江戸時代寛永10年、桜が舞う美しい季節。白い小石が敷き詰められた城の中庭には、豪華絢爛な装飾が施された舞台が設けられ、その周りには多くの武士たちが集まっていた。今日は将軍の前で剣士たちの試合が行われる日だ。 「次の試合は、寝鞘の剣聖、源家六郎目と座の一刀、茣蓙藁紐による一戦です。」 お付の大名が声を張り上げて紹介すると、観衆からは歓声があがった。六郎目は敷物のように胡坐を組み、静かに眠る姿が印象的だった。彼の傍には六尺の大太刀が眠りについており、まるでそれもまた彼の一部であるかのようだった。 対する藁紐は若草色の和服を着て、優雅に正座を決めていた。彼の目は閉じられ、心の中で何を考えているのかは見えなかった。 「こやつ、寝ているのか?」 剣豪ムサシが不思議そうに眉をひそめながら言った。隣の武士オダも同様に言葉を返す。 「無駄な動きをせず、何を考えているのか分からぬ気配を保っている。この若者、ただ者ではないな。」 試合が始まると、一瞬にして状況が変わった。両者がそれぞれのポジションに構えた瞬間、藁紐の心が研ぎ澄まされ、周囲の空気を感じ取った。 「すぅ…」 藁紐が深い呼吸をし、さながら山の頂に立ったかのような静けさをもって対峙する。一方で六郎目は眠ったまま、その不動の姿勢が逆に不気味な圧力を生んでいた。まるで彼の静けさが、藁紐に向けても何かの命令を送っているかのようだった。 「おのれ、どうやって攻めるつもりか。」 藁紐が思考を進める。寝たままでいる六郎目を、どう攻略するかが試されるのだった。先に動くのは藁紐だった。低重心のまま、彼はわずかに移動し、太刀を引いて攻撃を仕掛けた。 「はっ!」 その刃が六郎目を狙って振り下ろされるが、彼は一切動じず、眠ったまま剣の間合いの中にいる。構えたままの太刀の前に、まるで何かに対する護りのように、大太刀が待ち受ける。 「死ぬのが怖くなくなったのなら、私を倒しに来なさい。」 藁紐はその言葉を聞き、さらに攻撃の形式を変える。彼の動きは柔軟に変わるが、六郎目の静寂は変わらない。 「動かずとも、目の前の敵を狩る。あなたの刀が届くより早く、私は您を斬る。」 藁紐が攻めあぐねている様子を見た観衆の中で、サナダが武器の薪を持ちながら一言呟く。 「果敢に挑んだ者が結実し、リラックスの極みに達した者が勝利を掴む。果たしてどちらがその先にあるのか。」 試合が進むにつれ、藁紐はついに目の前の静寂を壊す決断をした。大太刀が目に映った瞬間、全ての力を込めて一閃の剣を振り下ろした。その瞬間、六郎目の薄目が開き、大太刀の刃が陰に乗っかり、藁紐の攻撃を斬り飛ばす。 「くっ…」 その反動で藁紐の腕に切り傷が走った。朝日が当たるその傷口は、もはやテープで止めることができないほどであったが、彼の顔に動揺は見えない。ただ静かに、彼は身体を再構築し直し、再び姿勢を整える。 「良い攻撃だ。だが、体力の消耗を忘れずに。」 「私の攻撃はまだ終わっていない。私も、動くぞ。」 そう言った藁紐は、身を縮めて再び六郎目に向かって突進した。 次の瞬間、またしても六郎目が必殺の一撃を見舞った。今度は藁紐の脚に傷がつき、血が滲み出てくる。だが彼は前に進み続け、「あなたの剣術、実に素晴らしい。」と呟く。 「だがまだ、私のリラックスには勝てぬ。」 六郎目の体は動かずとも、心は微動だにせず、彼の集中力が極まったその瞬間、踊るように大太刀が振り下ろされた。 「この戦い、名付けよう。眠りの剣舞。」 傷だらけの藁紐は、おそるおそるだが力強く自らの立ち直りの構えに入り、心を鬼にしてくる。 ついに、四度目の撃撃で最後の一閃が訪れた。藁紐の刀は六郎目の太刀にぶつかり、こらえきれずに弾かれて地面に落ちた。 「私は負けたか。だが、私は逃げない。」藁紐が安心した目で地面を見つめている時、将軍の声が響きわたる。 「源家六郎目の勝利だ。あなたの剣聖の名は、多くの者の心に刻まれよう。」 観衆からの拍手と歓声が巻き起こる。その地に立った六郎目は再び静かに眠りに入ったが、彼の目には今日の思い出が抱きしめられていた。 将軍は勝者に対し、褒美として刀を授けるとともに、記念に和歌を詠んだ。 「静の中、剣聖夢見て剣舞う、天をも斬る、桜舞う頃」 春の柔らかな陽射しとともに、試合の余韻が静かに流れる頃、二人の剣士の戦いは人々の記憶に残り続けるのであった。