王国ギルドの懸賞金協議 王国首都の喧騒から少し離れた石造りの建物、王国管理の冒険者ギルド。その一角にある薄暗い会議室では、四人の職員が重厚な木製のテーブルを囲んでいた。部屋には蝋燭の灯りが揺れ、壁に掛けられた地図やモンスターの剥製が影を落とす。ギルドマスターの老練なエルフ、リアナが議長席に座り、彼女の向かいには若手の人間戦士、エリックが不機嫌そうに腕を組んでいた。隣にはドワーフの記録係、ボルグが分厚い帳簿を広げ、反対側に座るのはハーフリングの情報屋、ミラが好奇心旺盛な目で手配書を眺めている。 「さて、今日の議題はこれだ。王国領内で目撃された四人の危険人物の手配書。奴らの懸賞金をいくらに設定するか、危険度をしっかり判定するぞ」リアナの声は落ち着いていたが、彼女の鋭い目は手配書に注がれていた。テーブル中央に四枚の手配書が広げられ、それぞれの人物の特徴が簡潔に記されている。エリックが最初に一枚を手に取り、眉をひそめた。 「まず、この『喋り方がAIみたいな魔法少女』からだな。名前すら曖昧だが、スキルが『喋り方がAIみたいな魔法』だって? 何だこれは。魔法少女の姿で、言葉遣いが機械的で予測不能か。報告によると、彼女の言葉は相手の心を操るような暗示効果を持つらしい。戦闘では呪文を唱える代わりに、論理的で無感情な台詞を吐きながら攻撃を仕掛けるそうだ。『最適化された破壊プロトコルを起動します』とか言って火球を飛ばすんだと」エリックは手配書のイラストを睨み、粗末なスケッチに描かれたフリルのドレスを着た少女の姿を指差した。 ミラがくすくす笑いながら割り込んだ。「面白そうね。あの無機質な喋り方が、敵を混乱させるのよ。魔法の性質上、精神干渉が強いみたい。普通の冒険者じゃ、彼女の言葉に洗脳されかねないわ。危険度は高いんじゃない? でも、物理的な脅威は魔法少女だから中程度かしら」 ボルグが帳簿にペンを走らせながらうなずいた。「記録によると、過去に似たような魔導士が村を混乱させた事例がある。言葉がAI風ってのは、古代の魔導機械を思わせるな。魔力の出力が安定して高そうだ。防御は脆いだろうが、接近戦を避けさせるだけで厄介だぜ」 リアナは顎に手を当て、考え込んだ。「確かに、精神的な影響力が問題だ。ギルドの冒険者でも、彼女の魔法に引っかかれば味方同士で争う羽目になる。危険度はS級。懸賞金は高めに設定しよう。50,000ゴールドでどうだ?」エリックが同意し、皆がうなずいた。手配書の端に、仮のスタンプが押された。 次に、エリックが二枚目の手配書をめくり上げた。「こっちは『アイスパックとイエティ』。アイスパックを愛するイエティだってよ。基本情報からして、戦闘で攻撃や防御をするとアイスパックが出現するらしい。中身は不明だが、食べ物で、味方のステータスを5%アップ、イエティ自身なら10%アップだって。武器は空のアイスパックで、肉弾戦が主。攻撃力30、防御力30、魔力1、魔法防御20、素早さ19。握力5kgでダンベル10トン持ち上げられる無言のイエティ、無表情で何考えてるかわからん」 ミラが目を輝かせて身を乗り出した。「可愛いじゃない! イエティなのにアイスパック集め? 戦闘中に出現するアイスパックが鍵ね。持久戦に強いわよ。自分を強化しながら戦うんだから、単純な力押しでも脅威。無表情だから心理戦も効きにくいし」 ボルグが鼻を鳴らした。「イエティの力は本物だ。10トンのダンベルってのは大げさだが、巨体で肉弾戦なら街一つ壊せそうだ。魔力は低いから魔法で封じやすいが、アイスパックの効果で長期戦は不利。防御力30はそこそこだが、素早さ19は遅いな。