第1回戦:市街地—ビルと高強度遮蔽 高層ビルが密集する市街地。通りは狭く、交差点には厚いコンクリート壁が残り、見通しは数十メートルごとに断たれていた。大時化と錨の『時化』は、巨体に見合う重い足取りで交差点へ進む。ロバーツは建物の角や道路の傾斜を一瞥し、アンカーを引きずらず、鎖の環を一つずつ操って余計な音を抑えた。 対するAtlasの3S.Cometは、BraveWingを広げてビルの間を滑る。三機の自律子機は機体の周囲に散開せず、盾を前にした堅い隊形を保った。多重人格AIはまずγへ移行し、瞬間予測を使ってアンカーの初動を観察する。距離を取ったまま銃撃を始めるが、ロバーツはビルの角を盾にして射線を切った。弾はコンクリートを削るものの、時化の装甲を貫くには至らない。 ロバーツはアンカーを低く振り、鎖を道路沿いへ伸ばした。狙いは機体そのものではなく、Cometの進路を遮る建物の柱と路面だった。巨大な錨が路面を砕き、破片と粉塵が通りを塞ぐ。Cometは瞬発力で高度を上げ、瓦礫を避ける。続けてαが前面に出て、剣を構えた機体と子機が一斉に攻め込んだ。 βへ切り替わったAIが、三機の子機を盾として並べる。アンカーの鎖が巻きつこうとするたび、子機が互いに位置を変えて引き剥がし、Cometへの直撃を許さない。Atlasはその防御の隙間から、銃形態のTST357で時化の関節部を狙った。ロバーツは攻撃を避けきれず、肩と脚部に損傷を受ける。それでも大型機の姿勢は崩れず、アンカーを手繰る腕にも力が残っていた。 ロバーツは狭い路地へ後退し、Cometを誘い込む。観察眼で子機の防御配置を読み、アンカーを投げるのではなく、鎖を建物の両側へ渡してから錨を回した。鎖が路地を横切り、逃げ道を限る。Cometは高く飛び越えようとするが、翼を広げる空間が足りず、軌道をわずかに変えた。その一瞬に、アンカーの錨が横から迫る。 Atlasはγの予測で直撃をかわし、βの子機を盾にして錨の勢いを削る。子機は大きく弾かれながらも高耐久を保ち、機体を守り切った。しかし、回避で高度を失ったCometは路地の壁際へ追い込まれる。ロバーツは鎖を引き、錨を戻す勢いを利用して再び薙ぎ払った。盾の子機が二度目の衝撃を受け、隊形が崩れる。残る子機が銃撃と剣撃で反撃し、時化の胸部に傷を刻んだが、決定的な損傷には届かない。 アサルトアーマーが起動した。時化を中心とする爆発が路地いっぱいに広がり、Cometの周囲へ飛び込んだ弾を消し去る。子機は盾を重ねて爆発をしのぐが、至近距離の衝撃で散らされ、機体にも致命的な損傷が及ぶ。ロバーツ自身も爆発後の隙を狙われ、剣の一撃で装甲を裂かれた。それでもアンカーを握る腕は残っていた。 ターミナルアーマーを得たCometは防御を大幅に高め、最後の突撃を仕掛ける。ロバーツはその防壁を正面から破ろうとはせず、錨を地面へ打ち込んで鎖を張り、進路をずらした。防壁に守られたCometは止まれず、鎖に引かれて姿勢を崩す。ロバーツは全身の力を込めて錨を引き戻し、横倒しになった機体へアンカーを叩きつけた。防壁は衝撃を受け止めたが、連続する質量打撃で機体の駆動部が停止する。子機も戦闘不能となり、Atlasの機体は再起動できなかった。 第1回戦の勝者:チームA 第2回戦:山岳—急斜面と泥沼 雨上がりの山岳地帯は、急斜面とぬかるんだ谷が入り組んでいた。足場は不安定で、踏み外せば泥沼へ滑り落ちる。