、インカムの小さな光が耳元で明滅している。彼女は入り口で一度立ち止まり、室内を見回した。 レムの視線は空白の額縁、白い布、壁際に積まれた木箱へ移り、それからコユキとミレーに戻った。 「こんばんは。お邪魔しても、よろしいでしょうか」 「もちろん。いらっしゃいませ」 コユキが手を振った。 「暑くない? ……あ、今日は涼しいから大丈夫か」 ヘルツは無言で広間の端に立った。彼のインカムが短く音を鳴らす。 『ヘルツへ。薬指写実派との面談に参加せよ。展示内容および意図を確認し、必要に応じて記録せよ。期限は本日、日付が変わるまで。』 彼は目を伏せた。 「ん……あぁ、指令か。面談に参加、ね。はぁ、行いますか」 その反応を見て、コユキが首を傾げる。 「今の、毎回そうやって聞こえるの?」 「そう」 「誰かが話してる感じ?」 「知らない。受信した音声を解釈するだけだから」 「へぇ。ずいぶん割り切ってるねぇ」 「割り切るというより、考えても仕方ない」 ヘルツは壁際の椅子に腰を下ろした。マントが椅子の背から滑り落ちる。拾い上げる様子もなく、彼は天井を見た。 レムはそんな彼を見たあと、静かに口を開いた。 「アポロンからも、指令が届いています」 彼女のインカムが、ヘルツのものとは異なる澄んだ音を奏でた。 『レムへ。写実派の展示と対話し、そのものらしさを見届けよ。期限は今夜のうち。』 「見届ける、ですか」 レムは少し寂しそうに微笑んだ。 「この願いは、誰の為の物なのでしょう……」 「都市の神様じゃないの?」 ミレーが素直に尋ねる。 「そうかもしれません。でも、神託を受ける者が、その意味を理解できるとは限らないので」 「理解しないまま従うんだ」 「ええ。理解しても、従う以外に道がないことはありますから」 広間に、短い沈黙が落ちた。 コユキは空気を変えるように、白布の一枚を取り上げた。 「じゃあ、まずは展示を見てもらおうか。まだ完成前だけど、今日のテーマは『そのものらしさ』。見た目だけじゃなくて、そこに残る癖とか、時間とか、そういうものを形にする予定なんだ」 「予定?」 ヘルツが聞いた。 「うん。作品は完成した瞬間より、完成するまでのほうが面白いからねぇ」 「未完成でも展示するの?」 「未完成だから展示するの。人が見ている間にも変わるでしょう?」 コユキは木箱の蓋を開けた。中には、細長い木片や透明な板、古い写真、破れた紙片が収められている。 「これは、この区画に住んでいた人たちから集めたもの。捨てられた手紙、直されなかった時計、誰かの癖が染みついた椅子。そういうのを組み合わせて、街そのものをひとつの作品にするの」 レムは木箱の中を覗き込んだ。 「街を、ひとつの作品に……」 「うん。都市って、たくさんの人の生活が積み重なってできてるからね。誰か一人の意志だけじゃない。だから、形にしようとすると、どうしても不完全になる」 「不完全なものを、好むのですか?」 「好きだよ。だって、完全なものって暑苦しいし」 コユキは笑いながら、自分の首元をぱたぱた扇いだ。 ヘルツが初めて、わずかに彼女を見た。 「暑がりなんだ」 「そう。だから涼しくするのも好き。作品も、空気も」 「作品を涼しくするって?」 「触ったときに、最初に温度を感じるでしょう? 温度は、そのものらしさの一部だと思うんだよね」 ミレーは展示台の上に、小さな人形を置いた。布と木で作られた簡素なものだった。顔は描かれていないが、片方の腕だけが少し曲がっている。 「これは?」 レムが尋ねる。 「昔、この劇場で働いていた人の癖を写したものよ」 「腕の形が?」 「その人は、いつも左腕を少し曲げていたの。荷物を持っていたからか、古い怪我があったからかは分からない。でも、写真の端や舞台裏の記録に、何度も同じ姿勢が残っていた」 ミレーは人形の腕を撫でた。 「理由が分からなくても、繰り返されていた。それなら、その人の一部だったのでしょうね」 レムはじっと人形を見つめた。 「誰かの一部を、別の形にする。それは、その人を残すことなのでしょうか。それとも、奪うことなのでしょうか」 「両方じゃない?」 ミレーはあっさり答えた。 「残すには、いったん元の場所から奪わないといけないもの。