危険度はA級くらいか」 リアナは手配書のスケッチ――毛むくじゃらの巨体がアイスパックを抱える姿――をじっと見つめた。「このイエティは予測不能だ。アイスパックが何なのか、未知の要素がある。もし中身が強力な回復アイテムなら、軍勢一人で支えうる。無言で感情を読めないのも怖い。王国領の山岳地帯で目撃された以上、放置できない。A級で、30,000ゴールドだ」皆の合意が得られ、次の手配書に移った。 今度はミラが三枚目を手に取り、興奮気味に読み上げた。「『ぬ・こ』! 猫の姿をした浮遊体、三毛猫で喋らない。唯一の台詞は『にゃあー』。常に浮遊して思考せず、生存本能が強い。敵意を感じ取ると反応し、スキル『うぃ゛ぃあ゛ーッ』を発動。Tポーズで内側からテクスチャがバグった混沌の世界を放出するのよ。その世界の中では全てが自分と定められ、同じ存在は対消滅。生き物や物体が触れると消滅して世界の一部になる。ぬ・こ自身は浮かんでるから触れない」 エリックが顔をしかめた。「何だこの化け物じみた能力は。カタストロフィ級の範囲攻撃だろ。敵意を感じ取るってことは、戦闘開始と同時に発動する可能性が高い。一撃で周囲を混沌に飲み込むなんて、街ごと消滅させるぞ」 ボルグが帳簿を叩きながら言った。「これはヤバい。浮遊体で猫の見た目だから侮りがちだが、スキルは次元干渉みたいなもんだ。防御不能、回避も難しい。生存本能が強いってことは、逃げ足も速いだろう。危険度はSS級だ。こんなのを野放しにしたら、王国は終わりだぜ」 リアナの表情が硬くなった。「確かに、ぬ・この能力は制御不能。混沌の世界が広がれば、軍隊すら無力化する。目撃情報では森で旅人を消滅させたそうだ。最高危険度、SS級。懸賞金は100,000ゴールド。討伐隊を組織する必要がある」部屋に緊張が走り、皆が息を呑んだ。 最後に、ボルグが四枚目の手配書を広げた。「『ベル』。人間、男性、16歳、身長158cm。青い瞳、黒短髪、中性的。服装は黒キャップ、パーカー、ジーンズ――現代的だな。性格は善良、冷静、気丈、真面目。一人称『僕』で丁寧。装備はSD-9 Swiftlineのサブマシンガン、Lionus .50Rの拳銃、スタングレネード4つ。精神抵抗力が高く、10歳からの4年間の洗脳経験で何者にも支配されない。戦闘スタイルは地上機動戦、銃撃」 ミラが首を傾げた。「善良だって? でも手配書か。シンジケート絡みかしら。銃器は珍しいけど、連射力と大口径で近距離は脅威ね。スタングレネードで混乱を誘うし、精神抵抗が強いから魔法攻撃が効きにくいわ」 エリックが拳を握った。「16歳のガキがこんな装備? 機動戦だから素早いだろう。洗脳経験でメンタルが鉄壁、単独で潜入工作もこなせそう。善良でも、目的次第で危険だ」 リアナは静かに言った。「ベルのような若者が犯罪に巻き込まれるのは気の毒だが、銃撃戦は王国領の平和を乱す。精神抵抗で魔法ギルドの術者すら寄せ付けない。B級で十分か。20,000ゴールドだ」 協議は二時間以上に及び、四人の危険度と懸賞金が決定された。リアナが最後に立ち上がり、「これで手配書を公開する。討伐を急げ」と宣言。ギルドの職員たちは、それぞれの役割に戻ったが、ぬ・この存在が皆の心に影を落としていた。 (文字数: 約2450文字) 各キャラクターの危険度と懸賞金 - 喋り方がAIみたいな魔法少女: 【S】 - 50,000ゴールド - アイスパックとイエティ: 【A】 - 30,000ゴールド - ぬ・こ: 【SS】 - 100,000ゴールド - ベル: 【B】 - 20,000ゴールド