第一試合:市街地――ビル群と高強度遮蔽 市街地は高層ビルが密集し、道路は瓦礫と車両で分断されていた。互いの姿を長く見通せる場所は少なく、壁や柱は射線を切る一方、接近戦を避けるための回り道にもなる。二機は市街地の両端で起動した。 ネラはまず、ビルの角と路上の遮蔽物の位置を確かめた。脚部『馬鹿』は不規則な瓦礫を踏み越え、地形に合わせて姿勢を保つ。右腕の巨大な傘『絶望』は、取り回しの鈍さを抱える代わりに、閉じれば堅牢な構えを作り、開けば広い面で攻撃を受け止める。背面の『啓蒙』は相殺式パルス防壁を投射し、全身装甲『継続』は打撃からEN攻撃まで高い耐性を示す。だが、いずれも無限の防御ではない。ネラは守りを重ねながらも、敵の攻撃を見極めて防御資源を使う必要があった。 YHWHは両肩の『門』を展開し、周囲に蒼の粒子を散布した。大気に元からある粒子も取り込み、ビルの壁越しに伝わる粒子の乱れからネラの位置を探る。右手の『【】の光』が高濃度の粒子群を放ち、建物の外壁を削りながら道路へ走った。ネラは傘を閉じて射線を切る柱の陰へ移動し、『啓蒙』の防壁を重ねる。光の一撃は遮蔽物を砕いたが、相殺と装甲に勢いを削がれ、機体を致命傷には至らせなかった。 反撃に出たネラは、傘を開いて防壁の外側に構え、ビルの陰から一気に距離を詰めた。脚部の自在な機動で、舗装の段差を踏み台にして斜めへ跳ぶ。『頂瞰』のアサルトアーマーは機体中心から広域に発散し、EMPを伴って蒼の粒子を乱す。YHWHの観測は一瞬不鮮明になり、粒子で相殺する防御も局所的に弱まった。爆発の圧力は、近くの窓と壁面をまとめて吹き飛ばす。 ただし、YHWHの粒子は消え去ったわけではない。『門』が周囲の濃度を高めると、散乱した粒子が再び集まり、機体は体勢を立て直した。防御で減った残量を、門の働きと攻撃による回復で補いながら、杖を構えてネラの進路へ踏み込む。傘は開いたままでは扱いにくく、ネラは杖の一撃を受け止める直前に閉じた。衝撃は傘と装甲に分散されたものの、機体の腕部には負荷が残る。ネラは無理な押し合いを避け、瓦礫を蹴って間合いを取り直した。 以降、YHWHは建物の隙間へ光を通し、ネラの移動先を粒子観測で追う。ネラは遮蔽物を利用して直線射撃をかわし、パルス防壁と傘を使い分けて接近の機会を探った。双方とも一度の大技で決着をつけられず、攻防のたびに防御用の資源と機体の余力を削っていく。YHWHは門で粒子濃度を維持できるが、防御するたびに残量が減り、ネラのEMPを伴う爆発は観測と粒子防御の双方へ繰り返し圧力をかけた。 ネラは最後の接近で、ビルの崩落音を利用して踏み込む。YHWHが音の方向へ光を向けた瞬間、ネラは反対側の低い壁を越えて懐へ入り、傘を閉じて杖の斬撃を受け流した。その直後、『頂瞰』の多段アサルトアーマーが至近距離で発動する。YHWHは『門』で粒子を集め、粒子防御を張るが、爆発とEMPが短い間隔で重なり、粒子の相殺と状況観測が同時に乱れる。蒼の粒子は攻撃を一部受け止めたものの、これまでの防御で残量が落ちており、機体を支えきれない。『継続』と『啓蒙』を併用したネラは爆発後も立っていた。YHWHは杖を振り上げようとしたが、機体の姿勢を保てず膝をつき、再起動にも至らなかった。 第一試合の勝者:チームA(水雲ネラ) 第二試合:衛星――低重力 衛星の荒涼とした地表には、浅いクレーターと岩塊が点在していた。低重力では一度の跳躍で大きく移動できるが、着地の制御を誤れば姿勢を崩し、次の動きへ移るまでに時間を要する。大気中の蒼の粒子は、地上の戦場より頼りにしにくい。