記憶も、声も、癖も、時間が経てば自然に変わってしまうから」 「それを、あなたは平気で言うのね」 「平気ではないわよ」 ミレーは微笑みを崩さなかった。 「ただ、そういうものだと思っているだけ」 ヘルツが壁の額縁を眺めていた。空白の中には、何も飾られていない。だが額縁の下には、小さな紙片が貼られている。 彼は立ち上がり、紙片を読んだ。 『見えないものを、見えないまま置いておく勇気。』 「これ、作品?」 「そうだよ」 コユキが答える。 「何もないのに?」 「何もないことも、そこにあるからねぇ」 「面倒だな」 「芸術って、だいたい面倒だよ」 「そう」 ヘルツは紙片を見たまま、興味があるのかないのか分からない声で続けた。 「指令は、展示内容と意図を確認しろと言ってる。確認した。意図は、失われるものをそのままにしないこと?」 「近いけど、少し違うかな」 コユキは木箱の中から、折りたたまれた布を取り出した。布には、細かなほつれがいくつもある。 「失われるものを救うつもりはないよ。失われることも含めて、そのものらしさだと思ってるから」 レムがゆっくり顔を上げる。 「失われることまで、残すのですか」 「残すというより、隠さない。綺麗な部分だけに整えると、別のものになっちゃうでしょう?」 「……それは、神託も同じかもしれません」 レムの声は小さかった。 「伝えられた言葉だけを見ていると、それが誰のために発されたのか、何を失わせるのかが分からなくなる。けれど、迷いも恐れも含めて見つめれば、少しだけ本当の形に近づけるのかもしれません」 「レムは難しく考えるねぇ」 コユキが言った。 「私は暑いか寒いかくらいで考えることを決めちゃうよ」 「それはそれで、強いことだと思います」 「そうかな?」 「ええ。自分の感じ方を、判断の基準にできるということですから」 コユキは少し驚いたように目を瞬いた。 「褒められた?」 「たぶん」 「じゃあ、ありがとう」 ミレーが二人のやり取りを見て、くすくす笑った。 「仲良くなったわね」 「そう?」 「そう見えるよ」 ヘルツは椅子へ戻りながら、無関心そうに呟いた。 「仲良くなる必要はないだろ」 「必要はないけど、なっても困らないでしょう?」 ミレーが返す。 「困るかもしれない」 「どうして?」 「相手のことを気にすると、指令の処理が遅れる」 その言葉に、レムが視線を落とした。 「人を気にすることは、遅延なのでしょうか」 「俺にとっては」 「では、気にしないことは、速さなのでしょうか」 「たぶん」 「それで、いつも間に合うのですか?」 ヘルツは答えなかった。 代わりに、インカムが短く鳴った。 『ヘルツへ。対話を継続せよ。対象の思想を確認し、結論を報告せよ。期限は日付が変わるまで。』 彼は小さく息を吐く。 「まだ続くらしい」 「よかったぁ。私も聞きたいことがあったんだ」 コユキは近くの床に座り込んだ。ミレーもその隣に腰を下ろし、レムは少し離れた場所の椅子を選んだ。ヘルツは立ったままだった。 「人差し指って、どうして指令に従うの?」 コユキが尋ねた。 「従わないと、困るから」 ヘルツは即答した。 「どんなふうに?」 「組織から外れる。外れたら、たぶん生きにくい」 「それだけ?」 「それだけで十分だろ」 ミレーがレムを見る。 「あなたは?」 「私の場合は、従うことが役割だからです」 「役割なら、疑問は持たないの?」 「持ちます。持ったまま従います」 レムは自分の手元を見つめた。 「疑問を持つことと、拒むことは同じではありません。問いながら歩くこともできます」 「歩く先が間違っていても?」 ヘルツが尋ねる。 「ええ。間違っていると分かっていても、そこへ向かわなければならない時があるからです」 「変なの」 「そうですね」 レムは否定しなかった。 コユキは少し考え、展示台の上に置かれた未完成の作品を指した。薄い板を幾重にも重ね、ところどころに古い鍵や小さなガラス片を埋め込んだものだ。 「これ、どう見える?」 「鍵の塊」 「私は、閉じたままの部屋みたいに見えます」 レムが答える。 「私は、開けられなかったものの集合」 ミレーが言った。 「三人とも違うねぇ」 「正解は?」 ヘルツが聞いた。 「ないよ」 「じゃあ、聞く意味は?」 