王都の喧騒から離れた場所にある、王国管理・冒険者ギルドの本部。その最深部に位置する職員専用の会議室は、重厚なオーク材のテーブルと積み上げられた古文書、そして最新の諜報報告書で埋め尽くされていた。 窓の外には穏やかな陽光が降り注いでいたが、室内の空気は凍り付くように張り詰めている。テーブルの上に広げられたのは、王国諜報部から極秘裏に届けられた四枚の手配書。それらは、この世界の常識を根底から覆しかねない「異物」たちの記録であった。 「……さて。諜報部からの依頼は『適正な危険度の判定と懸賞金の設定』。だが、正直に言って、この資料を読んでいる限り、正気な人間が太刀打ちできる相手ではないな」 溜息をついたのは、この会議を主導するギルドの査定責任者、ゼノスである。 【氏名】ゼノス 【性別】男性 【役職】査定責任者(特級査定官) 【口調】理知的で冷静。皮肉屋だが責任感は強い。 【来歴】元・王国宮廷魔導師。理論的な分析に長け、未知の脅威を数値化することに人生を捧げている。極めて慎重な性格。 彼の隣では、若き女性職員のリリアが、不安げに資料を指でなぞっていた。 【氏名】リリア 【性別】女性 【役職】新人記録員 【口調】丁寧で控えめ。常に敬語で話し、困惑することが多い。 【来歴】地方ギルドから推薦を受けて配属されたエリート。知識量は膨大だが、実戦経験が少なく、恐ろしいものへの想像力が豊かすぎる。 「ゼノス様、この……『JDG-00X』という個体。資料にある『DG細胞』というナノマシン……いえ、自己修復能力が異常です。物理的な破壊をしても瞬時に再生するなんて、不死の呪いを受けた魔物より厄介ではありませんか?」 リリアの指摘に、腕を組んで深く考え込んでいた屈強な男、ガラムが鼻で笑った。 【氏名】ガラム 【性別】男性 【役職】現場監督・戦術分析官 【口調】粗野で豪快。結論を急ぐ傾向がある。 【来歴】数々のSランククエストを制覇してきた元冒険者。現場の視点から「どうやって倒すか」を考える実戦派。 「ガハハ! 鉄の塊だろうが再生しようが、デカければ壊せばいいだけの話だ。だが、この『ガンダムヘッド』とかいう触手付きの自律兵器……気味が悪い。視界外から噛みつかれるのは御免だぜ。攻撃力40に防御力35、魔法耐性は低いが、物理的な破壊力だけで街一つ消し飛ばしかねん」 「その通り。特に『メガデビルフラッシュ』の出力は、王都の結界をも貫通する可能性がある。危険度は極めて高い。だが、まだこれだけではないな」 ゼノスが二枚目の手配書を繰り出した。そこには【再邂逅する希望】と記された、二人の意識を宿す仮面ライダーの記録があった。 「……これは不可思議だ。二人で一人の存在。しかも、絶望的な状況から『黄金の風』を呼び込み、状況を完全に反転させる能力を持っている。この『ゴールデンエクストリーム』という状態に至った場合、対戦相手を『完封』するとのことだ」 「完封……つまり、攻略法が通用しないということですか?」 リリアが青ざめる。ガラムが顎をさすった。 「理屈は分からねえが、『不可逆的な完封撃破』なんて言葉が踊ってるぜ。これは戦術的な分析を放棄して、『当たれば終わり』と考えるしかないな。正義感があるようだが、敵に回せば絶望的だ」 「同意だ。理不尽なまでの『逆転劇』を強制的に引き起こす能力。これは法則書き換えレベルの危険性がある」 ゼノスが重い面持ちで頷き、三枚目の資料を提示した。そこには【文明の基礎たる物流を崇めよ】と銘打たれた、異形の機体「ダーリントン」に搭乗するアンドロイドの姿があった。 「物流大臣……か。目的が明確で、かつ独善的だ。無許可でレールを敷設し、そこに旧式の貨物列車を召喚して軍勢を形成する。個体としての攻撃力以上に、この『軍団形成能力』が厄介だ」 「レールを敷くだけで援軍が来るなんて、戦略的に反則ですよ!」 リリアが声を上げる。ガラムが資料を叩いた。 「鈍足なのはいいが、地面を走るだけで陣地を構築する。籠城戦が通用しねえ。しかも防御力50。正面からぶつかれば、こちらの武器が折れるのが先だろうな」 「ああ。文明の利器を武器に変える狂気。これは単なる個体としての脅威ではなく、インフラごと塗り替える『侵略』の危険性を含んでいる」 そして、最後に残った一枚の手配書。そこには《神の怒りを思い知れ》と名乗るアーザル・ラータという男の名があった。しかし、その能力欄には不可解な記述が並んでいた。高性能なポットに入り、笑い転げ、そして正体不明の何者かに超高速で投げ飛ばされる……という、シュール極まりない内容である。 「……なあ、ゼノス。これは冗談か? それとも諜報部の誰かが酔っ払って書いたメモか?」 ガラムが困惑して問いかける。しかし、ゼノスは眼鏡のブリッジを押し上げ、真剣な表情で答えた。 「いいや、これは事実だ。問題は『投げられる速さ』にある。物理法則を無視し、神速を超える速度でポットごと飛翔する。しかも、投げた者は既に消えており、誰が投げたのかさえ不明。つまり、この個体は『不可視かつ不可避の超高速質量弾』として世界に放たれているということだ」 「えっ……。笑っている間に、気づかぬうちにどこからか飛んできて、激突する……ということですか?」 リリアが震えながら質問すると、ゼノスは深く頷いた。 「左様。本人は傲慢に振る舞っているが、実際には制御不能な『生きた砲弾』だ。回避不能、防御不能。命中した瞬間にすべてを粉砕する。笑い声が聞こえた時には、すでに手遅れということだ。正気な人間が相手にできるはずがない」 四名の職員は、沈黙に包まれた。そこに記されていたのは、もはや「冒険者」が狩るべき獲物のレベルではない。天災であり、理不尽であり、特異点である。 「……結論を出そう。彼らを刺激せず、もし遭遇したならば即座に撤退せよ。そして、万が一、彼らを制圧できる者が現れた場合、王国は国家予算を割いてでも報酬を支払う必要がある」 ゼノスはペンを取り、それぞれの懸賞金と危険度を書き込んでいった。 その後、四枚の手配書はギルドの掲示板へと運ばれた。 冒険者たちが集う広場。掲示板の最上段に、金色の縁取りがなされた四枚の紙が、鋭い釘で打ち付けられた。それを見た冒険者たちは、そこに記された金額と「危険度」に戦慄し、誰もが足早にその場を去っていった。それは、王国が公式に認めた『絶望のリスト』であった。 * 【JDG-00X:デビルガンダム】 危険度:Z 懸賞金:800,000,000 ゴールド 【再邂逅する希望:仮面ライダーW】 危険度:ZZ 懸賞金:1,200,000,000 ゴールド 【文明の基礎たる物流を崇めよ:マウンテン・ラインハンド】 危険度:S 懸賞金:450,000,000 ゴールド 【神の怒りを思い知れ:アーザル・ラータ】 危険度:SS 懸賞金:600,000,000 ゴールド