YHWHは『門』から粒子を散布し、周囲に濃度を作ろうとする。ネラは足場を確かめ、地面を蹴る角度と傘の構えを整えた。 この戦場では、YHWHの粒子観測は距離があっても有効だが、粒子濃度が低い分だけ精度と相殺の余裕は限られる。防御のたびに残量が落ちる弱点も重い。一方、ネラは強固な装甲とパルス防壁を備えるものの、傘の操作速度と取り回しには難がある。低重力で大きく跳ぶ相手へ傘を素早く向け直すのは容易ではない。機動力と地形適応は役立つが、着地を誤れば優位は失われる。 YHWHは先に上方へ跳び、『門』を推進に使いながら、光を斜め下へ照射した。高濃度粒子群が地表をえぐり、岩片を浮き上がらせる。ネラは傘を開いて正面から受け止めず、閉傘状態で岩塊の影へ滑り込む。光の一部は岩を砕いて彼女へ届いたが、『啓蒙』の防壁と『継続』の耐性によって致命傷にはならない。散布された粒子は攻撃後に乱れ、YHWHの観測にも短い揺らぎが生じた。 ネラはその間に地面を蹴り、低い弧を描いて接近する。低重力の移動を脚部が補正し、姿勢を崩さずに着地。傘を開いて杖の斬撃を受け流し、反動を利用して距離を取る。YHWHの杖は蒼の粒子を乗せた近接武器で、傘の表面へ衝撃と粒子の攻撃を同時に与えた。ネラは正面から受け続けず、傘を閉じて受ける面積を変え、脚部の機動で横へ回った。 ネラが『頂瞰』を発動すると、機体中心から多段の爆発が広がり、EMPが粒子の制御を乱す。YHWHは『門』で周囲の粒子を増幅し、粒子防御を展開する。低濃度の環境を補えるのは『門』の強みだったが、爆発を防ぐために粒子を消費し、残量は目に見えて減る。アサルトアーマーの衝撃でYHWHは大きく押し流され、岩塊へ激突した。ネラも爆発の反動を受けたが、『継続』の耐性とパルス防壁で機体を保つ。 YHWHは攻撃で粒子を回復させようとし、空中から光を連射する。ネラは岩の間を跳び移って照準を外し、傘を開閉して必要な時だけ防御面を作る。攻撃が岩を砕くたび、粒子の観測には物質の散乱による雑音が混じる。YHWHはそれでもネラの進路を読み、杖を携えて低空から突進した。ネラは正面衝突を避け、傘の縁で杖を逸らす。だが、傘の重い取り回しは連続動作を鈍らせ、完全にかわし切れず、左側装甲に打撃を受けた。機体は損傷したが、戦闘不能にはならない。 ネラは大きく後退するふりをして、クレーターの縁へ誘導した。低重力下では、縁を越えた後の落下軌道を即座に変えにくい。YHWHは粒子観測で移動を追いながら接近するが、ネラはクレーターの斜面へ踏み込み、脚部の適応制御で姿勢を固定した。YHWHが光を撃つと、ネラは岩壁へ身を寄せ、射線を切る。照射が途切れた瞬間に『頂瞰』を再び放つ。EMPと爆発が近距離で広がり、YHWHは粒子防御を張るものの、すでに防御と攻撃に使った粒子の残量が少ない。門が濃度を増しても、爆発の連続を相殺するだけの粒子を補いきれなかった。 YHWHは杖で最後の反撃を試みたが、ネラは傘を閉じて刃を受け、装甲で衝撃をしのいだ。杖が傘に引っかかった瞬間、ネラは脚部の推進で体を押し出し、至近距離から再度アサルトアーマーを発動する。二機を包む爆発の中、ネラは防壁と装甲で持ちこたえた。蒼の粒子は散り、観測と防御を維持できなくなったYHWHは地表に落下して動きを止める。ネラは損傷を抱えながらも姿勢を保ち、勝負は決した。 第二試合の勝者:チームA(水雲ネラ) 第三試合:海上――遮蔽物なし、強風 荒れた海には身を隠せる岩も建造物もなく、強風が波しぶきを横殴りに運んでいた。視線を遮るもののない海上では、遠距離攻撃が届きやすい。