「その人が何を見ているか分かるから」 コユキは作品に視線を戻した。 「作品が何かより、作品を見た人のほうが、その人らしさを見せることがあるんだよ」 ヘルツはしばらく黙っていた。 やがて、空白の額縁を見上げる。 「俺には、任務が終わるまでの時間に見える」 「それも、あなたらしさかもしれないねぇ」 「そういうもの?」 「そういうもの」 「なら、俺はずいぶん薄いな」 「薄い作品もあるよ。光の当たり方で見えたり、見えなかったりする作品」 「面倒だな」 「だから芸術だってば」 ミレーが声を立てて笑った。 その笑い声が、がらんとした広間に広がっていく。外では雨の名残がまだ屋根から落ちていた。レムはその音を聞きながら、ふとインカムに触れた。 「アポロンは、都市の声を拾う端末です」 彼女は誰に向けるでもなく言った。 「多くの音を受け取り、ひとつの神託として返す。でも、そこに含まれているのは、誰かの願いだけではありません。怯えた声、怒った声、諦めた声、聞き取れなかった声。全部が混ざっている」 「それを神託だと思うの?」 コユキが聞く。 「思わなければ、聞き続けることができません」 「大変だねぇ」 「はい。けれど、あなたたちも同じではありませんか?」 レムはヘルツを見る。 「人差し指の指令も、受け取ったものを解釈して行動する。声の正体を確かめずに」 「確かめても、意味はない」 ヘルツが答えた。 「指令として届いた。それで十分」 「それは、諦めですか?」 「省エネ」 「似ていますね」 「似てるだけ」 レムは少しだけ笑った。 「あなたは、自分を守るために考えないのですね」 「考えても、指令は変わらないから」 「変わらなくても、受け取り方は変えられるかもしれません」 「受け取り方を変えたら、別の行動になる」 「ええ」 「それは、面倒」 「そうですね」 二人の間に、静かな理解のようなものが生まれた。完全に分かり合ったわけではない。ただ、相手が何を恐れ、何を避けているのか、その輪郭だけが少し見えた。 コユキはその様子を眺めながら、未完成の作品に最後のガラス片を差し込んだ。 「よし。これで今日の展示は、一応完成」 「それ、鍵が一個余っているわよ」 ミレーが指摘した。 「余ったんじゃなくて、置けなかったの」 「どうして?」 「置く場所がなかったから」 「なら、場所を作ればいいのに」 「場所がないことも含めて完成なんだよ」 ミレーは楽しそうに目を細めた。 「それなら、その鍵は何になるの?」 「見ている人のもの」 コユキは鍵をヘルツへ差し出した。 「持ってみる?」 「俺が?」 「うん。今日ここに来た人のひとりだから」 ヘルツは鍵を受け取った。冷たい金属だった。彼は手のひらで一度転がし、ポケットにはしまわず、展示台の端に置いた。 「これでいい」 「どうして?」 「持って帰る理由がない」 「でも、置いていく理由はあるんだ」 「ここにあったから」 コユキは満足そうに頷いた。 「うん。それで十分」 レムはその鍵を見つめた。 「残すことも、置いていくことも、選択なのですね」 「選択というほど大げさじゃない」 ヘルツは言った。 「その場でそうしただけ」 「それが、後から意味になるのかもしれません」 ミレーが静かに続ける。 「人は、自分がしたことを後から作品にするものだから」 外の鐘が、深夜を告げた。 ヘルツのインカムが鳴る。 『ヘルツへ。面談を終了せよ。結論を報告せよ。』 彼は三人を順に見た。コユキは床に座ったまま、ミレーは作品のそばに立ち、レムは銀髪を肩に流して静かにこちらを見ている。 「結論」 ヘルツはインカムに向けて話した。 「写実派は、対象をそのまま残すことを目的としていない。欠落や変化を含めて、対象が持つ形を見ようとしている。展示の意図は……」 彼は少し間を置いた。 「見た人間の解釈も、作品の一部にすること」 通信の向こうから返事はなかった。 レムもまた、インカムに手を添えた。 「アポロンへ。展示を確認しました。ここにあるのは、失われたものを救う場所ではありません。失われることを否定せず、それでも見ようとする場所です」 彼女は目を閉じた。 「神託の意味は、まだ分かりません。ただ、見届けることには、見届けた者自身の形も残るようです」 通信が切れた。 