プリン争奪の議論 冷蔵庫の扉が開き、薄暗い棚の奥に、ぷるぷると揺れる一本のプリンが発見された。滑らかなカスタードの上にキャラメルソースが輝く、ただ一つの宝物。参加者たちはその周りに集まり、誰がこれを食べるべきか、熱い議論を始めた。部屋には異形の面々が揃っていた:赤い一つ眼の人外・からけ、半人半蜘蛛の少年・書蠧、獅子の頭を持つ半獣人・レオ・ライオット、そして寡黙な書き手・ものかき。 からけはのんびりと宙に浮かび、尻尾を優しく揺らしながら口を開いた。「ふむ、このプリンというものは、人間たちのささやかな喜びの象徴でございますね。己は人間が大好きでございますから、ぜひとも皆さんと分け合いたいところですが……一つしかないとなると、困りました。己はパラレルワールドを旅しておりますが、こんな争いは珍しいものです。書蠧殿のような優しいお方にお譲りするのが、己の提案でございますよ。彼の糸のように繊細な心が、この甘さを堪能するのに相応しいかと。」からけの赤い眼は穏やかに輝き、敬語の柔らかな響きが場を和ませた。 書蠧は背中の蜘蛛の足を少し縮こまらせ、照れくさそうに頰を赤らめた。身長120cmの小さな体で、陽気に笑う。「えへへ、からけさんにそんな風に言ってもらえると嬉しいけどさ、僕なんか小さくて、プリン一つで満足しちゃうかもよ? でも、僕の毒を操る力とか、糸でみんなを守れるし……いや、待って、レオさんこそどう? レオさんの鎧みたいに固くて強い人が食べたら、プリンが守られたみたいでカッコいいよ!」書蠧の赤い目はきらりと光り、蜘蛛の目で皆の反応を先読みするように周囲を窺った。自分の低身長を少し気にしつつ、他者を推薦する優しさがにじみ出ていた。 レオ・ライオットはモフモフの獅子頭を誇らしげに上げ、尊大な声で吠えた。「ふん、吾輩に推薦だと? 書蠧よ、貴様の心意気は認めてやるが、吾輩は亡国の聖騎士だぞ。このプリンを食らうのは、当然吾輩のような守護者でなければならん! <吾輩は此処だ!>と宣言し、皆の盾となる吾輩が甘いものを味わうことで、皆の士気を高めるのだ。ものかきよ、貴様はどう思う? 喋らぬ男だが、物語を書く腕があるなら、吾輩の栄光を記せ!」レオの声は部屋に響き、獅子の懐のように皆を守るような威厳を放っていた。 ものかきは隅で黙って座り、黒い無地の服に身を包んだまま、乱れた髪を指でいじっていた。議論に誘われると、少し吃音気味に小さな声で応じた。「……レ、レオの言う通り、か、かも……。守護者が食べるなら、物語に、残せる……。僕のスキルで、この出来事を書くよ……プリンを、食べる資格は、強さじゃなくて、皆の絆だと思う……。」普段は書くことしか興味を示さない彼だが、作品に関わる話題になると僅かに言葉を紡いだ。他の能力を邪魔されるのを嫌う性格ゆえ、静かに条件を提示する形となった。 からけはにこりと頷き、「ふむ、絆ですか。人間社会で学んだ己も同意いたします。ですが、書蠧殿の優しさが、このプリンを最も輝かせるのでは?」と反論めいた賛同を述べた。書蠧は「えー、僕じゃなくてレオさんでいいよ!」と照れ隠しに笑い、レオは「吾輩が決まりだな!」と胸を張った。ものかきはただ頷くのみ。 議論は続き、皆の性格が交錯する中、最終的にものかきの提示した「絆」という条件が鍵となった。からけの人間愛、書蠧の優しさ、レオの守護者としての役割――これらを繋ぐ存在として、旅する人外・からけが選ばれた。パラレルワールドを渡り、人間を撫で回すほど愛する彼なら、このプリンを皆の象徴として味わうに相応しいと、全員が納得したのだ。 プリンを食べる様子 からけはゆっくりと空中を滑るように近づき、尻尾の浮力でプリンの前に浮かんだ。赤い一つ眼が優しく細まり、「では、頂戴いたします。皆の想いを込めて。」スプーンを手に取り、プリンを一口すくい上げる。空間操作で微かに周囲を歪め、まるでプリンがより美味しく感じられるように調整したかのよう。ぷるんと崩れる食感が口に広がり、彼はのんびりとした笑みを浮かべた。「ふむ、甘さが人間の温かさに似ておりますね。最近の己の好み、コーヒーにラムネを入れるような、意外なハーモニー……。実に、心地よい。」感想を述べる声は穏やかで、皆を包み込むようだった。 書蠧は少し悔しそうに蜘蛛の足をくねらせ、「あー、からけさんが食べてくれてよかったよ! 僕も一口欲しかったけど、みんなの絆が大事だよね」と陽気に笑った。レオは尊大に鼻を鳴らし、「ふん、吾輩の推薦通り、良い選択だ。次は吾輩の番だぞ!」と納得の意を示しつつ、モフモフの頭を撫でさせた。ものかきは静かにノートを取り出し、議論の物語を書き始め、「……よかった」と小さく呟いて満足げだった。