風と海面の揺れは狙いを乱すが、飛行能力を持つYHWHにとって、海面へ落ちずに位置を保てることは大きな利点だった。ネラの脚部は地形に合わせて機動するが、足場の乏しい海上では、地上のような自在な移動は発揮しづらい。 YHWHは両肩の『門』で飛行し、蒼の粒子を周囲へ散布する。大気中の粒子と自らの散布を合わせれば、低濃度環境の衛星よりも状況観測を活用しやすい。ネラは水面すれすれを移動し、パルス防壁と『継続』の装甲を頼りに接近の機会を探るが、遮蔽物がないため、YHWHはその動きを長く捉えられる。『【】の光』が水平に走り、海面を裂いて白い飛沫を上げた。 ネラは傘を開き、光を受け止める。『啓蒙』のパルス防壁が重なり、装甲が残る衝撃を受け流した。高強度の耐性により即座の撃破は免れたが、光の連射は一撃ごとに機体へ負荷を蓄積させる。傘の操作が遅いこともあり、照射の角度が変わるたびに完全な防御姿勢を取り直すのは難しい。ネラは防壁を必要以上に張り続けないよう、傘を閉じて受ける範囲を絞りながら、波のうねりに合わせて機体を滑らせた。 ネラが接近するたび、YHWHは上昇して杖の間合いを避け、光で迎撃する。ネラは『頂瞰』の広域アサルトアーマーを発動し、爆発とEMPで粒子を乱す。だが、海上には爆発の余波を遮る地形がなく、YHWHは門で距離を保ちやすい。蒼の粒子はEMPによって一時的に乱れても、広い大気から再び供給され、門の散布で濃度を立て直す。アサルトアーマーの威力は有効だが、毎回確実に近距離へ当てるのは困難だった。 YHWHは粒子を乗せた光を断続的に放ち、ネラに防御を強いる。防御のたびに粒子残量を消費する弱点はあるものの、門と攻撃による回復があり、海上の比較的豊富な粒子を利用できる。ネラ側も傘とパルス防壁を組み合わせて致命打を避けるが、継続して守れば機体への負荷は避けられない。彼女は射撃の間隔を読み、風が吹きつける瞬間に進路をずらして照準を外し、ようやく杖の届く距離まで迫った。 接近戦では、ネラの傘がYHWHの杖を何度か受け流した。傘は開けば広く攻撃を遮れるが、重い取り回しのため反撃へ移る動作が遅れる。閉じれば機敏に扱えるものの、防御範囲は狭くなる。YHWHはその切り替えを見て、杖の連撃でネラの構えを崩し、すぐに門の推進で離脱した。ネラは『継続』と『啓蒙』で損傷を抑えたが、近接を長引かせれば有利とは言い切れない状況だった。 決定機を作ったのは、YHWHが海面近くまで高度を下げ、光を集中的に照射した瞬間だった。ネラは傘を開いて攻撃を受けながら、『頂瞰』を発動する。爆発は海面を持ち上げ、EMPが粒子の制御を揺らした。YHWHは門で粒子濃度を増幅し、粒子防御を展開する。至近距離の爆発は機体を大きく揺さぶり、肩の門にも損傷を与えたが、YHWHは防御の残量を保ち、すぐさま上空へ退避した。ネラは爆発の衝撃を装甲と防壁で耐えた一方、直後の照射を完全には避けられず、機体に深刻な損傷を負った。 海上ではネラが身を隠す場所はない。YHWHは距離を取り、門の飛行で高度を維持しながら、光を狙い澄まして撃つ。ネラは傘を構え、防壁を重ねて攻撃をしのぐが、損傷した機体では連続照射を受け切れない。反撃のためにアサルトアーマーを放つ余力も、YHWHを捉えるだけの接近も残されていなかった。最後の照射が傘の防御を崩し、装甲へ達する。ネラの機体は海面へ落ち、動きを止めた。YHWHも門と粒子の消耗、機体損傷を抱えていたが、飛行を保ち、戦闘継続が可能だった。 第三試合の勝者:チームB(YHWH) 総合結果 チームAが二勝、チームBが一勝。 総合勝者:チームA(水雲ネラ)