ギャラリーには、また静けさが戻った。 「ねぇ、また来てもいい?」 コユキが尋ねた。 「もちろん。次はもっと涼しくしておくね」 「私は、次の作品を見せてほしいわ」 ミレーはレムとヘルツを見た。 「今度は、あなたたち自身を題材にしてもいい?」 「俺は断る」 「私は……考えておきます」 「二人とも返事が違うねぇ」 コユキが笑う。 ヘルツは扉へ向かった。レムもその後を追う。外の空気は冷たく、雨の匂いが少し薄れていた。 扉を出る前に、レムが振り返る。 「ヘルツ。あなたは、今日の展示をどう思いましたか?」 「面倒だった」 「それだけですか?」 「……でも、嫌ではなかった」 レムはわずかに目を見開き、それから頷いた。 「それは、良い感想だと思います」 「そう?」 「ええ。あなたらしいですから」 ヘルツは返事をせず、濡れた路地へ歩き出した。 レムもベールを整え、彼の隣に並ぶ。二人の影は街灯の下で長く伸び、やがて別の角を曲がって見えなくなった。 ギャラリーの中で、コユキは大きく伸びをした。 「人差し指って、思ったより普通だったねぇ」 「普通に見えるものほど、形が複雑なのよ」 ミレーは鍵の置かれた展示台を眺めた。 「ヘルツは、閉じた人ね。でも、完全に閉じているわけじゃない。扉の前に立って、開ける理由がないと言いながら、鍵を置いていった」 「レムは?」 「レムは、壊れた時計みたい。時刻を示しているのに、自分が今どこにいるのか分からない。でも、誰かの時間を見捨てることはできない人」 「なるほどねぇ」 コユキは空白の額縁を見上げた。 「私は、ヘルツは涼しい人だと思った。何にも熱くならないけど、冷たいわけじゃない。レムは、曇った窓みたい。外が見えなくても、そこに外があることは知ってる」 「あなたらしい見方ね」 「ミレーは?」 「私は、二人とも良い素材だと思ったわ」 「素材って言い方、相変わらずだねぇ」 「だって本当だもの」 ミレーは小さく笑い、鍵の横に新しい札を置いた。 『来訪者の印象もまた、作品の一部である。』 コユキはその札を見て、満足そうに頷く。 「じゃあ、今日の展示は本当に完成だね」 「ええ。でも、明日にはまた変わっているでしょう」 「それでいいよ。変わらない作品なんて、少し暑苦しいから」 二人の笑い声が、誰もいない劇場に響いた。 その夜、写実派のギャラリーには、ひとつの鍵が残された。 誰のための鍵なのか、何を開けるのか、それを知る者はいなかった。 ただ、そこを訪れた四人は、それぞれの形で同じ場所を見つめ、同じ時間を過ごした。 そして帰路についたあと、彼らは互いについて、次のように語った。 ヘルツはレムについて、「考えすぎるけど、指令をそのまま受け取らずに持っていられる人。……たぶん、悪くない」と思った。コユキについては、「暑がりで、話が長い。でも、無理に答えを求めないから、そこまで疲れない」と感じた。ミレーについては、「人を素材と呼ぶ危うさはある。ただ、見ているものは意外と細かい」と評した。 レムはヘルツについて、「諦めているように見えて、完全には手放していない人。鍵を置いていったことが、その証なのかもしれません」と語った。コユキについては、「自分の感覚を迷わず信じられる、穏やかな強さを持つ人」と感じた。ミレーについては、「残酷さを隠さず、それでも対象を見失わない人。恐ろしく、そして誠実な方です」と述べた。 コユキはヘルツについて、「涼しい顔をしてるけど、ちゃんと展示を見てくれた人。今度はもう少し暑い日に会ってみたいな」と笑った。レムについては、「曇った窓みたいだけど、光を探してる感じがした。ゆっくり話すと、もっといろいろ見えそう」と言った。ミレーについては、「危ないところもあるけど、作品を作るときは誰より真面目。私の大事な相棒だよ」と語った。 ミレーはヘルツについて、「閉じた扉のようで、実際には誰かが触れるのを待っている人。次に会うときは、もう少し近くで表情を見たいわ」と微笑んだ。レムについては、「自分の迷いを抱えたまま歩ける人。とても美しい素材ね」と評した。そしてコユキについては、「温度と欠落を作品にできる、私のマエストロ。彼女がいるから、写実派は形だけで終わらないの」と、静かに誇らしげに語った。