重い時化には不利な地形だが、アンカーの鎖を固定物へ掛ければ、移動や姿勢制御にも使える。ロバーツは斜面を見渡し、樹木や岩壁を手早く確かめた。一方、Cometは翼の加速で高低差を越え、子機を三方向へ配して周囲を監視する。 最初に距離を取ったのはAtlasだった。γのAIが瞬間予測でアンカーの振り始めを計り、銃形態のTST357で時化の脚部を狙う。斜面の泥が弾け、機体はわずかに傾いた。ロバーツは無理に追わず、錨を岩へ打ち込んで自機を支える。続く射撃は岩に遮られ、Cometの攻撃は地形によって狙いを限定された。 Atlasはαへ切り替え、剣を構えた子機とともに近接戦へ踏み込む。Cometの加速は斜面をものともせず、時化の脇へ回り込む。ロバーツはアンカーを短く振って迎撃し、錨の頭で剣を押し返す。鎖は泥に沈みかけるが、彼はすぐに引き上げ、岩場に沿って振り直した。巨大な錨が斜面を削り、泥と石が崩れてCometの進路へ流れ込む。 βが前面に出る。三機の子機は盾を重ね、崩れる土砂から本体を守った。泥の流れを抜けたAtlasは、銃撃を続けながら時化の足元を狙う。機体は少しずつ泥沼側へ押され、踏ん張るたびに脚部が沈んだ。ロバーツは鎖を岩柱へ巻きつけて体勢を保つが、Cometはその鎖を銃撃で狙い、固定を緩めようとする。子機が別方向から剣を振るい、鎖の環をいくつか切り離した。 時化は損傷を受けながらも、アンカーを手放さない。ロバーツは鎖を振り回し、錨を直接当てるのではなく、斜面上方の岩棚へ投げた。錨が岩棚を砕き、落石がCometの背後へ降り注ぐ。Atlasは瞬発力で横へ逃れるが、その回避で泥沼に近づく。子機が盾を広げて落石を受け止め、機体を引き戻す。高耐久の子機は耐えたものの、ばらけた隊形の再構築に時間を取られた。 ロバーツはその隙に鎖を引き、アンカーの軌道を低く変えた。錨は泥沼の表面を走り、Cometの脚部をかすめる。Atlasはγの予測で大きな損傷を避けたが、姿勢が崩れた。αに切り替えて反撃し、剣が時化の装甲を深く切り裂く。ロバーツの機体は片脚の駆動を損ね、傾いたまま泥に沈みかける。双方とも、勝敗を決める一撃が必要な状態へ追い込まれた。 時化のアサルトアーマーが作動する。中心から広がる爆発は近距離の弾を消し、子機をまとめて弾き飛ばした。斜面の土砂が吹き上がり、Cometも防御態勢を取る。子機の盾が爆発を受け止めたが、衝撃で隊形は崩壊し、いくつかの機能が停止する。Atlasは残った子機を本体の前へ寄せ、βの防御で爆発後の追撃をしのいだ。 ターミナルアーマーが発動すると、Cometは崩れた足場を抜けて時化へ迫る。強化された防御を頼みに剣を突き立てようとするが、ロバーツはアンカーの鎖を残った岩へ回し、片脚の支えを補いながら錨を振った。最初の打撃は防壁に受け止められる。二撃目で錨を地面へ打ち込み、鎖を引いてCometの足元を泥沼へ引き込む。防壁は機体への損傷を抑えたが、泥に捕らわれた機体の姿勢までは救えない。ロバーツは全身で鎖を引き、錨を横から叩き込む。Cometの脚部と胴体が大きく破損し、稼働を停止した。時化も深刻な損傷で動けなくなったが、Atlasの戦闘不能が先に確定した。 第2回戦の勝者:チームA 第3回戦:衛星—低重力 月面に似た衛星の平原。重力は弱く、地面には細かな砂礫が広がる。遮蔽物は低い岩塊だけで、互いの姿は遠くからでも見えた。