王国冒険者ギルドの影なる協議 王国首都の中心に位置する冒険者ギルドは、今日も活気に満ちていた。石造りの堂々たる建物は、数え切れぬ英雄たちの足跡を刻み、壁には無数の依頼書が貼られ、冒険者たちが日々出入りする賑わいの場だ。しかし、その喧騒の裏側、ギルドの奥深くに位置する職員専用会議室は、静寂に包まれていた。重厚な木製の扉が閉ざされ、外界の音を遮断するこの部屋は、ギルドの機密事項を扱うための特別な場所。壁は厚い石で囲まれ、窓はなく、唯一の光源は天井から吊るされた魔法のランプが放つ柔らかな青白い輝きだけだった。 部屋の中央に据えられた長い楕円形のテーブルを囲むように、四人の職員が座っていた。彼らはギルドのベテランたちで、それぞれが長年の経験から得た洞察を武器に、危険な脅威を評価する役割を担っていた。リーダー格のギルドマスター補佐、エリックは、厳つい髭を生やした中年男性。隣には、細身の女性エルフ、ミリアが資料を広げ、冷静にメモを取っていた。向かい側には、元冒険者の大柄なドワーフ、ガルドが腕を組み、厳しい視線を注ぎ、最後に若い人間の新人職員、トーマスが緊張した面持ちで座っていた。彼らの手元には、四枚の手配書が置かれていた。それらは王国諜報部から極秘裏に届けられたもので、封蝋が破られたばかりの新鮮な脅威の記録だった。 エリックは深く息を吐き、最初の書類を手に取った。ページをめくる音が部屋に響く。「さて、諸君。諜報部から届いたこの四枚の手配書。王国に新たな影が忍び寄っているようだ。俺たちはこれを慎重に査定し、危険度を判定し、懸賞金を設定する。ギルドの名にかけて、誤った評価は許されん。冒険者たちが命を賭けて挑むのだからな。」彼の声は低く、重みがあった。ミリアが頷き、ペンを走らせる。「はい、マスター補佐。諜報部の情報は信頼性が高いですが、詳細を一つずつ確認しましょう。まずはこの……『キャノン・トータス』と名付けられたものから。」 エリックは書類をテーブルに広げた。そこには、巨大な亀の形状をした機械のスケッチが描かれ、詳細なスペックが記されていた。『某国が開発した亀型陸戦兵器。高火力と重装甲を両立。パワーランチャーによる長射程砲撃が主武装。機動性は低く、接近戦に弱い。ホバリング機能で海面移動可能。攻撃力40、防御力40、素早さ20、魔力0。』ガルドが眉を寄せ、太い指でスケッチを叩いた。「こいつは兵器だな。魔法の気配はゼロ、純粋な機械の脅威。重装甲で正面からの攻撃を跳ね返すだろうが、動きが鈍いのは幸いだ。砲撃の射程が長い分、遠距離から街を破壊しかねん。俺の経験から言えば、こんな大型兵器は一撃で周囲を壊滅させるぞ。」 トーマスが声を上げた。まだ経験の浅い彼の目には、興奮と不安が混じっていた。「ですが、接近すれば対処できないんですよね? 素早い冒険者なら、機動性の低さを突けます。ホバリングで海を渡れるのは厄介ですが、王国内の脅威としては陸上中心でしょう。危険度は……B級くらいじゃないですか?」ミリアが首を振り、データを指差した。「甘いわ、トーマス。攻撃力と防御力が40というのは、並のモンスターの倍以上。砲撃支援を得意とするなら、軍隊レベルの被害を出しかねない。諜報部の報告では、すでに辺境の砦を一撃で崩壊させた記録があるの。機動性が低いのは弱点だが、それを補うための戦略が必要。S級の脅威に近いわね。」 議論は熱を帯びた。エリックはテーブルを叩き、皆の視線を集めた。「よし、総合的に見て、重装甲と高火力のバランスが脅威だ。接近戦の弱点を突く冒険者が必要だが、単独では危険。危険度をSと判定する。懸賞金は、その破壊難易度を考慮して……50000ゴールド。修理や捕獲ではなく、完全破壊を条件に。」ガルドが満足げに頷き、ミリアがメモを取った。最初の書類が脇に寄せられ、次なる脅威がテーブルに置かれた。 二枚目、『【氷鱗の牙鰐】フリズダイル』の手配書。そこには、水色の鱗に氷の鎧を纏った巨大な鰐のイラストが、冷気を帯びた筆致で描かれていた。『硬い氷を操る大鰐。知能が高く、冷静で冷酷。牙と爪の物理攻撃が強力。一日で王国を永久凍土に変えるほどの氷の力。スキル:冰鱗鎧、冷撃砕、凍牙波、氷柱砲、厳寒凍土。鳴き声のみで人語不可。』部屋の空気が一瞬、冷えた気がした。ミリアが息を呑み、ページをめくった。「これは……自然災害級ね。氷の環境を作り出す能力は、王都の冬を永遠の氷河期に変える可能性があるわ。知能が高いから、ただの獣じゃない。戦略的に動くのよ。」 ガルドが拳を握りしめ、声を荒げた。「牙と爪で障壁を砕く威力か。