第一回戦:市街地 崩れかけた高層ビルが幾重にも並び、道路には倒壊した車両とコンクリート片が散乱していた。遮蔽物の多い市街地は、遠距離からの射線を容易に遮る一方、建物の間を抜ける高速機動には危険な死角をいくつも作る。 ビシェイ・インフェクトのCradleは、ビルの角を背にしながら射線を細かく切り替えていた。操縦を担う防衛プログラムは、搭乗者の安全を最優先に、敵の位置と射線、退路を絶えず更新する。対するADAMAHは、三機のBELIALを高所と路地へ散開させ、Cradleの逃げ道を探らせた。SINGULARITYは膨大な戦闘記録から、機動兵器の一般的な回避パターンを予測する。だが、Cradleの適応プログラムはその予測そのものを観測し、同じ回避を繰り返さない。 最初に火を噴いたのはBELIALだった。三方向からの牽制射撃がCradleの退路を横切り、ADAMAHの【憤怒】がその隙間へ高火力のEN弾を流し込む。Cradleは強制実行の超加速で崩れた道路を斜めに駆け上がり、ビルの壁面を蹴って射線から離れた。弾丸が外壁を砕き、粉塵が路地を覆う。追撃用レーザー【禁忌越権】は煙の向こうに浮かぶBELIALの熱源を捉え、一本、続けて二本を撃ち抜いた。残る一機は高度を落として退避する。 Cradleは反撃の間を逃さなかった。【供物】の短い連射がADAMAHの肩部装甲を削り、レーザーが追い打ちをかける。高精度の射撃は遮蔽物の縁を正確に使い、敵が姿を見せる瞬間だけを狙っていた。ADAMAHは【知恵の葉】を起動し、光化学迷彩で瓦礫の影へ姿を溶かす。Cradleの照準は一度、空の路地を撃つ。直後、別の角度から【憤怒】が火線を走らせ、Cradleの側面を叩いた。 防衛プログラムは迷彩そのものを見破ったわけではない。しかし、撃ち込まれた弾道と、建物に残る損傷から敵の移動範囲を絞り込む。Cradleはあえて一瞬だけ姿を晒し、ADAMAHを射撃に誘った。高火力の弾が建物の角を吹き飛ばす。崩落音の直前、Cradleは横へ跳んでいた。露わになったADAMAHの腕部へ、【禁忌越権】が命中する。 SINGULARITYは距離を詰めるべき局面と判断し、残るBELIALを低空で突入させた。同時に【明けの明星】が炸裂する。紅いEMP粒子が路地を満たし、Cradleの防衛プログラムと追尾系に一時的な乱れが走った。ターミナルアーマーの起動も妨害され、Cradleは一瞬、被弾を許す。BELIALの集中射撃が脚部と背部を打ち、【憤怒】の弾幕が正面を押さえた。ADAMAHは【■燼■剣】を握り、遮蔽物を斬り崩しながら間合いを詰める。 だがEMPの効果が続くのは一時的だった。Cradleは手動の反応に頼らず、安定した超加速で横方向へ離脱する。最後のBELIALはその動きを追い、Cradleの進路へ回り込もうとしたが、レーザーが機首を貫いた。撃墜された機体がビルの壁へ激突し、爆炎を上げる。 Cradleの装甲は深く損傷していた。それでも搭乗者を守る設計と高い耐久性は、機体の中枢を持ちこたえさせる。防衛プログラムはターミナルアーマーを起動。機体に追従する防壁が攻撃を受け止める間、Cradleは崩れた建物の間を急加速し、ADAMAHの射撃角度を崩した。ADAMAHのターミナルアーマーも展開され、両機は至近距離で攻撃を交換する。 【供物】がADAMAHの胸部を叩き、【憤怒】がCradleの装甲を削る。Cradleは敵の剣撃を避けきれず、左腕のチェーンソー【賠葬】で大剣を受け止めた。高強度合金の刃が熔解熱に灼かれながらも回転を続け、刃同士が火花と溶融片を散らす。Cradleは押し合いを続けず、瞬間的な加速で身を捻った。大剣が空を切る。その懐へ入り込んだ【賠葬】がADAMAHの肘部に食い込み、装甲と関節を削り取った。 ADAMAHは大きくよろめく。Cradleは至近距離から【供物】を撃ち込み、レーザーを胸部へ集中させた。ターミナルアーマーの防壁が揺らぎ、やがて機体中枢の損傷によって消失する。ADAMAHはなお剣を振るおうとしたが、腕部は動かない。Cradleの追撃が中枢を捉え、戦闘機能を停止させた。 第一回戦勝者:チームA 第二回戦:山岳 急斜面を覆う泥は、一歩ごとに機体の足を取ろうとした。