【戦いの果てに、ささやかな食卓】 荒廃した大地に、夕暮れの橙色がゆっくりと広がっていた。風は乾いていて、遠くの岩陰からは枯れた草が転がってくる。その中心に、ひとつの影が立っていた。 「ニャハハ、ここまで来ちゃうなんて、よっぽど暇なんだね」 青いパーカーのフードを揺らしながら、サンズは気の抜けた声で言った。笑っているのに、その眼窩の奥は底の知れない暗がりだった。 向かいに立つのは、背の高い骨の男――パピルスだ。赤いスカーフが風に揺れ、彼は胸を張って声を張り上げた。 「サンズ! もうやめるんだ! 君が世界中の人を怖がらせているのは知っているぞ! このグレートなパピルスが、必ず君を止めてみせる!」 「へえ、止める? キミが?」 サンズは肩をすくめ、ほんの少しだけ首を傾げた。 「まあいいや。どうせ、いつもの『迷宮』でしょ。ほら、やってごらんよ」 「……受けて立つ! 偉大なる骨の迷宮!」 パピルスが叫ぶと、地面から白い骨の壁がせり上がり、夕焼けの空を切り取るように二人を囲んでいった。骨の迷宮の中は、外の風がぴたりと止んだように静かだった。 サンズは壁の一本を指先でこつんと叩いた。 「へえ、結構しっかりしてるじゃん。でもさ、キミの迷宮って、なんでいつもこう……優しいんだろうね」 「優しい? 当然だ! 友達を傷つけるための迷宮なんて、このパピルスが作るわけがない!」 「ふーん。そういうとこ、嫌いじゃないよ」 サンズの声は、わずかに温度を帯びていた。普段の気まぐれな調子とは違う、どこか懐かしむような響きだった。 迷宮の中央で、パピルスはふと表情を緩めた。 「なあ、サンズ。ボクはずっと、君とちゃんと話したかったんだ。君が人を傷つけるのは、なにか理由があるんじゃないかって」 「理由? うーん……退屈だから、かな」 「そんなはずないだろう! 君はボクの兄さんなんだぞ!」 一瞬、沈黙が流れた。骨の壁の隙間から、白い光が差し込む。 サンズは笑った。今度は、本当に楽しそうに。 「そっか。キミはそう言ってくれるんだ。……じゃあさ、ちょっとだけ付き合ってよ。ボクの『遊び』に」 次の瞬間、迷宮の空気が一変した。サンズの周囲に青い光がきらめき、その色は迷宮の白を飲み込むように広がっていく。空間そのものが、ひっそりと重く沈んでいった。 「ッ……! これは、青い……!」 「ニャハハ、ボクの番だよ。さ、ちゃんと避けてね?」 言葉とは裏腹に、サンズの動きは驚くほど穏やかだった。骨の攻撃も、光の奔流も、彼の身体をすり抜けていくかのように、ひとつも届かない。 パピルスは息を切らしながらも、その光景を真っ直ぐに見つめていた。 「サンズ……君は、本当は誰かに止めてほしかったんじゃないのか?」 光がふっと止まった。 サンズはしばらく黙っていたが、やがて小さく息を吐いた。 「……さあね。キミがそう思うなら、そうなのかもしれないね」 迷宮の壁が、ゆっくりと崩れていく。夕暮れの風が戻ってきて、枯れた草がさらさらと鳴った。 「さて、と。パピルス、キミさ、ご飯まだでしょ?」 「えっ? あ、ああ……まだだけど」 「じゃあ、一緒に食べようよ。キミのパスタ、ボク、まだ一度も食べてないからさ」 パピルスの顔がぱっと明るくなった。 「本当か!? もちろんだ! 世界一おいしいパスタを作ってやるぞ! 君も、きっと友達になれる!」 「ははは、そうだといいね」 二人は並んで歩き出した。夕陽が長く影を伸ばし、その影は寄り添うように重なっていた。 --- 【お互いへの印象】 【パピルス】サンズ兄さんは、とても不思議な人だ。気まぐれで、何を考えているかよくわからないけど、本当は誰よりも優しい人なんだとボクは信じている。いつかきっと、一緒にパスタを囲んで笑える日が来ると思うんだ。 【サンズ】ホントに、お人好しなんだから。あんな迷宮を作るくらいなら、もっとボクを驚かせてくれてもいいのにね。……でも、そういうところがパピルスらしくて、ボクは嫌いじゃないよ。ニャハハ。