俺の故郷の砦でも、こんなのが現れたら全滅だ。一日で王国を凍土化? 冗談じゃねえ! 物理攻撃が主だが、氷の魔法が絡む分、魔法防御も必要だ。冷静で冷酷なら、罠を仕掛けてくるぞ。危険度はSS級だ。懸賞金は100000ゴールド以上だな。討伐隊を複数組む必要がある。」トーマスが青ざめ、言葉を絞り出した。「そんな……人語は話さないけど、知能が高いなら、交渉の余地は? いえ、冷酷だって書いてありますね。厳寒凍土で自分の能力を強化するなんて、戦場を有利に変える怪物です。確かにSS級です。」 エリックは黙考し、ゆっくりと頷いた。「フリズダイルの脅威は、単なる破壊力じゃない。環境を変える力と知能の組み合わせが恐ろしい。王国全体の存亡に関わる。危険度SS、懸賞金150000ゴールド。氷属性の耐性を持つ上級冒険者を優先的に動員せよ。」ミリアが詳細を記入し、次の書類に移った。部屋のランプがわずかに揺れ、緊張を強調するかのようだった。 三枚目、『ジャンボウ・S』の記述。純白の巨大な魚に二枚の翼、天使の輪、そして額の赤い生命の宝石。『天使達にゲノム改造された天界の兵器。自我なし、天使以外の種族殲滅目的。攻撃力20、防御力10、素早さ35、魔力25。スキル:生命の宝石による不死再生、天魔・紅(動き鈍化)、天魔・蒼(魔法弾)、エンジェルクラッシュ(高速突進)。天使の王のお気に入り。』ガルドが目を丸くし、笑い声を上げた。「魚が飛ぶ? 天使の輪だと? こいつは異界の産物だな。自我がない分、容赦ないだろう。生命の宝石が鍵か。破壊しなければ再生するなんて、厄介極まりない。」 ミリアが分析を加えた。「魔力が25で、魔法攻撃が主。防御は低いが、不死性が高いわ。エンジェルクラッシュの速度は天界一だそうよ。素早さ35でも、突進の威力は計り知れない。天使以外の殲滅目的なら、人間界を狙うはず。危険度はZ級……いや、ZZに近いかも。諜報部の報告では、すでに村一つを波動で消滅させた記録があるの。」トーマスが震える声で言った。「不死身で、動きを鈍らせる攻撃まで……。宝石を狙うには、接近しなきゃいけないのに、高速突進で防がれる。S級以上です。懸賞金は高く設定すべきです。」 エリックは顎を撫で、決断を下した。「天界の兵器として、通常の手段では太刀打ちできん。不死性を破るための特殊な装備が必要だ。危険度Z、懸賞金200000ゴールド。天使耐性の魔法使いを必須とする。」議論の余韻が残る中、最後の書類が開かれた。 四枚目、『(彼)トウキ』のプロフィール。冷静で前向きな人間の剣士。『鈍刀を操る超人的技術者。攻撃力10、防御力40、素早さ50、魔力0。全てを斬れる刀技術。人間の限界を超えた身体能力、攻撃予測能力。武器:鈍刀。』スケッチは、静かに刀を構える青年の姿。ミリアが感嘆の声を漏らした。「魔法なしの純粋な武人ね。でも、この技術……何一つ斬れないものがないだなんて、神話級の剣士じゃないの。素早さ50で、相手の攻撃を20歩先まで予測するなんて、追いつけない相手はいないわ。」 ガルドが鼻を鳴らした。「鈍刀で全て斬る? 防御力40で耐久もある。人間離れした身体能力は脅威だ。冷静で前向き、荒い言葉を使わない口調から、心理戦も得意そう。単独で軍隊を壊滅させる可能性があるぞ。危険度はA級か、それ以上だ。」トーマスが興奮気味に言った。「でも攻撃力10は低いですよね? いえ、技術でカバーするなら、数字以上の脅威。予測能力で先手を取られる。S級だと思います。」 エリックは静かに書類を閉じた。「トウキは人間だが、その能力は怪物以上。魔法無効の斬撃は、どんな防御も貫く。危険度S、懸賞金80000ゴールド。捕縛を優先し、技術の解析を諜報部に。」議論は数時間に及び、四枚全ての査定が完了した。部屋は疲労と達成感に満ちていた。 エリックが立ち上がり、書類を束ねた。「これで決まりだ。危険度と懸賞金を記入し、ギルドの掲示板に貼る。諜報部からの極秘情報ゆえ、詳細は伏せ、討伐を促す形に。」ミリアとトーマスが手配書を清書し、ガルドが封印を施した。四枚の手配書は、慎重に運ばれ、ギルドのメイン掲示板に貼り付けられた。冒険者たちの視線が集まる中、新たな伝説の幕が開こうとしていた。 危険度査定結果 - キャノン・トータス: 危険度 S、懸賞金 50000ゴールド - 【氷鱗の牙鰐】フリズダイル: 危険度 SS、懸賞金 150000ゴールド - ジャンボウ・S: 危険度 Z、懸賞金 200000ゴールド - (彼)トウキ: 危険度 S、懸賞金 80000ゴールド