稜線から谷底へ続く地形には遮蔽物が点在するものの、足場は不安定で、勢いをつけた移動には転倒の危険が伴う。山肌の上空では風が乱れ、BELIALの高速飛行にも細かな補正が必要だった。 Cradleは斜面のわずかな岩棚を選び、機体を安定させて射撃姿勢を取った。ADAMAHは谷側へ下がり、三機のBELIALを左右に分ける。Cradleの防衛プログラムは、泥の滑りやすさと斜面の崩壊可能性を計算し、無理な追撃を避けていた。一方、SINGULARITYは安全な足場だけに留まれば攻撃角を限定できると判断し、BELIALの追跡と【憤怒】の遠距離射撃で圧力をかける。 EN弾が岩肌を穿ち、泥と石が斜面を滑り落ちる。Cradleは強制実行の加速を短く刻み、岩棚から岩棚へ移る。安定性に優れた機体は足を取られても姿勢を崩しにくく、【供物】が一瞬の射撃機会を捉えた。連射がBELIALの一機を翼から撃ち、レーザーがその機体を追って撃墜する。残る二機は距離を開け、交互の牽制でCradleの進路を狭めていった。 ADAMAHは迷彩を展開し、泥煙と岩陰に姿を隠す。Cradleは敵影を見失ったものの、退路を固定せず、射撃位置を少しずつ変えていた。防衛プログラムは弾道の来る方向と周辺の地形変化を照合し、敵の接近経路を推定する。予測された場所へ【禁忌越権】を撃つが、ADAMAHは直前に岩棚を蹴って進路を変え、レーザーは装甲の端をかすめた。 【憤怒】の弾幕が続き、BELIALが反対側から挟み込む。Cradleはターミナルアーマーを起動し、斜面を滑りながらも攻撃を受け止めた。だが山岳では、受けた衝撃で足場が崩れやすい。防壁が機体を守っても、泥と岩の崩落は止められない。Cradleは谷へ押し流され、複数の岩塊とともに斜面を滑落した。 SINGULARITYは好機を逃さず、BELIALを追撃に向かわせた。Cradleは落下の衝撃で脚部に損傷を負い、姿勢制御が乱れる。そこへ【明けの明星】が炸裂した。紅いEMP粒子が斜面に広がり、防衛プログラムの判断と追尾兵器を一時的に混乱させる。ターミナルアーマーの再起動も妨害された。BELIALの射撃がCradleの背部に集中し、続いてADAMAHが【■燼■剣】を構えて泥の斜面を下る。 Cradleは崩れ落ちる岩の陰へ機体を滑り込ませた。EMPによる停止は長く続かない。復旧後、防衛プログラムは戦況を再評価する。正面のADAMAHは接近中、BELIAL二機は上方から追い、足場は急速に崩れている。Cradleは斜面を登って距離を取るのではなく、崩落の流れを利用して横へ移動した。安定した超加速が機体を泥の上で支え、岩壁を蹴って射線から離れる。 BELIALの一機が追いすがる。Cradleは【供物】を撃ち、相手の進行方向を塞ぐように弾を置いた。小型戦闘機は回避したが、続くレーザーが機体を捉え、山肌へ叩き落とす。残る一機は距離を取って旋回し、ADAMAHへ援護射撃の機会を作る。Cradleの装甲はすでに限界に近い。 ADAMAHが泥を蹴って踏み込み、大剣を横薙ぎに放つ。Cradleは正面から避けきれず、左腕の【賠葬】を差し込んだ。熔解熱により刃の外側は赤く焼け、合金が削れる。しかしチェーンソーは回転を止めず、大剣の軌道をわずかに逸らす。Cradleは斜面の段差を踏み、相手の懐へ滑り込んだ。 その瞬間、ADAMAHのターミナルアーマーが展開する。Cradleの【供物】とレーザーは防壁に阻まれ、決定打にならない。SINGULARITYは防壁の時間を利用して大剣を振り下ろした。Cradleは全身の加速を一点に集めて横へ跳び、剣を岩棚へ叩きつけさせる。岩棚が崩れ、ADAMAHの足場が崩落した。巨体が一瞬傾いたところへ、Cradleは残弾を胸部へ集中させた。アーマーが揺らぎ、【賠葬】が露出した関節を断つ。 最後のBELIALが上空から攻撃するが、Cradleはそれを避けるために移動するのではなく、レーザーを一閃させて撃墜した。ADAMAHの防壁が消える。Cradleは一歩踏み込み、【供物】の残弾を至近距離から撃ち込み、チェーンソーで損傷した胸部装甲をさらに切り裂いた。中枢が破壊され、ADAMAHは泥の斜面に沈黙する。 第二回戦勝者:チームA 第三回戦:衛星・低重力 衛星の荒涼とした地表には、遠くまで見通せる岩場と浅いクレーターが続いていた。