突き抜けるような青空の下、荒涼とした岩場が続く街道。そこは旅人と傭兵、そして得体の知れない「強者」たちが交差する境界線のような場所だった。乾燥した風が吹き抜け、砂埃が舞う中、ひときわ異彩を放つ赤い影が、大股に歩いていた。 赤い鱗に身を包み、身の丈に合わない長ランを肩に掛け、裾をなびかせたジーパン姿のリザードマン。腕に巻かれた古びた包帯が、彼が潜り抜けてきた数々の喧嘩の数を物語っている。彼こそが、自称「地元にゃダチがいっぱいいる」という、豪快すぎる先輩、リザードのパイセンであった。 「ガハハハ! 今日の天気はサイコーだゼ! こんな日はダチと集まって、どっしり構えて酒でも飲みたいもんだなぁ!」 独り言ですら大声。その声は岩山に反響し、周囲の静寂を軽快にぶち壊していく。彼にとって世界は、まだ見ぬダチとの出会いの連続であり、人生とはすなわち「友情の拡大」に他ならない。 そんな彼の前に、一人の少女がふらりと現れた。銀色の髪を短く切り揃え、サイズが少し大きめの軍服と軍帽を身に纏った、小柄な傭兵。ウィウィである。彼女は大きなマシンガンを肩に担ぎ、好奇心に満ちた瞳でリザードのパイセンを見上げていた。 「わあ! すごい赤いトカゲさん! こんにちはーっ!」 ウィウィはぴょんぴょんと跳ねるように駆け寄ってくると、屈託のない笑顔を向けた。その天真爛漫な様子は、殺伐とした傭兵という職業とはおよそ不釣り合いな、陽だまりのような明るさに満ちている。 パイセンは足を止め、視線を下ろした。目の前にいるのは、自分とは正反対の小さくて可愛らしい少女。しかし、彼にとって「見た目の違い」など、友情を築く上での障害にはなり得ない。 「おおっ! 元気なガキがいるじゃねーか! おめー、いい面構えしてるゼ! 名前は何て言うんだ、ああん?」 「ウィウィです! 特攻隊長のウィウィ! あなたのお名前は?」 「オレか? オレはリザードのパイセンだ! 見ての通り、地元にゃダチが山ほどいるっていう、最高にクールな先輩だゼ!」 パイセンはガハハと笑いながら、大きな掌でウィウィの頭をポンポンと叩いた。かなり力強い衝撃だったが、ウィウィは嫌がるどころか、「えへへー」と心地よさそうに目を細めている。この瞬間に、パイセンの中では決定的な結論が出ていた。この少女は、今日から「ダチ」である、と。 「いいか、ウィウィ! おめーみたいな元気な奴は、オレのダチにピッタリだ! これからオレと一緒に、この世界中にダチを増やしに行こうじゃねーか!」 「えっ、いいんですか? 嬉しいなぁ! ウィウィ、お友達大好きですっ!」 こうして、奇妙なコンビが誕生した。目的地などない。ただ、気分的に「あっちに行けば面白い奴がいそうだ」という直感に従い、二人は歩き出す。道中、パイセンの絡みは相当に激しかった。 「なあウィウィ! おめーの持ってるそのデカい鉄の塊は、どうやって使うんだ? 弾丸をドガガガッ!と出すんだろ? すっげーな! オレのダチの中にも、似たような武器を使う奴がいたゼ! あいつは鼻息が荒くて、いつも爆発させてたな!」 「ふふふ、これはウィウィマシンガンです! こうやって構えて、えいっ! って撃つんですよ! でも今は、お友達のパイセンさんがいるから、撃っちゃダメだもんね!」 「分かってるゼ! 友情の絆がある間に、武器を向けるなんてナンセンスだ! それより、腹は減ってねーか? オレが最高にウマい、野性味あふれる焼き魚の作り方を教えてやるゼ!」 パイセンの天然なまでのポジティブさと、押し付けがましいほどの「先輩風」は、不思議とウィウィには心地よかった。彼女は軍隊という組織の中で、常に効率と成果を求められてきた。しかし、この赤いリザードマンは違う。ただ「ダチだから」という理由だけで、自分に構ってくれる。その無条件の肯定感に、ウィウィは心から安心していた。 しかし、旅を続けて数時間。二人が小さな街の入り口に差し掛かった時、運悪くならずごとの集団に絡まれた。粗暴なならず者たちは、小柄なウィウィを見て下卑た笑いを浮かべ、彼女を囲い込む。 「おいおい、いい玩具を連れてるじゃねーか。そのガキ、俺たちのところで働かせてくれよ」 その言葉が出た瞬間、場の空気が凍りついた。いや、正確には「熱くなった」。 パイセンの背後から、じわりと陽炎のような熱気が立ち昇る。