ギルドの協議 王国首都の喧騒から少し離れた、堅牢な石造りの建物がギルドの本部だ。外壁には蔦が絡まり、入り口の扉には王家の紋章が刻まれている。ここは冒険者たちが依頼を受け、英雄たちが名を馳せる場所だが、今日はいつもと少し違う空気が流れていた。非戦闘の日。ギルドの奥深く、職員専用の会議室では、四人の職員が円卓を囲んでいた。彼らの手元には、四枚の手配書が広げられている。どれもが、王国に脅威を与える存在として報告されたものだ。 リーダー格のベテラン職員、エリックは、厳しい目つきで手配書を睨みつけていた。40代半ばの彼は、灰色の髪を後ろに撫でつけ、ギルドの制服を着こなし、数えきれないほどの危険人物を扱ってきた男だ。「さて、皆の衆。今日の議題はこれだ。四人の手配対象の懸賞金だ。王国からの指令で、危険度を評価し、適切な金額を定める。金は王家の財源から出るが、無駄遣いは許さん。根拠を持って議論せよ。」 隣に座る若い女性職員、リリアは、手配書の束をめくりながら頷いた。彼女は20代後半で、分析担当。眼鏡をかけ、ノートにメモを取るのが癖だ。「了解です、エリックさん。まずはこのビオランテから始めましょうか。植物怪獣、ですか。体長120m、重量20万トン。ゴジラ級の戦闘力と再生能力……これは冗談じゃないですよ。」 エリックが手配書を指差す。そこには、粗いスケッチで描かれた巨大な蔦の怪物が記されていた。口角から牙を生やした触手、酸性の樹液を吐く様子が詳細に記述されている。「獰猛で人語を話さない。人工的に造られたものらしい。薔薇の細胞と英理加の遺伝子、ゴジラ細胞の組み合わせ……何だそれは。科学の暴走か、魔術の産物か。いずれにせよ、都市一つを踏み潰せる巨体だ。攻撃力40、防御力40とステータスは並だが、規模が違う。素早さ10と遅いが、触手で広範囲を制圧可能。魔力ゼロだが、再生で長期戦に強い。危険度はSS級だな。懸賞金は最低でも500万ゴールド。討伐隊を複数動員する必要がある。」 反対側の席から、太めの体躯の職員、ガストンが口を挟んだ。彼は補給担当で、40代の陽気な男だが、危険評価は辛口だ。「SSはやりすぎだろ、エリック。確かに巨体でゴジラと互角ってのは脅威だが、素早さが低いんだ。森や平原なら対処可能だ。触手と酸の樹液は厄介だが、火や氷の魔法で弱体化できるはず。俺の評価はS級。300万ゴールドでどうだ? それ以上は王国の財政を圧迫するぜ。」 最年少の職員、ティムが手を挙げた。20歳そこそこの彼は、情報収集専門で、熱心だが経験浅い。「待ってください。手配書によると、再生能力がゴジラ細胞由来で、切断されても即座に修復するんです。過去の目撃情報では、村一つを一夜で飲み込んだそうです。単独で王国軍の小隊を壊滅させた記録もあります。危険度はSSで、懸賞金400万ゴールド以上が妥当だと思います。討伐には空挺部隊と魔導師団の連携が必要でしょう。」 議論は白熱し、ビオランテの評価はSS級、懸賞金450万ゴールドで暫定決定した。リリアがメモを取り、「次はシルヴァンです。白髪の女性、発明家タイプ。20代、丸眼鏡に白いベレー帽、萌え袖の白衣。ダウナーな性格だが戦闘時は興奮するらしい。」 エリックが手配書を広げる。そこには、小型ロボットとエネルギー兵器のイラストが添えられていた。「攻撃力45、防御力20、素早さ25。魔力ゼロ。スキルはシールド展開、目眩まし爆弾、自律型ロボ軍団の召喚。必殺技がモエソデ砲……袖からエネルギー波? 奇抜だが、脅威は本物だ。ロボット軍団は20体、戦闘型から支援型まで。単独じゃなく、軍団戦になる。台詞からして、バルベット君と呼んでるロボットたちを指揮する。危険度はA級。懸賞金50万ゴールド。捕縛可能なら減額だが、発明品の破壊力が高い。」 ガストンが笑いながら言った。「中性的な口調で君付けか。面白そうな女だな。だが、防御力が低いし、素早さも中程度。