低重力は跳躍と方向転換を容易にする反面、一度速度を得た機体は止まりにくい。遮蔽物は限られ、長射程火器と空中機動の価値が大きい。 開始と同時にBELIAL三機が高度を取り、広い間隔を保って包囲の形を作った。ADAMAHは【憤怒】を構え、正面からCradleへ弾幕を浴びせる。Cradleは超加速で横方向へ跳び、クレーターの縁を蹴って大きく軌道を変えた。防衛プログラムは低重力下の慣性を計算し、無用な急旋回を避ける。だが、飛行するBELIALは三方向から追跡し、Cradleが着地する場所を狙って射撃を重ねた。 Cradleは【禁忌越権】を連続照射し、一機のBELIALを捉えた。機体はレーザーで胴体を貫かれ、回転しながら地表へ落下する。残る二機は撃墜を警戒して散開し、【憤怒】と連動した射撃でCradleを追い込む。Cradleの装甲が削れ、【供物】の弾丸も一発ずつ確実に減っていった。 ADAMAHは【知恵の葉】を起動し、岩影を利用して光学迷彩に身を隠す。見晴らしのよい地表では隠れる場所が少ないが、低重力で舞い上がった粉塵とクレーターの縁が、位置を見失わせるには十分だった。Cradleは迷彩を破れず、撃ち込まれた弾道だけを頼りに回避する。敵が姿を消している間に、BELIAL二機は左右から距離を詰めた。 Cradleはターミナルアーマーを展開し、集中射撃を耐えながら【供物】を撃つ。短時間の火力で一機のBELIALを損傷させたが、撃墜には至らない。ADAMAHの【憤怒】が側面から直撃し、防壁が急速に削られた。SINGULARITYは迷彩を解いて姿を現し、低重力を利用して高く跳躍する。大剣を振り上げ、Cradleへ落下の勢いを加えた一撃を放った。 Cradleは【賠葬】で受けるが、重量と落下速度に押されて地表へ叩きつけられる。チェーンソーの刃が大剣の熱で赤く焼け、左腕の装甲が割れた。防衛プログラムは損傷した姿勢制御を補い、機体を転がして二撃目を避ける。反撃のレーザーはADAMAHの脚部をかすめたが、敵はすぐに距離を取り、【憤怒】を撃ち続ける。 SINGULARITYは、Cradleが遠距離で優位を作る前に決着をつけるべきだと判断した。BELIALが追跡しながら牽制し、ADAMAHが大剣で接近戦へ誘導する。その間に【明けの明星】が爆ぜた。紅いEMP粒子が低重力の地表を漂い、Cradleの機械系と戦術AIを一時停止させる。防衛プログラムの反応が途絶え、追尾兵器の照準は乱れ、ターミナルアーマーも起動を妨げられた。 BELIALの射撃がCradleを打ち、ADAMAHの【憤怒】が装甲を貫く。Cradleは機能を取り戻すものの、すでに姿勢を崩し、弾薬も消耗していた。強固な機体構造は中枢を保っているが、低重力の開けた地形では逃げ続けるための遮蔽物がない。防衛プログラムは短時間の加速で進路を変え、岩棚の背後へ滑り込もうとする。 ADAMAHは迷彩を再び使い、Cradleの進路上へ先回りした。大剣が岩棚ごと薙ぎ払われ、Cradleは露出する。Cradleは残るレーザーを放ち、ADAMAHの胸部を狙う。紅色のターミナルアーマーが展開し、光線を受け止めた。続く【供物】の射撃も防壁に阻まれる。防壁が残る間、ADAMAHは反撃を急がず、BELIAL二機に射角を維持させた。 Cradleは防壁が消える時を狙い、【賠葬】を構えて一気に距離を詰める。しかし低重力では接近の勢いを途中で止めにくい。ADAMAHはそれを読んで半身を引き、大剣の刃を横から叩きつけた。チェーンソーが剣を受け止めるものの、熔解熱が刃を削り、衝撃がCradleの左腕を破壊する。続けざまに【憤怒】が胸部へ集中し、装甲の一角を穿った。 防衛プログラムは最後の機動力で敵の射線を外そうとするが、BELIALが左右から挟み込み、逃げ道を塞いでいた。Cradleは最後のレーザーを撃ち、一機に損傷を与える。しかし撃墜には届かない。ADAMAHは大剣を振り下ろし、機体中枢を砕いた。Cradleは低重力の地表を滑り、停止する。搭乗者を守る構造は最後まで機能したが、戦闘を続けるための機能は失われていた。 第三回戦勝者:チームB 総合結果 チームAが二勝、チームBが一勝。 総合勝者:チームA