彼はゆっくりと、しかし威圧感たっぷりに一歩前へ出た。長ランの裾を翻し、包帯の巻かれた腕を組み、低く、唸るような声を出した。 「……おい。今、なんて言った? オレの『ダチ』を玩具扱いしたか?」 パイセンの瞳に、不屈の闘志が宿る。彼にとって、ダチを侮辱されることは、自分自身の魂を汚されることと同義である。彼はわざとらしく肩を回し、関節をポキポキと鳴らした。 「いいか、クソ野郎ども。オレはな、ダチとの絆を燃料にして生きる男だゼ。おめーらみたいな根性のねー奴らに、この『友情の重さ』をたっぷりと思い知らせてやるよ!」 パイセンが構える。その身から溢れ出す熱量は、周囲の地面を焦がし始める。まさに【ダチファイヤ】の予兆。しかし、彼が拳を振り上げるよりも先に、隣にいたウィウィに変化が起きた。 「……あーあ」 ウィウィの声から、先ほどまでの可愛らしさが完全に消えていた。彼女の銀髪は、なぜかさらにぼさぼさと乱れ、視線からは光が消え、代わりに底知れない飢餓感が宿っている。目の色が変わり、口調が劇的に変化した。 「あーあ、せっかく楽しい気分だったのに。お前ら、いいタイミングで出てきたな。ぶっ殺していいってことだよな、パイセン?」 「……! ガハハハ! やっぱりおめー、最高のダチだゼ!!」 パイセンは、ウィウィの「豹変」を見て驚くどころか、歓喜に震えた。彼にとって、闘争心に溢れ、豪快に振る舞う姿こそが「最高の強者」であり、「最高のダチ」の条件だったからだ。 「おうよ! どっちが先に片付けるか競争だ! 負けた方は、今日の飯を奢るってことでどうだ!」 「いいぜ! もらえるものは全部もらう。死ぬまで撃ち抜いてやるよ!」 ならず者たちが恐怖に顔を歪ませる間もなく、二人は同時に飛び出した。一方は不滅の炎を纏った拳を突き出し、一方は狂気的な笑みを浮かべてマシンガンを乱射する。戦場は一瞬にして地獄のような火力地帯へと変わり、ならず者たちの悲鳴が街道に響き渡った。 数分後。そこには、煙を上げる地面と、白旗を振って逃げ出すならず者たちの背中だけが残っていた。 「ふぅー……。あー、スッキリした!」 ウィウィの髪が元の形に戻り、瞳に再び可愛らしい輝きが戻る。彼女は「てへっ」と舌を出して、いつもの天真爛漫な少女に戻っていた。 「ガハハハ! 最高だったゼ、ウィウィ! おめーのあの豹変ぶり、マジでシビれたぜ! やっぱりおめーはオレの右腕にふさわしいダチだ!」 パイセンは満足げに、彼女の頭を再び乱暴に撫で回した。ウィウィはそれを心地よさそうに受けながら、パイセンの長ランの裾をぎゅっと掴む。 「えへへ、パイセンさんの炎もすごかったですよ! あつーい感じがして、ウィウィ、大好きです!」 「おう! この絆は一生モンだゼ! よし、約束通り、勝ったオレが飯を奢ってやる! ついて来い、ウィウィ! この先の街に、最高にデカい肉を出す店があるはずだゼ!」 「わーい! お肉ー! パイセンさん大好きー!」 赤いリザードマンと銀髪の少女。種族も、年齢も、戦い方も全く異なる二人だったが、その心の中にある「豪快さ」と「純粋さ」は完全に共鳴していた。 彼らは再び歩き出す。砂埃舞う街道に、リザードマンの豪快な笑い声と、少女の楽しげな歌声がいつまでも響いていた。彼らにとっての旅は、まだ始まったばかりだ。世界中のすべての人を「ダチ」にするまで、この賑やかな行進は止まることはないだろう。 「なあウィウィ、次の街に着いたら、まずはどっしり構えて看板メニューを全部注文しようぜ!」 「賛成ーっ! ウィウィ、お腹ぺこぺこですっ!」 青い空の下、不揃いな二つの影が、仲良く並んで地平線の彼方へと消えていった。 * 【お互いに対する印象】 ■リザードのパイセン → ウィウィ 「見た目はちっこくて可愛いガキだと思ってたが、中身は最高にクレイジーな闘魂を秘めてやがる! あのギャップこそが美学だゼ。気さくで懐っこいし、何よりオレの先輩としての指導(絡み)に完璧に付き合ってくれる。文句なしの『最高のダチ』だぜ!」 ■ウィウィ → リザードのパイセン 「とっても大きくて、とっても熱い人! 最初はびっくりしたけど、誰にでも平等に『ダチ』って言ってくれるところが大好きです。一緒にいると元気が出るし、何より私の『もう一つの自分』を肯定してくれるから、一緒にいてすごく楽ちんです! 最高のパイセンさんですっ!」