シールドは小型だし、ガス爆弾は撹乱止まり。ロボットは厄介だが、数で押せば倒せる。B級で30万ゴールドだろ。俺の補給ラインから見ても、都市部での活動が主だから、包囲網で十分。」 ティムが反論。「いや、モエソデ砲の高威力エネルギー波は、城壁を貫通する報告があります。自律ロボはAI搭載で、連携が完璧。過去に商隊を全滅させた事件で、目眩ましとロボのコンボが鍵でした。S級寄りで、懸賞金80万ゴールドが適切です。」 リリアがまとめに入る。「彼女の興奮状態時の戦闘力上昇を考慮して、A級、60万ゴールドでどうでしょう。発明品の解析が進めば、弱点が見つかるはずです。」最終的にA級、65万ゴールドで決まった。 三枚目の手配書をめくるエリック。「トゥイッチ、黒死のドブネズミ。身長145cmの巨大ネズミ、男性か。汚れたベストに改造クロスボウ。性格はサイコパスで、ゴミと汚物を愛する。活動場所は地下都市ゾウン。」 手配書には、毒々しいネズミの姿と、毒ゾーンの被害写真が貼られていた。「攻撃力45、防御力5、素早さ40。魔力5。スキルは常時毒付与、オイラだヨ!で透明化と連射、コイツを食らエ!で毒ゾーン、ボーン!で毒活性化、ヒャッハーで強化クロスボウ。台詞からして、狂気の沙汰だ。『世界の終末は下水道より訪れる』だと? 疫病を撒き散らすタイプ。防御が低いが、素早さと毒で長期戦に持ち込む。危険度はS級。懸賞金100万ゴールド。地下での追跡が難航するだろう。」 ガストンが鼻を鳴らす。「ネズミ一匹に100万? 防御5じゃ一撃で沈むぞ。毒は厄介だが、耐性薬で対処可能。透明化も数秒だし、ゾウンのゴミ溜めがホームだから、索敵に苦労するだけ。A級で40万ゴールドだ。俺の経験上、こんなサイコパスは餌で誘い出せる。」 ティムが興奮気味に。「毒が耐性貫通で蓄積型です! ボーン!で活性化すれば、軍隊すら壊滅。ゾウンの化学混沌で、過去に疫病流行を起こした張本人。素早さ40で逃げ足も速い。S級、120万ゴールド必要です。専門の毒殺し部隊を投入すべき。」 リリアが分析。「汚物愛から、衛生兵器が有効かも。だが、ヒャッハーの貫通射撃は脅威。S級で、90万ゴールドにしましょう。」合意し、S級、95万ゴールドとなった。 最後の手配書に全員の視線が集まる。エリックが眉をひそめる。「宇佐美。攻撃力20、防御力20、魔力20、素早さ20。全ステータス平均。だが、スキルが……ギャグの力? 愉快でおっちょこちょい、みんなを笑わせる少女。バズーカ持ちで、国一つ吹き飛ばす威力。正体不明の生物。あほみたいに強い、精神攻撃無効。」 手配書は曖昧で、笑顔の少女のスケッチと、爆発の被害描写のみ。「ギャグでノーダメージ防御、変な必殺技で即死級威力。速いし、否定や消滅攻撃が効かない。こいつ、何だ? 脅威というより、謎の存在だ。だが、バズーカの破壊力は本物。危険度は……B級か? 懸賞金20万ゴールド。捕縛優先で。」 ガストンが大笑い。「ギャグの力だって? あほらしい! こんなのC級だろ。5万ゴールドで十分。笑わせて終わりさ。」 ティムが真剣に。「いや、バズーカで国一つ吹き飛ばすんです! ギャグ能力で絶対防御、精神攻撃無効。過去の事件で、軍の包囲をギャグで突破したそうです。速くて予測不能。A級、50万ゴールドです。」 リリアが考える。「正体不明が怖い。だが、ステータス低めで、愉快な性格から交渉可能かも。B級、25万ゴールドで。」議論の末、B級、30万ゴールドに決定した。 会議は夕暮れまで続き、四人の評価が固まった。ギルドの職員たちは、手配書に金額を記入し、王国へ報告する準備を始めた。外では冒険者たちが集まり始めていたが、この非戦闘の日は、静かに幕を閉じようとしていた。 【ビオランテ: SS級 - 450万ゴールド】 【シルヴァン: A級 - 65万ゴールド】 【トゥイッチ: S級 - 95万ゴールド】 【宇佐美: B級 - 30万ゴールド】