錨と鎖の質量は変わらないが、低重力では投げた武器の軌道が長く残り、機体の動きにも大きく影響する。CometはBraveWingを展開し、加速の勢いを細かく調整する。時化は足を取られぬよう姿勢を整え、ロバーツは鎖の長さと振り幅を確かめた。 戦端を開いたのはCometの射撃だった。γが遠距離から狙いを定め、TST357の銃撃と子機の射撃が時化を包囲する。遮蔽物が乏しいため、ロバーツはアンカーを盾のように振り、弾道を逸らしながら前進した。しかし、銃撃のすべてを防ぐことはできず、装甲には傷が増える。Cometは長期的な持久力を生かし、すぐに決着を狙わず、距離を保って損傷を重ねる。 ロバーツはアンカーを投げた。錨は弱い重力の中を長く飛び、Cometの進路を横切る。Atlasは瞬発力で軌道を外すが、錨を避けた先へ鎖が追随し、子機の一機を巻き込んだ。βの防御指示により、残る子機が連携して鎖を押さえ、巻きつきを解く。高耐久の子機は破損しながらも生き残り、Cometを守った。 Atlasはαへ切り替え、剣を持った本体と子機が一気に距離を詰める。低重力の加速は鋭く、時化の巨体へ複数方向から斬撃が迫った。ロバーツはアンカーを手繰り寄せ、鎖を円弧状に回して近づく機体を退ける。錨が一度当たれば大きな損害になるが、Cometはγの予測で打撃の間合いを外し、子機は盾を前にして安全な接近路を作った。 時化の巨体は小刻みな回避に向かず、斬撃を完全には避けきれない。肩と腕に損傷が重なり、アンカーを振る速度が落ちる。ロバーツはその不利を認め、鎖を地面に這わせてから急に引き上げた。飛散した砂礫が視界を乱し、鎖の環が子機の隊形を崩す。Cometは防御を固めたが、ロバーツは錨を本体へ投げず、戻りの軌道を利用して横から振り抜いた。盾の子機が受け止めるものの、衝撃で本体との間に隙間が生まれる。 そこへCometの反撃が入る。αの剣が時化の胸部を深く切り裂き、銃撃が損傷箇所へ集中した。ロバーツは機体の維持に追われ、姿勢を崩す。アサルトアーマーを使えば近距離の敵と弾を一掃できるが、Cometと子機は散開しており、爆発範囲へ全機を捕らえる機会は限られていた。Atlasはその判断を見越すように距離を取り、射撃を続ける。 ロバーツは最後の機会を作るため、アンカーを足元へ叩きつけた。低重力で跳ね上がった時化の巨体が一瞬浮き、Cometの予測軌道と異なる動きを見せる。鎖を手繰って強引に方向を変え、時化はCometへ接近した。アサルトアーマーが炸裂し、機体中心の爆発が弾を消し、子機を吹き飛ばす。だが、散開していた子機のうち二機は爆発の致命圏外に残り、盾でCometを守った。爆発の衝撃は時化自身にも負担を与え、損傷した腕の動きが止まる。 Atlasのターミナルアーマーが展開する。防壁に包まれたCometは、崩れた子機を再配置しながら反撃へ移った。ロバーツは鎖を振るうが、先ほどまでの精度は戻らない。錨の一撃を防壁が受け止め、子機の剣が鎖を切り離す。Cometは射撃で時化の脚部を破壊し、続けて本体の剣で胸部の損傷を広げた。時化はなおアンカーを持ち上げようとしたが、腕と脚の駆動が同時に停止する。ロバーツの観察と武器利用の巧みさは最後まで脅威だったものの、距離を保ち、連携と持久力を損なわずに戦ったAtlasが押し切った。 第3回戦の勝者:チームB 総合結果 チームAが2勝、チームBが1勝。 総合勝者:チームA【大時化と錨】ロバーツ・■■■